F.P.ジュルヌやMB&Fをはじめ、まだ広く知られていなかった独立時計師たちの才能をいち早く見抜き、支えてきたミラノのGMTイタリア。コルヴォ家三世代が築いたこの名店は、選び抜かれたコレクションと限定モデルを通じて、インディペンデント・ウォッチメイキングの魅力を世界へ発信している。その先見性と独自の歩みをたどる。
GMT Italia are the Italian pioneers of independent watchmaking
名店〈GMT イタリア〉―時計界のトレンドを牽引する独立系の殿堂
F.P.ジュルヌやMB&Fをはじめ、まだ広く知られていなかった独立時計師たちの才能をいち早く見抜き、支えてきたミラノのGMTイタリア。コルヴォ家三世代が築いたこの名店は、選び抜かれたコレクションと限定モデルを通じて、インディペンデント・ウォッチメイキングの魅力を世界へ発信している。その先見性と独自の歩みをたどる。
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by Celine Yap . Jan 22, 2024 |
イタリア人はトレンドセッター
GMT(グレート・マスターズ・オブ・タイム)イタリアは、ラグジュアリー・リテール業界における異端児である。そして同時に、インディペンデント・ウォッチメイキングの才能を見抜く、先見の明で知られている。
ラグジュアリーウォッチの世界において、イタリア市場が占める意義はきわめて大きい。卓越したスタイル感覚で知られるイタリア人は、常にラグジュアリーの潮流を方向づけてきたトレンドセッターであった。 1970〜80年代には、ファッションの都ミラノにおいて、ステンレススティール製ラグジュアリー・スポーツウォッチという概念そのものが注目され、広く浸透していったのである。
実際、オーデマ ピゲ〈ロイヤル オーク〉をいち早く受け入れたのはミラノの人々だった。当時、ロイヤル オークは他の市場では決して人気があったわけではない。
さらにミラノは、今日における最も重要なクラシックアイコンのひとつ、ジャガー・ルクルト〈レベルソ〉の復活にも決定的な役割を果たしている。レベルソは1940年代に一度歴史の表舞台から姿を消していたが、ミラノにおいて再評価され、再びその価値を取り戻したのである。 あまり知られていないが、実はこのエレガントなタイムピースにかつての輝きを取り戻させたのは、紛れもなくGMTイタリアなのである。

▲ミラノのブランド街スピガ通りに店を構えるGMT イタリアは、インディペンデント時計を専門に扱うブティックである。
GMTイタリアは、名だたるファッションおよびラグジュアリーメゾンが軒を連ねる“クアドリラテロ・ドーロ(黄金の四角形)”の一角に位置している。ラグジュアリーウォッチのリテールに独自の視点をもたらし、世界中の時計愛好家にとって特別な存在である。
ミラノにただ一店舗を構えるのみでありながら、この華やかなショッピングエリアに集う他のメゾンと同様に、実にグローバルな顧客層を惹きつけているのだ。

▲その空間は、ミラノらしい美意識、洗練されたモダンかつ控えめなインテリアによって構成されている。
常にコンテンポラリーであり、芸術的で、時代を超えてなお色褪せない美である。そのスピリットは、エレガントなショーケースに収められた数々の“時の芸術品”にも受け継がれている。コルヴォ家三世代によって情熱を持ってキュレーションされた、現代を代表するインディペンデント時計師たちが手がける唯一無二のタイムピースが揃っている。
独立系ブランドに賭ける
GMTイタリアは1950年代、ジョルジョ・コルヴォによって、ジャガー・ルクルトをはじめとする複数の高級ブランドを扱う時計ディストリビューション会社として設立された。ラグジュアリーウォッチ業界において長年にわたって確固たる存在感を築いてきた同社は、いまや現代のハイエンド・インディペンデント時計を象徴する存在となっている。
GMTのアプローチは、ウォッチ・リテーラーの伝統を打ち破るものだった。2007年に最初のブティックを開いたのは、ミラノではなくサルデーニャ島のポルト・チェルヴォだった。地中海の楽園コスタ・スメラルダの中心地であり、裕福なイタリア人たちが毎夏訪れるリゾートである。
その後2010年にはミラノへと拠点を移し、歴史ある市街中心部において壮麗なマルチブランド・コンセプトストアを展開。そして2021年、現在のヴィア・デッラ・スピーガ25番地へと移転し、今日に至っている。

