史上最高のクロノグラフムーブメントとは何か。その問いに、Revolutionファウンダー、ウエイ・コーはレマニアCal.2310の名を挙げる。オメガCal.321として月へ到達し、さらにパテック フィリップ、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロジェ・デュブイへと受け継がれた伝説のキャリバー。その誕生から進化、そして現代に至る系譜をひも解く。。
The Complete History of the Amazing Lemania Chronograph Calibre 2310
レマニアCal.2310―史上最高のクロノムーブ、そのすべて
史上最高のクロノグラフムーブメントとは何か。その問いに、Revolutionファウンダー、ウエイ・コーはレマニアCal.2310の名を挙げる。オメガCal.321として月へ到達し、さらにパテック フィリップ、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロジェ・デュブイへと受け継がれた伝説のキャリバー。その誕生から進化、そして現代に至る系譜をひも解く。
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by Wei Koh . Dec 20, 2020 |
なぜ史上最高なのか?
私にとって、レマニア2310、あるいは、開発段階での名称であるCH 27は、もっとも美しく、歴史的意義に富み、そして間違いなく史上最高のクロノグラフムーブメントである。設計はレマニアの技術責任者だったアルベール・ギュスターヴ・ピゲによる。
もちろん私は、1920年代のヴィクトラン・ピゲ製エボーシュムーブメントや、ロンジンCal.13.33Z、さらにはバルジュー13-130まで考慮したうえで、そう断言している。
2310に関して、とりわけ驚異的だと思う点は3つある。
まず第1に、1942年の登場時において、このムーブメントが示した技術的飛躍である。
直径27mm、厚さ6.74mmというサイズは、当時として世界最小のクロノグラフムーブメントだった。13リーニュ(約29mm)のロンジン13.33Zやバルジュー13-130を、かなり大きな差で上回っていたのである。
ちなみに、パテック フィリップ Ref.130の33mmケースにおいて、サブダイヤルがケース外周ぎりぎりまで押し広げられている理由を不思議に思ったことがあるなら、それは内部に搭載されたバルジュー製ムーブメントが大きかったからだ。2310は小型ムーブメントだったことで、さまざまなケースデザインや仕様へ柔軟に対応できた。
第2に、1946年から1968年にかけて、オメガがCal.321として採用したことである。
オメガ321は、驚異的な性能と信頼性によってNASAによる苛烈な耐久試験を通過し、宇宙での認定を受けた唯一の時計を駆動するムーブメントとなった。

▲ 左:1950年代製レマニア製ローズゴールド・クロノグラフのシースルーバック。レマニア2310は、その堅牢かつ汎用性に優れた設計によって一目で判別できるムーブメントである。コラムホイール制御機構を採用し、レバーやスプリングは厚いスチール板から切り出し・成形されている。ブリッジにはピンクゴールドメッキが施され、仕上げは実用性を重視したものとなっている。右:レマニア2310に採用されたコラムホイール制御機構(Image: ninanet.net; SteveG’s Watch Launchpad)

▲ オメガ独自仕様によるレマニア2310、Cal.321を搭載したオメガ スピードマスター Ref.ST105.012。Cal.321は1959年から1968年までスピードマスターに採用され、その後Cal.861へ置き換えられた。なお、ST105.012およびST145.012は、アポロ宇宙飛行士たちとともに月へ到達したスピードマスターとして知られている(©Revolution)
第3に重要なのは、1980年代において、レマニア2310が“エボーシュ供給されていた唯一の古典的手巻きコラムホイール式クロノグラフ”だったという点である。
その結果、このムーブメントはクォーツショック後のスイス時計産業復興において決定的な役割を果たした。
パテック フィリップ、ブレゲ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ロジェ・デュブイといったメゾンが、機械式クロノグラフ復活の狼煙を上げることを可能にしたのである。
さらに、パテック フィリップとブレゲは、このムーブメントをベースにスプリットセコンドまで開発している。伝説的経営者フィリップ・スターン本人から聞いた話によれば、これは極めて高度な技術的挑戦だったという。
ここで理解すべきなのは、オメガの存在なくしてCal.2310は誕生しなかった、ということである。20世紀初頭までに、オメガはすでにクロノグラフ機構の代名詞的存在となっていた。実際、1898年には最初の懐中時計用クロノグラフムーブメント19”’CHROを発表している。
続いて1906年には18”’CHROが登場。これも懐中時計用ムーブメントだったが、世界初の腕時計型クロノグラフにも転用されたことで有名である。18”’CHROと19”’CHROはいずれもモノプッシャー構成で、スタート/ストップ/リセットのすべてを単一プッシャーで操作していた。
その後オメガは、39 CHROというムーブメントを開発する。これは1929年から1940年にかけて製造されたもので、主に懐中時計用だったが、一部は腕時計にも使用された。これには、モノプッシャー仕様と2プッシャー仕様の両方が存在した。
そして、その時代に“世界恐慌”が訪れるのである。

