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「パネライは“体験”してこそ真価がわかる」:アレッサンドロ・フィカレリ

Interviews

パネライが単なる時計の枠を超え、顧客と深いつながりを築く鍵とは何か。CMOフィカレリが語る、ブランドの真髄「体験の共有」という新たな戦略に迫る。

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“Panerai Is A Brand You Need To Experience”: Alessandro Ficarelli

「パネライは“体験”してこそ真価がわかる」:アレッサンドロ・フィカレリ

パネライが単なる時計の枠を超え、顧客と深いつながりを築く鍵とは何か。CMOフィカレリが語る、ブランドの真髄「体験の共有」という新たな戦略に迫る。

by Celine Yap . Feb 7, 2025

パネライの真髄:体験による深化

 プレヴァンドーム、ブラックシール、マリーナ ミリターレ、S.L.C.、マーレノストゥルム、エジツィアーノ、あるいはブロンゾ。これらのワードに胸が高鳴るなら、あなたは自覚している以上に長くパネライに魅了されてきた一人に違いない。あるいは、新旧問わず、稀少で垂涎の的となるモデルを追い求めることに、情熱という名の膨大な時間を費やしてきたのではないだろうか。

 実のところ、時計収集の旅において、誰もが一度はパネライという門をくぐり、その情緒的な魅力に心を揺さぶられた経験があるはずだ。しかし、現代の時計製造においてこのブランドがいかに深化を遂げているか、そしてそのアイデンティティがいかに繊細に構築されているかを真に理解している者は、決して多くはない。

 パネライのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)、アレッサンドロ・フィカレリが「今、最も光が当たっていない側面」だと考えているのがそこだ。だからこそブランドは、顧客と共に楽しむ、ユニークで特別な「体験の共有」をミッションに掲げているのである。

 「私たちは歴史を極めて重視しています。それは単なる時計という物質を超えた存在だからです。機能的なツールウォッチとしての背景にある物語を語り継ぐことは、今日においても私たちにとって最も重要な使命なのです」とCMOは語る。

パネライのチーフ・マーケティング・オフィサー、アレッサンドロ・フィカレリ

 パネライを愛するということは、その時計が「なぜその姿をしているのか」という必然性を理解し、慈しむことに他ならない。 なぜ〈ルミノール〉にはリュウズプロテクターがあるのか? なぜ〈ラジオミール〉にはループラグが備わっているのか? サンドイッチ構造のダイアルの役割とは? なぜ常に視認性と防水性が追求されるのか? そして、なぜこれほどまでに巨大なのか?

 その答えは「より良く時刻が見えるようにするため」という一点に集約される。パネライは、すべての時計において常に視認性を最優先しているのだ。かつて、人々が特大の時計を熱狂的に支持した時代があった。大きくありながらも人間工学に基づき、手首へ完璧に収まるよう設計された時計が、何より重宝されたのである。

 「パネライの時計は、すべて理由があって誕生しました。その哲学は今も、私たちが創り出すあらゆる要素の根幹に息づいています」と彼は付け加える。

ループラグを備えた〈ラジオミール〉

独自の時計製造アプローチ

 イタリア海軍と1910年代にまで遡る輝かしい出自により、パネライは常に実用的な計器、すなわちツールウォッチとしての地位を確立してきた。その結果、人々は象徴的なデザインが放つ潔いまでのシンプルさに、瞬く間に魅了された。その機能美は、モダンでスポーティな精神を求める新たな世代をも、今なお惹きつけてやまない。

 しかし、現在のパネライは単なるミリタリー・ツールウォッチの継承者ではない。2002年に自社マニュファクチュールを設立して以来、2軸トゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、アニュアルカレンダー、ミニッツリピーター、レガッタカウントダウン付きクロノグラフ、さらにはフライバッククロノグラフや定番のGMTに至るまで、驚異的な複雑機構のポートフォリオを築き上げてきた。

〈ルミノール ゴールドテック™ パーペチュアルカレンダー〉 Ref.PAM01269

〈ルミノール 1950 トゥールビヨン GMT〉 Ref.PAM00276(左)、キャリバー P.4100(右)

 フィカレリはさらに詳しく説明する。「私たちの目的は、複雑機構を愛する熱心な顧客に対し、『パネライ流のコンプリケーション』という選択肢を提示することです。これらはすべてヌーシャテルのマニュファクチュールで独自に開発された、パネライだけのオリジナリティの結晶なのです」

 パネライが初のトゥールビヨン・キャリバー P.2005を発表した際、その文字盤は完全に閉じられており、機構の動きはケースバックからしか確認できなかった。すべては極めて控えめに、デザインの簡潔さと実用性を至上命題とするパネライらしい配慮だった。 同様に、パーペチュアルカレンダーを搭載したキャリバー P.4100も、ケースサイドにコレクター(調整ボタン)は存在せず、カレンダー情報は表と裏に分散して配置されている。日付や曜日、第2時間帯といった日常的な情報は文字盤に、月や閏年、パワーリザーブなどは潔く裏面に集約させているのだ。

〈ルミノール 1950 レガッタ クロノ フライバック〉 Ref.PAM00526

 ムーブメントのみならず、素材の革新においてもパネライは先駆者である。時計業界の枠を超え、常に新しい高性能素材を模索し続けてきた。BMG-TECH ™(特殊合金から作られた金属ガラス)、カーボテック™(高性能のロングカーボンファイバーで作られた複合構造)、Ti-Ceramitech™(チタンをセラミック化)といった未来的素材から、スチール、セラミック、チタンといった定番素材まで、マニュファクチュールは多彩な素材を自在に操る。

