オート・オルロジュリー(本格時計製造)は、必ずしも桁外れの価格を意味しない。複雑機構や伝統工芸、精緻な仕上げを備えながら、現実的な価格で手に入る時計も存在する。ここでは、時計製造の奥深さと優れたコストパフォーマンスを両立させた、注目の独立系ブランドを紹介する。
Affordable Haute Horlogerie
手の届く価格が嬉しい、オート・オルロジュリーのブランド10選
オート・オルロジュリー(本格時計製造)は、必ずしも桁外れの価格を意味しない。複雑機構や伝統工芸、精緻な仕上げを備えながら、現実的な価格で手に入る時計も存在する。ここでは、時計製造の奥深さと優れたコストパフォーマンスを両立させた、注目の独立系ブランドを紹介する。
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by Andre Frois. Apr 24, 2023 |
リーズナブルなおすすめブランドは?
コストパフォーマンスを求めるなら? 精緻に作り込まれたこれらのタイムピースは、思わず息を呑む仕上がりでありながら、人生の蓄えを揺るがすような価格ではない。言うまでもないことだが、ハイエンドの時計製造を極めたトップブランドの作品は、誰もが気軽に手を伸ばせるものではない。
しかしながら、ここで紹介する独立系ブランドは、その常識を軽やかに裏切る。メティエ・ダール、複雑機構、さらにはパーソナライズといった要素を備えながらも、驚くほどリーズナブルな価格帯に収まっているのだ。手頃でありながら視線を奪う一本を探しているなら、この先を読み進めてほしい。4桁台で手に入る“オート・オルロジュリー”の世界が、ここにある。
1.CHRISTOPHER WARD
クリストファー・ウォード
ミニッツリピーターやグランドソヌリといった鳴り物機構は、通常であれば最低でも6桁ドルクラス――すなわち数千万円規模の領域に属する。言うまでもなく、誰もが容易に手を伸ばせる世界ではない。
その既成概念を軽やかに覆したのが、英国ブランドのクリストファー・ウォードである。2004年に創業した同社は、英国で設計しスイスで組み上げるという体制のもと、価格と品質のバランスにおいて独自の立ち位置を築いてきた。
2022年11月に発表された〈C1 ベル カント〉は、まさにその象徴だ。チャイミング機構を備えながら、価格はUS$3,400。結果として、初回の300本は瞬く間に完売し、世界的な話題を呼んだ。
本機が搭載するのは、ミニッツリピーターではなく“ソヌリ・オ・パサージュ(時報機構)”。毎正時に自動で時を告げるか、あるいは消音するかを選択できる。
その機構的アプローチは異なるものの、音の演出と視覚的な構成は、従来のハイコンプリケーションに比肩する完成度である。

▲ クリストファー・ウォード〈C1 ベル カント〉に搭載されるのは、キャリバーFS01。セリタSW200-1をベースに、自社開発によって仕立てられたムーブメントである。ベースとなる汎用キャリバーの信頼性を活かしながら、独自のチャイミング機構を組み込むことで、価格と複雑機構のバランスを巧みに成立させている。
心臓部となるキャリバーFS01は、テクニカルディレクターであるフランク・ステルツァーの主導により開発された自社ムーブメントだ。セリタSW200-1をベースに、その上に載せられるチャイミング・モジュールのために、新たに60点以上の専用パーツが設計された。
この打鐘機構は、いわゆるハンマー&アンヴィル(槌と金床)システムを採用。コンパクトな構成のなかで、明確かつ印象的な音の演出を実現している。
ブルーダイヤルの〈C1 ベル カント〉が発表直後に完売したのち、クリストファー・ウォードはグリーンダイヤルのバリエーションを投入。こちらも瞬く間に市場から姿を消した。この流れを見るかぎり、クリストファー・ウォードは今後もチャイミングウォッチに力を入れていくだろう。
Brands:Christopher Ward
2.ANORDAIN
アンオーダイン
アンオーダインは、エナメルという高度な工芸技法に特化したスコットランドのブランドである。
エナメルは一般に、鉛、ソーダ灰、シリカなどを原料とし、塊状の素材を粉末に粉砕したのち、表面に塗布して窯で焼成することで完成する。
2015年の創業にあたり、この英国ブランドは160通り以上の試作を重ねた結果、5種類の不透明ダイヤルを発表した。アンオーダインのダイヤルが持つ艶やかで奥行きある色彩は、「ビトリアス・エナメル」と呼ばれる技法によるものだ。ダイヤル上にもその名が刻まれており、時計愛好家にはグラン・フー・エナメルとして知られる。
この工程では、溶融したエナメル粉末を極めて薄い金属ディスク上に幾層にも重ね、完全に融合させていく。その結果として得られる質感と発色は、他の手法では真似のできないものである。


