創業から半世紀にわたり、〈ロイヤル オーク〉は実に多彩なバリエーションを生み出してきた。鮮やかなカラーバリエーションを楽しめるミドルサイズのRef.14790から、
The Hero with a Thousand Faces: The Audemars Piguet Royal Oak
“千の顔”を持つ英雄―〈ロイヤル オーク〉の魅力を語る
創業から半世紀にわたり、〈ロイヤル オーク〉は実に多彩なバリエーションを生み出してきた。鮮やかなカラーバリエーションを楽しめるミドルサイズのRef.14790から、業界屈指のミニッツリピーターに至るまで、その展開は実に幅広い。Revolutionファウンダーのウェイ・コーが、自身のお気に入りのモデルに触れながら、この時計が持つ多面的な魅力をひも解いていく。
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by Wei Koh . Nov 4, 2022 |
すべての英雄に共通する物語
1949年、ニューヨークのサラ・ローレンス大学に在籍していた、バティック柄のシャツを好む温厚な教授が、史上最も重要かつ影響力のある書物のひとつ『千の顔をもつ英雄』を出版した。
著者であるジョーゼフ・キャンベルはこの中で、すべての文化に共通し、時代を超えて存在する英雄譚、すなわちモノミス(単一神話)の概念を示した。
彼の理論によれば、人類の歴史、文学、神話、宗教に登場するあらゆる英雄は、同じ物語構造をなぞる。無名の子として生まれ、運命に導かれて旅に出る。やがて師と出会い、試練に直面し、苦しみ、耐え抜き、最終的に英雄として成就し、新たな存在として世界へ帰還し、他者に貢献するのである。
キャンベルは、オデュッセウスからブッダ、ジャンヌ・ダルク、マハトマ・ガンディー、さらにはナザレのイエスに至るまで、すべての英雄がこの同一の旅路を辿っていることを示した。そしてこの構造は、書物の刊行以後に生きた現実の英雄たちにも当てはまる。たとえばモハメド・アリである。
アリの人生を簡単に振り返ってみよう。彼はケンタッキー州ルイビルで、看板職人の父と家政婦の母のもとに生まれた。12歳のとき、自転車を盗まれたことをきっかけにボクシングを始める。やがてオリンピックで金メダルを獲得するが、“白人専用”のレストランでサービスを拒否されたことに抗議し、それを川に投げ捨てた。
1964年には、対戦相手ソニー・リストンがグローブに塗った薬剤で視界を奪おうとする中、下馬評を覆してヘビー級王座を獲得する。
その後、宗教指導者イライジャ・ムハンマドと出会い、イスラム教へ改宗。しかしキャリアの絶頂期にあった3年後、ベトナム戦争への兵役拒否によりボクシング界から追放される。約3年半の出場停止期間は、彼の肉体的ピークでもあり、決して取り戻すことのできない時間となった。
1971年、ようやく処分は撤回されるが、復帰戦ではプロ初黒星を喫し、キャリアは終わったと見なされた。人生のどん底である。しかし1974年、32歳で世間からは“過去の人”と見られていた彼は、当時最強と恐れられたジョージ・フォアマンを破り、再び王者に返り咲く。
この物語はキャンベルのモノミスと驚くほど重なり合う。結局のところ、人類史に登場するすべての英雄は、本質的には同一の型が、時代や文化という文脈の中で繰り返し姿を変えて現れたにすぎない。彼らの違いとは、外見上のバリエーションにほかならないのである。

▲ 2000年、ニューヨークのクリスティーズ・オークションハウスで開催された、オーデマ ピゲ主催のチャリティーウォッチオークション“タイム・トゥ・ギヴ”にて。モハメド・アリとアーノルド・シュワルツェネッガーのツーショット(Image: Nick Elgar/ImageDirect)
その誕生から50年にわたり、オーデマ ピゲの〈ロイヤル オーク〉は幾度となく姿を変えてきた。それぞれの時代に合わせ、この時計が持つさまざまな可能性が引き出されてきた。
それは時に、奔放な色彩表現として現れ、また別の時には、世界でも屈指の音量と純度を誇るミニッツリピーターや、極薄の自動巻きフライング トゥールビヨンといった複雑機構を宿す器ともなった。
素材においても、最初のステンレススティールから始まり、ゴールド、プラチナ、タンタル、チタン、さらにはブラックおよびホワイトセラミックへと、その装いを変えてきた。
しかしどれほど姿を変えようとも、そのたびに新たに生まれ変わるロイヤル オークは、このモデルの英雄的モノミスを強固なものとしてきたのである。それは単なる派生ではない。明確な目的と必然、そして唯一の存在として、常に再定義されてきたモデルなのである。
“ジャンボ”の歴史と復活——Ref.15202
〈ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン〉Ref.15202の物語は、オーデマ ピゲの当時のCEOであるフランソワ=アンリ・ベナミアスの歩みと切っても切り離せないものだ。
2012年にベナミアスがロイヤル オーク コレクションの再構築を決断し、その中で“ジャンボ”の位置づけを強化していなければ、現在のラグジュアリーウォッチ市場における驚異的な成功はなかっただろう。
ロレックスのスポーツモデルという、もはや独自の世界を形成しているカテゴリーを除けば、現在の高級時計において最も熱いジャンルは、統合型ブレスレットを備えた“ラグジュアリースポーツ”である。
このカテゴリーは、1972年にオーデマ ピゲとロイヤル オークによって生み出され、そして40年後の2012年、再びブランドの中核に据えられたのである。

▲ 1972年当時のロイヤル オークのオリジナルリーフレット。

▲ オーデマ ピゲの元CEO、フランソワ=アンリ・ベナミアス。

▲ 〈ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン〉Ref.15202は、ケース素材やダイヤルカラーに左右されない、ジェラルド・ジェンタによるオリジナルデザインの普遍性をあらためて証明した。
それから10年――ロイヤル オークはあまりにも成功を収めた。その結果、あらゆるリファレンスが、いずれもウェイティングリストに名を連ねなければ買うことができなくなった。さらに言えば、その需要の大きさは、かつて苦戦していた他ブランドまでも成功へと導くほどの影響力を持つに至った。
オーデマ ピゲのコレクターであり、2021年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)審査員を務めたアフメド・“シャリー”・ラーマンはこう語る。
「もし現代の時計業界における最も偉大なCEOに賞を与えるとしたら、多くの人が即座にフランソワ=アンリ・ベナミアスの名を挙げるでしょう。なぜなら彼はロイヤル オークを、この地球上で最も人気のある時計へと押し上げた人物だからです。同時に、セラミック製や極薄パーペチュアルカレンダー、ダブル バランスホイール、さらには41mmのトゥールビヨンに至るまで、コレクション全体を魅力的かつ現代的なものへと変えました。卓越したデザインと素材革新によって、すべてに強い存在意義を与えたのです」

▲ アフメド・ラーマン(通称シャリー)@time_mechanic
なぜロイヤル オークが拡大を続ける時計市場において最優先で“手に入れたい存在”となっているのだろうか?
ラーマンはこう洞察する。
「アメリカにおいて新たに富を得たコレクターが最初に思い浮かべる時計がロイヤル オークである理由は、ベナミアスが2000年代初頭、オーデマ ピゲ ノースアメリカのCEOとして行った数々の取り組みにあります。彼はこの時計を、有名なラッパーやアスリート、俳優たちの腕に乗せることで、消費者の潜在意識の中に刷り込んだのです。ある時期には、ファレルからジェイ・Zに至るまで、誰もがロイヤル オークを着けていました」

