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ジャガー・ルクルトCEOが語る、新たな〈マスター・コントロール〉

Interviews

ジャガー・ルクルトのCEO、ジェローム・ランベールが、ブランドの新たな方向性を象徴する〈マスター・コントロール〉コレクションについて語る。1992年に誕生した〈マスター・コントロール〉は、1950〜60年代のクラシカルな時計製造と、現代的な精度基準を融合させた存在として発展してきた。メゾンが本来持つエレガンスと技術力を示す重要なコレクションなのである。

Interviews

Jérôme Lambert, CEO of Jaeger-LeCoultre, explains the new Master Control Collection

ジャガー・ルクルトCEOが語る、新たな〈マスター・コントロール〉

ジェローム・ランベール・インタビュー

ジャガー・ルクルトのCEO、ジェローム・ランベールが、ブランドの新たな方向性を象徴する〈マスター・コントロール〉コレクションについて語る。1992年に誕生した〈マスター・コントロール〉は、1950〜60年代のクラシカルな時計製造と、現代的な精度基準を融合させた存在として発展してきた。メゾンが本来持つエレガンスと技術力を示す重要なコレクションなのである。

by Tracey Llewellyn . Aug 14, 2026

オスカー授賞式でのパプニング

——新作〈マスター・コントロール・クロノメーター〉が、正式発表前にオスカー授賞式でロバート・パティンソンの腕元に登場しました。これは意図的なプロモーションだったのでしょうか?

「一般的に考えられるような、計画されたプロモーションというわけではありません。メゾンと親しい人物が、まだ世の中に発表されておらず、写真にも撮られていない、完全な新作を着けることに同意してくれたのです。それには、私たちジャガー・ルクルト側の信頼も必要でしたし、着用する本人にも、その時計への確かな理解と自信が必要でした。この時計には大きな魅力がありました。そして、管理された撮影環境ではなく、実際の日常の中で自然に身に着けられる姿を見せたいという思いがあったのです。時には、そうした瞬間のほうが多くを伝えてくれます。説明によって理解するよりも、時計が実際に腕に着けられたとき、どのような存在感を放つのかを見ることができるからです。今回の場合、〈マスター・コントロール・クロノメーター〉は発表会ではなく、現実の世界での存在感を示すことができました。結果的に人々はそこに戦略的な意図を感じるかもしれません。しかし実際には、時計そのものへの共通した情熱と、築かれた関係から自然に起こったことなのです。そして、そこにはある種の誠実さがあると思います。先に物語を作って時計を売り込むのではなく、まず腕に着けられることで、時計自身に魅力を語らせたということです」

〈マスター・コントロール・クロノメーター〉コレクション。

——では、時計そのものについて伺います。新しい〈マスター・コントロール・クロノメーター〉は、ジャガー・ルクルトのコレクション全体の中で、どのような位置づけになるのでしょうか?

「〈マスター〉ラインは、精度、信頼性、そして“控えめさ”を重視してきました。今回このコレクションに取り組むにあたり、私たちはその方向性を変えようとは考えませんでした。むしろ、このラインが誕生した原点に立ち返り、何がシリーズの価値を生み出していたのかを見つめ直したのです。初期の〈マスター・コントロール〉、特に1970年代にかけての発展を見ると、すでに“統合”という考え方が存在していました。つまり、ケース、ラグ、そしてブレスレットがどのように調和するかということです。今回私たちがこだわったのは、デザインだけではなく、装着感や使いやすさという点でした。プロポーションは考え抜かれたもので、ケース径は約39mm、厚さも非常にバランスよく抑えられています。そしてブレスレットは後から付け加えたように見えるのではなく、ケースと一体となって連続的に感じられるよう設計されています。同時に、ダイヤルにも手を加えました。サンレイ仕上げによって表情を与え、余計な要素を加えることなく、時刻表示そのものを際立たせています。時計をより派手に、目立たせようとは思いませんでした。コレクションの魅力を、さらに洗練させることが目的だったのです」

マスター・コントロール・クロノメーター・パーペチュアルカレンダー〉

さらに厳しく——COSCと社内のダブル認証

——クロノメーター性能を重視されていますが、今回のアプローチでは何が異なるのでしょうか?

「このラインの時計はすべて、COSC認定クロノメーターとして出荷されます。つまり、独立した第三者機関による検査を通過しているということです。これは重要な意味を持ちます。なぜなら、自分たちだけで定義するのではなく、広く認められた性能基準を確立できるからです。しかし、私たちはそこで終わりにしたくありませんでした。そこで導入したのが、私たちが“ハイ・プレシジョン・ギャランティー(HPG)”と呼ぶ、追加の検査です。これは社内で実施する、さらなる検証プロセスです。大きな違いは、ムーブメントだけを検査するのではなく、完成した時計をテストする点にあります。これにより、実際の使用環境により近い条件下で性能を試すことができます。温度変化、衝撃への耐性、姿勢差による変化など、さまざまな要素を検証します。これらは机上の理論ではありません。時計が長い年月のなかで実際に遭遇する状況です。私たちが設定している許容誤差は、一般的なクロノメーター認定基準よりも厳しいものです。そして重要なのは、検査方法がより幅広いという点です。精度とは同じ状況下における誤差だけではなく、さまざまな場面においても一貫した性能を発揮できるかどうか。その考え方が、今回の取り組みの根底にあります」

〈マスター・コントロール・クロノメーター・パーペチュアルカレンダー〉

——社内認証は、ときに懐疑的に見られることもあります。HPGの検査において、どのように信頼性を確保しているのでしょうか?