▲ アンオーダインの時計の主役は、魅惑的なエナメル文字盤にほかならない。
エナメルの塗布と焼成を1回行うごとに、文字盤に異物や気泡がないかを入念にチェックする。それらを取り除き、再度整形されたのち、次の焼成工程へと進む。所定の厚みと理想的な発色に到達するまでには、摂氏800度を超える高温での焼成を何度も繰り返さなければならない。
こうして完成するビトリアス・エナメルは、厚さ1mmにも満たない、均一で完璧な工芸作品となる。その後、文字盤にはアンオーダイン独自の書体がパッド印刷され、完成した時計は6姿勢・48時間にわたる精度試験を経て製品化される。
アンオーダインはまた、ビトリアス・エナメルとは異なり、透過性のあるグラデーションを生み出すフュメ・エナメルも手がけている。
当初、透明エナメルを塗布した文字盤を焼成すると、中央が盛り上がる歪みが生じることに職人たちは気づいた。これを平らに研磨すると、外周部ではエナメル層が厚く、中央部では薄くなるため、結果として外側が濃く中心が明るいグラデーションが現れた。この“欠陥”を逆手に取り、デザインとしたのがフュメ・ダイヤルである。
まずシルバー製の文字盤ベースにわずかなドーム形状をプレスで与え、その上から透明エナメルを塗布して焼成し、研磨を施す。ドーム形状により、外周部ではエナメル層が厚く、中央では薄くなるため、周辺に向かって色が深まる独特の表情が生まれる。同時に、焼成時の歪みを防ぐため、文字盤の裏面にもエナメルが施されている。

▲ アンオーダインの熟練した職人たちは、エナメルという技法に深い敬意をもって向き合っている。ビトリアス・エナメルやフュメ・エナメルといった、長い工程と多くの手間を要する技法を手がけるだけでなく、クロワゾネやシャンルヴェといった他のエナメル技法の研究にも時間を費やしている。
アンオーダインの専属ジュエラーはアダム・ヘンダーソン、エナメル部門を担うモーナ、ニッキー、サリーの3名はいずれもジュエリー分野の学位取得後、長年にわたり技術を磨いてきた職人たちである。彼らは現在も、クロワゾネやシャンルヴェなど異なるエナメル技法を専門とする職人のもとで学び続け、その技術と表現をさらに深化させている。
アンオーダインの価格は、税抜きでおおよそ1,500から3,000ポンドである。
Brands:anOdain
3.OPHION
オフィオン
オフィオンは、現代を代表する時計師カリ・ヴティライネンが手がけるケースデザインを、これまでになく身近な価格で享受できるブランドとして注目を集めている。
2015年に創業したオフィオンは、ヴティライネンが一部出資するケースメーカー、ヴティライネン&カッティンS.A.製のケースを採用した時計を約3,000ユーロで展開し、話題を呼んだ。同社はケース製造を専門とする企業であり、その品質と仕上げは高く評価されている。
オフィオンの時計には、ヴティライネンのデザイン言語を象徴するティアドロップラグが採用されている。これらのラグは、ポリッシュ仕上げのステンレススティール製ケースに不可視の溶接技術によって接合されており、あたかも一体成形されたケースのような外観をしている。

▲ 精緻に仕上げられたダイヤルを彩る、矢じり型のヴェロス時針やレーザーカットのインデックス、そして洗練されたアラビア数字などが見どころである。
オフィオンの時計はアール・デコにインスパイアされており、そのムーブメントには価格帯からは想像できないほど緻密な装飾が施されている。
代表モデル、オフィオン〈786 ヴェロス〉は、矢じり型の“ヴェロス”時針を特徴とする(“Vélos”はギリシャ語で「矢」を意味する)。内側へと緩やかに湾曲した先端を持つ分針と秒針、そして精巧に仕上げられたダイヤル表面に目を奪われる。
そのダイヤルは、控えめで上品なブラッシュ仕上げから、引き込まれるようなギヨシェ装飾に至るまで幅広い。レーザーカットによるミニッツトラックやアプライドインデックス、さらに内外両面に施されたダイヤモンド面取りが、これら微細なディテールを一層際立たせている。
大ぶりで凹面形状の“ヴェロス”ポインターは、ニッケル仕上げまたはブルーPVDで仕上げられる。
ムーブメント内部に目を移せば、ブリッジやプレートにはサンドブラスト、ブラッシュ、グルナイユといった仕上げが施されており、価格を超えた完成度を感じさせる。