▲ 左:ジェイ・Z 右:ファレル・ウィリアムス。
オーデマ ピゲの当時のコンプリケーション部門責任者であるマイケル・フリードマンは、次のように語る。
「Ref.15202はブランドにとって大変大きな存在でした。他の多くのブランドならば、生産終了に踏み切ることをためらったはずです。しかし、私がフランソワを尊敬する点は、彼の恐れを知らぬ姿勢にあります。それこそがオーデマ ピゲ最大の強みでもあるのです。15202は、ジャンボという系譜の中にある旅の一部にすぎません。私たちは常に革新し、先駆者であることを恐れてこなかった。それは1972年、統合型ブレスレットのスポーツウォッチというカテゴリーそのものを創り出したときと同じ姿勢なのです」
実際、広く愛されたRef.15202の生産終了が昨年発表された際には、二次市場における価格はさらに高騰する結果となった。

▲ 〈ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン〉Ref.15202BC。
「当時は10万ドル前後で推移していましたが、生産終了が発表されるや否や20万ドルの壁を突破し、そのまま上昇し続けました」と語るのは、2021年GPHG審査員であり、中古時計ビジネスWristcheck.comの創業者でもあるオースティン・チューである。
これほどのアイコンを前にすれば、多くのブランドは後継モデルに対して強いプレッシャーを感じるはずだ。しかしオーデマ ピゲは、まるでその流れを楽しんでいるかのようだった。すでに完全に勢いに乗っていたのである。
最大評価を得た後継モデル—Ref.16202
そして2022年初頭、Ref.15202の後継機が発表されると、その反応は即座に、かつ満場一致で示された。Ref.16202は単なる後継機にとどまらず、これまでに製作された中で最も美しく仕上げられた、時分表示のみのロイヤル オークであると評価されたのである。

▲ Wristcheck.comの創業者、オースティン・チュー。
新作のケース径39mm、厚さ8.1mmという寸法は前作と完全に同じだったが、真の革新はその内部に収められたムーブメントにあった。
1972年の初代Ref.5402と同様、Ref.15202にはキャリバー2121が搭載されていたが、これは数十年にわたり改良を重ねてきたものであった。発表当時、このムーブメントはフルローター式自動巻きとして世界最薄を誇っていた。
その前身となるのが、1967年に登場した日付表示を持たないキャリバー2120である。このムーブメントは、ルクルト(後のジャガー・ルクルト)、オーデマ ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンの共同開発によるもので、ジャガー・ルクルトにおいてはキャリバー920の名で知られていた。
長らくムーブメントのブランク(素体)はジャガー・ルクルトによって製造されていたが、21世紀初頭にはオーデマ ピゲの自社工房へと移されている。
その完成度は素晴らしいものであった。特筆すべき技術のひとつが、ルビー製ローラーによって支持され、外周にベリリウム製リングを配した独自構造のローターである。またフリースプラングバランスを備え、半円状のウェイトによって慣性を調整可能とする点も特徴的であった。
しかしロイヤル オークの誕生50周年という節目において、大胆なチャレンジがなされたのである。

▲ 初代Ref.5402に搭載されたキャリバー2121は、長きにわたり、日付表示付きフルローター式自動巻きムーブメントとして世界最薄であった(3.05mm)。ローターに組み込まれたベリリウム製リングがルビー製ローラーの上を滑らかに回転する。
フリードマンはこう説明する。
「キャリバー2121の魅力的な“癖”のひとつが、セミクイックセットの日付機構です。日付を進めるには、分針を9時位置から12時を越えるまで進め、そこから再び戻す必要がある。この仕組みは、厚さわずか3.05mmというムーブメントにおいては、1972年当時としては極めて先進的なものでした。そしてそれによって、ケース厚わずか7mm強という時計を実現することができたのです。2000年にRef.15202を導入した際には、サファイアケースバックを採用したことで厚さは8.1mmへと増しました。そしてRef.16202では、この寸法を完全に維持しながら、まったく新しい現代的なムーブメントを導入することを目指しました」
では、Ref.16202に搭載された新キャリバー7121はどれほど優れているのか。まずパワーリザーブは従来の約40時間から55時間へとアップデートされている。振動数も、2121のやや特異な毎時1万9800振動から、耐衝撃性に優れた毎時2万8800振動へと向上した。
さらにフルサイズのローターは、高効率なセラミック製ボールベアリング上に搭載されている。そして重要なのは、日付がクイックセットに対応した点である。

▲ ロイヤル オーク誕生50周年を記念して、オーデマ ピゲは新たにRef.16202を発表した。新型かつ改良されたムーブメントを搭載しつつ、その本質を忠実に継承したモデルである。

▲ 新キャリバー7121は、これまで“ジャンボ”のすべての世代を支えてきたキャリバー2121に取って代わるものである。
しかしムーブメントの構造をよく見てほしい。フランソワ=アンリ・ベナミアスはこう語る。
「正面から見れば、すでに時計のデザインは完成していました。だから今度は、裏側から見ても同じようにアイコニックな存在にしたかったのです。そこでチームは、ダブル バランスホイールで用いられている、全体を横断するスケルトン仕様のバランスブリッジをムーブメントに取り入れるアイデアを考え出しました。これをフリースプラングバランスだけでなく、香箱にも応用することで、ふたつの特徴的なブリッジがひと目でわかるようにしたのです。さらにそれらをピンクゴールド調に仕上げることで、時計を裏返した瞬間に、まず視線がそこへ引き寄せられるようにしました」

