トゥールビヨンを1基搭載した機械式時計を対象とするTourbillon部門。追加の表示や複雑機構も認められるため、単にトゥールビヨンそのものの出来だけではなく、それをどのような時計として完成させたかが問われる。2026年のノミネート作には、クロノメトリーを追求した正統派から、複雑機構、工芸、独立時計師ならではの手仕事まで、多彩な6本が揃った。
GPHG 2026 Predictions: Tourbillon — Where Precision Defies Gravity
GPHG 大予想——Tourbillon部門「重力に抗うための装置たち」
トゥールビヨンを1基搭載した機械式時計を対象とするTourbillon部門。追加の表示や複雑機構も認められるため、単にトゥールビヨンそのものの出来だけではなく、それをどのような時計として完成させたかが問われる。2026年のノミネート作には、クロノメトリーを追求した正統派から、複雑機構、工芸、独立時計師ならではの手仕事まで、多彩な6本が揃った。
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by Revolution Japan. Sep 26, 2026 |
- Tourbillon部門とは?
- Nominee #1——ARNOLD & SON Constant Force Tourbillon 11 Platinum
- Nominee #2——DAVID CANDAUX DC6 Night Forest
- Nominee #3——FERDINAND BERTHOUD Chronomètre FB 2TV
- Nominee #4——GIRARD-PERREGAUX Laureato Fifty Three Gold Bridges
- Nominee #5——Louis Vuitton Escale Worldtime Flying Tourbillon
- Nominee #6——SYLVAIN PINAUD 30s Tourbillon
- Revolution Japanの予想
Tourbillon部門とは?
Tourbillon部門は、トゥールビヨンを1基搭載した機械式時計を対象とするカテゴリーである。トゥールビヨン以外の表示機能や複雑機構を備えていても応募可能で、時計全体としてどのような構成に仕上げられているかも見どころとなる。
つまり、シンプルにトゥールビヨンだけを主役とした時計もあれば、ワールドタイムやパワーリザーブ、特殊な定力機構などを組み合わせた時計も同じ土俵に並ぶことになる。トゥールビヨンという共通項を持ちながら、その表現方法や設計思想には大きな幅があるカテゴリーだ。
なお、一点物(ユニークピース)は応募資格を持たない。そのため、単発の実験作ではなく、一定数が製作・販売されるモデルの中から、その年を代表するトゥールビヨンウォッチが選ばれることになる。

Nominee #1——ARNOLD & SON Constant Force Tourbillon 11 Platinum
アーノルド&サン〈コンスタントフォース トゥールビヨン 11 プラチナ〉
創業者ジョン・アーノルドとアブラアン-ルイ・ブレゲ、ふたりの名時計師の友情にオマージュを捧げた一本である。
もとになったのは、1808年にブレゲがジョン・アーノルドの息子、ジョン・ロジャー・アーノルドへ贈った時計だ。ジョン・アーノルドのクロノメーターNo.11をベースにしたこの時計は、現在大英博物館に所蔵されており、ブレゲが手がけた最初期のトゥールビヨンのひとつとされている。
自社製手巻きキャリバーA&S5219には、香箱から伝わる力を一定に保つコンスタントフォース機構を搭載。パワーリザーブは約100時間で、1秒ごとに動くトゥルービートセコンドも備える。秒表示を担うのは、ブルースティール仕上げのアンカーだ。
41.5mmのプラチナケースに収められたゴールドダイアルには、ジョン・アーノルドの故郷コーンウォールのシダに覆われた荒野をイメージした「トランブレ」装飾を手彫りで施している。時計の歴史と現代の技術、そしてふたりの時計師の物語をひとつにまとめた、味わい深い一本である。

Tech Specs
アーノルド&サン〈コンスタントフォース トゥールビヨン 11 プラチナ〉 ケース素材:プラチナ ブレスレット/ストラップ:アリゲーターレザー バックル:フォールディングバックル ダイアル:手彫り仕上げのゴールドダイアル、ホワイトオパール製サブダイアル 防水性能:30m サイズ:直径41.5mm 厚さ:13.7mm ムーブメント:手巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約100時間、毎時2万1600振動 機能:時、分、トゥールビヨン、コンスタントフォース機構によるデッドビートセコンド リファレンス:1FCBX.Z01A.C0232X 発売時期:2025年11月 限定数:11本 価格:14万600スイスフラン(税込)

