グラスヒュッテ・オリジナルの新作〈70s〉は、単なる1970年代へのオマージュではない。その背景には、東西に分断されたドイツで育った人々の記憶、限られた環境のなかで培われたものづくりの精神、そしてグラスヒュッテの時計産業が受け継いできた技術と哲学が息づいている。アーティスト、ミヒャエル・メビウスとCEOローラント・フォン・キース、それぞれ異なる視点から語られる“70年代の長い影”を通して、新生〈70s〉の魅力に迫る。
Glashütte Original and the Long Shadow of the ’70s
グラスヒュッテ・オリジナルに息づく、70年代が遺したもの
グラスヒュッテ・オリジナルの新作〈70s〉は、単なる1970年代へのオマージュではない。その背景には、東西に分断されたドイツで育った人々の記憶、限られた環境のなかで培われたものづくりの精神、そしてグラスヒュッテの時計産業が受け継いできた技術と哲学が息づいている。アーティスト、ミヒャエル・メビウスとCEOローラント・フォン・キース、それぞれ異なる視点から語られる“70年代の長い影”を通して、新生〈70s〉の魅力に迫る。
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by Tracey Llewellyn . Sep 16, 2026 |
グラスヒュッテ・オリジナルを愛する世界的アーティスト
1年前、私は『Revolution』を代表して、アーティストであり、コレクターであり、長年にわたってグラスヒュッテ・オリジナルと親交を深めてきたミヒャエル・メビウスとビデオ通話を行った。テーマは〈パノマティックカレンダー“Blue of Dawn”〉について語ること――少なくとも、当初の予定ではそうだった。
もちろん時計についても話した。だが会話は次第に、絵画、色彩、記憶、そしてグラスヒュッテ・オリジナルで働く人々へと広がっていった。メビウスは長年にわたって同社の時計を収集し、そのマニュファクチュールをよく知る存在でもあった。
30分の予定だったインタビューは、気づけば2時間を超えていた。そしてその頃には、〈パノマティックカレンダー〉はもはやインタビューの主題そのものではなく、より大きな物語へとつながる出発点になっていた。

▲〈パノマティックカレンダー “Blue of Dawn”〉
それから1年後、私は再びメビウスと会うため、ザクセン州を訪れた。初日はドレスデンにある彼のアトリエへ。制作途中の作品に囲まれた空間には、鮮やかな色彩とポップアート・リアリズムが特徴的な「Bubblegum」シリーズの肖像画が並び、ひと目で彼の世界観だとわかった。
それ以外にも目を引く作品は数多くあり、自然と会話はアートや音楽、そして幼少期の記憶へと広がっていった。時計の話題は、ほとんど出てこなかった。
翌日、私たちはグラスヒュッテで再会し、ようやくテーブルの上に1本の時計が置かれた。新作〈70s〉――以前は〈Seventies〉として知られていたコレクションの新たな呼称だ。昨年取り上げたパノ・コレクションとは対照的な存在である。
パノ・コレクションが左右非対称のオフセンター表示を特徴とするのに対し、〈70s〉はテレビスクリーンを思わせるスクエアケースを採用し、文字盤はよりオーソドックスなレイアウトにまとめられている。
メビウスは時計を手に取り、何度か表裏を返しながら眺める。そしてほどなく、話題はこの時計の着想源となった1970年代、そして当時の東ドイツで過ごした自身の記憶へと移っていった。
メビウスはこう語った。
「1970年代を思い返すと、ベルリンの壁の東側で育った少年だった自分の目を通して世界がよみがえります。当時の日常は、灰色で、単調で、どこか息苦しいものでした。それでも子どもにとって世界は、色彩に満ちていたのです。子どもは、自分が置かれた社会や体制を理解しているわけではありません。私はいつもイマジネーションと色彩を求めていました。その多くはディズニーのアニメから得ていましたが、当時の私たちにとってそれは正式には見ることのできないものでした。だからこそ、なおさら魔法のように感じられたのでしょう。私にとってディズニーは、別の世界をのぞく小さな窓だったのです」
メビウスは、あの時代を必要以上に美化することはしない。彼が語るのは、あくまでも子どもの頃に見た風景や、身の回りにあったもの、そして心を惹かれた出来事についてである。
ディズニーのアニメは、日常とは異なる世界を見せてくれる「窓」であり、夢や希望を抱くきっかけとなったという。そして約50年を経た現在も、彼の作品には、幼い頃に心を動かされた表現や躍動感が色濃く息づいている。