▲ オメガ・ミュージアムに保管されている18”’CHROキャリバー。

▲ 1940年代製、Cal.39 CHROを搭載したオメガ Ref.1067 マルチスケール・モノプッシャー・クロノグラフ懐中時計(Image: bruun-rasmussen.dk)
実用クロノグラフの時代
1929年に始まり、およそ10年にわたって続いた世界恐慌は、人為的に吊り上げられた株価の崩壊によって引き起こされた。1920年代の享楽的な“ジャズ・エイジ”において、人々はこぞって株式市場の強気相場に乗ったが、ある日それは突然崩壊した。市場に対する信頼は世界規模で完全に失われ、金融と経済は未曾有の惨状へと陥ったのである。
当然ながら、機械式時計への需要も深刻な打撃を受けた。

▲ 写真家ドロシア・ラングによる《ミグラント・マザー(移民の母)》(1936年)――3人の幼い子どもを抱えた貧困状態の移民労働者の母親、フローレンス・オーウェンズ・トンプソン(32歳)が、遠くを見つめる姿を捉えている。農業安定局(FSA)の依頼によって撮影されたこの作品は、多くのアメリカ人にとって世界恐慌を象徴するイメージとなった(Getty Images)
恐慌の危機を乗り切るため、会社同士、力を合わせる必要に迫られた。その流れの中で、オメガ、ティソ、そしてレマニアは1930年から1932年にかけて提携し、“SSIH(Société Suisse pour l’Industrie Horlogère)”と呼ばれる新たなグループを形成した。
レマニアはオメガ向けムーブメントの独占供給メーカーとなり、1936年までには、常時50万個ものレマニア製ムーブメントが生産される体制が築かれていた。
この時代には、腕時計用クロノグラフのために特別設計された、最初期の“真にモダンな”ムーブメントが2つ誕生している。
ひとつは、1932年に発表された、レマニアCH 13をベースとするオメガ28.9 CHROである。直径29mmのこのムーブメントは、美しいV字型ブリッジを特徴としていた。
もうひとつは、1933年に登場した、レマニアCH 15ベースの33.3 CHROである。
こちらは直径33.3mmで、後のオメガCal.321にも受け継がれる独特なU字型ブリッジを採用していた。 33.3 CHROを搭載したオメガは、後のレマニア2310/オメガ321へと連なる重要な前身機であることから、現在では非常に人気が高い。
なお、28.9 CHROと33.3 CHROはいずれも、SSIH統合以前から開発が進められていたことが明らかになっている。

▲ レマニア2310、すなわち後にCH 27、さらにCal.321へと発展していく、オメガ製クロノグラフ・キャリバーの系譜。なお、27 CHROのレイアウトは、それ以前の28.9 CHRO、そして33.3 CHROとは左右反転した配置になっている点にも注目したい(Image:omegaforums.net)
これら2つのムーブメントについて議論の対象となってきたのは、そのレイアウトが18‴ CHROおよび39 CHROとは逆向きになっている点である。つまり、33.3 CHROや28.9 CHRO搭載時計を表側から見て文字盤を外すと、テンプは6時位置に現れる。一方、18‴ CHROや39 CHROでは、テンプは12時位置に配置されていた。
多くの人は、33.3 CHROと28.9 CHROが腕時計用ムーブメントであり、18‴ CHROと39 CHROが懐中時計用ムーブメントだったためだと考えている。しかし実際のところ、その理由を明確に知る者はいない。
面白いことに、アルベール・ギュスターヴ・ピゲがレマニア2310、すなわちCH 27の開発に着手した際、彼は再びレイアウトを反転させ、テンプを12時位置へ戻している。
では、この新しいムーブメント誕生の原動力となったものは何だったのだろうか。

