1924年に最初の時計を世に送り出してから100余年。シチズンが歩んできた道のりを振り返ると、そこには現在のイメージだけでは語りきれない、驚くほど多彩な時計が存在していた。日本初のトリプルカレンダーから、革新的なダイバーズ、電波時計まで――ニューヨークに集められた100本の歴史的モデルから、シチズンというブランドの知られざる一面を紐解く。
Hidden Treasures in Citizen’s Century of Watchmaking
シチズン時計、100年の歴史に眠る、知られざる名作たち
1924年に最初の時計を世に送り出してから100余年。シチズンが歩んできた道のりを振り返ると、そこには現在のイメージだけでは語りきれない、驚くほど多彩な時計が存在していた。日本初のトリプルカレンダーから、革新的なダイバーズ、電波時計まで――ニューヨークに集められた100本の歴史的モデルから、シチズンというブランドの知られざる一面を紐解く。
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by Zen Love. Aug 23,2024 |
過去100年にわたる多様な時計作り
日本の時計メーカー、シチズンというブランドには、実に多くの顔がある。本当に、驚くほど多彩だ。現在のシチズンという企業そのものにもそれは当てはまるが、過去100年にわたる時計づくりを振り返れば、その多様性、技術、そして発想の幅広さは、想像以上のものだと気づかされる。
シチズンは時計製造100周年を記念し、ミュージアムの収蔵品から100本の時計をニューヨークへと持ち込んだ。その展示は、かなりの時計愛好家でさえ知らなかったであろう、この巨大な時計メーカーの奥深い姿を浮かび上がらせるものだった。
もちろん、その100本ですら、シチズンがこれまで手がけてきた膨大な製品やミュージアムピースの中から厳選された、ごく一部にすぎない。

▲ シチズン時計の第一号製品。尚工舎(シチズンの前身)の創立者である山崎亀吉は、時計国産化を目指し、これを完成させた。貴族院議員の要職にあった山崎は、親交のあった時の東京市長である後藤新平伯爵にこの時計の命名を依頼し、後藤は、永く広く市民に愛されるようにと「CITIZEN(シチズン)」と名付けた。
展示が行われたのは、2024年7月中旬。ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジに設けられた会場で、1924年にシチズン初の時計が誕生してから100周年を迎えたことを祝うものだった。ちなみに、ブランドの創業はその6年前、1918年にさかのぼる。
また同じタイミングで、ジャック・フォースターが執筆した書籍『Citizen: The Essence of Time』も刊行された。同書では、シチズンの歴史と、その歩みを象徴する数々のマイルストーンが紹介されている。
知られざるトリプルカレンダー
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▲1952年製のシチズン カレンダーウォッチ。
その展示を訪れる、ほんの数日前のことだった。私はInstagramで、ある投稿を「保存」していた。普段、投稿を保存することはほとんどない。それでも、その時計には思わず目を奪われた。
1950年代に製造された、端正なトリプルカレンダー。ダイアルには「Citizen Calendar Watch」の文字が記されていた。私はそれまで、この時計を見たことがなかった。実に美しい時計だった。
そして、まるで偶然に導かれたかのように、数日後のシチズン100周年展で、1952年製の〈シチズン カレンダーウォッチ〉そのものを目の前にすることになった。展示の解説によれば、このモデルは日本初のトリプルカレンダーウォッチだったという

会場に並んだ100本のなかには、〈カレンダー〉のように、現在のシチズンからは少し意外に感じられるモデルもあった。とはいえ、そうした時計もまた、ブランドの歴史をつなぐ重要な存在であることに変わりはない。
一方で、多くのモデルは現代に復刻されていたり、現在もラインナップに名を連ねていたりと、ひと目でその系譜がわかるものだった。