 さらに、プラチナ、ゴールド、そしてパネライに特有の風格を与えるブロンズも、そのラインナップを彩っている。

〈サブマーシブル BMG-TECH™-47mm〉 Ref.PAM00799

〈ルミノール マリーナ Verde Smeraldo〉 Ref.PAM01356

 パネライのエンジニアや時計師たちは、常に未知の試作に情熱を注いでいる。そこはまさに「アイデアの工房(Laboratorio di Idee)」(研究開発部門)なのだ。「すべての時計、すべての技術開発、すべての新作の背景には確固たる『選択』があります。美的、あるいは技術的な選択の理由を、顧客に丁寧に説明することが重要なのです」とフィカレリは語る。 「私たちは47mmの3針モデルだけを作り続けるわけにはいきません。また、純粋主義者であるパネリスティのためだけの開発に甘んじることもできません。彼らを大切にしつつ、同時に新しい顧客を魅了する進化が必要なのです」

 現在、ブランドは、長年の熱狂的なファンと、新しいライフスタイルを志向する層が交差する、興味深いターニングポイントに立っている。しかし、パネライはこの二つのグループの間で揺れ動くのではなく、一つの理想的な解決策を見出した。それが「体験の共有」である。コロナ禍以前から、ブランドは最良の顧客のために、世界規模で極めてエクスクルーシブな体験型イベントを厳選して開催してきた。

〈サブマーシブル トゥールビヨン GMT ルナ・ロッサ エクスペリエンス エディション〉 Ref.PAM01405

パネライ・エクスペリエンス・プログラム

 2019年に始動した「パネライ・エクスペリエンス・プログラム」は、世界各地のエキゾチックな場所を舞台にしてきた。その一つが北極であり、アンバサダーを務める探検家マイク・ホーンは、そこで3つもの大規模な遠征を完遂した。最初の遠征である『アークトス』は、スペシャルエディションの〈ルミノール 44mm〉 Ref.PAM00092 誕生のインスピレーションとなっている。

パネライ・アンバサダー、マイク・ホーン

 刺激的な冒険に聞こえるが、このプログラムの目的地が安易に選ばれることはない。すべてはパネライの多角的な魅力を顧客に肌で感じてもらうため、緻密に企画されているのだ。 アメリカズカップを目指すルナ・ロッサ プラダ ピレリ チームを応援すべく訪れたバルセロナ。パネライの麗しき故郷、フィレンツェでの華麗な歴史探訪。そしてラ・スペツィアでは、イタリア海軍特殊部隊「コムスビン(Comsubin)」による、二日間に及ぶ過酷なブートキャンプさえ実施された。

2024年アメリカズカップ予選におけるルナ・ロッサ

フィレンツェにあるパネライの歴史的なブティック(左)、  パネライは1860年、ジョヴァンニ・パネライによってフィレンツェで設立(右)

▲ 新作〈ラジオミール 8 オットジョルニ アイリーン エクスペリエンス エディション〉 Ref.PAM01643(左)、 ヴィンテージのバミューダケッチ『アイリーン号』でシチリアを巡る(右)

 2025年には、3月にマイク・ホーンと行くブータン、5月にはタオルミーナでの体験が開催された。シチリアの絶景を堪能し、優美なヨット『アイリーン号』で島を巡るクルーズが用意されという。 これらはすべて、パネライの世界観を完璧に体現する手法として、一部の限定モデル購入者のために特別に誂えられたものだ。

 「パネライは極めてエモーショナルなブランドです」とフィカレリは強調する。「ブランドを実際に体験してもらうことは不可欠です。ひとたびパネライのエコシステムに入り、パネリスティになれば、ブランドをまるで自分自身の分身のように愛し、誇りに思うようになります。これは実に素晴らしいことであり、多くのブランドが喉から手が出るほど欲しがる関係性でしょう」

▲ ブルニートスティール製ケースにブロンズ製ベゼルを備える

 この戦略の真髄は、時を重ねるほどにブランドと顧客の絆が深まっていく点にある。 さらにアレッサンドロ・フィカレリは、メゾンが最近、フィレンツェ近郊にあるパネライ家の旧邸宅を取得し、修復を進めていることを明かしてくれた。 「現在、修復作業が急ピッチで進められています。そのヴィラは市街地からわずか数キロ、街を一望できる高台に位置しています。そここそがパネライの原点となった研究所であり、ジュゼッペ・パネライが研究に没頭し、数々の計器やツールを産み出した聖地なのです」

 完成の暁には、この「ヴィリーノ パネライ」が世界に公開されるだろう。パネライ一族の先駆的かつ独創的な精神に触れる場所として、これ以上の舞台はない。パネリスティたちは、フィレンツェ中心部のサン・ジョヴァンニ広場にある象徴的なブティックで「あまりに長い」時間を過ごした後、ついにブランドの精神的故郷を訪ねることができるようになるのだ。 

 想像してみてほしい。トスカーナの輝かしい陽光の下、なだらかな丘陵と糸杉の並木を眺めながら、パネライ邸の庭を散策するひとときを。その手首には、誇り高き〈ルミノール〉や〈ラジオミール〉を添えて。 ただ、あまりの感動に心を奪われすぎないよう、それだけは約束していただきたい。

Brands: Panerai

Brand:Panerai

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