▲レマニアを代表するムーブメント技師アルベール・ギュスターヴ・ピゲ。
まず第1に、人気の中心が懐中時計から腕時計へ移行していたことから、より小径な腕時計用ムーブメントが必要とされていたことだ。そのためピゲには、「可能な限り小さなクロノグラフ・ムーブメントを設計せよ」という課題が与えられ、彼は直径27mmというサイズにたどり着く。
第2に、レマニアとオメガは、新たな“実用クロノグラフ”の開発を目指していた。それは小型かつ薄型であり、さらに当時急速に発展していたモータースポーツや航空分野に不可欠だった12時間積算計を備えることが重要条件だった。
そして第3に、2310は、新たに統合されたSSIHグループ体制下における最初期の重要プロジェクトのひとつでもあった。
つまり、あらゆる意味において、レマニア2310は20世紀における“モダン世界の到来”を象徴するムーブメントだったのである。
2カウンター仕様と3カウンター仕様
1942年、Cal.2310、すなわちCH 27は、2種類の仕様で登場した。
ひとつは、スモールセコンドと30分積算計を備えた2カウンター仕様のCH 27-17P。もうひとつは、スモールセコンド、30分積算計、さらに12時間積算計を備えた3カウンター仕様のCH 27-12Pである。
さらに話を複雑にしているのが、このムーブメントには17石仕様と21石仕様が存在した点だ。17石仕様は後のオメガCal.321のベースとなった一方、スワンネック緩急針を備えた21石仕様は、レマニア2320として知られている。
これを整理すると、1980〜90年代にこのムーブメントを採用した高級ブランド群は、いずれも21石・スワンネック緩急針仕様の2320を使用していたが、カウンター構成は2カウンターだった。つまり、厳密には彼らが採用していたのはCH 27-17Pである。
対してオメガは、17石仕様の3カウンター版2310、すなわち正確にはCH 27-12PをCal.321として使用していた。
Cal.2310は、まさしく機械美の結晶と呼ぶべき存在である。ここから、その中心的な特徴を見ていこう。

1.大型のテンプは毎時1万8000振動で作動する。ただし、多くのブランドは後年、この振動数を毎時2万1600振動へと引き上げている。
2.コラムホイールはクロノグラフの司令塔とも言うべき存在である。優れたクロノグラフの多くは、このコラムホイールによってスタート、ストップ、リセットの一連の操作を制御している。
3.中間ブリッジは、30分積算計用の車輪と、極めて重要なクロノグラフ・センターセコンド車を固定する役割を担う。なお、このブリッジ形状は各ブランドにおける美的表現の対象ともなってきた。
・パテック フィリップは明確なV字型。
・ヴァシュロン・コンスタンタンはV字とY字の中間。
・ロジェ・デュブイは完全なY字、あるいはウィッシュボーン形状。
・オメガ321はU字型。
・ブレゲはU字とY字の中間型。
4.クロノグラフ連結レバー、秒車(常時秒表示を駆動する秒車と同軸)、そして中間車(ドライブホイール)は、クロノグラフ秒針車のすぐ脇にコンパクトに配置されている。
5.クロノグラフ秒針車と30分積算計用のリセットハンマーは、一体構造となっている。
レマニア2310は非常に高い調整自由度を備えており、たとえばドライブホイールの噛み合い深さまで調整可能となっている。

▲ 1969年に自動巻きクロノグラフが誕生する遥か以前、レマニア2310をベースにした試作自動巻きムーブメントは、世界初の自動巻きクロノグラフだった可能性が極めて高い(Image: Northernman from omegaforums.net)
ムーブメント愛好家たちの興味を長年惹きつけてきた画像のひとつに、自動巻き化されたレマニア2310ベース試作ムーブメントの写真がある。これは1947年製とされているが、結局量産化されることはなかった。
しかし、ゼニス エル・プリメロが誕生する12年も前の時点で、すでに自動巻き一体型クロノグラフの実験が行われていたとは驚きである。
オメガ スピードマスター Cal.321(1957–1968年)
名機、レマニア2310/CH 27-12Pと最も強く結びついているブランドは、間違いなくオメガである。1946年、オメガはこのムーブメントの自社版を開発し、Cal.321と名付けた。〈スピードマスター〉クロノグラフは当初、アメリカとヨーロッパを席巻していた急成長中のモータースポーツ文化の需要に応えるために誕生したモデルだった。
このムーブメントはそれ以前にも複数のオメガ製クロノグラフに使用されていたが、その真価を発揮したのは、世界で初めてタキメータースケールをベゼルに刻んだクロノグラフ――〈スピードマスター〉に搭載されてからである。 そして周知の通り、この時計は後にNASA公式時計として採用される。実際に宇宙へ携行されたモデルは、以下の3リファレンスのみだった。
Ref.105.003 / Ref.105.012 / Ref.145.012
そして、それらすべてに搭載されていたのがCal.321である。

▲ 左:第3世代にあたる1963年製〈スピードマスター〉ST 105.003(Image: Christies.com) 中:脈拍計スケールベゼルを備えた〈スピードマスター〉Ref.ST 105.012(Image: Christies.com) 右:DON(Dot Over Ninety=タキメーターのドットが90の上にある)ベゼルを備えた〈スピードマスター〉Ref.ST 145.012(Image: Christies.com)
このムーブメントの偉大な歴史へのオマージュとして、オメガの敏腕CEO、レイナルド・アッシェリマンは2019年、Cal.321を復活させた。
このムーブメントは、オメガ・マニュファクチュール内に新設された専用工房で製造されている。
各ムーブメントは、ひとりの時計師によって組み立て、調整、仕上げ、そしてケーシングまで一貫して行われ、その時計師自身が321搭載時計の保証書に署名する。
アッシェリマンが強調するのは、現代のCal.321は、レマニア2310のエボーシュを単に豪華に仕立て直したものではないという点だ。それは完全にゼロから再設計された、新世代のムーブメントなのである。