「だからこそ、私たちは外部認証も維持しているのです。もし社内検査だけに頼っていたなら、『自分自身をどのように評価するのか』という疑問が残るでしょう。外部認証と社内検査を組み合わせることで、より明確な性能を示すことができます。外部認証は、広く認められた基準を満たしていることを証明します。そして社内検査はそこに独自の項目を加え、外部の基準ではカバーされていない領域までテストするのです。HPGを実現するためには、多大な投資が必要でした。温度変化や高度などを再現する、新たな検査プロトコルや専用機器の開発が必要でした。しかし、測定方法を示すことなく、さらなる性能を主張することはできません。これは単なるマーケティング上の取り組みではありません。時計の検査方法だけでなく、組み立てや調整にも変化をもたらす、マニュファクチュール全体に関わるプロジェクトなのです」

ブレスレットにこだわった理由

——精度だけでなく、装着性、とりわけブレスレットに注力されていますね。なぜそれほどこだわったのでしょうか?

「それは、人々が時計を身に着けるスタイルが変化してきたからです。時計製造の原則は変わっていません。私たちは今も機械式時計に向き合い、精度と信頼性を追求しています。しかし、時計が着用される環境は変わりました。今日の顧客は、複雑機構を備えた時計であっても、より自由に身に着けたいと考えています。特別なフォーマルシーンのためだけに取っておくのではなく、幅広い状況に対応することを期待しているのです。だからこそ、ブレスレットが重要になります。それは単なる外観上の美しさだけではありません。快適性、柔軟性、そして使いやすさに関わるものです。私たちは、簡単に調整できるストラップ・システムを開発しました。2つのボタンを押すだけで作動する、わずかな延長機構です。実用的な機能であると同時に、時計を身に着ける体験そのものを高めてくれます目的はシンプルです。パーペチュアルカレンダーのような複雑で高度な時計であっても、制約なく身に着けられること。時計が着る服装や振る舞い方を決めるのではなく、日々の生活の中に自然に溶け込むものを目指しました」

〈マスター・コントロール・クロノメーター・デイト〉

——ジャガー・ルクルトに戻られてから1年以上が経ちました。このコレクションは、あなたの意向をどのように反映しているのでしょうか?

「これは変化というよりも、継続性を表していると言えます。ジャガー・ルクルトのようなメゾンに加わるときは、何かをゼロから始めるわけではありません。そこには約2世紀にわたって蓄積されてきた知識があります。数百に及ぶキャリバー、数十のメティエ、そして強固な社内文化です。ここ数か月、私が行ってきたことは、すでに進行していた複数の開発をひとつに結集することでした。ブレスレットはその一例です。最適なデザインと着け心地を実現するには、何年もの開発期間を要しました。そして、完成に至ったとき、それをコレクション全体に採用するべきだと判断したのです。同時に、HPG基準も導入しました。これはまた別種の取り組みで、より構造的な変革であり、マニュファクチュールの運営そのものにかかわるものでした。つまり、今回のコレクションに表れているのは、ひとつのアイデアではありません。複数の取り組みが結実したものなのです。重要なのは、すべての要素に一貫性を持たせることです。デザイン、性能、そして装着性が、同じ方向へ進むようにすること。それこそが、このコレクションの本質です」

強いブランドの作り方

——今年、ブランドには新たな活気が感じられます。それはどこから生まれてくるのでしょうか?

「それはアトリエから生まれています。時計を作っている人々からです。ジャガー・ルクルトは、常に強いプロダクトカルチャーを持つメゾンでした。問題は、それを長年維持し続けていくことです。常に問い続け、常に磨き上げ、停滞することを避けなければなりません。HPGのような新たな基準を導入したり、時計がどのように身に着けられるべきかを見直したりすることは、組織全体に、より高いレベルの仕事を求めることになります。それが前進する力を生むのです。しかし、それは単に宣言すればいいというものではありません。社内の現場から湧き上がってこなければなりません。時計がどのように考案され、製造され、検査されるのか。そのすべての過程に表れなければなりません。そして、それが正しく実現されれば、その活気は外部にも自然に伝わっていくのです」

——では最後に、2026年におけるジャガー・ルクルトを定義するものは何でしょうか?

「それは多様性——私たちが手掛ける領域の広さです。ジャイロトゥールビヨンのような高度な複雑機構から、ミニッツリピーターなどのチャイミングウォッチ、装飾工芸、そして〈アトモス〉置時計に至るまで、私たちは非常に幅広い分野を手掛けています。この多様性は偶然ではありません。それこそが、マニュファクチュールとしてのアイデンティティなのです。その根底には共通する哲学があります。シンプルな時刻表示のみの時計であっても、極めて複雑な時計であっても、そこに通底する原則は変わりません。精度、信頼性、そしてものづくりへのこだわりです。要約するなら、こう言えるでしょう。価値観は変わりません。しかし、それを表現する方法は常に進化し続けているのです」

Brands:Jaeger-LeCoultre

Brand:Jaeger-LeCoultre

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