私が「なぜグラスヒュッテ・オリジナルに惹かれたのか」と尋ねると、メビウスは特定のムーブメントや複雑機構について語るのではなく、時代の荒波を乗り越えて受け継がれてきたブランドの個性に言及した。
「今になって振り返ると、グラスヒュッテ・オリジナルは東ドイツ時代からすでに時代を超えるクラシックを生み出していました。あのブランドには、当時の政治体制でさえ消すことのできなかった確かなアイデンティティがあります。そして、どんな時代であっても手仕事による高級機械式時計を作り続けたという事実は、時計史のなかでも屈指の物語だと思います」
その価値観は、メビウスがアートを語るときとも重なる。流行や一時的なトレンドよりも、揺るぎない個性を持つ人やブランドにこそ、彼は強く惹かれるのである。

▲ 〈70s〉を描いた『Revolution』の表紙をスケッチするミヒャエル・メビウス(©Revolution / Photography René Gaens)
スクエアという選択
〈70s〉は、もともとメビウスが強く望んでいたモデルではなかった。長年、彼が惹かれてきたのはパノ・コレクションであり、そのオフセンター表示は、彼自身が物を見る感覚にもよく馴染んでいたからだ。
これに対して〈70s〉は、より整然としており、少なくともスペックや写真だけを見れば、彼の好みとは少し異なるようにも思える。だが、初めて実機を手にした瞬間、その印象はすぐに変わったという。
メビウスはいう。
「手に取った瞬間、すぐに気に入りました。手にも目にも、同時に訴えかけてくる時計だったのです。複雑さによって人を惹きつける時計もありますが、〈70s〉は、肩の力が抜けた佇まい、エレガントな構成、そして静かな自信で私を魅了しました。〈70s〉とパノはまったく異なる時計ですが、どちらにもグラスヒュッテ・オリジナルらしさがはっきりと宿っています。どちらを選ぶかは、結局その日の場面や個人のスタイル次第です。〈70s〉によって、グラスヒュッテ・オリジナルに対する私の見方が変わったわけではありません。むしろ、その印象はさらに強くなりました。私が感心するのは、シンプルさだけでこれほど明確な個性を表現できる力です」
そう語る間も、時計はほとんど彼の手の中でじっとしていない。裏返し、文字盤に光を当て、指でブレスレットからケースへとつながるラインをなぞり、また文字盤へ視線を戻す。ムーブメントに目を向けるまで、数分を要したほどだ。
「私にとってプロポーションはとても重要です。グラスヒュッテ・オリジナルの非対称な時計や、オフセンター表示は大好きです。ですが〈70s〉は、まったく別のアプローチを取っています。ここにあるのは静けさとバランスです。大きな文字盤が、デザインに呼吸する余白を与えている。時計には、あとになって改めて意味を考えたくなるようなディテールがあり、それ自体が魅力になることも多い。グラスヒュッテ・オリジナルは、そうした素晴らしい時計を数多く生み出してきました。けれど〈70s〉は、デザイン言語が非常に明快なのです」
彼はいったん時計をテーブルに置く。しかし数秒後には再び手を伸ばし、笑みを浮かべながらこう続けた。
「実は、美しいモニターをエレガントなベゼルで囲んだようにも見えるんです。大きな文字盤は、まるでステージやキャンバスのようですね」
私は「アーティストであることが時計の集め方にも影響するのか」と尋ねた。彼は少し間を置いてから、こう答えた。
「コレクターは、アーティストであろうとなかろうと、やはりコレクターです。自然と情熱を通して時計を見るものです。ただ、アーティストの場合は、そこに別の可能性や視点、あるいはデザイン上の余地を見つけることがあるかもしれません。重要なのは、その組み合わせだと思います」
そして彼は再び〈70s〉を手に取った。
「フォルムと色彩が完璧に補い合っています。それに正直なところ、3つのカラーバリエーション――シルバーダイアル、ブラウンダイアル、そして限定モデルのブラックダイアル――はいずれも非常に成功していると思います。表現の余地がとても大きい。そこも、アーティストとして強く惹かれる理由のひとつですね」

▲ グラスヒュッテ・オリジナル〈70s “Vinyl Record” Limited Edition〉を着用するミヒャエル・メビウス(©Revolution / Photography René Gaens)