▲ 左:オメガ〈スピードマスター キャリバー321〉プラチナ製。右:オメガ〈スピードマスター キャリバー321〉ステンレススティール製。

▲ オメガが2019年に発表した新生Cal.321。ブリッジとプレートには、オメガ独自のセドナ™ゴールドの色味を再現したPVD処理が施されている(©Revolution)。
アッシェリマンはこう語っている。
「スピードマスター・コレクターたちに“夢は何か”と尋ねたところ、圧倒的多数が“Cal.321の復活を見たい”と答えました。そこで私たちは、“もしやるなら、正しいやり方でやらなければならない”と考えたのです」
オメガは、同じスウォッチ グループ傘下にあるブレゲから既存のレマニア2310エボーシュを流用するのではなく、オリジナルの321を完全かつ正確にリバースエンジニアリングする道を選んだ。しかも単なる復刻ではなく、寸法や構造に至るまで、可能な限り忠実に再現することを目指したのである。
このプロジェクトを実現するため、アッシェリマン率いるオメガのチームは、まずスウォッチ グループ取締役会の承認を得なければならなかった。 純粋に採算面だけを考えれば、321を復活させる意味はほとんどなかった。
ましてオメガが選んだ方法は、NASA宇宙飛行士ジーン・サーナンが実際に月へ携行し、現在はオメガ・ミュージアムに所蔵されている〈スピードマスター〉ST 105.003搭載ムーブメントを、断層ごとに3Dトモグラフィースキャンするという、途方もないものだった。 このスキャンだけでも、費用は100万スイスフランを超えたという。
さらに、極めて特殊なガードピンを備えたオリジナル形状のアンクルを完全再現するため、オメガはニヴァロックスにも協力を依頼し、細部に至るまで部品を作り直させている。
アッシェリマンは続ける。
「この驚異的なムーブメント、そして321を愛する人々、さらにはスピードマスターの歴史に情熱を注ぐ膨大なファンたちに対して敬意を払う唯一の方法は、こうした執念とも言える細部へのこだわりを貫き、321を完璧に蘇らせることでした。オメガにとって、それ以外の方法は存在しなかったのです」

▲オメガCEO、レイナルド・アッシェリマン(©Revolution)
パテック フィリップ Cal.CH 27-70(1985–2011年)
1980年代、レマニア2310は、名門メゾンたちにとって“表現のキャンバス”とも言える存在となった。その先陣を切ったのが、パテック フィリップである。
驚くべきことに、フィリップ・スターンは1985年、Ref.2499に搭載されていたバルジュー13-130に代わり、レマニア2320(CH 27-17P)を採用した。こうして誕生したのが、伝説的な永久カレンダー・クロノグラフRef.3970であった。
パテック フィリップにおけるこのムーブメント名はCH 27-70である。レマニア2320の直径が27mmと比較的小径だったことから、スターンはRef.2499の37.5mmケースよりも小さい、36mmケースを実現することに成功している。

▲ 1985年にパテック フィリップから発表された永久カレンダー・クロノグラフRef.3970は、レマニア2310/2320をベースとしたCH 27-70が使われ、再びパテック フィリップが時計製造の最高峰へ回帰したことを象徴していた。ここに掲載されているのは初代シリーズ。イエローゴールド製のみで展開され、バーインデックスを備えている。もっとも識別しやすい特徴はスナップバック式ケースバックで、これはこの時計が事実上、防水性をまったく備えていなかったことを意味している(Image: sothebys.com)
一方、クロノグラフ専用モデルとして1998年に登場したRef.5070は、直径42mmという、パテック フィリップ史上最大の量産クロノグラフとなった。 この2本は、CH 27-70というムーブメントが、時計デザインに対して驚異的な適応力を持っていたことを物語っている。
CH 27-70は、その後もRef.3970の後継機であるRef.5970に採用された。ティエリー・スターンがデザインしたこのモデルは、ケース径を40mmへ拡大している。
さらにこのムーブメントは、時計収集の“聖杯”のひとつとされる名作、永久カレンダー・スプリットセコンドクロノグラフ、パテック フィリップ Ref.5004にも搭載された。
Ref.5004は1996年から2011年まで生産されている。

▲ パテック フィリップ Ref.5070。CH 27-70を搭載した腕時計型クロノグラフとしては最大となる、42mmケースを採用している(Image: Phillips.com)