▲ミラノ・ウォッチウィーク期間中、GMTイタリアとH.モーザーが共催したイベント。
休暇を過ごす顧客層に向け、前衛的なオート・オルロジュリーを紹介するべく、GMTイタリアは大胆な方針転換をした。ジャガー・ルクルトといった主要ブランドのイタリア総代理店としての役割を手放し、代わって当時はまだ評価の定まっていなかった若きインディペンデント時計師たちを支援する道を選んだのである。彼らは、時間という概念そのものを新たかつ大胆な手法で表現しようとしていた。
当時、機械式ラグジュアリーウォッチの世界は、今日のような広がりを見せておらず、コレクターの多くも、F.P.ジュルヌやMB&F、ウルベルクといった、独立時計ブランドに精通しているわけではなかった。それゆえ、この決断はGMTイタリアにとって賭けでもあった。しかしその結果は、ファミリー経営のリテーラーに大きな成功をもたらしたのである。

▲左より、ステファノ・クリストフォリ、ミケーレ、ヤコポ、マッティアのコルヴォ・ファミリー。
現在、GMTイタリアはコルヴォ家の第2世代と第3世代によって運営されている。創業者ジョルジョの息子であるミケーレは、主要ブランドのディストリビューションからインディペンデント時計へと舵を切る決断を下した人物であり、現在は同社の会長を務める。
彼を支えるのは、息子であるマッティア・コルヴォとヤコポ・コルヴォで、両者が事業全体の運営を担う。さらに、ディストリビューション部門ではステファノ・クリストフォリがこれをサポートする体制だ。
現在、同社はF.P.ジュルヌ、MB&F、ウルベルク、H.モーザー、レッセンス、ローマン・ゴティエ、ヴティライネン、ハルディマン、チャペック、コンスタンチン・チャイキン、オートランス、トリローブ、ベル&ロス、ノモス グラスヒュッテ、ルイ・エラールといった15のインディペンデント時計ブランドを取り扱うほか、メシカ、フレッド、キーリン、レッドラインといったジュエリーメゾンも、規模は小さいながら着実にポートフォリオを拡大している。
F.P.ジュルヌ、MB&Fとの蜜月

▲ミラノにて開催された、GMT イタリアとF.P.ジュルヌによる共催イベント。
とりわけGMTイタリアは、創業当初から一貫してF.P.ジュルヌを取り扱ってきた、世界でも数少ないリテーラーのひとつである。なかでも特筆すべきは、2014年に同社が欧州で初となる“エスパス・ジュルヌ”を店舗内に開設した点だ。これによりコレクターや愛好家は、クラシック、ラインスポーツ、エレガントといった各コレクションに加え、通常のリテーラーでは目にすることのない特別仕様や限定モデルまでを一堂に体験できる、専用空間が提供されることとなった。
こうした取り組みは、GMTイタリアがいかに規模を超えた存在であるかを物語っている。多数の店舗を持つ大手リテーラーと真正面から競いながらも、インディペンデント時計界の巨匠たちとの関係性の深さにおいて、同社に匹敵する存在はほとんどない。
ブランドとの緊密な関係を持つGMTイタリアにとって、コラボ限定モデルの展開は自然な流れと言える。同社はこれまでも、自らのコミュニティに向けて特別にデザインされたリミテッドエディションを数多く手がけてきた。
直近では2022年、MB&F とGMTイタリアは大きな節目を迎えた。創業者マキシミリアン・ブッサーとコルヴォ家とのパートナーシップが30周年を迎えたのである。両者の結びつきは深い。2015年、ブッサーがドバイにMB&F M.A.D.ギャラリーを開設した際には、ヤコポ・コルヴォがその運営を担った。またMB&F創業当初から、イタリア市場におけるパートナーとしてコルヴォ家が選ばれていた。
では、この30年を記念するにふさわしいモデルとは何か——その答えが〈M.A.D. 1〉である。こうして誕生した〈M.A.D. 1 “GMT Milano”〉は、創業以来GMTイタリアを支えてきた顧客や友人たちに捧げられた特別な一本となった。極めて入手困難なこのモデルは、通常はMB&FのVIP顧客に限られ、しかも抽選によってごく限られた数のみが割り当てられるに過ぎない。

▲MB&F 〈M.A.D. 1 “GMT Milano”〉
自動巻きムーブメントを搭載し、タングステンとチタンから成る三枚羽根の回転マスがダイヤル上を旋回する本機は、ムーブメントの機構美とデザインそのものを前面に押し出している。一方で、時刻表示はケース側面に配された2つの円筒形アルミニウムディスクに委ねられ、42mmケースの側面で控えめにその役割を果たす。
他のカラフルなバリエーションとは異なり、このモデルはシックで抑制の効いた佇まいを備え、まさにミラノらしい美意識を体現している。4Nゴールドプレートによる仕上げは、GMTイタリアの特別モデルに共通するシグネチャーである。ストラップはクラシックなミラノ・グリーンが組み合わせられている。MB&FとGMTイタリアとの長年にわたる信頼関係を象徴する本作は、わずか30本の限定生産とされた。
Brands:GMT Great Masters of Time
Via della Spiga, 25, 20121 Milano MI tel:+39 02 40 74 1198
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