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ナオヤ ヒダ & コー × アーモリー、文字盤に舞う3枚の羽根

Editorial

Reference

Naoya Hida & Co. × The Armoury Type 4A-2 “Floating Feathers”

ナオヤ ヒダ & コー × アーモリー、文字盤に舞う3枚の羽根

〈Type 4A-2 “フローティング・フェザーズ”〉誕生裏話

 ナオヤ ヒダ & コーとアーモリーによる最新コラボレーションは、これまでの抑制の効いたタイポグラフィ中心の表現から一歩踏み出し、彫刻によるモチーフへと展開した。マーク・チョーとエリオット・ハマーは、彫金師・加納圭介とともに、光の移ろいと動きを主役に据えたダイヤルを作り上げた。

by Tracey Llewellyn. May 11, 2026

ナオヤ ヒダ & コーとアーモリーの関係

 ナオヤ ヒダ & コーが2026年の新作を発表したのは4月30日。その内容は、これまでのブランドの歩みをそのまま進化させるものだった。全10モデルのうち7本が新作だが、いずれも全体を大きく作り変えるのではなく、細部を丁寧に見直したのである。ケースサイズをわずかに調整し、風防を変更し、新たなダイヤル素材を採用する。すべてが着実なアップデートだった。

 ところが、その直後に少し趣の異なる一本が姿を現した。ナオヤ ヒダ & コーと香港・ニューヨークを拠点とするセレクトショップ、アーモリーによるコラボレーション、〈Type 4A-2 “フローティング・フェザーズ”〉である。

 アーモリーは、一般的な時計店とは少し異なる存在だ。2010年にマーク・チョーとアラン・シーによって香港で設立され、当初はテーラリングを中心に、限られた数の作り手と協業しながら、フィットや素材、仕立てを重視する姿勢で評価を築いてきた。時計を扱うようになったのはその後だが、その考え方は変わっていない。

 ナオヤ ヒダ & コーとの関係は、ブランドのごく初期にまで遡る。チョーは初期の記事でナオヤ ヒダ & コーの時計を知り、その後すぐに東京で創業者の飛田直哉と会ったという。チョーはいう。

「ほとんど即決で買いました。彼が販売した5本目の時計でした」

 その後、チョーの顧客のひとりも時計を購入し、そこから、より正式な関係を築こうと考えた。やがてそれは販売パートナーシップとなり、さらに個人的な関係へと深まっていった。

 最初のコラボレーションについて話し合い始めた頃には、アーモリーはすでに1〜2年ほどナオヤ ヒダ & コーと仕事をしていた。

「たくさんのレンダリングを作り、こちらからコンセプトを提案しました。そこから互いに話し合いながら、アイデアを詰めていったんです」

 最初の2作は、タイポグラフィやダイヤルレイアウトを中心に、ナオヤ ヒダ & コーらしい既存のデザイン言語に近いものだった。だが今回は、そこから一歩踏み出している。

「コラボレーションの意味は、ブランドがまだ踏み込んだことのない領域へ進むきっかけをつくることだと思います」とチョーは語る。

 今回、それは、彫金を単なる機能的な要素ではなく、ひとつの表現とすることだった。

 現在、アーモリーの時計デザインは、チョーとエリオット・ハマーがともに手がけている。ハマーは長年にわたり、さまざまなプロジェクトでチョーと協働してきた人物だ。

「時計に関するデザインは、すべて一緒に考えています」とチョーは言う。

 一方でハマーは、それぞれの役割をこう説明する。

「マークは、形や時計をどう身につけるべきかを見る目が優れています。私は、ものがどう作られているかという技術的な部分や、ダイヤルの美しさに強く惹かれる。だから私はいつも、そこに何かひとつ明確なコンセプトを探しているんです」

羽根が静かに舞い落ちるように

〈フローティング・フェザーズ〉は、そうしたコンセプト重視のアプローチから生まれた。ただし、最初から羽根を描こうとしていたわけではない。出発点となったのは、鳥だった。

 チョーは自然をモチーフにしたアートダイヤルに注目しており、一方のハマーは「絵として成立するダイヤル」を作りたいと考えていた。最初の案の中心にあったのはカラスで、日本の写真家・深瀬昌久からもインスピレーションを得ていたという。

「マークも私もこの写真家が好きで、私はどうしてもカラスをやりたかったんです」とハマーは語る。

 しかし、鳥そのものをダイヤルに落とし込むのはうまくいかなかった。

「モノクロで鳥を彫っても、ダイヤル上ではなかなかきれいに見えません。色が必要なんです」

 初期案はあまりに写実的で、求めていた奥行きも出なかった。ハマーも率直に、

「ただ鳥の輪郭が並んでいるだけで、見栄えがよくなかった」と振り返る。

 そこで、モチーフをもっとシンプルなものへと削ぎ落としていく必要があった。

 羽根というモチーフには、より大きな可能性があった。鳥そのものを描かなくても、その構造や繊細な質感を表現できるからだ。ハマーによれば、最終的に描かれたのはカラスの羽根をイメージしたものだという。ただし、この点は公式資料には明記されていない。