▲ 性能と美観の双方を高い次元で両立したキャリバー7121は、より長いパワーリザーブと高い振動数を実現しながらも薄型を維持している。香箱とテンプそれぞれに配されたふたつの対称的なブリッジが美しい。
2021年GPHG審査員のロイ・ダヴィドフは、このモデルについて次のように語る。
「新しいRef.16202には、腕に載せた瞬間に思わず『これはすごい』と口にしてしまう何かがあります。実物の存在感がとにかく圧倒的なのです。実際に間近で見たすべてのコレクターが同じ反応を示しています。Ref.15202をこれ以上良くすることは不可能だと思われていましたが、オーデマ ピゲはそれを成し遂げました。新しいムーブメントを見れば、その進化は決定的です」
Ref.16202は4つのバリエーションで登場した。シグネチャーである“ナイトブルー、クラウド50”カラーのプチタペストリーダイヤルを備えたステンレススティールモデル、スモークグレー文字盤のピンクゴールドモデル、スモーク調ゴールドカラーの文字盤を持つイエローゴールドモデル、そしてスモークグリーン文字盤のプラチナモデルである。さらに、オープンワーク仕様も2種が用意されている。
総じてRef.16202は、2000年に登場したRef.15202の理想的な進化形と言えるだろう。そしてこの両者のあいだの期間は、オーデマ ピゲのみならず時計業界全体にとっても、重要な時代として記憶されるに違いない。
では、このロイヤル オークという“英雄”を形作る他のモデルにも目を向けてみよう。
ミドルサイズの傑作たち
ロイヤル オークの初代ジャンボが直径39mm、厚さわずか7.2mmという現代の感覚でいえば“小ぶり”なプロポーションを備えていたにもかかわらず、その愛称が示す通り、当時としては大きく感じられた。
誕生から半世紀を経た現在では、この39mmというサイズは完璧なバランスとして評価されているが、1970年代後半から90年代にかけては、より小径の時計が主流であった。
幸いにも、当時のオーデマ ピゲにはジャクリーヌ・ディミエというクリエイティブディレクターがいた。
1976年、彼女は既成概念にとらわれることなく、新たな解釈として〈ロイヤル オーク II〉Ref.8638を発表する。ケース径はわずか29mmで、これは初のレディス仕様のロイヤル オークであった。
さらに1977年には、〈ロイヤル オーク III〉Ref.4100を創出する。ケース径35mmのこのモデルは、Ref.5402が持つ彫刻的ともいえる造形美を継承しつつ、それをよりコンパクトなサイズにしたものである。
マイケル・フリードマンは次のように語る。
「Ref.4100およびそれに続く“ミドルサイズ”のロイヤル オークは、あらゆる点でロイヤル オークであり、デザイン的にも完璧です。ジェラルド・ジェンタが思い描いた力強い造形をしっかりと受け継ぎつつ、それをより小さく、より多様な手首にフィットする形にしているのです。私はこれらのモデルが昔から大好きです。ジャクリーヌ・ディミエによる素材革新や大胆なカラーは、オーデマ ピゲの卓越したクリエイティビティを示しています」

▲ ケース径35mmの〈ロイヤル オーク III〉Ref.4100は、伝説的なオリジナルのデザインコードを損なうことなく、見事にダウンサイジングを実現している。
4100モデルは、センターセコンド針を備えている点によって5402と明確に区別される。そのデザインは非常に完成度が高く、まるでオリジナルと並行して開発されたかのような自然さである。
ディミエのデザインは、攻撃的で筋肉質とも言える存在感と、横から見たときのプリマ・バレリーナのような軽やかさという、相反する要素を見事に共存させている点にある。
キャリバー2123について簡潔に触れておこう。このムーブメントは1977年に登場し、毎時28,800振動(4Hz)という、2121の毎時18,000振動(2.5Hz)に比べて現代的で耐衝撃性にも優れた振動数を採用している。直径は2121より2mm小さく、センターセコンドを追加しながらも厚さはわずか0.2mm増に抑えられている。
1977年から1984年の間に約9,000個弱が製造された。ミドルサイズのセンターセコンド仕様ロイヤル オークの人気の高さを物語っている。
フリードマンは次のように語る。
「4100は、オーデマ ピゲが時代の文化的嗜好に敏感であったことを示しています。このモデルによって、ロイヤル オークの魅力はより広い層へと届けられました。ロイヤル オーク オフショアとの間にも興味深い共通点があります。後者はロイヤル オークの意匠を全く異なる方向へ押し広げましたが、いずれも時代の空気を的確に捉える社の姿勢を示しています」
これに対しベナミアスはこう補足する。
「これは決してトレンドへの追随ではありません。むしろ革新においてリーダーであろうとする、オーデマ ピゲの勇気の表れなのです」
さらにラーマンはこう述べる。
「今日、一体型ブレスレットのスポーツウォッチが最も人気のあるカテゴリーだとするならば、その原点は1972年にロイヤル オークによって創出されたジャンルにあります。この時計を所有するということは、“最初の一本”を手にすることに等しい。アルファであり、プリマであり、すべての始まりなのです」
オーデマ ピゲの創造性は、ミドルサイズのロイヤル オークにおいても遺憾なく発揮された。1982年にはクォーツの56023、1983年には4332とデイデイトの25572、1984年にはムーンフェイズ付きデイデイトの25594、1986年にはねじ込み式リュウズを備えた14486、1990年には美しい14700が次々と発表されている。
そして1992年、直径36mmのミドルサイズ14790が登場する。これは現代時計史における重要なモデルのひとつであり、1992年から2005年まで実に13年間も生産が続いたロングセラーである。
少なくとも10種類の素材と多彩なダイアルバリエーションが存在し、スティールとタンタルのコンビ仕様や、イエロー、レッド、そしてイヴ・クライン・ブルーといった鮮烈なカラーダイアルも展開された。これらは2022年5月6日にフィリップスで開催されたロイヤル オーク50周年オークションでも紹介されている。
その結果からも明らかなように、ミドルサイズのロイヤル オークのコレクタビリティは、現在著しく高まりつつある。

▲ 1982年に制作された、女性向けに訴求したミドルサイズのロイヤル オークの広告。

▲ 1990年登場の36mm〈ロイヤル オーク〉Ref.14700と、13年間(1992〜2005年)展開された後継Ref.14790。
フリードマンはこう語る。
「異なる金属の組み合わせ、ジェムセットのダイヤル、そして鮮やかな色彩の数々――14790は、オーデマ ピゲの最高のキャンバスであり、時代を先取りした時計を数多く生み出しました」
こうした背景から、14790は現在、3つの異なるダイアルタイプに分類されており、とりわけ初期シリーズが最も高い価値を持つとされている。
14790についてさらに詳しく知りたい方には、ラッセル・シェルドレイクがA Collected Man.comに寄稿した記事をぜひ参照してほしい。
オーデマ ピゲはその後もミドルサイズの系譜を継承し、2012年には、直径37mm、厚さ9.8mmのRef.15450を展開した。このモデルには、自社製キャリバー3120が搭載されている。毎時21,600振動(3Hz)、パワーリザーブ約60時間を誇る自動巻きセンターセコンドムーブメントである。41mmの兄弟モデルRef.15400も同時に発表された。
大型モデルは2019年にRef.15500へと更新された一方で、15450は長らく継続され、その普遍的な魅力を証明してきた。そして本年、厚さ8.9mmへと薄型化されたRef.15550へとバトンが引き継がれる。こちらには、新型の自動巻きムーブメント、キャリバー5900が搭載され、毎時28,800振動(4Hz)、約60時間のパワーリザーブを備える。
重要なRef.15400および15450の登場は、同時に新たな15202の発表とも重なっている。15202が39mmであったことから、オーデマ ピゲはセンターセコンドとクイックセットデイトを備えた自社製キャリバー3120搭載モデルを、より明確に差別化する必要があった。
その結果、39mmのRef.15300は生産終了となり、代わって41mmと37mmのモデルが導入された。特に後者は、ミドルサイズのロイヤル オークが再びラインナップに復活したことを意味する点で重要である。
興味深いことに、21世紀初頭の過度に大型化したケースサイズの流行を経て、現在では再びクラシックなプロポーションへと嗜好が回帰している。その流れの中で、15450は新たな世代の顧客から強い支持を集めている。
デザイン面で特筆すべきは、12時位置にダブルバトンインデックスが復活したことである。14790や15300ではAPロゴが配されていたが、このダブルバトンインデックスにより、ミドルサイズモデルはオリジナルのロイヤル オーク、さらには15202、そして現在の16202とダイアルデザインの整合性を取り戻したのである。

