トゥールビヨンが初代アブラアン-ルイ・ブレゲによる発明であることは、読者には周知の事実であろう。特許を取得したのは、1801年6月26日であり、今年は225周年に当たる。その記念モデルを携え、ブレゲのグレゴリー・キスリングCEOが来日。それぞれのモデルに対する想いを訊ねた。
Celebrating 225 Years of the Tourbillon: An Interview with Breguet CEO Gregory Kissling
ブレゲCEO グレゴリー・キスリングが語る、225周年を迎えたトゥールビヨン
トゥールビヨンが初代アブラアン-ルイ・ブレゲによる発明であることは、読者には周知の事実であろう。特許を取得したのは、1801年6月26日であり、今年は225周年に当たる。その記念モデルを携え、ブレゲのグレゴリー・キスリングCEOが来日。それぞれのモデルに対する想いを訊ねた。
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by Norio Takagi. Sep 15, 2026 |
新作『クラシック トゥールビヨン 7357』に込めたヘリテージと革新
1989年、現代のブレゲにトゥールビヨンがもたらされた。キスリングCEOの腕にあるのは、そのメゾンにとって同機構初のリストウォッチ「Ref.3350」から着想を得た新作〈クラシック トゥールビヨン 7357〉である。
「3350は、ブレゲにとって非常に大切なモデルです。ですからそのアイデンティティを崩さず、現在の技術でアップデイトさせました」
オフセットダイヤルとトゥールビヨンを上下に配したスタイルは、時計ファンにはお馴染みだろう。小ぶりな35mmのケースサイズや1万8000振動/時というロービートであるのも、ほぼ同じだ。しかし搭載するCal.187Bは、「3350」が用いたCal.558とは別物だという。
「ブレゲシールの基準を満たすため、パーツの4割以上を変更しています。ですから各受け石の位置も設計変更され、針とトゥールビヨンの位置も微妙に変わっています」
本作が積むCal.187Bに課せられたブレゲシールの基準値は、平均日差±2秒の精度とスイス工業規格NIHS 90-10が定める値の10倍以上の耐磁性。
「クラシック トゥールビヨン 7357では、600ガウスの耐磁性が備わっています。それをかなえる技術の1つが、ニヴァクロン製のヒゲゼンマイです。これはチタンを母材としているので、ほぼ磁気帯びしない」
ブレゲは、耐磁性にも優れるシリコン製ヒゲゼンマイをいち早く導入し、現在では大半のモデルに採用している。しかし今回ニヴァクロン製としたのは、
「メゾンのヘリテージ1つである、ブレゲヒゲゼンマイとするためです。これも、Ref.3350からの継承です」
またブレゲシールには、審美性に関する基準値もある。
「ブレゲと言えば、コインエッジも重要なヘリテージです。これまでは専用のローラーを用いて施していましたが、この“7357”はギヨシェと同じ技法で刻んでいます」
ケースサイドの曲面に対し、手動のストレートエンジンで均等にコインエッジを刻めるのは、長い技術の研鑽の賜物。ダイヤル、そしてケースバックに見える地板に施されたギヨシェも、いままで以上に彫りが深く模様が明瞭である。
「実は、コインエッジも含め3回から5回、彫りを繰り返しているんです」
模様を構成するラインを一切ずらすことなく、手彫りを重ねられる職人技は驚嘆に値する。このギヨショもまた、初代ブレゲから受け継ぐメゾンのヘリテージ1つである。
伝統と創造の融合:ブレゲが提示するトゥールビヨンの未来
〈クラシック トゥールビヨン 7357〉以外の新作も、見応え十分だ。トゥールビヨンと鎖引き機構(フュゼチェーン)を組み合わせた〈トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047〉は、新たにブルーをまとった。
「フュゼチェーンは、レオナルド・ダ・ヴィンチが精査しました。つまり二人の天才が、1つの時計に組み合わされているのです。今回、トゥールビヨンのキャリッジもブルーとしたのは、初代ブレゲが特許出願時に添えた水彩の機構図のキャリッジがブルーに塗られていたからです」
鎖引き機構に用いるチェーンは、自社製。
「長さは25cmで、コマ数は77。全部で232のパーツから構成されています。これほど細いのに、引張強度は6kgもあります」
トゥールビヨンと永久カレンダー、そしてイクエーション(均時差表示)を組み合わせた超大作〈マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887〉からは、ダイヤルに初代がトゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日のパリの夜空を。蓄光のグランフー エナメルとミニアチュールペイントで描いた限定モデルが登場。このダイヤルの星空は、購入前にお好みの日付や場所、時間を指定して追加料金なしで変更することもできるという。
これら新作に加え、昨年〈クラシック スースクリプション 2025〉がGPHGのグランプリ(金の針賞)に輝いたこときっかけに、キスリングCEOが今年、同プライズの審査員に就任したことも、業界内で話題となった。
「審査員それぞれが、各時計に対してどんな評価をするのかを知るのが楽しみです。また時計業界がどのような前進をしているかということを見極める意味でも、審査をすることはいい機会だと思っています」
CEOがジャッジするため、今年のGPHGにはブレゲはエントリーしていない。
「GPHGに関しては、来年のブレゲに期待してください(笑)」