シチズンの歴史に輝く名作たち
〈プロマスター 200m ダイバー〉や〈プロマスター タフ〉、通称“ツノクロノ”として親しまれるクロノグラフ、アイコニックな〈アクアランド〉のさまざまなモデル、そして〈アナデジテンプ〉に代表されるアナログ・デジタルウォッチなど、現在にもつながる数多くの名作のオリジナルが展示されていた。
技術の進化や時代ごとの嗜好を色濃く映した、いまでは歴史的な珍品ともいえるモデルもある。たとえば1993年に登場した、Cal.7400搭載の世界初の多局受信型電波時計は、ダイアルを縦に二分するようにアンテナが配置されており、いま見ても強烈なインパクトを放っている。

▲左:シチズン初の本格クロノグラフ機能付き腕時計〈クロノグラフ チャレンジタイマー〉(1973年)。このシリーズはその見た目から「ツノクロノ」と呼ばれた。クロノ針はハートカム方式による瞬間帰零機構。9時側にクロノの12時間計、3時側にクロノの30分計を備え、デザインバランスを取るために6時側には曜日・日付が縦に配されている。右:1982年に登場した〈ANA-DIGI TEMP〉。アナログとデジタル表示を組み合わせ、温度センサーまで搭載した先進的な一本だ。航空機のコックピットを思わせるレトロフューチャーなデザインは、40年以上を経た現在もなお高い人気を誇る。

▲左:シチズンは1985年、世界初の水深計付きダイバーズウオッチ〈アクアランド〉を発表。写真は20周年を迎えた2006年にリリースされたモデル。各針を独立モーターで駆動する新機構を採用し、潜水経過時間を針で表示。レジスターリングを廃しながら、9時位置のセンサーという象徴的な意匠を受け継ぎ、よりダイナミックなデザインへと進化した。右:1993年に登場した世界初の多局受信型電波時計。ドイツ、英国、日本の3局に対応していた。アンテナを文字板上面に配したユニークなデザインで、ICの不揮発性メモリーに針位置を記憶。電池交換しても電波を受信すれば、すぐに時刻がセットされた。

▲左:1997年に登場した〈プロマスター DIVER 200m NY0040-09W〉。全面に夜光を施したダイアルと8時位置のリューズが強烈な個性を放つ。機械式キャリバー8203を搭載し、200m防水を備えた本格ダイバーズウオッチだ。右:1997年に登場したプロマスター〈TOUGH SERIES〉。幅広のベゼル、大ぶりなインデックスやリューズなど、あえて通常より大きく設計したパーツが独特の力強さを生む。チタン製の一体構造ケースにエコ・ドライブを搭載し、20気圧防水や耐磁性能など高いタフネスも追求。同年のグッドデザイン賞を受賞した。
1924年に誕生したシチズンの懐中時計さえ、今年になって現代的に再解釈され、会場にはオリジナルと復刻モデルの両方が展示されていた。


▲2024年、ブランド誕生100周年を記念して、シチズン初の時計が現代的に再解釈され、発売された。
シチズンが歩んできた時代の変化を映し出すだけでなく、この展覧会は、同社が常に新しいことに挑戦してきたブランドであることも物語っていた。
復刻されたモデルの傍らには、まだ現代に蘇っていない魅力的なヴィンテージウォッチも数多く並んでいる。そうした時計を見ていると、次に復活するのはどのモデルなのだろう、と自然に想像が膨らんでくる。
なかでも〈カレンダー〉にすっかり魅了されてしまった私は、これを現代の腕時計として蘇らせたらどうなるだろう、と考えずにはいられなかった。個人的にも、あの時代のトリプルカレンダーウォッチには目がない。それだけに、現在ではほとんど姿を消してしまったことを不思議に思う。
もしシチズンがこれを手の届きやすい価格で実現すれば、ブランドに新たな注目を集めるだけでなく、時計コレクターを大いに喜ばせるに違いない。
もちろん、これはあくまで私の空想にすぎない。だが、100年という歴史と100本の時計を通じて、シチズンがこれ以上に望めることがあるだろうか。過去の時計に胸を躍らせ、そして次に何が生まれるのかを楽しみにさせる──。その意味で、この展覧会は間違いなく成功していた。
Brands:Citizen
※この記事は2024年8月に作成されたものです。
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