Profile:ミヒャエル・メビウス(Michael Moebius) 1968年、旧東ドイツ・ピルナ生まれ。ポップアートを代表するドイツ人アーティストで、マリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンを描いた「Bubblegum」シリーズで国際的な評価を獲得した。エンジニアとしての経歴を持ち、ドレスデン美術大学で人体解剖学を学んだ後、1998年にロサンゼルスへ渡る。現在はドレスデンを拠点に活動し、グラスヒュッテ・オリジナルとは長年にわたる親交を築く。時計愛好家としても知られ、同ブランドのクリエイティブな活動にもたびたび参加している。
経験が育んだもの
ドレスデンを後にしたとき、私の頭に残っていたのは、メビウスが語った幼少期の記憶だった。
翌朝、私はグラスヒュッテ・オリジナルCEO、ローラント・フォン・キースと会った。彼はメビウスとは反対側、西側で育った人物である。同じ時代についての記憶は大きく異なるが、彼が繰り返し語ったのは、東ドイツの人々がいかに物を作り、修理し、手に入らないものを工夫して補っていたかということだった。
フォン・キースは時計業界で30年以上の経験を積み、2018年にグラスヒュッテ・オリジナルのCEOに就任した。だが彼がこの町について語るとき、自分が何を持ち込んだかよりも、ここで何を見つけたかに関心を向ける。
その多くは、ドイツ再統一以前に町の時計生産を担っていた国営企業体、グラスヒュッテ・ウーレンベトリーベ(GUB)にまでさかのぼる。彼にとって、その時代の遺産とは、特定の時計そのものよりも、受け継がれてきた技術や仕事のやり方にこそある。
フォン・キースはいう。
「東ドイツで暮らしていた人々は、外の世界で何が起きているのか何も知らなかった、と思われがちです。でも、それはまったく違います。多くの人は西ドイツのテレビを見ることができたし、西ドイツのラジオも聴いていました。世の中で何が起きているのか、きちんと知っていたのです。デザインも理解していたし、エンジニアリングも理解していた。世界が何をしているのかは分かっていた。ただ、それに同じような形で参加できなかっただけです。ただし、西側から隔てられていたことには、良い面もありました。必要なものを簡単に買えないのであれば、自分たちで解決策を生み出すしかない。外注できないなら、自分たちでやる方法を身につける。そして時間が経つうちに、それが非常に得意になっていく。そんな考え方が、この土地の文化の一部になったのです」
メビウスが東ドイツでの幼少期を、色彩を探し求める子どもの視点から語ったのに対し、フォン・キースは同じ時代を別の方向から捉えている。GUBの時計師たちにとって、買えないもの、外注できないものがあれば、自分たちで作る方法を考えるしかなかった。内製することは特別なことではなく、この土地ではごく自然な仕事のやり方だったのである。
フォン・キースは続ける。
「旧東ドイツ時代に作られた時計は、ラグジュアリーグッズではなく、日常的に身につける信頼性の高い道具でした。だから、重視されたのは堅牢性、確実性、耐久性、そして機能性です。これらは現在のグラスヒュッテ・オリジナルにとっても重要な価値であり続けています。もちろん、時代とともに求められるものは変わり、現代のコレクターが時計に期待するものも違います。しかし、時計とはまず何よりも、実際に身につけて楽しめるものであるべきだという考えは、決して失われていないのです」

▲ ドレスデンのアトリエに立つミヒャエル・メビウス。背後には、人類の進歩と廃退をテーマにした新作《First Trash》。右手には、高級ブランドのショッピングバッグを抱えた機械仕掛けのロボット彫刻が置かれている(©Revolution / Photography René Gaens)
過去を再構築する
こうした姿勢が、〈Seventies〉を現代的に再解釈する出発点となった。ひとつの時計が15年にわたってコレクションに存在し続ければ、愛好家たちの間には、「ここは変えてほしい」「ここだけは変えてほしくない」という意見が募っていく。
新しい〈70s〉でグラスヒュッテ・オリジナルが目指したのは、かなり大きな変更を加えながらも、従来モデルの面影を失わせないことだった。
フォン・キースは語る。
「ブランドそのものが進化してきました。顧客の期待も変わっています。だから〈70s〉コレクションを今の時代に合わせる必要がありました。ただし、それはゼロから作り直すという意味ではありません。この時計は一日で生まれたものではないのです。何度もプロトタイプを作り、角度を変え、ケースをより柔らかな形に整え、プロポーションを見直し、ブレスレットを検討し、また最初からやり直す。その繰り返しでした。すでに多くの人が認識している個性を失わずに、どうすればさらに良くできるのか。それを常に問い続けていました」
