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ジェイコブ&コー、音への探究の原点に回帰。12年の進化を凝縮

Reference

Editorial

The Jacob & Co Palatial Flying Tourbillon Minute Repeater Goes Back to the Beginning

ジェイコブ&コー、音への探究の原点に回帰。12年の進化を凝縮

〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉

大胆な造形と独創的な複雑機構で知られるジェイコブ&コー。その時計製作に「音」という新たな領域を切り開いたのが、2014年発表の〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉だった。ブランド創業40周年を迎えた2026年、同モデルが12年ぶりに復活。新開発のキャリバーJCCM04を搭載し、打鐘機構の静粛性や仕上げをさらに高めた、世界限定12本の特別なモデルとして登場した。

by Felix Scholz. Oct 7,2026

ジェイコブ&コーの音への挑戦

 ジェイコブ&コーの時計に、控えめという言葉はあまり似合わない。ジュエラーとしての出自を持つ同ブランドの時計は、華麗な装飾と大胆な造形、そして常識を超えた複雑機構によって、独自の世界を築いてきた。

 映画『ゴッドファーザー』の名曲を奏でる〈オペラ ゴッドファーザー〉や、立体的な機構が文字盤上で躍動する〈アストロノミア〉シリーズは、その象徴といえるだろう。

 そんなジェイコブ&コーから登場した〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉は、少々意外な存在だ。

 直径43mmの18Kローズゴールドケースに、鮮やかな赤い半透明文字盤を組み合わせた時計が、決して控えめなわけではない。しかし、ブランドのほかの作品と比較すれば、その佇まいは驚くほど端正である。

 そして、この時計には特別な意味が込められている。ジェイコブ&コーが12年前に踏み出した、音をテーマとする時計製作の原点を振り返る作品なのだ。

▲ジェイコブ&コー〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉。2014年の初代モデルを現代的に再解釈した、世界限定12本の新作。

 その歴史は2014年にさかのぼる。この年、ジェイコブ&コーは初代〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉を発表した。それまで視覚的なインパクトを追求してきたブランドが、初めて音によって時刻を知らせる複雑機構に挑んだのである。

 このモデルを起点に、ジェイコブ&コーは打鐘時計とミュージカルウォッチという、2つの方向へと技術を発展させていく。

 前者を代表するのが、2018年発表の〈ツインターボ フューリアス〉だ。2基の3軸フライングトゥールビヨンに加え、デシマルミニッツリピーターを搭載。一般的なミニッツリピーターが時、15分単位、分を打ち分けるのに対し、この機構は時、10分単位、分を音で知らせる。より直感的に時刻を把握できる仕組みであり、打鐘機構の新たな可能性を示した。

 また、〈アストロノミア マエストロ〉には、3本のゴングと3つのハンマーを用いるカリヨン・ミニッツリピーターを採用。通常の2本のゴングによる打鐘とは異なる、複雑な音の組み合わせを実現している。

 いずれも、ジェイコブ&コーが音を単なる付加機能ではなく、時計の個性を決定づける要素として追求してきたことを物語る作品だ。

▲〈ツインターボ フューリアス〉。2基の3軸フライングトゥールビヨンとデシマルミニッツリピーターを搭載する。

▲〈アストロノミア マエストロ〉。3本のゴングと3つのハンマーを備えたカリヨン・ミニッツリピーターを採用。

オルゴール機構が切り開いた新たな世界

 一方、ジェイコブ&コーは、時刻を知らせる打鐘機構とは別に、音楽そのものを奏でる時計の開発にも取り組んできた。その出発点となったのが、2017年に発表された〈オペラ〉である。

 3軸トゥールビヨンを備えたムーブメントに、2組の櫛歯と2本のシリンダーからなるオルゴール機構を組み合わせ、操作によって120音からなる旋律を奏でるという画期的な作品だった。

 その技術をさらに発展させたのが、2019年の〈オペラ ゴッドファーザー〉だ。フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ゴッドファーザー』(1972年)で知られる「愛のテーマ」を演奏するこのモデルは、時計製作と映画、そして音楽を融合させた作品として大きな注目を集めた。

 2026年には、その系譜を受け継ぐ〈ザ ゴッドファーザーⅡ〉が登場。ひとつの時計ケースに2つの旋律を収めるという、新たな技術的成果を実現している。

 こうしてジェイコブ&コーは、ミニッツリピーターによる打鐘から、オルゴール機構による演奏まで、音をテーマとする独自の時計製作を発展させてきた。

▲ブラックDLCグレード5チタン製の〈オペラ ゴッドファーザー〉

▲2026年発表の〈ザ ゴッドファーザーⅡ〉。ひとつの時計に2つの旋律を収めたミュージカルウォッチ。

12年の進化を反映した新型キャリバー

 今回発表された〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉は、そうした音への探究の原点に立ち返る作品だ。ミニッツリピーターとフライングトゥールビヨンを組み合わせた基本構成は、2014年の初代モデルから継承。しかし、その内部には12年間で培われた技術が反映されている。