▲ オフィオン〈786 ヴェロス〉シンガポール限定モデル。サーモンレッドダイヤル(左)とラジアルレッドダイヤル(右)

▲ オフィオンの時計は、精緻に作り込まれた多彩で魅力的なダイヤルと、ヴティライネン&カッティンS.A.製ケースを備えている。トランスパレント仕様のケースバック越しには、グルナイユ仕上げやサンドブラスト仕上げが施されたプレートを鑑賞することができる。
オフィオンは近年、ラグジュアリーウォッチのコレクター比率が人口あたりで非常に高いシンガポールに向けて、2つの限定モデルを発表した。〈786 ヴェロス〉シンガポール限定モデルは、ラジアルレッドとサーモンレッドの2種で展開され、いずれも世界限定55本となる。
シルバーまたはサーマルブルー仕上げのアラビア数字やレーザーカットのミニッツマーカーの背後には、グルナイユまたはサンドブラスト仕上げのプレート、面取りされたブリッジ、そしてブラッシュ仕上げのテンプ受けを備えたムーブメントが収められている。細部に至るまでこだわり抜くブランドの姿勢は、賞賛されてしかるべきである。
Brands:Ophion
4.SARTORY BILLARD
サルトリー・ビラール
サルトリー・ビラールのウェブサイトを開くと、まず目に飛び込んでくるのは「あなたにはビスポークウォッチを持つ価値がある」というメッセージだ。そして、その提案は驚くほど現実的な価格で実現される。
創業者でありデザイナーでもあるアルマン・ビラールは、圧倒的なカスタマイズの自由度を備えたハンドメイドウォッチによって、私たちを強く惹きつける。
元インダストリアルデザイナーである彼が現在展開するのは、〈SB04〉と〈SB05〉の2コレクション(その後コレクションは拡張された)。前者は40mmケースの自動巻きモデルで、価格は4,000ユーロ未満からスタート。後者は38mmの手巻きモデルで、こちらは1万ユーロ未満からの設定となる。
たとえば〈SB04〉では、フルポリッシュ仕上げのチタンケースや、複数の仕上げを組み合わせた仕様を選択可能だ。さらに、貴金属やパターン加工を施したスチール、あるいはカーボンファイバーといった素材も用意される。ダイヤルについても、熱処理によってバーガンディ、パープル、ブルーといった多彩な色調を表現することができる。

▲ サルトリー・ビラールは、カスタマイズの幅広さにおいて際立っており、多彩なプレシャスストーンダイヤルから選択できるほか、時計の各パーツに熱処理を施して異なる色調を引き出すことも可能だ。
サルトリー・ビラールの時計に用意されるストーンダイヤルおよびギヨシェダイヤルの完成度は申し分ない。さらに両者を組み合わせた仕様をオーダーすることも可能だ。ストーンの選択肢には、さまざまな色調のアベンチュリンやマザー・オブ・パール、アバロンモザイクのマザー・オブ・パール、世界各地の翡翠、ルビー、オパール、ターコイズ、フェライト、ラピスラズリ、マラカイト、オニキス、各種ジャスパー、タイガーズアイ、ブルズアイ、ファルコンズアイ、さらには隕石などが含まれる。
インデックスはポリッシュ、マット、あるいは熱処理によるカラー仕上げから選択でき、ダイヤルは夜光の有無も指定可能だ。ケースの各パーツについても、さまざまな色や仕上げが用意されている。アルマン・ビラールとそのチームはエングレービングにも対応する。
さらに〈SB05〉では、偶数時の表示としてアラビア数字、中国数字、インド数字、ローマ数字から選択でき、奇数時はマーカーで示される独自のレイアウトを採用する。ダイヤル素材もチタン、ギヨシェ仕上げ、シルバー、真鍮、各種ストーンから選択可能で、ネームや引用句を刻むプレートのカスタマイズにも対応する。
サルトリー・ビラールの多才な職人たちに、限界は存在しない。
Brands:Sartory Billard
5.HORAGE
オラージュ
オラージュは、〈オータルク〉、〈トゥールビヨン 1〉、〈スーパーシード〉といったモデルで知られるブランドだが、とりわけ国際的な話題を呼んだのが〈レンズマン 1〉である。2022年10月に発表されたこのタイムピースは、高級カメラ機材の美学から着想を得ている。
2007年の創業以来、このスイスブランドは3つの自社キャリバーを開発してきた。そのひとつであるK-TOUトゥールビヨンムーブメントが〈レンズマン 1〉を駆動する。本作は〈トゥールビヨン〉に続くモデルとして登場し、価格は8,890スイスフラン。自社製スイス・トゥールビヨンとしては、きわめて手の届きやすい存在だ。さらに、日差−4秒から+6秒というクロノメーター精度を備えている点も見逃せない。