Nominee #2——DAVID CANDAUX DC6 Night Forest
ダヴィッド・カンドー〈DC6 ナイト・フォレスト〉
ダヴィッド・カンドーは、スイス・ヴァレ・ド・ジューのル・ソリアを拠点とする独立時計師だ。時計製造の盛んな地域で育ち、2017年に自身のブランドを立ち上げた。
〈DC6 ナイト・フォレスト〉は、ブランド史上最軽量となるわずか45gの腕時計で、限定8本のみ製作される。
最大の特徴は、30度傾斜させたフライングトゥールビヨン。60秒で1回転し、水平姿勢でも重力の影響を平均化している。またムーブメントをすべてチタンで構成するというアプローチも彼ならではだ。
ケースには、航空宇宙産業やF1でも用いられる一方向性カーボンファイバーを採用。木目のように流れる模様は、工房の向かいに広がるリズーの森をイメージしたという。
6時位置にはマジック・クラウンを装備。これはダヴィッド・カンドーを象徴するリューズで、使わないときにはケース内部へ格納することができる。軽量素材、独自構造、そしてヴァレ・ド・ジュー伝統の手仕上げを融合した、独立時計師ならではの一本である。

Tech Specs
ダヴィッド・カンドー〈DC6 ナイト・フォレスト〉 ケース素材:チタン、カーボン ブレスレット/ストラップ:ラバー バックル:ベルクロ式、2ポジションバックル+ループファスナー ダイアル:ギヨシェダイアル、スモーク仕上げのトパーズグリーンドーム 防水性能:50m サイズ:直径45mm 厚さ:11.29mm ムーブメント:手巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約55時間、毎時2万1600振動 機能:時、分、秒、パワーリザーブ表示、トゥールビヨン リファレンス:DC6 Night Forest 発売時期:2026年3月 コレクション:DC6 限定数:8本 価格:26万8088スイスフラン(税込)

Nominee #3——FERDINAND BERTHOUD Chronomètre FB 2TV
フェルディナント・ベルトゥー〈クロノメーター FB 2TV〉
フェルディナント・ベルトゥーは、18世紀に活躍した時計師フェルディナント・ベルトゥーの名を受け継ぎ、クロノメトリー=高精度時計製造をブランドの核とするマニュファクチュールである。
ブランド初のムーブメントを発表してから10年。本作〈クロノメーター FB 2TV〉では、ムーブメントの機械美をダイアル側から見せるため、6年をかけて設計を一新した。手巻きキャリバー〈FB-TV.FC〉は、トゥールビヨンとチェーン・フュゼによるコンスタントフォース機構を組み合わせた。
1240個の部品から構成され、上部ブリッジを持たない直径15mmのフライングトゥールビヨンが大きな存在感を放つ。さらに、正確な時刻合わせのための秒針停止機構と、秒針を瞬時にゼロへ戻すフライバック式ゼロリセット機構を装備している。
ムーブメントには約300時間に及ぶ手仕上げが施されるという。伝統的なクロノメーター機構を受け継ぎながら、その構造を現代的に再構築している。

Tech Specs
フェルディナント・ベルトゥー〈クロノメーター FB 2TV〉 ケース素材:ホワイトゴールド ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:フォールディングバックル ダイアル:スケルトン 防水性能:30m サイズ:直径44mm 厚さ:15.46mm ムーブメント:手巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約60時間、毎時2万1600振動 機能:時、分、秒、パワーリザーブ表示、トゥールビヨン 認証:COSC(スイス公式クロノメーター検定) リファレンス:FB 2TV.1 発売時期:2026年4月 価格:32万5000スイスフラン(税込)

Nominee #4——GIRARD-PERREGAUX Laureato Fifty Three Gold Bridges
ジラール・ペルゴ〈ロレアート スリー・ゴールド ブリッジ〉
ジラール・ペルゴを象徴するふたつのデザインコードを、ひとつの時計に融合したのが〈ロレアート スリー・ゴールド ブリッジ〉である。ひとつは1867年に誕生した「スリー・ブリッジ」、もうひとつは1975年に登場し、2025年に50周年を迎えた〈ロレアート〉だ。
新開発の自動巻きキャリバー〈GP9620〉では、3本のオープンワークされたホワイトゴールド製ブリッジが、単なる装飾ではなく実際にムーブメントの構造を担う。上段が香箱、中央が輪列、下段がトゥールビヨンを支持し、それらを一直線上に配置。香箱の裏側にはプラチナ製マイクロローターを収め、自動巻きを実現している。
6時位置のトゥールビヨンには軽量なチタン製のリラ型ケージを採用。ムーブメントには418カ所の手磨きによる面取り、そのうち362カ所もの内角が施されるなど、仕上げも圧巻だ。
ケースは41mm径、厚さ10.85mm。ダイアルを設けずムーブメント全体を主役にしている。〈ロレアート〉の造形美と、ジラール・ペルゴが150年以上受け継いできた「スリー・ブリッジ」の機械美を融合した、ブランドの歴史そのものを形にした一本である。