 搭載するのは、新たに開発された手巻きキャリバーJCCM04。初代のキャリバーJCBM03をベースに、部品の製造精度や組み立て品質を向上させたムーブメントである。

308個の部品と29石で構成され、毎時21,600振動で駆動。パワーリザーブは約90時間を確保している。

 6時位置には、60秒で1回転するフライングトゥールビヨンを配置。キャリッジは新たに設計され、手作業による面取りや繊細なエッジの仕上げが施されている。

 また、ムーブメントのブリッジにはコート・ド・ジュネーブ装飾を採用。機構の精緻さを視覚的にも楽しめる仕上がりとなっている。

▲6時位置に配されたフライングトゥールビヨン。新設計のキャリッジには、手作業による精緻な仕上げが施されている。

 文字盤には、鮮やかな赤色の半透明ミネラルクリスタルを採用した。その奥にはミニッツリピーターを構成する機構が広がり、複雑なレバーや歯車の動きを文字盤側から鑑賞できる。

 アワーマーカーには18Kローズゴールドを使用。9時位置には、音楽との結びつきを象徴するト音記号のモチーフが配されている。

 さらに、時分針にはメトロノームをモチーフとしたスケルトンデザインを採用した。音をテーマとする時計であることを、機構だけでなく意匠によっても表現しているのである。

時計師の耳が生み出す音色

 この時計の核心となるのが、ミニッツリピーターの音色だ。9時位置のスライドレバーを操作すると、2つのハンマーが2本のゴングを打ち鳴らし、現在の時刻を音で知らせる。

採用されているのは、ムーブメントの外周に沿って長く伸ばされたカテドラルゴングだ。

一般的なゴングよりも長い構造とすることで、豊かな響きと余韻を生み出している。ゴングの成形、焼き入れ、調律、取り付けは、すべて手作業によるもの。そして最終的な音色の調整を担うのは、時計師自身の耳である。

 どれほど精密な機械であっても、理想の音を生み出すには、人間の繊細な感覚が欠かせない。

 今回のキャリバーJCCM04では、打鐘のテンポを制御する遠心式ガバナーにも改良が施された。従来よりも作動音を抑えた静粛性の高い構造とすることで、機械的な雑音がゴングの音色を妨げることを防いでいる。

 ミニッツリピーターの完成度を左右するのは、単に大きな音を鳴らすことではない。余計な音を排除し、澄んだ響きをいかに引き出すかという点にもある。

 そうした音響面での進化こそが、新しい〈パレイシャル〉の重要な特徴といえるだろう。

サファイアクリスタル製ケースバックからは、カテドラルゴングやハンマーをはじめとする打鐘機構を鑑賞できる。音を聴くだけでなく、その音が生み出される仕組みまで楽しめるのである。

▲サファイアクリスタル製ケースバックからは、カテドラルゴングやハンマーを備えたキャリバーJCCM04を鑑賞できる。

創業40周年を記念する12本限定モデル

 ケースには18Kローズゴールドを採用。直径43mmという堂々たるサイズながら、厚さは12.3mmに抑えられている。幅広く磨き上げられたベゼルと、スポーティな〈エピック X〉コレクションを思わせるラグの造形が、力強さとエレガンスを両立させている。

 ジェイコブ&コーの時計としては比較的抑制の効いたデザインであり、複雑機構そのものの魅力を引き立てる仕上がりだ。

 防水性能は30m。ストラップには赤いアリゲーターレザーを組み合わせ、18Kローズゴールド製のピンバックルを備える。製作本数は世界限定12本。この数字は、2014年に初代モデルが発表されてからの12年間に由来する。

 2026年に創業40周年を迎えたジェイコブ&コーにとって、今回の新作は単なる過去のモデルの復刻ではない。ミニッツリピーターからミュージカルウォッチへと発展してきた、12年間にわたる音への探究を振り返ると同時に、その技術的な成熟を示す作品なのである。

 これまで視覚的な驚きによって時計界に独自の存在感を築いてきたジェイコブ&コー。その原点回帰を象徴する今回の〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉は、音の美しさによってブランドの新たな一面を伝えている。

▲ジェイコブ&コー〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉。18Kローズゴールド製ケースに赤い半透明文字盤を組み合わせた、世界限定12本の特別モデル。

Tech Specs

ジェイコブ&コー〈パレイシャル フライング トゥールビヨン ミニッツリピーター〉 Ref. PT500.40.NS.AC.ABALA ムーブメント:手巻き、キャリバーJCCM04、直径30mm、厚さ6.10mm、308個の部品、29石、毎時21,600振動(3Hz)、パワーリザーブ約90時間 機能:時・分表示、60秒フライングトゥールビヨン、カテドラルゴングを備えたミニッツリピーター ケース:18Kローズゴールド、直径43mm、厚さ12.3mm、サファイアクリスタル製風防・ケースバック、30m防水 文字盤:レッドミネラルクリスタル、18Kローズゴールド製アプライドインデックス、18Kローズゴールド製ト音記号、メトロノームをモチーフにしたスケルトン針 ストラップ:レッドアリゲーターレザー、18Kローズゴールド製ピンバックル 限定本数:世界限定12本 ¥68,640,000

Brands:Jacob & Co

Brand:Jacob & Co.

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