▲ 〈ロイヤル オーク オートマティック〉37mm Ref.15450と33mm Ref.67651のイエローゴールド仕様。
複雑時計を続々リリース
1997年は、ロイヤル オークにとって記念すべき年であった。誕生25周年を迎えたこのモデルは、バリエーションとして、いくつもの複雑時計を発表したのである。
なかでも特筆すべきは、ロイヤル オークとして初のトゥールビヨン、そしてパーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、スプリットセコンド クロノグラフを備えた〈ロイヤル オーク グランドコンプリケーション〉であった。これらによって、複雑機構の分野で、オーデマ ピゲの存在感はいっそう高まった。
大きな原因となったのが、1992年にオーデマ ピゲがルノー・エ・パピの株式52%を取得したことである。現在、この工房はオーデマ ピゲの完全子会社となっている。
ルノー・エ・パピは、天才時計師ジュリオ・パピとドミニク・ルノーによって創設された複雑機構専門の工房であり、ふたりはともにオーデマ ピゲでキャリア初期を過ごすなかで出会った。1980年代末から1990年代初頭において、複雑機構復興の流れを牽引していたのは、このふたりの時計師であった。
ジュリオ・パピのよく知られた才能は、チャイム機構を自在に扱う手腕である。彼は自身のマニュファクチュールとともに、グランドソヌリとプチソヌリの両方を備えたムーブメントを作り上げた。これは腕時計用としては、史上3例目であった。
今日においてもジュリオは他ブランド向けムーブメントの開発を続けており、時計史に輝く数々の名機の背後には、しばしば彼の存在がある。
例えば、彼のラトラパンテへの執着は、リシャール・ミルの代表作である〈RM 004〉スプリットセコンド クロノグラフ、そしてそこにトゥールビヨンを加えた〈RM 008〉に結実している。

▲ ロイヤル オーク誕生25周年を記念して1997年に発表されたRef.25831は、ロイヤル オーク初のトゥールビヨンであり、さらにリューズをケースバック側に配置した唯一のロイヤル オークである。
初代ロイヤル オーク グランドコンプリケーションは、ふたつの要素の融合である。すなわち、創業以来オーデマ ピゲが築いてきたカレンダーおよびチャイムウォッチの伝統と、オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ(APRP)の持つ現代的な複雑機構の技術である。
誕生から25年間にわたり、このグランドコンプリケーションは常にロイヤル オークのひとつの到達点、いわば究極形として位置づけられてきた。1972年にすべての始まりとなったシンプルな時刻と日付のみの初代モデルとは、対極にある存在であった。

▲ 1997年にオーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ(APRP)によって製作された〈ロイヤル オーク グランドコンプリケーション〉Ref.25865。
このグランドコンプリケーションは、デザイン的にも卓越しており、オーデマ ピゲの多くのモデルにインスピレーションを与えてきた。
例えば、週番号表示は1995年にアップデートされたロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーに取り入れられ、ダイヤル外周のスケールを中央の針で指し示す方式として表現された。
アイコニックデザインは、1997年の25周年に登場したロイヤル オーク クロノグラフや、革新的なミニッツリピーターである現行のロイヤル オーク スーパーソヌリのデザインにも受け継がれている。
このグランドコンプリケーションは、648個の部品から成る仕上げと技術的エスプリに満ちた傑作であり、組み立てと装飾には6〜8カ月を要する。
モデルは、有名なプチ・タペストリー模様のダイヤルと、オーデマ ピゲの歴史における特別な機会を記念して製作された、極めて完成度の高いオープンワーク仕様の両方で展開されてきた。
現行コレクションでは、ステンレススティール製のオープンワークモデルがラインナップされており、ロイヤル オークらしく直径44mm、厚さ15mmというサイズながら、驚くほど高い装着性を実現している。

▲ 2009年に発表されたロイヤル オーク グランドコンプリケーションのオープンワーク仕様。Ref.26065。
2019年に発表された〈ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ〉は、卓越した音響増幅技術とミニッツリピーターを、アイコニックなケースに収めたモデルである。この技術はもともと2015年、ロイヤル オーク コンセプト コレクションにおいて初めて導入されたものだ。
その結果生まれたのは、音響的にも視覚的にも完璧なタイムピースであった。
ベナミアスはこう語る。
「スーパーソヌリは、常に革新を追い求める姿勢から生まれたものです。今回は、世界最高の音を奏でるチャイミングウォッチを創り出すことに挑みました」

▲ 〈ロイヤル オーク ミニッツリピーター スーパーソヌリ〉Ref.26591は、ゴングの音響性能を高める特許技術を搭載している。
フリードマンはさらにこう説明する。
「スーパーソヌリは、我々の音響研究チームの成果として生まれました。音そのものの本質を探求するため、オーデマ ピゲとスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)との共同研究により、8年の歳月をかけて開発されたのです。この時計は二重構造のケースバックを備えています。第一層は“レゾネーティング・メンブレン(共鳴膜)”と呼ばれるもので、チタン製で、ここに円形のゴングが取り付けられています。これはいわばサウンドボードとして機能し、ゴングの音を大きく増幅します。さらに、音を外へ逃がすためのスリットを備えた第二のケースバックがあり、この共鳴膜と外側ケースバックの間の空間が、共鳴室の役割を果たしているのです」

▲ 外周に開口部を設けたケースバックがサウンドボードの上に配され、音がケース外へ放出される仕組みとなっている。
2015年、スーパーソヌリ技術を搭載した実験機〈RD#1〉の音を聴くために部屋へ通されたときのことは、今でも鮮明に覚えている。小さな防音室の扉が閉められ、時計が鳴らされた。
その音はまるで高品質なスピーカーが周囲のあらゆる方向から音を放っているかのように感じられた。それほどまでにスーパーソヌリの音量は圧倒的だったのである。
驚くべきは音の質であった。これはオーデマ ピゲが自社内で培ってきた卓越したストライキング機構の証左であった。
当初のRD#1は、ロイヤル オーク コンセプトのケースにトゥールビヨンとクロノグラフを備えたムーブメントを搭載していたが、その4年後、スーパーソヌリの技術はロイヤル オークのケースへと移植されることとなった。

