Freaking Out with Matthieu Haverlan
創業180周年のユリス・ナルダン——〈フリーク〉と挑む、時計の未来
マティウ・アヴェルラン・インタビュー
2026年、ユリス・ナルダンは創業180周年と〈フリーク〉誕生25周年を迎える。時計の機械そのものが回転して時刻を示す〈フリーク〉は、シリコンの採用でも時計づくりの常識を変えてきた。その挑戦は、〈スーパー フリーク〉や新しい〈フリーク X〉へと続いている。マネージング・ディレクターのマティウ・アヴェルランに、革新を生み出す考え方と、ブランドのこれからを聞いた。
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by Joyceline Tully. Oct 14, 2026 |
マティウ・アヴェルラン|Matthieu Haverlan
ユリス・ナルダン マネージング・ディレクター フランスのグルノーブル・ビジネススクールで学び、ハミルトン、ジャガー・ルクルトで営業や海外市場の経験を積む。ユリス・ナルダンでは最高商務責任者、最高成長責任者を歴任し、2024年2月に現職に就任。〈フリーク〉をはじめとする独創的な時計づくりを軸に、ブランドの成長を率いる。
——2026年は、ユリス・ナルダンにとって大きな節目ですね。〈フリーク〉の誕生25周年となります。この時計について、そして〈スーパー フリーク〉と新しい〈フリーク X〉について教えてください。
「〈フリーク〉は、誕生したときから、単なる時計ではありませんでした。ひとつの考え方を表す存在であり、現代の時計づくりに革命をもたらした時計です。針の代わりに時計の機械そのものが回転して時刻を示すのです。その他にも、伝統的な時計づくりのほぼあらゆる常識に挑み、業界で広く使われるようになるずっと前から、機械式時計にシリコンを取り入れてきました」

▲今年のウォッチズ&ワンダーズで発表された、ユリス・ナルダン〈スーパー フリーク〉
「コレクションの誕生25周年にあたり、私たちが目指したのは、技術、革新性、仕上げ、そして時計としての価値を、さらに高めることでした。〈スーパー フリーク〉には、卓越した時計製造技術を詰め込み、これまで以上に磨き上げています。2つのトゥールビヨンを搭載し、時を刻むリズムを整える2つの調速機構には、シリコンと、その表面を人工ダイヤモンドの薄い膜で覆った「DIAMonSIL」を採用しました。また、業界最小の差動機構とジンバル機構、そして業界で最も効率の高い自動巻き機構も開発しました。時刻表示だけを行う時計として、これまでで最も複雑な一本を送り出せたことを、誇りに思っています」

▲ユリス・ナルダン〈フリーク X〉。より小さく、薄く、頑丈に。それでも、独創的な仕組みは健在だ。
「新しい〈フリーク X〉も、同じ考えのもとで開発しました。既存モデルの外観を変えただけではありません。ケースをよりコンパクトにし、ムーブメントの構造を工夫するとともに、防水性能も高めました。脱進機にはDIAMonSILを採用。ローズゴールド製のマイクロローターを加えるなど、ムーブメントの仕上げにも磨きをかけています。さらに、ユリス・ナルダンでは初めて、お客様自身で交換できるストラップを導入しました。好みに合わせて、時計の雰囲気を変えていただけます」
——ご自身は、〈スーパー フリーク〉派ですか。それとも〈フリーク X〉派でしょうか?
「コレクターとしては、〈スーパー フリーク〉のような時計に惹かれます。高度な時計づくりの魅力を、存分に味わえる一本です。一方、日常で自然と手に取ることが多いのは〈フリーク X〉ですね。常識にとらわれない独創的な構造と、機械式時計ならではの心を動かす魅力があり、それでいて日々の暮らしにもすっとなじむ時計です」

▲ユリス・ナルダン史上、時刻表示のみの時計として最も複雑な〈スーパー フリーク〉
——〈フリーク〉は、さまざまな意味でユリス・ナルダンを象徴する時計です。誕生から25年を迎えた今、その独創性を失わずに、新鮮さを保つにはどうすればよいと思われますか?
「誕生したときの考え方を大切にすることです。初代〈フリーク〉は、伝統的な時計づくりのあらゆる常識に挑みました。〈フリーク〉の誕生25周年と、ユリス・ナルダンの創業180周年を迎える今、私たちの役割は、当時の時計をそのまま再現することではありません。進化させ、時計づくりをさらに前に進めることです」

