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ゼニス〈クロノマスター ソロ スポーツ〉が問う、そのアイデンティティ

Editorial

クロノグラフと切っても切れない関係にあったゼニスの〈クロノマスター〉に、初の本格的な3針モデル〈クロノマスター ソロ スポーツ〉が加わった。40mmのスチールケースに、5Hzで振動する自動巻きエル・プリメロ 3620を搭載。20気圧防水、ねじ込み式リュウズ、回転式セラミックベゼルを備えるなど、従来の〈クロノマスター スポーツ〉以上にタフな性格を与えられている。クロノグラフを失ってもなお、それはクロノマスターと呼べるのか。ゼニスの新作は、そんな興味深い問いを投げかける。

Editorial

Zenith’s Latest Takes the Chronograph Out of the Chronomaster

ゼニス〈クロノマスター ソロ スポーツ〉が問う、そのアイデンティティ

クロノグラフと切っても切れない関係にあったゼニスの〈クロノマスター〉に、初の本格的な3針モデル〈クロノマスター ソロ スポーツ〉が加わった。40mmのスチールケースに、5Hzで振動する自動巻きエル・プリメロ 3620を搭載。20気圧防水、ねじ込み式リュウズ、回転式セラミックベゼルを備えるなど、従来の〈クロノマスター スポーツ〉以上にタフな性格を与えられている。クロノグラフを失ってもなお、それはクロノマスターと呼べるのか。ゼニスの新作は、そんな興味深い問いを投げかける。

by Tracey Llewellyn. Sep 2, 2026

 ゼニス〈クロノマスター スポーツ〉が登場したのは2021年1月のこと。その提案は実に明快だった。1969年のA386で初めて採用された3つの重なり合うインダイアルをはじめ、エル・プリメロを象徴する歴史的な要素を受け継ぎながら、それらをセラミックベゼルを備えた41mmの現代的なスチール製スポーツクロノグラフへと落とし込んだのである。

 さらに重要なのが、搭載するエル・プリメロ 3600だ。5Hzという高振動を生かし、1/10秒の計測を実現。センターのクロノグラフ秒針は10秒でダイアルを1周する。同年11月には、〈クロノマスター スポーツ〉がGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)のクロノグラフ部門賞を受賞した。

 それから5年。ゼニスは今度、そのクロノマスターからクロノグラフを取り去ったらどうなるのかを試みた。これは単に2つのプッシャーと3つのインダイアルをなくした、という以上の意味を持つ。

 そもそもエル・プリメロは1969年、自動巻き高振動クロノグラフムーブメントとして誕生し、クロノマスターという名もまた、クロノグラフ機能と切っても切れない存在になってきたからだ。

 しかし今回現れたのは、時・分・センターセコンドのみを表示する40mmの〈クロノマスター〉。4つのバリエーションのうち3モデルには日付表示も備わる。クロノグラフを失ってなお、それは果たしてクロノマスターたり得るのか。その答えを示すのが、新しい〈クロノマスター ソロ スポーツ〉である。

 一方で、それ以外の部分に目を向けると、新作はむしろ従来の〈クロノマスター スポーツ〉以上にスポーティな仕立てとなっている。防水性能は100mから200mへと向上し、リュウズはねじ込み式となり、リュウズガードも新たに装備。

 さらに〈クロノマスター スポーツ〉に採用されていた固定式の1/10秒スケールに代わり、逆回転防止機構付きのセラミック製回転ベゼルが採用された。

 その佇まいは、もはやダイバーズウォッチにかなり近い。ただしゼニス自身は、あくまでこれをダイバーズウォッチとは呼んでいない。

 ムーブメントには、エル・プリメロの系譜がしっかりと受け継がれている。搭載する自動巻きキャリバー 3620は、キャリバー 3600をベースとし、おなじみの毎時3万6000振動(5Hz)で駆動。パワーリザーブは60時間を確保する。

 セラミック製ダイアルにも新たな意匠が取り入れられた。45度に傾けた「Z」のモチーフを全面に反復させ、その外周を、鋭く区切られた“シャークトゥース”状のミニッツトラックが縁取っている。

 バリエーションは、ホワイト、ブラック、ブラウンのデイト表示付き3モデルに加え、ブラックダイアルのノンデイト仕様を用意。このノンデイトモデルは、コレクターから特に高い支持を集める存在になるかもしれない。

〈クロノマスター ソロ スポーツ〉を、まさに待ち望んでいたクロノマスターだと感じる人もいるだろう。40mmという扱いやすいサイズ、タフなスペック、シンプルな機能、そして日常使いに適した汎用性……。

 一方で、クロノグラフを取り去ったことで、「クロノマスターをクロノマスターたらしめていたもの」まで失われたのではないか、と考える人がいても不思議ではない。

 しかし、クロノグラフという象徴的な機能をあえて手放したことで、〈クロノマスター ソロ スポーツ〉はエル・プリメロの魅力をより身近に、より自由に楽しめる一本へと進化した。伝統を守るだけでなく、その解釈を広げること――この新作は、クロノマスターの新たな可能性を追求した、ゼニスらしい意欲作といえるだろう。

Tech Specs

ゼニス〈クロノマスター ソロ スポーツ〉 ムーブメント:自動巻きエル・プリメロ 3620、毎時3万6000振動(5Hz)、パワーリザーブ約60時間 機能:時・分表示、センターセコンド、3モデルに日付表示 ケース:ステンレススチール、40mm、逆回転防止機構付きセラミック製回転ベゼル、20気圧防水 ダイアル:セラミック製。45度に傾けた「Z」モチーフを反復したパターン、“シャークトゥース”状のミニッツトラック ブレスレット:3連ステンレススチールブレスレット、工具不要の微調整システムを備えたZENCLASP™フォールディングバックル バリエーション:ホワイト/デイト、ブラック/デイト、ブラウン/デイト、ブラック/ノンデイト ¥1,458,600(デイト)、¥1,340,900(ノンデイト)

Brands:Zenith

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