Tech Specs
ジラール・ペルゴ〈ロレアート スリー・ゴールド ブリッジ〉ケース素材:ステンレススティール、ホワイトゴールド ブレスレット/ストラップ:ステンレススティール バックル:フォールディングバックル ダイアル:スケルトン 防水性能:30m サイズ:直径41mm 厚さ:10.85mm ムーブメント:自動巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約55時間、毎時2万1600振動、スケルトンムーブメント 機能:時、分、秒、トゥールビヨン リファレンス:99112-58S3451-1CM 発売時期:2025年11月 限定数:50本 価格:16万2000スイスフラン(税込)

Nominee #5——Louis Vuitton Escale Worldtime Flying Tourbillon
ルイ・ヴィトン〈エスカル ワールドタイム フライング トゥールビヨン〉
ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンで開発された自動巻きキャリバーLFT VO05.01は、24のタイムゾーンを同時に表示する。
フライングトゥールビヨンは時計の中央に配されている。そのためにキャリバーの構造を見直し、外周の回転ディスクを維持しながら、中央部にトゥールビヨンを収める空間を確保した。トゥールビヨンケージは、ルイ・ヴィトンを象徴するモノグラム・フラワーを思わせる星形で、60秒で1回転する。
ダイアルには、世界の主要都市を示す24のフラッグをすべてエナメルで表現、ひとつひとつ手作業で彩色されたという。さらに、歴史的なトランクの金具や補強パーツから着想を得たラグが、ルイ・ヴィトンならではのデザインを形作っている。
ワールドタイム、フライングトゥールビヨン、そしてエナメル工芸。ルイ・ヴィトンの旅のDNAと時計製造、装飾技術をひとつにまとめた華やかな一本である。

Tech Specs
ルイ・ヴィトン〈エスカル ワールドタイム フライング トゥールビヨン〉 ケース素材:プラチナ ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:フォールディングバックル ダイアル:エナメル 防水性能:50m サイズ:直径40mm 厚さ:12.8mm ムーブメント:自動巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約62時間、毎時2万8800振動 機能:時、分、ジャンピングアワー、ワールドタイム、トゥールビヨン、デイ/ナイト表示 リファレンス:W3PT41 発売時期:2026年1月 価格:20万3000スイスフラン(税込)

Nominee #6——SYLVAIN PINAUD 30s Tourbillon
シルヴァン・ピノー〈30sトゥールビヨン〉
シルヴァン・ピノーは、スイス・サント・クロワに工房を構える独立時計師である。〈30秒トゥールビヨン〉は、〈Origine〉で確立した端正なデザインを受け継ぎながら、トゥールビヨンの存在感をより前面に押し出したモデル。左右非対称のダイアルは、あえて崩したレイアウトでありながら全体のバランスは美しく整えられ、ブラックポリッシュされたスティール製パーツと、手作業によるグレイン仕上げの対比が独特の表情を生み出している。
主役となるトゥールビヨンは30秒で1回転する。ケージにはチタンを採用して重量を20%軽減し、高速回転するケージの慣性とムーブメントの振動数とのバランスを追求。また、ダブルバレルによって安定したトルク供給と長いパワーリザーブを確保している。
大きな秒表示には、正確な時刻合わせを可能にするゼロリセット機構を覗かせる開口部を設置。ケースバック側では、大型の香箱ブリッジが主役となり、鋭い内角を持つ面取りやブラックポリッシュ、サテン仕上げなど、徹底した手仕事を見ることができる。
30秒トゥールビヨンのダイナミックな動きと、抑制の効いたネオクラシックなデザイン。その静と動のコントラストに、シルヴァン・ピノーらしい時計づくりが凝縮されている。