▲ 左:ミュージシャン、エリック・クラプトン特注による、ブレゲ数字仕様のパテック フィリップ Ref.5970G(©Revolution) 右:エリック・クラプトンが所有していたピンクゴールド製パテック フィリップ スプリットセコンド Ref.5004。2016年、フィリップス開催の“Hong Kong Watch Auction: THREE”に出品された個体(Image: Phillips.com)

▲ 著者ウェイ・コー所有の、ユニークなチョコレートダイアルを備えたローズゴールド製パテック フィリップ 永久カレンダー・クロノグラフ Ref.5970。レマニアベースのCH 27-70を鑑賞できる(©Revolution)
ブレゲ Cal.533.3(2000年代頃〜現行)
1970年代のスイスは、クォーツ危機の直撃を受け、時計業界全体が大混乱に陥っていた。
そして、そのもっとも暗い時期に、スイス時計産業を救うためにひとりの人物が現れた。その名はニコラス・G・ハイエックである。
ハイエックは、企業再建のスペシャリストとして名声を築いていた。そんな彼に託されたのが、ASUAG(Allgemeine Schweizerische Uhrenindustrie AG)と、前述したSSIHという2大時計グループの精算監督だった。
しかし彼は、単なる清算ではなく“効率化によって再生できる”と見抜いた。そして最初に行ったのが、この2グループを統合し、「SMH(Société de Microélectronique et d’Horlogerie)」という新会社を設立することだった。
このSMHこそ、後に“スウォッチ グループ”へと改称される組織である。

▲ 故ニコラス・G・ハイエック。スイス時計業界を救った伝説的経営者にして、業界の巨人と称される人物である。
ASUAGの分析を行った際、ハイエックは衝撃を受けた。100社以上もの企業が、それぞれ別個に研究開発、マーケティング、組み立てを行っており、非効率そのものだったのである。 彼はここで、“合理化”と“垂直統合”という概念を導入した。さらに、後にドイツ自動車産業も学ぶことになる“部品標準化”へ積極投資を行っている。
その過程で彼が発見したのが、通常なら数百点必要な機械式時計を、わずか51パーツで構成するというプロジェクトだった。彼はこれを“スウォッチ”と名付け、革新的なマーケティング戦略によって、クォーツ危機に対する最初の大規模な反撃を成功させたのである。
レマニアは1981年にSSIHグループから離脱。その後“ヌーヴェル・レマニア”と改称され、1992年にブレゲが買収した。 さらに1999年、スウォッチ グループはブレゲを買収し、それによってレマニアも再びグループへ戻ることになる。
ニック・ハイエックの真骨頂は、常に生産を垂直統合しようとした点にあった。ブランパンにフレデリック・ピゲがあったように、ブレゲにはレマニアが存在していたのである。 もっとも、公平に言えば、レマニアの生産能力の多くは、歴史的パートナーであるオメガ向けであり、それこそがハイエックがブレゲ買収へ動いた動機のひとつでもあった。
そして、レマニアが保有する膨大なムーブメント資産の中で、“眠れる巨人”のように放置されていたのが、言うまでもなくCal.2310/2320だった。だから、由緒あるレマニアのキャリバーを用いた、美しいクラシック・クロノグラフを作り上げることは、ごく自然な流れだったのである。
その現代版にあたるのがRef.5287である。

▲ レマニア2320を搭載するブレゲ Ref.5287は、純粋な時計愛好家にとって理想的なドレスクロノグラフのひとつであり、ブレゲが築き上げた象徴的デザイン言語を余すところなく備えている(©Revolution)
ブレゲ Ref.5287は、純粋な時計愛好家のための時計である。そこには、アブラアン-ルイ・ブレゲが生み出したデザイン言語が余すところなく盛り込まれている。
ブレゲ・マニュファクチュールでヘリテージおよびマーケティング部門を率いるエマニュエル・ブレゲはこう語る。
「当時の時計は非常にバロック的な装飾に満ちていました。アブラアン-ルイ・ブレゲは、クリーンでモダンな新しいデザイン言語を初めて導入した人物だったのです。そして視認性を高めるため、文字盤の各セクターに微妙に異なる装飾を施しました」
Ref.5287では、30分積算計にスネイル仕上げを採用。さらにスモールセコンドには、美しい円形バーリーコーン装飾が施されている。なお、このスモールセコンドは両端針仕様となっており、30秒トラックを読み取る形式となっている。
ダイアル中央にはパリ・ホブネイル(クル・ド・パリ)ギヨシェ。時刻表示部分はサーキュラーサテン仕上げのトラックとされ、タキメータースケールはオパーリン仕上げのフランジ上に配されている。
そしてダイアル全体はソリッドゴールド製であり、伝統的ローズエンジン旋盤を職人が手作業で操る“ギヨシェ・マン”――すなわち手彫りギヨシェの傑作となっている。
ラウンドケースには、アブラアン-ルイ・ブレゲが懐中時計で用いた、あの象徴的なコインエッジ(フルーテッド)ケースバンドも採用されている。
そして時計を裏返せば、レマニア2320の壮麗な姿を堪能できる。このブレゲ版は、レマニア2320系として唯一24石仕様を採用している。さらにブレゲはスワンネック緩急針を備えつつ、振動数を3Hz(毎時2万1600振動)へ引き上げている。

