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なぜRef.145.012は、必須の〈スピードマスター〉なのか?

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1965年6月1日、NASAはある一つの結論に達した——「すべての有人宇宙飛行任務における飛行資格認定」を得たクロノグラフは、オメガ〈スピードマスター〉ただ一つであると。その栄光の系譜において最終形態にあたるのが、Cal.321(レマニア2310)を搭載した最後のリファレンス、Ref.145.012だ。アポロ11号でマイケル・コリンズが月周回軌道上で着用し、“ウルトラマン”をはじめ数々の人気ダイヤルを生んだこの一本は、なぜヴィンテージ スピードマスター・コレクションに欠かせないのか。その理由を紐解く。

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Why The Ref. 145.012 Is a Must Have For Any Speedmaster Collector

なぜRef.145.012は、必須の〈スピードマスター〉なのか?

1965年6月1日、NASAはある一つの結論に達した―「すべての有人宇宙飛行任務における飛行資格認定」を得たクロノグラフは、オメガ〈スピードマスター〉ただ一つであると。その栄光の系譜において最終形態にあたるのが、Cal.321(レマニア2310)を搭載した最後のリファレンス、Ref.145.012だ。アポロ11号でマイケル・コリンズが月周回軌道上で着用し、“ウルトラマン”をはじめ数々の人気ダイヤルを生んだこの一本は、なぜヴィンテージ スピードマスター・コレクションに欠かせないのか。その理由を紐解く。

by Revolution. Jun 15,2021

Ref.ST145.012というモデル

 “エンド・オブ・シリーズ”という言葉は、近年の時計コレクター界で注目を集めるキーワードだ。特定のシリーズやリファレンスにおける最終世代モデルを意味する。

 では、Cal.321を搭載したオメガ〈スピードマスター〉において、その最終仕様にあたるのは何か。答えはRef.ST145.012(STはステンレススティールの意)である。

 Ref.145.012は1967年から1968年にかけて生産され、一部は1969年初頭まで出荷された。

 そして1968年には、Cal.861を搭載したRef.145.022が登場し、スピードマスターの新世代モデルとして位置づけられた。

2020年7月、フィリップス・ウォッチ香港オークションで販売された、〈スピードマスター〉Ref.145.012の優れた個体(phillips.com)

  Ref.145.012には、いまやおなじみとなったリララグ付きの非対称ケースが採用された。Speedmaster101.comによれば、先行したRef.105.012(1964〜1068年頃)とは異なり、145.012にはより大きなクロノグラフプッシャーが備えられていた。

 文字盤は段差のあるブラックのステップダイヤルで、トリチウム夜光入りのアワーマーカーは分目盛り側まで伸びる仕様。さらに、アプライド仕様のオメガロゴと、「Professional」の文字を含む3行表記が配されている。

 針は時分針にバトン型を採用。クロノグラフ秒針はスピア型だが、このリファレンスの生産期間中には、先端がフラットなものと尖ったものの両方が確認されている。

 そして、この系譜を象徴する重要な識別点のひとつがベゼルである。145.012の最初期型には、タキメーターの90の上にドットを配した“DON”仕様の、“BASE 500”の表記があるベゼルが装着された。

 興味深いのは、オメガがこのリファレンスをベースに、その時代を代表する人気文字盤モデルを生み出したことである。代表例が“ウルトラマン”(『帰ってきたウルトラマン』に登場したモデル、オレンジの秒針が特徴)、さらに希少で、黒を基調とした“ブラック レーシングダイヤル”などだ。

 シリーズ最終モデルという点を除いても、なぜ145.012はヴィンテージ スピードマスター・コレクションにおいて必修なのか。以下、その理由を見ていこう。

任務で使用するための腕時計

 ジェームズ・H・レーガン(元NASAプロジェクトエンジニア兼プログラムマネージャー)と、オメガの国際ブランド・ヘリテージマネージャーであるペトロス・プロトパパスは、著書『Moonwatch Only』の中で次のように記している。

 “ジェミニ計画を目前に控えた時期、NASAは宇宙飛行士が使用する標準装備一式について、「試験し、選定し、認証する」必要性を感じていた。その装備品のひとつは、宇宙飛行士たちから要望されたものであった。すなわち、「訓練および飛行任務で使用するための腕時計」である”

左:NASAの試験技術者ジム・レーガンが、NASAにてスピードマスターに各種テストをしている様子。右:NASAのジェミニ計画における、スピードマスター105.003を認証した公式文書より。“本報告書は飛行資格要件を満たしており、オメガの腕時計はジェミニ宇宙船用として承認される”

 飛行乗組員運用責任者のデーク・スレイトンは、この腕時計選定の任務を引き受け、“ジェミニ計画およびアポロ計画の乗組員が使用する、高い耐久性と高精度を備えたクロノグラフ”を必要とする旨の内部メモを綴った。