▲ テクスチャー加工が施されたベゼルや、距離目盛りや絞り値を思わせる外周の数字表示、さらにフライングトゥールビヨン上に配された拡大レンズなど、〈レンズマン 1〉にはプロフェッショナル向けカメラ機材を想起させるディテールが随所に盛り込まれている。
ブラックアウトされたダイヤルは、漆黒のカメラ機材から着想を得たものであり、ハンドポリッシュとブラッシュを組み合わせたT5チタンケースとの美しいコントラストを生み出している。ケース外周には、レンズのフォーカスリングを思わせるテクスチャー加工が施され、距離目盛りや絞り値を模した数字も配されている。
オブシディアン(天然の黒いガラス)のようなダイヤル上には、スーパールミノバが塗布されたインデックスと針が配置され、ブラックオニキスをインサートしたプッシュ/プル式リューズがその洗練された佇まいを引き立てる。
さらにこの個性的なダイヤルを際立たせているのが、6時位置のフライングトゥールビヨンを拡大する大型のサイクロップレンズである。
このトゥールビヨンのチタン製ケージはわずか0.29g、厚さ3.4mmという軽量設計を誇る。慣性をさらに低減するため、脱進車とアンクルにはシリコンが採用され、摩擦を低減している。シリコン製ヒゲゼンマイも備えている。
こうした技術は近年までCSEM(シリコン時計技術を握っていたスイスの大手連合 )に限られていたものだ。上部には、ブルーのスクリューが秒表示の役割も兼ねて配置されている。
ケースを裏返せば、シースルーのケースバック越しに自社製ムーブメントを鑑賞できる。二重無反射コーティングのサファイアクリスタルを通して眺めるその姿は、まさに芸術作品だ。その外周には、フランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソンの言葉―「頭と目と心を同じ軸上に置け」―が刻まれている。
Brands:Horage
まだまだあるおすすめブランド
現代の時計市場は多様性に富み、かつ民主化が進んでいる。手頃な価格でありながら心を掴む一本を見つけることは、もはや難しいことではない。
数カ月分の給与を費やすことなく、個性と魅力を兼ね備えたタイムピースを求めるなら、ブリュー・ウォッチ、フェインマン、スタジオ・アンダードッグ、ゼリック、イエマといったブランドに目を向けてみるといいだろう。
選択肢は、まだまだ尽きない。
6.BREW WATCHES
ブリューウォッチ
ブリュー・ウォッチは、インダストリアルデザイナーのジョナサン・フェラーが立ち上げた、ニューヨーク発の独立系マイクロブランドである。コーヒーを飲みながら過ごすひとときや、エスプレッソマシンの工業的な造形をデザインの着想源としている。
ブランド名の「Brew」はコーヒーを淹れることを意味するが、単にコーヒーをモチーフにした時計ではない。忙しい日常のなかで一息つき、その瞬間を味わうという考え方を、時計として表現している。
代表作は、1970年代のテレビ画面を思わせるクッション型ケースを備えた〈メトリック〉。レトロな配色とグラフィカルな文字盤、コンパクトなサイズ感を組み合わせたデザインで知られる。時計製造の伝統性よりも、独創的なデザイン、手頃な価格、日常での楽しさを重視するブランドといえる。

▲ブリュー・ウォッチ〈メトリック レトロダイヤル〉。ニューヨーク発のブランドがプロデュースする、1970年代のテレビ画面を思わせるクッションケースとレトロな配色を組み合わせた一本。
Brands:Brew Watches
7.FEYNMAN
ファインマン
ファインマン・タイムキーパーズは、2018年にシンガポールで設立された独立系マイクロブランドである。創業者リム・ヨンキョンの長男の名をブランド名に採用しており、家族への思いと時計への情熱を出発点としている。
特徴は、量産ブランドとは異なる個性的な文字盤と、クラシックな時計デザインを現代的に再解釈したスタイルにある。代表作には〈ファインマン・ワン〉やダイバーズウォッチの〈コーヴ〉があり、コレクターが手持ちの時計とは異なる一本を楽しめることを重視している。

