一度は歴史の幕を閉じた伝説のブランドが、現代の技術と哲学を携えて鮮やかによみがえった。ダニエル・ロートの美学を未来へつなぐ、新たな傑作である。
Revolution Awards 2025: Horological Heroes — Michel Navas and Enrico Barbasini
Revolution Awards 2025:オロロジカル・ヒーローズ賞
ミシェル・ナバス & エンリコ・バルバシーニ
2025年オロロジカル・ヒーローズ賞を受賞したミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニ。現代高級時計製造を牽引し続けた二人の偉大な功績に迫る。
![]() |
by Tracey Llewellyn. Jan 27, 2026 |
ミシェル・ナバスとエンリコ・バルバシーニの二人は、40年以上の歳月を費やし、現代の時計製造のメカニズムを形作ってきた。彼らの名が文字盤に刻まれることは稀である。しかし、最高峰のコンプリケーション(複雑時計)を構築し、メンテナンスを行う時計師たちの間で、彼らの影響力は基礎的な礎とみなされている。
ルイ・ヴィトンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」の技術的中核として、彼らはムーブメントを開発するだけでなく、新たな章へと歩みを進めるいくつかのメゾンの時計製造におけるアイデンティティをも定義してきた。
彼らが2025年のオロロジカル・ヒーローズ賞として認められたことは、その貢献がいかに深く、そして永続的なものであるかを証明している。

▲スイス、メランの「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」
二人のパートナーシップは1980年代、当時ジュネーブで最も先鋭的だったアトリエの一つ、ジェラルド・ジェンタで始まった。そこは、チャイミングウォッチや複雑なレギュレーターが、日常的に扱われる環境であった。
その中でナバスとバルバシーニは、今日まで彼らを定義づける力学を確立した。それは、伝統に挑む機構をスケッチし、メカニカルな着想を生み出すナバスと、そのアイデアを製造可能で信頼性の高いメカニズムへと翻訳し、安定をもたらすバルバシーニという関係である。
グランドソヌリやミニッツリピーターを手がけた初期の活動が、絶対的な信頼に基づいたプロフェッショナルとしての絆を築き上げた。

▲エンリコ・バルバシーニ(左)とミシェル・ナバス
2004年には、彼らの経験はマティアス・ビュッテと共に設立したコンプリケーション・アトリエ「BNBコンセプト」の共同設計者としての道を切り開いた。BNBは、その10年間で最も表現力豊かな独立系ブランドの多くにとって、技術的なバックオフィスとしての役割を果たした。
文字盤に異なるブランド名が記されていようとも、その作業台からはマルチアクシス・トゥールビヨンや斬新なクロノグラフ、独創的な表示機構が生み出された。一時期、BNBは独立系時計製造の新たな潮流を体現していた。 2008年以降の景気後退下での閉鎖も、そこで生み出された仕事の重要性を損なうことはなかった。
重要なのは、ナバスとバルバシーニがすでに自律性の必要性を予見していたことである。彼らは2007年にジュネーブで「ラ・ファブリク・デュ・タン」を設立し、単なるマーケティングツール以上の意味を持つコンプリケーションを追求するためのワークショップを創り上げた。
2011年にルイ・ヴィトンが同マニュファクチュールを買収した際、このパートナーシップは極めて豊かな実りをもたらした。メゾンがリソースと「自由」を提供し、ナバスとバルバシーニが首尾一貫したメカニカルなヴィジョンを提示したのである。
「スピン・タイム」表示からトゥールビヨン、リピーター、そして最終的には厳格なムーブメント構築に基づき再構築されたフルコレクションへと、その進化は続いた。

▲ルイ・ヴィトン〈タンブール タイコ スピン・タイム エアー フライング トゥールビヨン〉
本年度のジュネーブ時計グランプリ(GPHG)は、ルイ・ヴィトンの時計ポートフォリオ全体における彼らの影響力を公式に裏付けるものとなった。 精緻なムーブメント設計を通じて伝統的な時計製造の純粋さを再定義したダニエル・ロートの〈エクストラ プラット ローズゴールド〉が、タイムオンリーウォッチ賞を受賞した。また、技術的な基盤に再びナバスとバルバシーニのアトリエの痕跡が残るジェラルド・ジェンタの〈ジェンティッシマ ウルサン ファイアーオパール〉が、レディースウォッチ賞に輝いた。
異なる二つのメゾンに贈られた賞ではあるが、両者の勝利は、この二人によって形成された同じ技術文化に根ざしている。

▲ダニエル・ロート〈エクストラ プラット ローズゴールド〉

▲ジェラルド・ジェンタ〈ジェンティッシマ ウルサン ファイアーオパール〉
今日の「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」に足を踏み入れれば、1980年代に始まった対話が今なお絶え間なく続いていることが分かる。作業台で交わされるスケッチ、手作業で調整されるプロトタイプ、そして互いの思考を洗練させ合う二人の時計師。
この受賞は、彼らの長年にわたる活動だけでなく、現代の時計製造のあり方を導き続けるその功績を称えるものである。
Brands: Louis Vuitton
Revolution Awards 2025 受賞一覧はこちら
・
