2026年、GPHGに新設された「Essential」部門。単純な3針時計でも、本格的なコンプリケーションでもない。その“間”に位置する時計の価値を問う、新しいカテゴリーである。ジャンピングアワー、スケルトン、スプリングドライブ、レトログラードなど、今年の候補作は実に多彩だが、共通するのは、日常使いできる時計の中にどれだけ独自の技術、美学、完成度を凝縮できているかという点だ。では、「日常使いできる最高峰」とは何か。Revolution Japanが、6本のノミネート作を読み解きながら、その行方を予想する。
GPHG Predictions — Essential Category: What Defines the Ultimate Everyday Watch?
GPHG 大予想——Essential部門「日常使いできる最高峰」とは何か?
2026年、GPHGに新設された「Essential」部門。単純な3針時計でも、本格的なコンプリケーションでもない。その“間”に位置する時計の価値を問う、新しいカテゴリーである。ジャンピングアワー、スケルトン、スプリングドライブ、レトログラードなど、今年の候補作は実に多彩だが、共通するのは、日常使いできる時計の中にどれだけ独自の技術、美学、完成度を凝縮できているかという点だ。では、「日常使いできる最高峰」とは何か。Revolution Japanが、6本のノミネート作を読み解きながら、その行方を予想する。
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by Revolution Japan. Sep 17, 2026 |
- Essential部門とは?
- Nominee #1——AUDEMARS PIGUET Neo Frame Jumping Hour
- Nominee #2——DANIEL ROTH Extra Plat Rose Gold Skeleton
- Nominee #3——GRAND SEIKO Hand-engraved Manual-winding Spring Drive
- Nominee #4——MB&F SP One Platinum
- Nominee #5——PARMIGIANI FLEURIER Tonda PF Minute Rattrapante Arctic Rose
- Nominee #6——STÉPHANE PIERRE L'Impétrant
- Revolution Japanの予想
Essential部門とは?
Essential部門は、2026年に新設されたカテゴリーだ。従来のメンズ/レディース部門が廃止され、それに代わる存在として設定された。
・時、分、秒、日付、パワーリザーブ表示、クラシックなムーンフェイズ、昼夜表示のうち、1つまたは複数の表示機能を備える時計を対象とする。
・デジタル表示またはレトログラード表示を採用していてもよいが、Time Only、Complication、Gemsetの各部門の定義には該当しないことが条件となる。
・一点物(ユニークピース)は応募資格を有しない。
今年のノミネート作を見ると、ジャンピングアワー、スケルトン、スプリングドライブ、レトログラードなど、アプローチは実に多彩。それでも共通しているのは、複雑さを誇示するのではなく、日常的に身に着けられる時計の中に、いかに独自の技術や美学を落とし込んでいるかという点である。
「日常使いできる最高峰」とは何か。その答えによって勝者が変わる、非常に興味深い部門になった。

Nominee #1——AUDEMARS PIGUET Neo Frame Jumping Hour
オーデマ ピゲ〈ネオ フレーム ジャンピングアワー〉
巨人オーデマ ピゲは、新作〈ネオ フレーム ジャンピングアワー〉をノミネートさせた。1929年のタイムピース(プレモデル1271)に着想を得たレクタンギュラーケースに、縦方向のゴドロン装飾を施し、マニュファクチュール初の自動巻きジャンピングアワー・ムーブメント、キャリバー7122を搭載する。
ピンクゴールドとサファイアを組み合わせたケースや新開発のストラップなど、1930年代のデザインコードを現代的に再解釈。伝統的な手仕上げと最新技術を融合し、オーデマ ピゲらしい大胆さと革新性を表現している。

Tech Specs
オーデマ ピゲ〈ネオ フレーム ジャンピングアワー〉ケース素材:ピンクゴールド ブレスレット/ストラップ:ブラックのテクスチャード・カーフスキンストラップ バックル:18Kピンクゴールド製APクラスプ ダイアル:ブラックPVD加工サファイアダイアル 防水性能:20m サイズ:34 × 34.6mm 厚さ:8.8mm ムーブメント:自動巻き機械式ムーブメント パワーリザーブ:約52時間、毎時2万8800振動 機能:時、分、レトログラード・ミニッツ、ジャンピングアワー リファレンス:15245OR.OO.D206VE.01 発売時期:2026年2月 価格:5万6300スイスフラン(税込)

Nominee #2——DANIEL ROTH Extra Plat Rose Gold Skeleton
ダニエル・ロート〈エクストラ プラット ローズゴールド スケルトン〉
「ラ・モントル・オブジェ・ダール(時計という芸術作品)」の精神のもとに生まれたダニエル・ロート〈エクストラ プラット ローズゴールド スケルトン〉は、スケルトンという技法で〈エクストラ プラット〉を再解釈したモデルだ。
象徴的なダブルエリプスケースのプロポーションを保ちながら、新開発の手巻きキャリバーDR002SRを全面的に見せている。
厚さ6.9mmのケースとムーブメントはいずれも5Nローズゴールド製。キャリバーDR002SRはラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンで完全自社製造され、スケルトン化のためにブリッジとメインプレートを再設計。剛性や精度を損なうことなく、軽やかさと透明感を実現した。
各ブリッジには手作業による面取りが施され、機械では実現できない鋭い内角も多数備える。「less is more」の哲学のもと、伝統的な仕上げとムーブメントの奥行きを際立たせた一本である。