 最初は1枚の羽根だけで試したが、どこか物足りなかった。

 チョーはいう。

「美しかったけれど、静的だった。もう少し動きを感じさせたかった。そこで、3枚の羽根が舞い落ちながら宙を漂っているような配置にしたんです」

 ハマーは、その理由を構図の面から説明する。

「3枚にすると三角形が生まれ、よりダイナミックに感じられました。円形の時計の中に三角形の構図を置くことで、動きの感覚も強まります。時計は常に動いているものですが、秒針がなければ、その動きは必ずしも目に見えません。だからこそ、それをもっと抽象的な形で表現するのが面白いと思ったんです」

 ダイヤルにはアルゲンティウムシルバーを使用し、ナオヤ ヒダ & コーの彫金師・加納圭介が一枚一枚の羽根を手彫りで仕上げている。その彫りは1mmあたりおよそ20本という非常に細かなものだ。

 しかも、単に表面へ線を刻んでいるわけではない。羽根そのものに立体感が生まれるよう、ダイヤルを深く彫り込んで形を作っている。ハマーはその構造を「中央に崖のような稜線がある谷」と表現する。羽根の軸へ向かって表面がなだらかに落ち込むことで、光を受けたときに立体的な陰影が生まれるのである。

 この角度の変化によって、時計を動かすたびにダイヤルが光を異なる形で受け止める。反射は最初からこのデザインの重要な要素だった。

 ハマーは語る。

「あらゆる設計を取り払って考えれば、最も重要なのは光です。光によってケースの形が浮かび上がり、同時に視認性も決まります」

 チョーは、同じ課題を素材の側から考えた。彫りたてのシルバーは、あまりにも明るく輝きすぎたという。

「シルバーを彫ると、とてもクリーンで光沢の強い表面になります。でも実際には、少し輝きすぎていたんです」

 そこでダイヤルにごく軽くビーズブラストを施し、光沢をわずかに抑えた。

「ほんの、ほんの少しだけ」とチョーは言う。

 その変化はごく繊細だが、光の受け方がやわらぎ、ダイヤル全体の見え方に大きな違いをもたらしている。

足るを知る美学

 時計のその他の部分には、ナオヤ ヒダ & コーらしい特徴がそのまま受け継がれている。〈Type 4〉のケースは36mm。コンパクトで、ブランドの世界観では馴染み深いサイズだ。ゴールドのインデックスと針は端正で視認性が高く、芸術性の高いダイヤルに、時計としての実用性をしっかりと与えている。

 これはチョーにとって重要なポイントだった。

「時計として、きちんと使えるものにしたかったんです。アートダイヤルの中には装飾があまりに強く、日常的には使いにくいものもあります」

 モノクロームを基調としたダイヤルに、ゴールドのインデックスと明瞭な針を組み合わせることで、装飾性と実用性のバランスを保っている。

 このコラボレーションがうまく成立しているのは、ナオヤ ヒダ & コー代表の飛田直哉が新しいアイデアを受け入れる一方で、どこまでやるべきか、その限度をよく理解しているからだ。チョーは飛田について、「素晴らしいセンス」と「ものを見る確かな目」を持ちながら、引き際も心得ている人物だと語る。

「彼は常にブランドとしての一貫性を保とうとしています。でも、こちらが持ち込むアイデアにもとてもオープンです」

 目指しているのは、両者の「共通点」を見つけながら、「それぞれ単独では作らないかもしれないけれど、一緒だからこそ実現できるもの」を生み出すことだ。

 ハマーは、少し違う言い方をする。クリエイティブ側はいくらでもスケッチを描き、アイデアを提案できる。しかし最終的には、「飛田が実際にそれを形にしなければならない」

 その発想と実現可能性の間を詰めていくところに、このプロジェクトの本質がある。

生産数は2026年に10本、2027年にさらに10本。アーモリーを通じた応募制で販売される。応募受付は5月17日から20日までで、その後に割り当てが決定された。価格は3万3000ドルで、ナオヤ ヒダ&コーの基本的な時刻表示モデルよりは高価だが、ラインナップの最上位というわけではない。

 この時計に惹かれる層は、かなり明確だろう。既存のナオヤ ヒダ&コーのコレクターなら、今回何が加えられ、そして何が変わらず残されたのかをすぐに理解できるはずだ。ひと目で分かる派手さではなく、時間をかけて向き合うことで魅力が深まり、見るたびに新しい発見がある……そんな時計を好む人に響く一本である。

Tech Specs

ナオヤ ヒダ  &コー × アーモリー〈Type 4A-2 “フローティング・フェザーズ”〉 ムーブメント:手巻きキャリバー 3020CS(ETA 7750をベースに改良)、パワーリザーブ約45時間
機能:時、分、秒表示 ケース:直径36mm × 厚さ11mm、ラグ・トゥ・ラグ42.9mm、904Lステンレススティール、50m防水 ダイアル:アルゲンティウムシルバー、ビーズブラスト仕上げ。加納圭介による羽根モチーフの手彫り、18Kイエローゴールド製ミニッツマーカー12個を個別に植字 ストラップ:ジャン・ルソー製チャコールグレーのカーフレザー、904Lステンレススティール製ピンバックル 限定数:2026年10本、2027年にさらに10本を製作予定(すでに2026年分は完売) USD 33,000

Brands:Naoya Hida & Co

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