2025年ウォッチ・オブ・ザ・イヤー受賞のクロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉。伝統技法の極致と圧倒的な精度が融合した、時計製造の到達点に迫る。
Revolution Awards 2025: Watch of The Year — Ferdinand Berthoud Naissance d’une Montre 3
Revolution Awards 2025: ウォッチ・オブ・ザ・イヤー
クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉
2025年ウォッチ・オブ・ザ・イヤー受賞のクロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉。伝統技法の極致と圧倒的な精度が融合した、時計製造の到達点に迫る。
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by Cheryl Chia . Jan 27, 2026 |
「ウォッチ・オブ・ザ・イヤー」は、その年で最も時計史において重要な意義を持つ、時計製造の結晶と呼ぶべきタイムピースを称える賞である。その点において、クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥーの〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉ほど、この栄誉にふさわしいモデルは他に思い当たらない。
本作は、伝統的なハンドクラフトの集大成である。それと同時に、18世紀および19世紀のクロノメーター(高精度時計)の系譜から直接引き継がれた、歩度安定性という課題に対する伝統的な技術的アプローチを具現した傑作である。

▲クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉(©Revolution)
現代において、完全ハンドメイドによるフュゼ・チェーン伝達機構を備えた腕時計を製造するために、その手法、技術、そして工具までも復元することに費やされた労力は、気の遠くなるほどである。
それは、CNCマシニングやワイヤー放電加工(EDM)、さらには自動旋盤といった現代の工業的手法を一切排除した時計製造の探求に他ならない。その代わりに、部品の成形には手動フライス盤、精密旋盤、ジグボーラーが用いられ、すべては職人の判断力、指先の感覚、そして蓄積された熟練の技に委ねられている。
そうして誕生した本作は、伝統的な時計製造を論理的極限まで突き詰めたとき、現代において何が達成され得るかを示す、妥協なき稀有な証明なのだ。

▲クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉(©Revolution)
最初のスケッチから第一号機が完成するまで、6年もの歳月にわたり約11,000時間におよぶ膨大な作業が費やされた。しかし、さらに驚くべきは、本作が計時性能の完全性を貫いている点である。
このタイムピースは、歩度安定性という課題に対する、歴史的に重要な複数のアプローチを一つに統合している。まず、伝達機構には「フュジー&チェーン(円錐車と鎖)」を採用し、とりわけトーマス・マッジがマリン・クロノメーターで最初に見出した「リバース(逆配置)」レイアウトを導入した。
これに組み合わされるのが、ジョン・ハリソンが考案した維持駆動機構(メインテイニング・パワー)の一種である。巻上げ時にフュジー・ラチェットに組み込まれた爪が逆回転を防ぎつつ、専用の維持バネがセンターホイール(二番車)を駆動し続けることで、輪列へのトルクを途切れさせることなく供給する。

▲クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉(©Revolution)
また、アブラアン-ルイ・ブレゲが考案した堅牢なストップワーク機構も搭載している。そして驚くべきは、インバーと真鍮を組み合わせた中間温度誤差の採用である。これは、従来のバイメタル補正を施してもなお残る中間温度誤差を解消するために開発されたものだ。
この切れテンプには、最適な剛性を得るために焼き入れされた炭素鋼製のヒゲゼンマイが組み合わされ、その末端にはフィリップス曲線(巻き上げひげ)が施されている。これらの要素が渾然一体となり、極めて一貫性のある高精度(クロノメトリック)な構造を形成している。
その卓越性は、COSC(スイス公認クロノメーター検定協会)認定によっても裏付けられている。それどころか、本作の性能はCOSCの基準を大幅に上回るものだ。COSCが許容する平均日差が-4秒〜+6秒であるのに対し、〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉は平均日差+0.91秒/日という驚異的な数値を叩き出した。
さらに、姿勢差による平均変動はわずか0.46秒、温度係数はほぼゼロに等しい0.01秒/℃という数字が示す通り、その安定性は破格の領域に達している。

▲クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉(©Revolution)
実際のところ、温度補正のために施されるあらゆる調整は、テンプのポイズ(片重り/バランス)を崩すリスクを常に孕んでおり、往々にしてさらなる修正を余儀なくされる。
そしてポイズを復元するための作業は、今度はヒゲゼンマイ)の位置調整やピン留めのやり直し、あるいは微細な形状修正といった介入を必要とし、これがバランススプリングシステム全体の挙動を変化させてしまう。
この相互依存関係は、一つの変数を修正するために加えた変更が、不可避的に別の変数へと影響を及ぼすという、循環的な調整プロセスを生み出す。これらを統制するには、並外れた熟練の技、忍耐、そして経験が必要不可欠なのだ。

▲クロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー〈ネソンス ドゥンヌ モントル 3〉(©Revolution)
この試みがもたらした成果は、極めて驚異的である。誕生したタイムピースに反映されているのは、伝統的な工作機械や手作業による個別の技法の習熟にとどまらない。安定した計時性能を導き出すために、それぞれの技法や技術的アプローチがどう相互に影響し合うのかという、構造全体への極めて高度な理解である。
そして何よりも、現代においてなお、これほどの献身を傾けるに値するものとして時計製造に向き合うメゾンが存在するという事実は、我々に大いなる希望を抱かせてくれる。
Brands: Chronométrie Ferdinand Berthoud
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