 そのメモは、ジェームズ・レーガンのもとへ渡る。彼は、スレイトンが事前に挙げた時計メーカー各社に対し、RFQ(見積依頼書)を送付した。

 期限内にNASAの試験へ提出されたのは、3ブランドのみであった。

・ロンジン〈ウィットナー〉235T

・ロレックス〈クロノグラフ〉Ref.6238

・オメガ〈スピードマスター〉Ref.105.003

 スピードマスターは、レマニア2310をベースにオメガが独自改良したCal.321を搭載していた。一方、ロレックスとロンジンの時計は、いずれもバルジュー72をベースとするムーブメントを採用していた。

アポロ11号の飛行中、司令船操縦士マイケル・コリンズは、腕に〈スピードマスター〉Ref. 145.012を着用していたことで知られている。アームストロングとオルドリンが月着陸船で月面に降り立っているあいだ、コリンズは月周回軌道上にとどまっていた。  

  その後の展開は、いまや歴史として知られるとおりだ。スピードマスターは、NASAが課した一連の過酷な試験をすべて耐え抜き、1965年6月1日、“すべての有人宇宙飛行任務に対する飛行資格認定(Flight Qualified for all Manned Space Missions)”を獲得した。

 やがて月へと到達したスピードマスターのリファレンスは、具体的には105.012および145.012である。

 最も称賛される手巻きクロノ・ムーブメント

 Revolutionファウンダーのウェイ・コーは、こう言っている。
「私にとって、レマニア2310こそ、最も美しく、歴史的意義に富んだ、史上最高のクロノグラフ・ムーブメントです。その理由は、第1に、このムーブメントの大きさです。直径27mm、厚さ6.74mmというサイズで、1942年の発表当時、世界最小のクロノグラフ・ムーブメントでした。13.33Zおよび13-130はいずれも13リーニュ(29mm)であり、それらを凌駕していました。より小型のムーブメントであったことにより、2310はさまざまなケースデザインに対応できたのです」

由緒あるキャリバー321(レマニアでの呼称では2310)を搭載したスピードマスター Ref.145.012。

 ウエイは続ける。

「第2に、1946年から1968年にかけて、オメガではこれをキャリバー321として採用し、比類なき信頼性と性能の実績を築き上げたことです。その到達点となったのが、NASAによる過酷な認証試験を通過し、宇宙での使用資格を得た唯一の時計を駆動したことです」

「第3に、1980年代において、エボーシュ供給される手巻き・コラムホイール式のクラシカルなクロノグラフ・ムーブメントとして、事実上これが唯一の存在だったことです。それゆえ、クォーツ危機からスイス時計産業が復興する際に、決定的な役割を果たしました。パテック フィリップ、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロジェ・デュブイといったメゾンが、機械式クロノグラフを再びリリースすることを可能にしたのです。そのうちパテック フィリップとブレゲの2ブランドは、このムーブメントをベースにスプリットセコンド仕様まで製作しています」

最もコスパに優れたヴィンテージ

 現代では“シリーズ最終モデル”という響きがしばしば価格プレミアムを生む一方で、145.012は依然としてキャリバー321搭載スピードマスターのなかで、手の届きやすい存在である。

『オメガ スピードマスター プロフェッショナル 145.012 バイヤーズガイド』のなかで、フラテッロ・ウォッチズのロバート=ヤン・ブローワーは、145.012こそキャリバー321搭載機として最も多く生産されたリファレンスだと説明している。

 2019年時点の相場について、彼はこう記している。

“スピードマスター プロフェッショナル 145.012は、キャリバー321搭載リファレンスのなかでも、比較的手頃な1本である。先代モデルがすでに1万ユーロを大きく超えているのに対し、145.012は(多くの場合)より親しみやすい価格帯にある。しかし、それも長くは続かないかもしれない。現在のスピードマスター人気を見れば、誰にもわからない。たしかに321搭載スピードマスターのなかで、最も多く生産されたモデルではあるが、10〜15年前のように市場に潤沢にあるわけではない。井戸はかなり凅れつつあり、手に入れるには相応の資金が必要になっている”

 そして2020年を経て2021年当時の市場を見ると、145.012の価格は緩やかに上昇している。相場はおおむね1万〜1万5000米ドルのレンジで、価格を左右する最大要因はコンディションとオリジナル・ブレスレットの有無だった。

 また公開オークションでは、直近では2021年6月開催のフィリップス香港ウォッチオークションにおいて、Ref.145.012-67 SPの個体が1万4000米ドルで落札されている。

1969年製 オメガ スピードマスター ムーンウォッチ Ref.145.012-67SP。

※この記事は2021年6月に作成されたものです。

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