▲ブレゲ Ref.5287には、Cal.533.3(ブレゲ版レマニア2320)が搭載されている。24石仕様を採用した唯一のバージョンであり、その理由は文字盤側に配置されたパワーリザーブ表示機構にある可能性が高い(©Revolution)
ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1140/1141(1989年〜現行)
1989年以来、ヴァシュロン・コンスタンタンは、21石仕様のレマニア2320をベースとして、数々の美しいクロノグラフを生み出してきた。このムーブメントは、ヴァシュロン・コンスタンタンではCal.1140と呼ばれている。
ヴァシュロン・コンスタンタンによれば、Cal.1140は17石仕様の2310をベースにしているという。しかし実際にCal.1140搭載モデルを見ると、21石仕様かつスワンネック緩急針を備えているように見えるため、これらの改良は自社内で施されたものではないかと思われる。
一方、Cal.1141は、21石仕様およびスワンネック緩急針を備えたレマニア2320をベースとしている。なお、これらのムーブメントはいずれもジュネーブ・シールは取得していなかった。

▲ 1940年代の名作 Ref.4178へのオマージュとして製作されたRef.47101。ケースバックからはレマニアベースのヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1140を鑑賞できる(Image: acollectedman.com)
過去30年にわたり、ヴァシュロン・コンスタンタンはCal.1140/1141を用いて〈ヒストリーク・クロノグラフ〉、〈マルタ・クロノグラフ〉、〈パトリモニー・トラディショナル〉という3系統のモデルを展開してきた。
さらにこのムーブメントは、永久カレンダーとの組み合わせでも使用されている。その中でも、とりわけ崇高な存在と言えるのがRef.47100である。これは〈パトリモニー・クロノグラフ〉を見事にスケルトナイズしたモデルであり、極めて美しい仕上がりを誇る。
こうした時計は現在、セカンダリーマーケットではおよそ2万〜3万米ドル前後で入手可能だ。しかし元々の定価はその約4倍に達していたことを考えると、非常に割安と言える。

▲レマニアムーブメントを用いた最もクールかつ美しい表現のひとつが、この完全スケルトン仕様のヴァシュロン・コンスタンタン〈パトリモニー・クロノグラフ〉Ref.47100である(Image: Sothebys.com)

▲ ヴァシュロン・コンスタンタンは2006年、“コレクション・エクセレンス・プラチーヌ”の一環として、プラチナケース仕様の〈マルタ・クロノグラフ〉を75本限定で発表した。このモデルには、プラチナ製ダイアルも採用され、ケースバックからはCal.1141を鑑賞できる(Image: Christies.com)

▲ ヴァシュロン・コンスタンタン〈トラディショナル・クロノグラフ・パーペチュアルカレンダー〉は、2017年のSIHHで、プラチナおよびピンクゴールド仕様として発表された。搭載されているCal.1142 QPは、レマニアベースのクロノグラフに永久カレンダー機構を組み合わせた、ヴァシュロン・コンスタンタン独自の解釈によるムーブメントである。

▲ 2015年、香港開催のWatches & Wondersで発表された、プラチナ製ヴァシュロン・コンスタンタン〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉Ref.5000H/000P-B058。この時計にはCal.1142が搭載されていた(©Revolution)

▲ 左:18K 4Nピンクゴールド製ヴァシュロン・コンスタンタン〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉Ref.5000H/000R-B059は、2016年に発表された。右:ステンレススティール製〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉Ref.5000H/000Aは、2017年にHodinkee向けとして36本限定で製作された。

▲ 左:ステンレススティール製ヴァシュロン・コンスタンタン〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉Ref.5000H/000A-B582は、2019年に発表された。このモデルには、セラピアン・パティーヌ仕上げを施したダークブラウンのカーフストラップが組み合わされている。右:〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉には、手巻きCal.1142が搭載されている。これは、21世紀に向けて再解釈されたレマニア2310と言えるムーブメントである(©Revolution)

▲ 2017年、筆者ウェイ・コーのために製作されたユニークピース仕様のヴァシュロン・コンスタンタン〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉。イエローゴールド製ケースとダイアルを備え、Cal.1142が搭載されている(©Revolution)