▲2001年に登場した初代〈フリーク〉。デュアル・ダイレクト脱進機を備え、7日間のパワーリザーブを持つカルーセル・ムーブメントを搭載。巻き上げや時刻合わせに使うリューズはない。
「その精神は、〈フリーク〉だけでなく、ほかのコレクションにも息づいています。新しい世代の〈フリーク〉は、ひと目でそれとわかる個性を受け継ぎながら、新たな技術や発想によって、時計づくりにこれまでにないものをもたらさなければなりません。それが、新作を送り出す意味だと考えています」
——ユリス・ナルダンを「アイデアの実験室」と表現されていますね。その考え方がブランドにとって特に重要なのはなぜでしょうか?
「私たちは1846年の創業以来、先駆的な技術や機構、素材、そして職人の技を通じて、時計づくりを前へ進めてきました。既存の考え方にとらわれず、可能だと思われている範囲の、さらにその先を探ることで進歩が生まれると信じているからです。ユリス・ナルダンは、新しい発想が生まれる場であり、時計業界の数々の大きな変革を後押ししてきました。これまでに4300以上の賞を受け、時計ブランドとして最多の受賞歴を誇ります。時計業界が危機に直面していた1980年代にも、私たちはあえて時代の流れに逆らい、技術革新への投資を続けました」
▲左:ユリス・ナルダン〈サンマルコ ミニッツリピーター ジャックマール〉Ref.709-20。鍛冶職人をかたどった人形が動く仕掛けを備える。(Image: Sotheby’s) 中:ユリス・ナルダン〈アストロラビウム ガリレオ・ガリレイ〉 右:ユリス・ナルダン〈パーペチュアル ルートヴィヒ〉
「私たちは、数々の画期的な時計を生み出してきました。時を告げる音に合わせて人形が動く『ジャックマール』を初めて搭載したチャイミングウォッチ〈サンマルコ ミニッツリピーター〉、世界初の天文腕時計〈アストロラビウム・ガリレオ・ガリレイ〉、そしてリューズ操作でカレンダーを前にも後ろにも調整できる、世界初の永久カレンダー搭載時計〈パーペチュアル ルートヴィヒ〉です。2001年には、革新的な〈フリーク〉を発表しました。時計業界の常識を打ち破り、機械式時計へのシリコンの採用に先鞭をつけたモデルです」

▲ユリス・ナルダン〈フリーク〉、2001年。
「革新を追い求めること、つまり『アイデアの実験室』であることは、私たちそのものです。ユリス・ナルダンは、先駆的な技術やデザイン、職人の技、そして新しい素材を通じて、時計づくりを前へ進めるブランドなのです」
——ユリス・ナルダンと聞くと、新素材やシリコンを思い浮かべる人も多いと思います。そのイメージは、今もブランドをよく表しているのでしょうか?
「もちろんです。ユリス・ナルダンから技術革新を連想していただけることを、誇りに思っています。シリコンは、現代の機械式時計を根本から変えた素材だからです。私たちは、その採用にいち早く取り組み、伝統的な時計づくりを重んじる業界に、大きな技術的進歩をもたらしました。シリコンが機械式時計に役立つと信じる人がまだ少なかった時代に、精度や信頼性、耐久性の向上につなげたのです」

▲2001年に登場した〈フリーク〉。ナチュラル脱進機の考え方を発展させたデュアル・ダイレクト脱進機を搭載し、機械式時計として初めてシリコン製のガンギ車を採用した。今日「ハイパーウォッチ」と呼ばれる、革新的な高級時計のジャンルを切り開いた一本。

▲ユリス・ナルダンのデュアル・ダイレクト脱進機に用いられる、シリコン製のガンギ車。
——前衛的でありながら、一部のマニアだけに向けたブランドにならないために、どのようなことを大切にしていますか?
「ユリス・ナルダンは、独自の道を歩むブランドです。すべての人の好みに合うわけではないかもしれません。それでも、技術革新やデザイン、そして心を動かす時計づくりを通じて、大胆に挑戦する姿勢を貫くこと。それが、私たちの最も大切な価値です。私たちのお客様は、自由な精神の持ち主です。新しい考えを受け入れ、自ら未来を切り開く。自分の意思で選ぶことを大切にし、個性を表現したいと考える方々です。求めているのは、自分らしさを映し出し、心を動かしてくれる時計。確かな歴史に根ざし、高度な技術革新と職人の技に支えられた、ほかにはない一本なのです」
——ユリス・ナルダンが目指す未来は、先端技術を追求するマニュファクチュールでしょうか。持続可能なものづくりの先駆者でしょうか。それとも、独立した創造の実験室でしょうか。あるいは、その3つすべてであることが重要なのでしょうか?
「私にとって、それらは別々の目標ではありません。私たちの目的は、時計づくりを前へ進めることです。そのためには、技術の限界に挑み続け、新しい素材の可能性を探り、常識に挑戦できる自由な発想を守ることが欠かせません」

▲円形のシリコン製フレームと、アンクルにつながる2枚のたわませた薄板で構成される、ユリス・ナルダンの「ユリス・アンカー脱進機」。2014年のバーゼルワールドで発表された。
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▲ユリス・ナルダン〈フリーク S ノマド〉の、青いシリコン製ヒゲゼンマイと2つの調速機構。
——ユリス・ナルダンのこれからについて、最も楽しみにしていることは何ですか?
「私たちはここ数年、長期的な視点に立ち、充実した製品計画に取り組んできました。その成果は、〈ダイバー エアー〉〈UR-FREAK〉〈スーパーフリーク〉、そして新しい〈フリークX〉といった時計として、すでに形になっています。これまでに成し遂げてきたことと、生み出した時計の数々を、とても誇りに思っています」
▲左:2025年に発表された〈ダイバー エアー〉。ストラップ込みでわずか52gという、世界最軽量の機械式ダイバーズウォッチ。右:独立系時計ブランド、ウルベルクとのコラボレーションから生まれた〈UR-FREAK〉
「これからの数年間で、〈マリーン〉や〈ダイバー〉、そして伝統的な装飾技法を生かした〈メティエダール〉の作品など、ユリス・ナルダンを代表するほかのコレクションでも、新たな展開を予定しています。どうか楽しみにしていて下さい!」
Brands:Ulysse Nardin
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