▲ 2015年に発表され、スーパーソヌリを初めて導入した〈ロイヤル オーク コンセプト スーパーソヌリ (RD#1)〉
スーパーソヌリにとってロイヤル オークが理想的な“住処”であるとするのは、極めて妥当だと思う。直径42mm、厚さわずか14mmというサイズは装着性に優れている。佇まいは控えめでありながら抜群にクールだ。
実際、多くの人はこれを41mmのRef.15500と見間違えるだろう。違いといえば、6時位置のスモールセコンドとケース側面のリピータースライドくらいだが、それらも注意深く見なければ気づかない。
しかし、リピータースライドを押した瞬間、周囲の空気は一変する。人々は足を止め、子どもたちは息をのみ、小さな犬でさえ動きを止める――スーパーソヌリが奏でるのは、まさに“音の錬金術”と呼ぶべきものなのだ。
ベナミアスにとって、そこにこそ、このモデルの真価がある。
「非常に装着しやすく、しかも控えめであるため、究極のミニッツリピーターを腕にしていることを知っているのは自分だけです。そして、それをいつ鳴らすか、決めるのも自分です。ふさわしいと思う相手とその体験を共有することもできるし、自分だけのものとして楽しむこともできる。ロイヤル オークのコンプリケーションは、常にエレガントなのです」
トゥールビヨン・モデル
ロイヤル オークのケースが、やがてトゥールビヨンと不可分の関係になることは、必然であったように思える。というのも、オーデマ ピゲこそが1986年、世界で初めて量産型の腕時計用トゥールビヨンを世に送り出したブランドだからだ。
この時計は技術的観点から見て、現代時計史における最も重要な成果のひとつであった。当時、世界最小・最薄の自動巻きトゥールビヨンであり、ケースバックをムーブメントの地板として機能させるという革新的な設計によって薄型化を実現していた。
このため、ムーブメントの受石はケースバック側から視認することができる。また、チタン製ケージを採用した初のトゥールビヨンであり、巻き上げ機構にはハンマー形状の回転錘が用いられていた。
それから11年後、このトゥールビヨン機構はロイヤル オークへと搭載されることになる。そのデザインはまるで、トゥールビヨンとケースが最初から一体で設計されたかのような完成度だった。
フリードマンはこう語る。
「1997年はオーデマ ピゲにとって驚異的な年でした。当時、私はペンシルベニア州コロンビアの国立時計博物館のキュレーターとして働いており、この年に初めて“リアルタイム”でオーデマ ピゲに関心を抱くようになったのです。1997年には初のロイヤル オーク トゥールビヨンRef.25831が登場しましたが、これは裏蓋側にリューズを備えた唯一のロイヤル オークとして今なお特別な存在です。この時計は、その後の二つの重要モデルへの道を開きました。ひとつは2012年に登場した41mmのトゥールビヨン エクストラ シン。そしてもうひとつが、2022年に発表されたセルフワインディング フライング トゥールビヨン エクストラ シン RD#3です」
ロイヤル オーク誕生50周年を飾るにふさわしい成果として登場した〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン エクストラ シン〉(RD#3)は、時刻・日付表示モデルであるRef.16202とまったく同じ寸法、すなわち直径39mm、厚さ8.1mmというサイズに収められている。
このRD#3は、オーデマ ピゲがキャリバー7121を開発したのと同時期に設計されたことは明らかであり、その基本構成も共通している。
香箱ブリッジには同様の手仕上げによる面取りが施されている。トゥールビヨンをよく見ると、6つの小さな調整用ウェイトをリムに一体化した、独特な形状のフリースプラングテンプが確認できるだろう。細部ではあるが重要な点として、このテンプはスティールケースに合わせた色調となっており、Ref.16202のローズゴールドカラーとは異なる。
さらに薄型化を図るため、トゥールビヨンにはフラットヒゲゼンマイが採用されている。また、通常のように三番車でケージのピニオンを駆動するのではなく、高さを抑えるため側面から駆動する“ペリフェラルドライブ”が用いられている。
このRD#3のフライング トゥールビヨン キャリバーは、9月に発表された37mmのミドルサイズモデルにも搭載されている。
RD#3は、ロイヤル オーク40周年を記念して登場し、オリジナルのRef.5402に匹敵するアイコンとなった〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン エクストラ シン〉なくしては実現し得なかっただろう。まるで初代ロイヤル オークの時点から構想されていたかのように、トゥールビヨンはその造形美の中に完璧に溶け込んでいる。
これは、トゥールビヨンの配置における繊細なバランス感覚によるものだ。この開口部は、他の多くのトゥールビヨンとは異なり、ケージ径よりも大きく設けられており、軽やかさと透明感を演出している。
さらに、この開口部がロイヤル オーク特有のバトン型針を支えるキャノンピニオンに極めて近接している点にも注目したい。視覚的なトリックとして、トゥールビヨンブリッジが三番車の外周を覆い隠しており、どのように動力が伝達されているのか一瞬考え込んでしまう。
同時に、そのデザインにはどこか禅的ともいえる。圧倒的な技術力を内包しながら、佇まいは静謐なのである。
ラーマンはこう述べる。
「私にとってロイヤル オークのトゥールビヨンは、必要なものだけを見せることで内部の動きを理解させる、“複雑機構のエレガンス”を体現しています」
細部に目を凝らせば、緻密に計算されたディテールの数々が見えてくる。
スロット付きのネジを備えたトゥールビヨンブリッジは、ベゼル上の象徴的なビスへのオマージュであり、毎分1回転するケージを支えている。この回転によって、テンプ、ヒゲゼンマイ、脱進機に作用する重力誤差が平均化されるのである。

▲ 〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン エクストラ シン(RD#3)〉Ref.26670。

▲ 本モデルのために特別に開発された優れたキャリバー2968を搭載し、ケースはRef.15202および16202と同一の寸法を維持している。

▲ トゥールビヨンの厚みを抑えるため、従来のようにケージ下のピニオンではなく、外周側から駆動する方式が採用されている。
2019年、オーデマ ピゲはロイヤル オーク フライング トゥールビヨン エクストラ シンの中でも屈指の完成度を誇るモデル、Ref.26522CEを発表した。
魅惑的なオールブラック セラミック仕様である。このモデルは、オーデマ ピゲの歴史においてわずか3例目となるオールブラック セラミックのロイヤル オークであり、そのデザインが、ブラックカラーとも相性がいいことを証明してみせた。
それに伴い、ロイヤル オークの象徴であるタペストリー模様は“タペストリー エヴォルティブ”へと再構築され、トゥールビヨン開口部から放射状に広がり、ダイヤル外周に向かって次第にそのサイズを拡大していくデザインとなった。

▲ 〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン〉ブラックセラミック・モデル Ref.26522CE。
ラーマンはこう付け加える。
「この限定モデルは、オーデマ ピゲが最後に参加したウォッチズ&ワンダーズにおいて、いわばステルス的に発表されたもので、会場にいたすべてのコレクターがその実物を一目見ようと熱望していました。セラミック製パーペチュアルカレンダーがその複雑機構を現代性の象徴へと変貌させたのと同様に、このトゥールビヨンもまたロイヤル オーク フライング トゥールビヨンを新たな次元へと引き上げ、進化させたのです」
これは2020年、2021年に登場する、エヴォルティブタペストリーダイヤルのトゥールビヨンのバリエーションモデルへとつながった。
そのひとつがRef.26532ICである。オーデマ ピゲが生み出した時計の中でも屈指の美しさを誇るこのモデルは、チタン製ケースに、バゲットカットのエメラルドをセッティングしたホワイトゴールド製ベゼル、さらに放射状のギヨシェパターンを備えたグリーンのダイヤルが組み合わされている。
その効果は、複雑さと華やかさが織りなす視覚的オペラともいうべきものだ。
重要なのは、この時計がフライング トゥールビヨンと自動巻き機構の双方を備えている点である。
ロイヤル オークのトゥールビヨンにはケース厚8.95mmの手巻きと、ケース厚10.7mmの自動巻きというふたつの系譜が並び立つこととなった。いずれも防水性能は50メートルを確保している。
自動巻きフライング トゥールビヨン ムーブメントであるキャリバー2950は、2019年に〈CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ〉コレクションの自動巻きフライング トゥールビヨンとして初めて導入され、その後2020年にロイヤル オークへ搭載された。