▲ウェイ・コーのユニークピース仕様ヴァシュロン・コンスタンタン〈ヒストリーク・コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ 1955〉には、4種類の交換用ダイアルが付属していた(©Revolution)
この名門マニュファクチュールは、2015年に自社製クロノグラフムーブメントCal.3300を発表したにもかかわらず、現在でもこの魅力的な歴史的ムーブメントを使い続けている。
それが、ヴァシュロン・コンスタンタン史上もっとも成功したクロノグラフのひとつとも言える、壮麗な〈コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ〉(仏語で“牛の角”の意味)である。このモデル名は、特徴的なラグ形状に由来している。
〈コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ〉は、1955年のRef.6087に着想を得たモデルだ。1955年のオリジナルは35mmケースに、直径29.5mmのバルジュー23を搭載していた。一方、現代版に搭載されるCal.1142は、27mm径となっている。
私にとって〈コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ〉は、現代市場におけるもっとも魅力的で象徴的なメンズ・ドレスクロノグラフのひとつである。2015年に登場したこの時計は、小径だったRef.6087を見事にモダナイズした存在だった。
この時計のデザインを担当したエミリー・ヴュイユミエはこう語っている。
「オリジナルのラグは非常に丸みを帯びていました。しかし私たちは、そこへより鋭くドラマティックなエッジを加え、全体デザインにダイナミックな緊張感を持たせたかったのです」
そして時計を裏返せば、史上もっとも美しいクロノグラフムーブメントを堪能できる。なお、〈コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ〉に搭載されるのはCal.1142である。
では、1142と1141の違いは何か。
それは、1142がヴァシュロン・コンスタンタンによる自社生産版であるという点だ。リシュモンは2008年、ロジェ・デュブイ買収時にこのムーブメント製造権を取得している。技術的観点から見た場合、1142とその前身とのもっとも明確な違いは、フリースプラングテンプの採用にある。これは明らかに、パテック フィリップ CH 27-70から影響を受けた設計と言える。
ロジェ・デュブイ Cal.56/65(1995–2003年)
1990年代なかば、ブランド創設直後あたり、ロジェ・デュブイは、レマニア Cal.2310/2320の製造権を取得した。そして彼はこのムーブメントを幅広く活用し、さらにこの系譜として唯一、モノプッシャー仕様を展開した。

▲ マットブラックダイアルに、アプライド仕様のブレゲ数字を含むポリッシュ仕上げホワイトゴールドディテールを組み合わせた、40mmケースのロジェ・デュブイ〈オマージュ・クロノグラフ〉Ref.H40 655。レマニアベースの手巻きCal.RD 65が搭載されている(Image: acollectedman.com)

▲ マットブラックのギヨシェダイアルと、アプライド仕様ブレゲ数字を備えた40mmケースのロジェ・デュブイ〈オマージュ・クロノグラフ〉。手巻きCal.RD56が搭載されている(Image: acollectedman.com)
1995年、長年パテック フィリップで腕を振るい、さらにアジェノー創業者ジャン-マルク・ヴィダレッシュとともに世界初のダブルレトログラード永久カレンダーを生み出したことで知られる時計師、ロジェ・デュブイが、自身の名を冠したブランドを立ち上げた。
彼の〈オマージュ〉コレクションは、まさしくヴィンテージ・パテック フィリップに対する敬意を形にしたものと言える。
彼は、レマニア2320ベースのクロノグラフを、34mm、37mm、40mmという3サイズで展開し、このムーブメントが持つ驚異的なデザイン適応力を示した。
ロジェ・デュブイ版レマニアムーブメントは、ジュネーブ・シールを取得していたうえ、ブザンソン天文台によるクロノメーター認定も受けている。
ムーブメント名は、通常の2プッシャー仕様が Cal.RD56、モノプッシャー仕様が Cal.RD65と呼ばれていた。そして私の知る限り、レマニア2320をベースとしたモノプッシャー仕様を製作した現代ブランドは、ロジェ・デュブイだけである。
デュブイはこのムーブメントを、他モデルにも積極的に展開した。
たとえば、彼独自のバロック的ケースデザインを持つ〈シンパシー〉では、ダブルレトログラード永久カレンダーと組み合わせている。
さらに特筆すべきは〈イージーダイバー・クロノグラフ〉で、このモデルはダイバーズウォッチとして唯一、ジュネーブ・シールを取得した存在となった。
さて、ロジェ・デュブイ搭載版2320に関して重要なのはここからである。デュブイは、このムーブメントを自社製造する権利を獲得していた。 そして2008年、リシュモン グループがロジェ・デュブイを買収した際、このムーブメントの製造権も同時に取得したのである。