Tech Specs
ダニエル・ロート〈エクストラ プラット ローズゴールド スケルトン〉 ケース素材:5Nローズゴールド ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:ピンバックル ダイアル:5Nローズゴールド サイズ:直径38.6mm✕35.5mm、厚さ:6.9mm ムーブメント:手巻き機械式スケルトンムーブメント、毎時2万8800振動 パワーリザーブ:約65時間 機能:時、分 発売時期:2026年1月 価格:8万5000スイスフラン(税抜)

Nominee #3——GRAND SEIKO Hand-engraved Manual-winding Spring Drive
グランドセイコー〈マスターピースコレクション 手巻スプリングドライブ SBGZ011〉
信州の原生林に流れる蓼科大滝から着想を得た、グランドセイコー マスターピースコレクションのスプリングドライブモデル。50本限定で、ダイアルには一本ずつ手彫りが施され、水が湧き出し岩肌を流れ落ちる様子を、交差する彫金のラインで表現している。
搭載するのは、長野県塩尻市のマイクロアーティスト工房で設計・仕上げ・組み立てが行われる手巻きスプリングドライブ・キャリバー9R02。厚さ4.0mmという薄型設計ながら、約84時間のパワーリザーブを備える。ムーブメントのブリッジには鏡面仕上げのエッジと繊細なテクスチャーが施され、細部まで高度な仕上げが徹底されている。
44GSをモチーフとしたプラチナ950製ケースには流れる水を表した彫金模様が施され、ザラツ研磨された面とともに豊かな陰影を生み出す。滑らかに進むスプリングドライブの秒針とともに、自然の中を絶え間なく流れる時間そのものを表現した一本だ。

Tech Specs
グランドセイコー〈マスターピースコレクション 手巻スプリングドライブ SBGZ011〉 ケース素材:プラチナ ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:フォールディングバックル ダイアル:手彫りダイアル 防水性能:30m サイズ:直径40mm 厚さ:9.6mm ムーブメント:スプリングドライブ
パワーリザーブ:約84時間 機能:時、分、秒、パワーリザーブ表示 リファレンス:SBGZ011 発売時期:2026年7月 コレクション:〈マスターピース〉/50本限定 価格:8万6000スイスフラン(税込)

Nominee #4——MB&F SP One Platinum
MB&F〈SP One プラチナ〉
MB&F〈SP One〉は、香箱、テンプ、ダイアルという3つの要素を空中に浮かせたように配置した、直径38mmのエレガントなモデルだ。2時位置で振動するテンプや傾斜したダイアルが、MB&Fらしい立体的なムーブメント構造を際立たせている。
小石のように滑らかなケースはベゼルレスで、ブランド史上もっとも薄く小さいサイズながら、3次元的な建築性は健在。〈ホロロジカル・マシン〉と〈レガシー・マシン〉の中間に位置する、新たな「Special Projects」コレクションの第1作となる。
裏側には手作業による面取りやチャトン、サテン、ポリッシュ、マイクロブラスト仕上げが施される。日常使いできるサイズの中に、MB&Fらしい大胆さを凝縮した一本だ。

Tech Specs
MB&F〈SP One プラチナ〉 ケース素材:プラチナ ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:ピンバックル ダイアル:スケルトンダイアル 防水性能:30m サイズ:直径38mm 厚さ:12mm ムーブメント:手巻き機械式スケルトンムーブメント
パワーリザーブ:約72時間、毎時1万8000振動 機能:時、分表示 リファレンス:SP1.PL.BU 発売時期:2025年6月 価格:6万3000スイスフラン(税込)

Nominee #5——PARMIGIANI FLEURIER Tonda PF Minute Rattrapante Arctic Rose
パルミジャーニ・フルリエ〈トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ プラチナ アークティック・ローズ〉
2023年、パルミジャーニ・フルリエは、世界初となる〈トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ〉を発表した。これは時間を計測するための複雑機構ではなく、「必要な時間をその場で追加する」という新たな体験を提供するタイムピースだ。斬新な発想を驚くほどシンプルに形にして、時計本来の役割である「人生に寄り添う道具」へと立ち返っている。
その仕組みは現在でも他に類を見ない。通常は重なって見えない2本めの分針を備え、ボタンをプッシュすることで初めて姿を現す。10時位置のプッシャーで1分、8時位置のプッシャーで5分を追加し、リュウズでリセット。ロジウム仕上げの針が現在時刻を、ローズゴールドの針が追加した時間を示し、両針が再び重なった瞬間、設定した時間の経過を知らせる。
高度な機構でありながら操作は直感的で、新しい時計との付き合い方を提案している。