Tech Specs
シルヴァン・ピノー〈30sトゥールビヨン〉 ケース素材:プラチナ ブレスレット/ストラップ:レザー バックル:ピンバックル ダイアル:真鍮ベース、ブラックPVD仕上げ 防水性能:30m サイズ:直径39mm 厚さ:11.2mm ムーブメント:手巻き機械式ムーブメント、パワーリザーブ約100時間、毎時2万1600振動 機能:時、分、秒、トゥールビヨン、ゼロリセット リファレンス:Tourbillon 30s 発売時期:2026年4月 限定数:30本 価格:19万4580スイスフラン(税込)
Revolution Japanの予想
今回のTourbillon部門は、6本それぞれがまったく違う方向からトゥールビヨンという機構に向き合っている。
アーノルド&サン〈コンスタントフォース トゥールビヨン 11 プラチナ〉は、コンスタントフォース機構とトゥールビヨンを組み合わせ、ジョン・アーノルドとブレゲの友情を語る物語性の高い一本。
ダヴィッド・カンドー〈DC6 ナイト・フォレスト〉も、30度傾斜させたフライングトゥールビヨン、オールチタンのムーブメント、45gという軽さ、そしてマジック・クラウンなど、独創性という点では群を抜いている。デザインも前衛的だ。
ジラール・ペルゴ〈ロレアート スリー・ゴールド ブリッジ〉は本命に推す人も多いだろう。1867年の「スリー・ブリッジ」と〈ロレアート〉というふたつの歴史的アイコンを融合した力作である。418カ所の面取り、そのうち362カ所が内角という仕上げの凄まじさも含め、受賞しても何ら不思議ではない。
つまり今年は、どの時計が優れているかというよりも、審査員がトゥールビヨンの何を評価するのかが大きなポイントになりそうだ。純粋なクロノメトリーならフェルディナント・ベルトゥー、独立時計師の手仕事ならシルヴァン・ピノー、総合的な作品性と華やかさならルイ・ヴィトン。いずれが選ばれても納得できる、かなりの激戦区である。
◎ 本命
フェルディナント・ベルトゥー〈クロノメーター FB 2TV〉
本命はフェルディナント・ベルトゥー。今回の6本の中で、トゥールビヨンを「見せるための機構」ではなく、クロノメトリーを追求するための装置として、徹底して使っている一本だと思う。
トゥールビヨンにチェーン・フュゼによるコンスタントフォース機構を組み合わせ、さらに秒針停止機構とフライバック式ゼロリセットまで搭載。1240個の部品、約300時間の手仕上げ、COSC認定という内容にも隙がない。
フェルディナント・ベルトゥーはGPHGとの相性も抜群だ。2016年には〈FB 1〉で最高賞アギュイユ・ドールを獲得。その後も2020年、2022年、2023年と受賞を重ね、これまでに計4度GPHGの栄冠に輝いている。
他部門でのノミネート、及びショパールとの「カブり」を審査員がどう捉えるか。
○ 対抗
シルヴァン・ピノー〈30sトゥールビヨン〉
シルヴァン・ピノーは、2018年にフランス国家最優秀職人章(MOF)を受賞し、2022年には〈Origine〉でGPHGのオロロジカル・レヴェレーション賞を獲得した実力派の独立時計師である。そして近年のGPHG審査委員会は、大手メゾンよりも独立時計師の類稀なる手仕事と革新的な設計構造を高く評価する。
シルヴァン・ピノーの本作は、30秒で一回転というトゥールビヨンの高速化に挑み、実用的なゼロリセット機構も搭載。直径39mm、厚さ11.2mmという比較的コンパクトなケースの中にそれらを収めている。
ネオクラシックな美学に基づいた完璧な面取りやブラックポリッシュの仕上げは、目の肥えた審査員を唸らせるレベル。独立時計師としての確固たる技術力が、濃密に凝縮された一本である。
▲穴
ルイ・ヴィトン〈エスカル ワールドタイム フライング トゥールビヨン〉
中央にフライングトゥールビヨンを置き、その周囲で24のタイムゾーンを表示するために、ムーブメントの構造そのものを作り直しているところがすごい。
さらに、24都市を表現するエナメル製フラッグには80時間以上の手仕事が費やされる。機械的な複雑さだけではなく、エナメル工芸、デザイン、旅というルイ・ヴィトンの世界観までひとつの時計にまとめている。
Tourbillon部門ではあるが、「トゥールビヨンを使ってどんな時計を作ったか」という完成度まで含めて考えるなら、この時計はかなり強い。ファッションブランドらしい「華やかさ」は圧倒的である。
※本稿の予想はRevolution Japan編集部による独自の見解であり、GPHGの審査結果とは一切関係ありません。
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