新作はひと目で〈70s〉と分かる一方、変更点は決して少なくない。テレビスクリーンを思わせるケースは39mm×39mm、厚さ9.6mmとなり、サテン仕上げとポリッシュ仕上げの切り返しも、より滑らかになった。腕に載せた際の重心は低くなり、ブレスレットはケースへより自然に一体化している。
さらにブレスレットは左右それぞれ3mmの微調整が可能で、ブレスレットとラバーストラップは工具なしで交換できる。バタフライクラスプも同様に、工具を使わず取り外せるようになっている。

▲ 新たにデザインされたグラスヒュッテ・オリジナル〈70s〉のブレスレット(©Revolution / Photography René Gaens)
フォン・キースは、デザインと同じくらい人間工学についても重視している。
「高級時計は、機械的に完璧で、美しくなければなりません。しかし同時に、快適に身につけられることも不可欠です。ブレスレットは、時計とそれを身につける人をつなぐ存在です。その関係がしっくりこなければ、時計を身につける体験は完成しないのです」
文字盤にも多くの工夫が施されている。3つのモデルすべてに、新たな「Hexagrid」エンボス加工が採用され、光の当たり方によって表情が大きく変化する。ダイアルを囲むレオーは細身となり、針とインデックスも洗練された。
ソリッドゴールド製のアワーマーカーにはブラッシュ仕上げが施され、パノラマデイトの存在感も従来より控えめになっている。
ムーブメントはキャリバー36系で、限定モデルにはロジウムブラック仕上げのキャリバー36-10、通常モデル2種にはキャリバー36-11を搭載する。いずれも約100時間のパワーリザーブを備え、シリコン製ヘアスプリングを採用。3/4プレート、スケルトン加工を施したローター、21Kゴールド製の錘、ブルースクリューといったグラスヒュッテらしい意匠に加え、テンプ脇には手彫りのバランスコックも備わる。
各モデルの名称も、そのキャラクターを端的に表している。ブラックの限定モデルが“Vinyl Record”、シルバーダイアルが“Stereo Panel”、ブラウンダイアルが“Tweed Amp”だ。
それぞれ、レコードの溝、往年のHi-Fi機器に使われたブラッシュドアルミニウム、1970年代のアンプやスピーカーを覆っていたファブリックの質感を文字盤で表現している。
もっとも、フォン・キースは1970年代との歴史的な結びつきを必要以上に強調しようとはしない。〈70s〉は、忘れ去られたGUB時代の時計や、特定のアーカイブモデルを直接復刻したものではないからだ。
むしろ過去とのつながりは、グラスヒュッテ・オリジナルが何を、どのように作ってきたかという姿勢そのものにある。自社で作り、自ら解決策を見いだし、技術やノウハウをマニュファクチュールの中に蓄積し続けること。前日、メビウスが「経験が創造性を育む」と語っていたのも、突き詰めれば同じことなのだ。

▲ 往年のオーディオ機器を思わせるカラーが魅力的な〈70s “Tweed Amp”〉(©Revolution / Photography René Gaens)
人が生み出す力
これまでの〈70s〉(旧〈Seventies〉)は、メビウスの心を強く動かす存在ではなかった。しかし今回、新しいモデルとじっくり向き合った彼は、その個々の特徴を並べ立てようとはしない。彼が惹かれたのは、それらがひとつの完成された時計として調和していることだった。
メビウスはいう。
「長い間、私の関心はパノ・コレクションに向いていたので、〈70s〉に魅力を感じるようになったのは比較的最近のことです。時間をかけて気づいたのは、複雑さではなく完成度の高さでした。〈70s〉には、時間をかけて理解できる明快さとエレガンスがあります。今では、グラスヒュッテ・オリジナルを代表するモデルのひとつだと確信しています」
私は、そうした変化が自身の時計観にも表れているのか尋ねた。
「最近は、より開放感があり、機構や素材、ダイアルの構成をじっくり味わえる時計に惹かれます。以前好んでいた時計には、どこか窮屈さを感じるものもありました。今の私は、ゆとりや透明性を備えたデザインに魅力を感じるのです。新しいケースデザイン、驚くほど豊かな表情のダイアル、そしてブレスレットとの一体感。ディテールには、膨大な開発と革新が隠されています。見れば見るほど、新しい表情が見えてくる。それこそが、優れたデザインだと思うのです」