パルミジャーニ・フルリエ〈トンダ PF ミニッツ ラトラパンテ プラチナ アークティック・ローズ〉 ケース素材:ステンレススティール、プラチナ ブレスレット/ストラップ:ステンレススティール バックル:フォールディングバックル ダイアル:グラン・ドルジュ模様の手彫りギヨシェ 防水性能:60m サイズ:直径40mm 厚さ:10.7mm ムーブメント:自動巻き機械式ムーブメント パワーリザーブ:約48時間、毎時2万1600振動 機能:時、分、レトログラード・ミニッツ、重ね合わせた2本の分針 リファレンス:PFC904-1020002-100182 発売時期:2025年10月 価格:3万300スイスフラン(税込)

Nominee #6——STÉPHANE PIERRE L’Impétrant
ステファン・ピエール〈ランペトラン〉
ステファン・ピエールは、機械工学とマイクロメカニクスを学び、時計業界で経験を積んだ後、防衛産業向けの精密機械開発に携わった異色の経歴を持つ独立時計師である。2026年、自身の名を冠したブランドを立ち上げ、そのデビュー作として発表したのが〈ランペトラン〉である。
〈ランペトラン〉は、「動きを可視化する」という発想から生まれた。時と分は、セラミック製ダイアル上を動く2本のレトログラード針で表示され、12時間の進行後には両針が同時にスタート位置へ戻る。
ダイアル中央にはテンプを配置し、ムーブメントの奥行きと“鼓動”を強調。搭載するのは完全自社開発の手巻きキャリバーで、2.5Hz、約70時間のパワーリザーブを備える。残量はダイアル側の垂直コーンと裏側の表示で確認できる。
39mmのグレード23チタンケースに収められた本作は、軽さ、技術性、エレガンスを融合した、ステファン・ピエールの独立時計師としての出発点を象徴する一本だ。

Tech Specs
ステファン・ピエール〈ランペトラン〉 ケース素材:チタン ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:ピンバックル ダイアル:セラミック サイズ:直径39mm 厚さ:10.8mm ムーブメント:手巻き機械式スケルトンムーブメント
パワーリザーブ:約70時間、毎時1万8000振動 機能:時、分、パワーリザーブ表示、レトログラード・アワー、レトログラード・ミニッツ 発売時期:2026年4月 限定本数:50本限定 価格:9万800スイスフラン(税込)
Revolution Japanの予想
単純な3針時計でも、本格的なコンプリケーションでもない。その“間”にある時計を評価する新設カテゴリーだけに、何をもって「最高」とするかによって、評価は大きく変わってくる。
例えば、「彫金技術」や「ムーブメントの精度」を基準とするなら、グランドセイコーは圧倒的だ。一方で、MB&Fやパルミジャーニ・フルリエは、それとはまったく異なる評価軸で見るべき時計だろう。間口が広い分、受賞予想が非常に難しい部門である。
◎本命
ダニエル・ロート〈エクストラプラット ローズゴールド スケルトン〉
美しいスケルトン、ゴールド製ムーブメント、内角の手仕上げ——もう、内角、内角、内角の連続だ。時計好きなら誰もがため息を漏らしてしまう一本である。ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンが手掛ける近年の作品は、GPHGでも高い評価を受けており、その仕上げの完成度は折り紙付きだ。ダニエル・ロートはLVMHグループの傘下で、力強く再生中であり、ブランドに勢いがある。ただし、ノンスケルトン仕様が昨年Time Only部門を制したばかり。審査員が「連続受賞」をどう評価するか気になるところだ。
◯対抗
オーデマ ピゲ〈ネオ フレーム ジャンピングアワー〉
オーデマ ピゲにとって初の自動巻きジャンピングアワーであり、ここまで手間のかかる構造を量産化したこと自体、採算性よりも技術への挑戦を優先した一本といえる。アヴァンギャルドなチャレンジャー、APの面目躍如である。歴史的なデュアル・ギシェ型を、現代的なアプローチで成立させた点がエッセンシャルのテーマに合致している。ただし、ギシェタイプは一部に熱狂的なファンはいるものの、基本的にマニアック領域であり、人によって好みが分かれるという点が気がかり。
▲穴
ステファン・ピエール〈ランペトラン〉
これはまさに「穴」である。無名の新興インディペンデントによるデビュー作ながら、テンプをダイアル中央に据え、2本のレトログラード針を交差させて時刻を表示する——何より、このデザイン・バランスが美しい。GPHGアカデミーは伝統的に、実績のない新興ブランドの意欲作を積極的に拾い上げる傾向がある。さらに今回の審査員は全体的に若く、新しい才能や新鮮な表現に票が集まる可能性もある。番狂わせがあるとすれば、この一本だと予想する。
※この予想はRevolution Japanが独断と偏見で論じているものであり、審査とはなんの関係もありません。
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