▲ ファインマン〈コアレス”パンダ”〉。コレクションの中でもパンダは視覚的なコントラストを主題とした一本である。一般に“パンダダイヤル”と呼ばれる白地に黒の対比をベースにしながら、本作ではメティエ・ダールの文脈で再解釈されている。
Brands:Feynman
8.STUDIO UNDERDOG
スタジオ アンダードッグ
スタジオ・アンダードッグは、リチャード・ベンクが2020年に英国で立ち上げた独立系時計ブランドである。伝統や格式を前面に出すのではなく、鮮やかな色彩とユーモアを取り入れた、遊び心のある時計づくりで知られている。
代表作は、スイカをイメージした〈ウォーターメロン〉や、ミントチョコレートを表現した〈ミント・チョコ・チップ〉など。大胆な配色と個性的な文字盤を、クラシックな機械式クロノグラフの構成に組み合わせている。現在は英国メイデンヘッドの自社工房で組み立てを行っている。

▲ スタジオ アンダードッグ〈ミント チョコ チップ〉。ミントチョコレートアイスから着想を得たこのモデルは、パステルグリーンのダイヤルに“チョコチップ”を思わせるインデックスを配し、遊び心とデザイン性を大胆に融合させている。
Brands:Studio underd0g
9.ZELOS
ゼロス
ゼロスは、エルシャン・タンが2014年に創業した、シンガポール発の独立系マイクロブランドである。ブランド名は、ギリシャ語で「情熱」を意味する言葉に由来する。
ブロンズ、隕石、フォージドカーボン、ティマスカスなど、個性的な素材を積極的に採用するのが特徴。とりわけ〈ソードフィッシュ〉や〈ハンマーヘッド〉に代表される、堅牢で存在感のあるダイバーズウォッチで支持を集めてきた。

▲ゼロス〈オーロラ フィールド〉。 ダイヤルはハンマード調のテクスチャーとフュメ仕上げを組み合わせ、中心から外周へと色の深みを増し、光の角度によって表情を変える。
Brands:Zelos
10.YEMA
イエマ
イエマは、1948年に時計師アンリ=ルイ・ベルモンが創業した、フランスの独立系時計ブランドである。フランス時計産業の中心地モルトーを拠点とし、ダイビング、モータースポーツ、航空、宇宙探査に向けた本格的なツールウォッチを製作してきた。
代表作は、独自のベゼルロック機構を備えたダイバーズウォッチ〈スーパーマン〉。このほか、レーシングクロノグラフ〈ラリーグラフ〉、ヨット競技用の〈ヨッティングラフ〉、宇宙飛行士のための〈スペーショノート〉などでも知られる。現在は自社ムーブメントの開発や部品製造にも力を入れている。

▲ イエマの〈ネイビーグラフ FSM〉は、フランス海軍戦略海洋部隊(FOST)との関係性を背景に持つミリタリーダイバー。ブロンズケース仕様は、とりわけ存在感の強い一本だ。
Brands:Yema
中国最大の機械式時計メーカー、シーガルの〈1963〉も見逃せない。500ユーロ未満でコラムホイール式クロノグラフを手にできる一本であり、ヴィンテージの魅力を色濃く残している。また、台湾初のヴィンテージパーツを用いた回帰的なデザインで話題を呼んだマイクロブランド、ハヴァーン・トゥヴァリにも注目したい。
2014年、当時26歳のエルシャン・タンによってシンガポールで創業されたゼロスは、ブロンズやフォージドカーボン、隕石といった個性的な素材を用いた無骨なダイバーズウォッチで知られるブランドだ。近年では、ラ・ジュー・ペレ製の薄型スケルトントゥールビヨンムーブメントを搭載した〈ミラージュ トゥールビヨン〉を発表し、より上位市場へと歩みを進めている。
さらに、カナダ発のソリオスはソーラー駆動の腕時計を展開し、汎用性とエレガンスを兼ね備えたコレクションで存在感を示している。
そして、アイコニックな〈アキュトロン〉で知られるブローバも、現在では〈ルナ パイロット〉や〈オーシャノグラファー〉といったヘリテージモデルの復刻を含め、幅広い価格帯の時計を展開している。
なおアキュトロンは、2020年に親会社であるシチズングループのもとで独立ブランドとして再始動し、ミヨタが開発した新しい静電ムーブメントを搭載した〈スペースビュー〉によって、往年のデザインを現代に蘇らせている。
世界各地では、このように個性豊かなブランドが次々と生まれている。それぞれが異なる美意識や志向を持つコレクターに応える存在であり、伝統的な時計製造の技術が広く継承される一方で、新たな手法やスタイル、表現もまた進化を続けている。目を凝らし続ける限り、いつも新しい発見がある――それが現代の時計シーンの醍醐味である。