▲ チタン製ケースに、バゲットカットのエメラルドをセッティングしたホワイトゴールド製ベゼル、そしてグリーンのダイヤルを組み合わせた〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン〉Ref.26532IC。

▲ キャリバー2950の表裏。モーションワークがムーブメント中央軸の上方に配置されている点に注目したい。これにより、6時位置のトゥールビヨンケージの視界を遮る歯車が存在しない構造となっている。
クロノグラフ・モデル
不思議なもので、ロイヤル オークと聞いてまず思い浮かぶモデルは、必ずしもクロノグラフではない。だが私にとって、それは“ジェントルマンのための計時時計”なのである。
ロイヤル オーク クロノグラフは、1997年、ロイヤル オーク誕生25周年を記念して登場した。このモデルのデザインは実に巧みである
ロイヤル オークの象徴的な造形に、単純にプッシャーをふたつ追加するだけではなく、ベゼルの八角形フォルムを反復させ、全体の意匠を統一したのだ。
1997年以降、ロイヤル オーク クロノグラフは多彩なバリエーションで展開されてきた。当初はフレデリック・ピゲ製の超薄型コラムホイール式・垂直クラッチのムーブメントを搭載していたが、2021年には自社製キャリバー4401へと刷新されている。ケースサイズも41mmおよび38mmが用意されている。

▲ 左:1997年に発表された初代〈ロイヤル オーク クロノグラフ〉Ref.25860。 右:自社製自動巻きキャリバー4401を搭載するRef.26240。
ハイコンセプト
私が、オーデマ ピゲは時代の空気を恐れずに取り込み、業界のどこよりも大胆な時計を生み出してきたブランドだと語るとき、その証拠として、しばしば二つのモデルを引き合いに出す。
そのひとつが、エマニュエル・ギュエの手によって1993年に誕生した〈ロイヤル オーク オフショア〉だ。まるでロイヤル オークに成長ホルモンを注入し、ウエイトトレーニングで鍛え上げ、凄みのあるファイターへと変貌させたような時計である。
オフショアの意義は、このモデルがラグジュアリーウォッチの世界における、オーバーサイズ・スポーツウォッチの先駆けだったことにある。そして、続く10年のあいだ、あらゆるブランドが同じ道を辿ることになった。
この原稿にオフショアがあまり出てこないことに気づくかもしれないが、それには理由がある。私が愛してやまない、愛称“ビースト”で知られるこの時計については、いずれ単独で、ひとつの記事として大きく取り上げるつもりだからだ。

▲ 1993年、エマニュエル・ギュエによるオフショアラインの最初の一本〈ロイヤル オーク オフショア〉Ref. 25721STがリリースされた。42mmケースによってサイズの壁を打ち破り、真にオーバーサイズなラグジュアリー・スポーツウォッチの先駆けとなった。ダイヤルはオリジナルのロイヤル オークを想起させるブルーのタペストリー模様となっている。
もうひとつ、オーデマ ピゲが他のブランドをはるかに凌駕していたことを示す時計が、2002年に誕生した〈ロイヤル オーク コンセプト〉である。
その外観は、まるで100年後の未来からタイムトラベラーが持ち帰ってきたかのようで、あまりにも大胆で未来的であった。
このモデルはクロード・エメネッガーによってデザインされ、ロイヤル オーク誕生30周年を記念して製作された。軽量で耐腐食性に優れるコバルト系合金“アラクリット”を用いたケースは、より彫刻的かつ多面体的な造形である。
コンセプトは、リューズ下の右下位置にギアインジケーターを備え、巻き上げ、時刻合わせ、ニュートラルの各ポジションを表示する。さらにリニア式のパワーリザーブ表示を採用し、オーデマ ピゲが“ダイナモグラフ”と名付けた、主ゼンマイのトルクレベルを示す機構も搭載した。
トゥールビヨンは、くねくねと曲がったバネ状のブリッジに取り付けられている。これはショックアブソーバーとして機能するという。

▲ 2002年の〈ロイヤル オーク コンセプト〉は、独自のショックアブソーバー機構を備えたトゥールビヨンブリッジに加え、リニア式パワーリザーブインジケーター、そして主ゼンマイのトルクレベルを表示するダイナモグラフを搭載していた。
フリードマンはこう説明する。
「“コンセプト”という名称は意図的なものです。これは従来の時計製造の枠外に位置づけられる時計でした。新しいミレニアムに向けて、時計という概念そのものを押し広げるために、まったく新しい美学を打ち立てることが目的でした。もはや従来の意味でのケース、ムーブメント、ダイヤルという区分けは存在せず、後者の二つはひとつに融合しています。これは伝統的な時計製造と、時計を再創造する新たな発想の結晶なのです」
コンセプトはその後も、オーデマ ピゲの最先端技術を体現し続けた。2008年には、フォージドカーボン製ケースとセラミックベゼルを備えた〈ロイヤル オーク コンセプト カーボン〉が登場。2011年には〈ロイヤル オーク コンセプト フライング トゥールビヨン GMT〉が発表される。
そして2015年、オーデマ ピゲはこれまでで最も革新的な時計のひとつを世に送り出した。〈ロイヤル オーク コンセプト ラップタイマー ミハエル・シューマッハ〉である。
オースティン・チューは語る。
「ロイヤル オーク コンセプト ラップタイマー ミハエル・シューマッハが、市場でそれほどプレミアムがついていない唯一の理由は、それを目にした人の99%が、その仕組みをいまだに理解していないからです」
ラップタイマーは、F1ドライバー、ミハエル・シューマッハの要望によって2010年代初頭に開発された、交互ラップ計測を可能にした初のクロノグラフである。
つまり、2本のクロノグラフ針が同時に動作する構造を持つ。9時位置のボタンを押すと、一方の針が停止し、もう一方はゼロ位置にリセットされて新たなラップの計測を開始する。再びボタンを押すと両者の役割が入れ替わり、新たに動いていた針が停止し、先に停止していた針がゼロに戻って次のラップを記録し始めるのである。

▲ 2015年の〈ロイヤル オーク コンセプト ラップタイマー ミハエル・シューマッハ〉は、連続するラップタイムを交互に計測できる、世界初のクロノグラフであった。
フリードマンはこう語る。
「ロイヤル オーク コンセプトは、私たちが大胆に限界へ挑むための時計です。同じ年には、有名なスーパーソヌリが初めて登場しましたが、それもコンセプトケースでのことでした」
2018年には、コンセプトはオーデマ ピゲ初のフライング トゥールビヨンの舞台となり、さらに2021年には、マーベル・コミックスとの初のコラボレーションとして、42mmケースを採用した〈ロイヤル オーク コンセプト フライング トゥールビヨン “ブラックパンサー”〉が誕生した。