▲筆者ウェイ・コー私物のロジェ・デュブイ〈オマージュ・クロノグラフ〉H40。マットブラックダイアルと、ポリッシュ仕上げホワイトゴールド製アプライド・ブレゲ数字を備え、ケースバックからはレマニアベースの手巻きCal.RD56を鑑賞できる(©Revolution)
レマニア2320ベースのロジェ・デュブイ製クロノグラフの中でも、私が特に愛しているのが、40mmケースのロジェ・デュブイ〈オマージュ・クロノグラフ〉H40である。 私はこれまで何度も語ってきたが、デザインという観点から見て、これは現代におけるもっとも美しい時計のひとつだと思っている。
特に、ブレゲ数字/先端を尖らせたバトンインデックス/アプライド・ドット/完璧にデザインされたタイポグラフィ。これらの組み合わせが生み出す美しさは圧巻であり、それはここに掲載した私物個体にも明確に表れている。
レマニアベースモデルの比較

▲ 左から:ヴァシュロン・コンスタンタン〈コルヌ・ドゥ・ヴァッシュ〉、パテック フィリップ Ref.5970、ブレゲ Ref.5287、ロジェ・デュブイ〈オマージュ・クロノグラフ〉H40。
それでは、ここで手元にある4本のレマニアベースの時計を比べていってみよう。
振動数
ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1142:毎時2万1600振動/3Hz
パテック フィリップ Cal.CH 27-70:毎時1万8000振動/2.5Hz
ブレゲ Cal.533.3:毎時2万1600振動/3Hz
ロジェ・デュブイ Cal.RD56:毎時1万8000振動/2.5Hz
スワンネック vs. フリースプラング
パテック フィリップ CH 27-70を除くすべてのムーブメントは、レマニア2320由来のスワンネック緩急針を採用していた。
なお、ヴァシュロン・コンスタンタンは、Cal.1141から自社製Cal.1142へ移行する際、スワンネック緩急針を廃し、フリースプラングテンプへ変更している。

▲ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1142は、毎時2万1600振動(3Hz)で作動し、フリースプラングテンプを採用している。また、その中間ブリッジ形状は、V字とY字の中間のようなデザインとなっている(©Revolution)

▲ パテック フィリップ Cal.CH 27-70 Qは、毎時1万8000振動(2.5Hz)で作動し、フリースプラングテンプを採用している。また、その中間ブリッジは、明確なV字形状を特徴としている(©Revolution)

▲ ブレゲ Cal.533.3は、毎時2万1600振動(3Hz)で作動し、スワンネック緩急針を採用している。また、その中間ブリッジは、U字とY字の中間のような形状を特徴としている(©Revolution)

▲ ロジェ・デュブイ Cal.RD56は、毎時1万8000振動(2.5Hz)で作動し、スワンネック緩急針を採用している。また、その中間ブリッジは、明確なY字、あるいはウィッシュボーン形状を特徴としている(©Revolution)

▲ 2020年版オメガ Cal.321は、毎時1万8000振動(2.5Hz)で作動する。また、その中間ブリッジは、U字形状を特徴としている(©Revolution)
ジュネーブ・シール
ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1142、パテック フィリップ CH 27-70、そしてロジェ・デュブイ Cal.RD56/65はいずれもジュネーブ・シールを取得している。
ヴァシュロン・コンスタンタンのムーブメントにおいて、私が特に気に入っているディテールのひとつが、コラムホイール上に設けられたマルタ十字型キャップである。非常に立体的な造形だが、他のジュネーブ・シール取得機で見られるキャップと同様、これも“キャップ”として扱われているのだろう。
なお、ヴァシュロン・コンスタンタン Cal.1140および1141は、ジュネーブ・シール取得ムーブメントではなかった。
ブリッジのスタイル
クロノグラフ秒針車と30分積算計車を固定するインターミディエイト・ブリッジには各社の個性が表れている。この部分は、リセット用ハートカム、そのすぐ横に配置されたリセットレバーによって容易に識別できる。
つまりこれは、30分積算計車と、極めて重要なクロノグラフ・センターセコンド車を支えるブリッジなのである。そして、このブリッジ形状は各ブランドにおける重要な美的表現の対象となってきた。
パテック フィリップ:明確なV字型
ヴァシュロン・コンスタンタン:V字とY字の中間
ロジェ・デュブイ:完全なY字/ウィッシュボーン形状
オメガ Cal.321:U字型
ブレゲ:U字とY字の中間
となっている。
最後に付け加えるべきなのは、パテック フィリップ CH 27-70が、もっとも大幅な改良を受けた仕様であるという点だ。中間車を保持するクラッチレバーは、伝達効率向上のため、ドライブホイールと同軸上で回転する構造へ変更されている。その結果、独特なS字形状を形成し、先端部分がコラムホイールと連動する。
さらに、その横には湾曲した復帰スプリングが沿うように配置されており、ムーブメント全体に、より複雑で洗練された印象を与えている。
つまり、これらはすべて伝説的なレマニア系ムーブメントをベースとしているものの、その改良度や仕上げレベルには明確な差が存在しており、それは各モデルの価格帯にも対応しているのである。
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