▲ グレゴリー・キスリング:ブレゲCEO。マイクロテクノロジーを学び、学士号とMBAを取得。さらにラグジュアリーマネジメントの修士号を取得した後、カルティエの技術部門を経て、2004年にオメガ入社。プロダクトマネージメント責任者として経験を積み、2022年に商品開発担当副社長に就任。新たなコラボレーション、イベントの企画にも携わってきた。2024年10月1日より現職。

▲ 左:〈クラシック トゥールビヨン シデラル 7255〉トゥールビヨンのキャリッジを透明なサファイアクリスタル製とした“シデラル”の新装。星空を想起させるブラックアベンチュリンエナメルのダイヤルに、Ptケースを組み合わせた。キャリバー:手巻きCal.187M1 パワーリザーブ:約50時間 ケース:直径38mm、厚さ10.2mm、プラチナ製 防水性能:3気圧 限定本数:50本 ¥37,521,000。中・右:〈クラシック トゥールビヨン 7357〉インダイヤル内はクル・ド・パリ、その外周にはグレンドルジュのギヨシェ彫りを深く刻んだ。キャリバー:手巻きCal.187B パワーリザーブ:約60時間 ケース:直径35mm 厚さ9.2mm 防水性能:3気圧 ¥23,562,000(ブレゲゴールド製)、¥25,916,000(プラチナ製)

▲ 左:〈トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047〉7時位置にオフセットしたフレンチブルーのグランフー エナメル・ダイヤルの下に、鎖引き機構を装備。円錐滑車(フュゼ)から、順に直径を大きくしながら香箱が鎖を巻き取ることで、トルクを定量化する。手巻きCal.569 パワーリザーブ:約55時間 ケース:プラチナ製 直径41mm 厚さ16mm 防水性能:3気圧 限定本数:25本 ¥41,437,000。右:〈マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887〉錨型の針がレトログラードデイト、太陽を掲げる針側は分針との位置の差で均時差を示す。その針の胴は、透明なガラス製。4時位置のトゥールビヨンの上に、均時差表示のためのカムが重なる。ミニアチュールペイントによる星空は、ブレゲのサイトで日付・場所を入力するとシミュレーションできる。自動巻きCal.581DPE パワーリザーブ:約80時間 ケース:プラチナ製 直径43.9mm 厚さ11.8mm 防水性能:10気圧 限定本数:25本 ¥62,370,000円(ブレスレット)。ラバーストラップ仕様は¥49,181,000。
Brands: Breguet
photograpy Tatsuya Ozawa.
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