▲ 露出したラバー製ガスケットと、ラバーで覆われたクロノグラフプッシャーを備えた〈ロイヤル オーク オフショア〉は、ラグジュアリーウォッチにおける実験性に前例のない地平を切り拓き、やがて現代時計史において最も影響力のあるモデルのひとつへと成長した。
ダブル バランスホイール
フランソワ-アンリ・ベナミアスが最も笑顔を見せるのは〈ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク〉についての話である。
彼は微笑みながらこう振り返る。
「ダブル バランスホイール オープンワークは、1978年に起きた出来事とよく似ているんです。ロシャ、ゴレイ、ベルネイという三人が、世界最薄の自動巻き永久カレンダーを生み出し、それを当時のボス、ジョルジュ・ゴレイに見せました。彼はそれを量産化し、結果として時計史上でも屈指の成功作となりました。それと同じように、ある日私がミーティングに出ていたとき、一人の腕に着けられている時計に目が留まったんです。『それ、見せてくれる?』と聞くと、彼は少し緊張した様子で『ボス、実はこれ、“私たち”があなたにご相談したいものなんです』と答えました。『“私たち”って誰?』と聞くと、なんとマニュファクチュールの10人が同じ時計を着けているのです。見てすぐに、39mmの自動巻きオープンワークの後継機で、41mmケースに自社製ムーブメントCal.3120を搭載しているとわかりました。そして、さらに興味深い点に気づきました。ふたつのテンプがあり、それぞれにヒゲゼンマイが取り付けられ、互いに逆方向に配置されていたのです。これによって、より高いクロノメトリー性能を実現できると彼は説明しました。私は言いました。『つまり、私もマーケティングも製造部門も頼んでいない時計を、君たちは勝手に作ったということか?』と。彼は不安そうにうなずきました。そこで私は聞いたのです。『これを量産できるのか?』『信頼性はあるのか?』『本当に性能向上につながっているのか?』。すると、すべての質問に彼は頷いたのです。なので私は言いました。『よし、これを製品化しよう』と」
オーデマ ピゲが、互いに反対方向に配置した二つのヒゲゼンマイによって同心円状に整ったの振動を促す試みは、“オーデマ ピゲ エスケープメント”にまで遡る。
これは1791年にロベール・ロバンが考案した脱進機に着想を得た6Hzのダイレクトインパルス脱進機と組み合わされ、〈ジュール オーデマ クロノメーター オーデマ ピゲ エスケープメント〉などで優れた成果を示している。
フリードマンはこう説明する。
「それらの時計は少量生産で、作業の多くは二つのヒゲゼンマイを備えたテンプの調整に費やされていました。しかしダブル バランスホイールの開発に取り組む中で、チームは、それぞれ独立したヒゲゼンマイを持つ二つのテンプを個別に調整するほうが、むしろ合理的だと気づいたのです。彼らはこの革新を、極めて信頼性の高い自動巻きムーブメントCal.3120のオープンワーク仕様に組み込みました。その結果は驚くべきもので、こうしてダブル バランスホイールが誕生したのです。さらに素晴らしいのは、3120をベースとしたことで、41mmだけでなく37mmでも展開できた点です。これにより、ロイヤル オークにおけるミドルサイズのコンプリケーションの新たな可能性が切り拓かれました。私たちはこの時計を、実に多彩なバリエーションで展開してきました」

▲ 2009年の〈ジュール オーデマ オーデマ ピゲ クロノメーター〉は、6Hzという高振動数と90時間のロングパワーリザーブという、極めて稀有な組み合わせを実現したモデルである。

▲ 高効率なダイレクトインパルス式のオーデマ ピゲ エスケープメントを搭載。ケースバック側からは並列配置のツインバレルが視認できる。
初代〈ロイヤル オーク ダブル バランスホイール〉は2016年に発表された。この驚異的な時計は、単一の輪列と単一の脱進機を備えながら、テンプを同軸上に重ねて配置し、それらを一つの脱進機で制御するという構造によって、瞬く間に時計界の注目を集めた。
しかし、このモデルの魅力は卓越した技術的達成にとどまらない。その佇まいそのものが、圧倒的な美しさを放っていたのである。
その美観を決定づける重要な要素のひとつが、オープンワーク仕様の金メッキが施されたバランスブリッジだ。この意匠はあまりに象徴的な存在となり、Ref.16202に搭載される新型キャリバー7121のバランスブリッジおよび香箱ブリッジ、さらにはRD#3に採用されたキャリバー2968の設計にもインスピレーションを与えている。

▲ 2016年に発表された〈ロイヤル オーク ダブル バランスホイール オープンワーク〉は、クラシックなロイヤル オークのケースに、極めて異彩を放つ機械構造を備えたムーブメントを収めている。

▲ キャリバー3132の表裏。単一の軸に2つのテンプを取り付けることで慣性が高まり、衝撃に対する安定性が向上する。同時に、それぞれのヒゲゼンマイは互いに逆方向に巻き上がり、ほどけることで、歩度のばらつきを打ち消す。
ベナミアスはこう語る。
「チームの中に、こんなふうに革新しようという強い意志があることが、私はとても嬉しかったのです。それこそが、オーデマ ピゲがこれまで恐れずに挑戦を続け、業界をリードしてきた理由でもあります。私たちの最大の強みは、他社に左右されることなく、自分たちの意思で前に進んでいけることにあります。この姿勢は、1875年の創業以来ずっと変わっていません。1972年のロイヤル オークはその象徴ですし、1978年の永久カレンダー、1993年のロイヤル オーク オフショアも、すべて同じ精神から生まれています。そしてその精神は、今もなお受け継がれているのです」
パーペチュアル・カレンダー
私がオーデマ ピゲの永久カレンダーについて書いた際、高級時計界の“三大巨頭”を次のように表現したことがある。
「パテック フィリップは優等生、いわばフルブライト奨学生。ヴァシュロン・コンスタンタンは、鋭い知性を持つ名人。そしてオーデマ ピゲは、奔放で恐れを知らず、反骨精神にあふれながら、最も他者を惹きつける人」である。
別の言い方をしよう。パテックやヴァシュロンの永久カレンダーを身に着けている人物を見れば、揺るぎない審美眼を持つ人だと感じるだろう。では、〈ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー〉を着けている人物はどうか。間違いなく、その場でいちばんクールな人物である。
ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーは、知的なコンプリケーションである永久カレンダーを、抗いがたい魅力を持つ圧倒的な存在へと変えてしまう。
しかしまずは1984年に立ち返ろう。世界最薄の自動巻き永久カレンダーと、世界初のラグジュアリー・スポーツウォッチ(一体型ブレスレットを備えたモデル)の出会いは、まるでロミオとジュリエットのように運命づけられていた。
この融合から生まれた時計は、デザインと人間工学の両面において傑作であった。
直径39mmというサイズは、抜群の装着感をもたらした。さらに、プールサイドでくつろぐときに着ける時計に複雑機構を搭載するという発想自体が天才的であった。
スタイル、存在感、躍動感……、どんな言葉で表現しようとも、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーは誕生当初からそれらすべてを備えていたのである。
2015年、ベナミアスがオーデマ ピゲのトップに就任してから3年後、このモデルを刷新したいと考えた。そして、41mmケースへとサイズアップし、新たに週番号表示を加えたモデルを登場させた。注目すべきは、複雑機構を追加しながらも厚さはわずか0.2mm増にとどまり、9.5mmという薄さを維持した点だ。
しかし彼の構想は、そこにとどまらなかった。2年後、Ref.26579CE、全面セラミックケースを採用した史上初のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーを発表し、“インターネット・ブレイク”という現象が起こった。
発表と同時に画像はネットやSNSを席巻し、熱狂的な需要を生み出したのだ。その結果、この時計は二次市場で異常な高値で取引されるようになった。
それは現代時計市場における最初の“ユニコーン”であり、他の主要なオーデマ ピゲのモデル、さらには他ブランドの時計価格高騰の流れすら生み出すきっかけとなったのである。
現在でもこのモデルは定価の約4倍で取引されており、オープンワーク仕様やホワイトセラミック仕様はさらに高値を付けている。
だがオーデマ ピゲは、“グレイルウォッチ(究極の一本)”を生み出すだけでは満足しなかった。2018年、当時世界最薄の自動巻き永久カレンダーであった〈RD#2〉の市販モデルを発表し、再び時計界を驚愕させたのである。