フォン・キースとメビウスは、ともにグラスヒュッテ・オリジナルと深い関わりを持ちながら、新しい〈70s〉をまったく異なる視点から見つめている。
フォン・キースが語るのは、この時計を生み出した「人」についてだ。彼は〈70s〉をひとりのデザイナーの作品として語ることはない。
代わりに挙げるのは、ムーブメント設計者、ダイアル職人、ケースのスペシャリスト、ブレスレットのエンジニアといった、それぞれ異なる役割を担うチームである。彼らは緊密に連携しながら時計を作り上げ、技術や知識はチームを越え、世代を越えて受け継がれていく。
一方、メビウスが関心を寄せるのは、それらすべてがひとつになったときに生まれる体験だ。
「ミヒャエル(・メビウス)にとって、時計とは五感で味わうものなのです」と、フォン・キースは笑顔で言った。
この2日間、〈70s〉を手に取り、眺め、語り続けるメビウスを見てきた私は、その意味がよく分かった。彼はムーブメントについて語り始める前に、まず時計のフォルムや手触り、そして光がケースやダイアルの上を移ろう様子に目を向けるのである。
グラスヒュッテ・オリジナルは、新しい〈70s〉を「アナログ・マジック」と表現している。正直に言えば、こうした言葉は、普通ならPR部門が考えたキャッチコピーとして受け流してしまうだろう。
しかし、この時計と時間を過ごしていると、その言葉の意味が少しずつ理解できてくる。ケースエッジの鋭さをどこまで残すか、ブレスレットの装着感はどうか、ダイアルはどう仕上げるのか——そういったことに、数カ月もの歳月が費やされた。その舞台裏を知るオーナーは、おそらく多くはないだろう。

▲ シルバーのHexagridダイアルとエンボス加工を施したラバーストラップを組み合わせた、グラスヒュッテ・オリジナル〈70s “Stereo Panel”〉(©Revolution / Photography René Gaens)
取材の終わりに、私はメビウスに「時代を超えるデザインというものは、本当に存在すると思いますか」と尋ねた。
彼は微笑みながら答えた。
「ええ、存在すると思います。そうでなければ、1970年代やそれ以前のある時代に生まれたデザインについて、今なお私たちが語り続けているはずがありません。それに、時計について“時代を超える”という話をすること自体、少し皮肉でもありますよね。でもデザイン、プロポーション、そしてエンジニアリングという意味では、私はタイムレスなものは確かに存在すると信じています」
メビウスとフォン・キースは、分断されていたドイツの壁を挟んで反対側で育ち、あの時代の記憶も大きく異なる。だが、グラスヒュッテ・オリジナルについて語るとき、ふたりが行き着く場所は不思議なほど同じだ。物を作ること、問題を解決すること、そしてその両方を知る人々である。
〈70s〉はGUB時代の時計そのものではない。しかしこの時計は、かつてどのように時計作りを学び、その技術を育んできたのかを忘れていない土地から生まれているのだ。
Tech Specs
グラスヒュッテ・オリジナル〈70s “Stereo Panel”〉〈70s “Tweed Amp”〉〈70s “Vinyl Record” Limited Edition〉 キャリバー:自動巻き キャリバー36-11(〈70s “Stereo Panel”〉、〈70s “Tweed Amp”〉)、またはブラックロジウム仕上げのキャリバー36-10(〈70s “Vinyl Record” Limited Edition〉)、パワーリザーブ約100時間 機能:時・分・センターセコンド、パノラマデイト ケース:ステンレススティール、39mm×39mm×9.6mm、100m防水 ダイアル:シルバー、ブラウン、またはブラック。Hexagridエンボス加工、スーパールミノバを塗布したソリッドゴールド製アプライドアワーマーカー ストラップ/ブレスレット:一体型ステンレススティールブレスレット、またはラバーストラップ。いずれも工具不要のクイックチェンジシステムを採用。バタフライクラスプは交換可能。ブレスレットは左右各3mmの微調整が可能 ¥1,848,000〜2,024,000 (〈70s “Stereo Panel”〉、〈70s “Tweed Amp”〉)、¥2,277,000(〈70s “Vinyl Record” Limited Edition〉)
Brands:Glashütte Original
※この記事は、9月17日発売の『Revolution USA』最新号に掲載されたものです。
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