▲ 1984年に発表された初代ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーRef.5554(後に25554へ改番)

▲ 厚さわずか6.3mmの2019年発表〈ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー ウルトラ シン(RD#2)〉Ref.26586IPは、発売当時、市場で最も薄い自動巻き永久カレンダー腕時計であった。

▲ 自動巻きキャリバー5133はキャリバー2120をベースとしており、そのためケースバック側から確認できる“ハンギング式”の香箱を備えている。カレンダー機構を地板に統合することで、その驚異的な薄さを実現している。

▲ 2017年発表、ブラックセラミックケースを採用したロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.26579。
試作モデルであるRD#2はプラチナ製であったが、2019年に発表された量産モデルは軽量なチタンケースにプラチナ製ベゼルを組み合わせた仕様となり、装着感に優れた一本となった。
このモデルは、控えめにも〈ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー ウルトラ シン〉と名付けられ、厚さわずか6.3mmという驚異的な薄さを実現している。
この時計の登場は、ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーに対する熱狂を加速させ、1984年の初期モデルから近年のモデルに至るまで、その価格はまさに成層圏的に高騰した。
そもそも私がオーデマ ピゲのパーペチュアルカレンダーについて記事を書こうと思ったのは、自ら購入を検討していたからである。
2018年当時の相場観でいえば、初期モデルはおおよそ4万〜5万ドル程度で推移していた。しかし、記事を公開する頃には相場はすでに急騰し、現在では同じ個体が20万ドルを超える水準にまで達している。
私がまだパーペチュアルカレンダーを購入していなかったと知った友人であり、熱心なオーデマ ピゲのサポーターでもあるオーステン・チューはこう言った。
「まるで銘柄を煽るだけ煽って自分では買っていないヘッジファンドの連中みたいだな」
認めるまでに少し時間はかかったが、まったくその通りである。残念ながら、それが私の愚かさだったのだ。

▲ 2015年に登場したリファレンス26574は、インナーベゼルに“週番号表示”を備えたモデルである。
炎を継ぐ者
この四半世紀にわたり、伝説的存在であるロイヤル オークの商業的成功を見事に牽引してきた人物こそ、オーデマ ピゲの元CEO、フランソワ=アンリ・ベナミアスである。
彼は、フランス国内で25位にランクされたこともある元プロゴルファーでもある。1994年に30歳でオーデマ ピゲへ入社。わずか3年後にはシンガポールにおけるオペレーション責任者に就任した。
1999年には北米CEOに就き、ロイヤル オークの人気と存在感を飛躍的に高めた立役者となる。彼はジェイ・Zやレブロン・ジェームズといったセレブリティを熱心な顧客にし、さらにテレビドラマ『アントラージュ☆オレたちのハリウッド』(2004〜2011年)への協賛を実現するなど、ブランドの文化的影響力を押し広げた。
2012年、ロイヤル オーク誕生40周年の節目において、彼はブランド全体を率いるグローバルCEOに就任。その後わずか6年で、オーデマ ピゲの売上高を5億5000万スイスフランから年間10億スイスフラン超へと倍増させた。
さらに2021年には、その業績はまさに爆発的な伸びを見せ、売上は15億8000万スイスフランに達している。

▲ グリーンダイヤルを採用した人気モデルの数々。プラチナ製の〈ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン〉、イエローゴールドの〈ロイヤル オーク クロノグラフ〉、そして2021年に発表された〈ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン〉
コロナウイルス感染拡大の最中における彼の手腕は、まさに英雄的と呼ぶにふさわしいものであった。彼は工場が一時的に閉鎖される状況下において、ブランドの内部留保を取り崩し、全2,000人の従業員の雇用を維持したのだ。
その結果、閉鎖措置にもかかわらず、2020年の売上高は11億3000万スイスフランとなり、パンデミック前の2019年に記録した11億8000万スイスフランとほぼ同水準を保つことに成功した。
そして何よりもベナミアスは、〈ロイヤル オーク〉の現行コレクションを、熱狂の対象へと押し上げた立役者であった。
新作の16202をはじめ、ミドルサイズの15450、美しいダブル バランスホイール、パーペチュアルカレンダー、さらには手巻きと自動巻きの両仕様で展開される41mmのトゥールビヨンに至るまで、そのすべてが圧倒的な人気を獲得したのである。
その結果、最新の〈ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラ シン〉であるステンレススティール製16202は、発売からわずか数分で、二次市場において定価の10倍に達するという異常な高騰を見せた。
ベナミアス最大の功績は、ロイヤル オークを20世紀後半以降における最も象徴的な時計へ押し上げ、この10年間にわたり、その守護者であり続けたことである。
ロイヤル オークは半世紀の歴史において、進化し、革新を繰り返しながらも、時計史における“造形芸術の最高峰”としての地位を一度たりとも失うことはなかった。ジェラルド・ジェンタは、最初のスケッチを描いたとき、この時計が人類史上最も人気のある時計となり、ここまで多様で英雄的な姿になるとは想像すらしていなかっただろう。
ジャクリーヌ・ディミエ、エマニュエル・ギュエ、クロード・エメネガー、オクタヴィオ・ガルシアといった才能あふれるデザイナーたちが、その上にさらなる価値を積み重ね、ロイヤル オークを“時計芸術の壮麗な塔”とした。
さらに、ジョルジュ・ゴレイ、ジョルジュ=アンリ・メイラン、スティーブン・アークハート、そしてフランソワ=アンリ・ベナミアスといった卓越したリーダーたちが、それぞれの時代においてロイヤル オークの価値を高め続けたことで、この時計は世界の“集合的記憶”の中に永久に刻み込まれた。
1972年に誕生したロイヤル オークは、混迷と困難の時代において“世界が必要としていた英雄”であった。その登場は光と指針をもたらし、その後の10年間に、ほぼすべての高級時計ブランドがその後を追うこととなる。
そして50年にわたり、時代の最前線において次々と変貌を遂げながら、何度も私たちの前に現れてきた。半世紀もの間、ロイヤル オークは時計業界全体を押し上げ、その揺るぎない勇気と独創性によって私たちの心を捉え続けてきたのである。
ロイヤル オークよ、50周年おめでとう。最も必要とされるときに私たちの“英雄”でいてくれたことに、心からの感謝を!
Brands:Audemars Piguet
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