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最も長く途切れずに生産され続けている腕時計は何か?

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名作とは、長く愛される時計のことなのか。それとも、一度も途切れることなく作り続けられてきた時計のことなのか。100年以上にわたり受け継がれてきた傑作から、真

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What Watch Has Been In Continuous Production The Longest?

最も長く途切れずに生産され続けている腕時計は何か?

名作とは、長く愛される時計のことなのか。それとも、一度も途切れることなく作り続けられてきた時計のことなのか。100年以上にわたり受け継がれてきた傑作から、真の“ロングセラー”とは何かを考える。

by Jack Forster . Nov 19, 2024

     一番古いブランドはどこか?

 時計産業は“情”に訴えるビジネスであり、その中でもっとも強力なもののひとつが ノスタルジーだ。長い歴史をもつブランドであれば必ず、そのストーリーの根幹に郷愁が織り込まれている。

 時計愛好家やコレクターであれば、必ず頭をよぎるのが、

「最も長く存続しているブランドはどこなのか?」

 という疑問である。だが時計の歴史には浮き沈みがつきもので、その答えは常に明快とは限らない。

 私の見解を述べれば……、ヴァシュロン・コンスタンタンは強力だろう。

 社名や経営体制の変更はあったものの、1755年にジャン=マルク・ヴァシュロンがジュネーブで工房を構えて以来、今日に至るまで時計製作を継続してきたという点においては反論の余地がない。

 もちろん、スイスにはそれ以前から時計産業は存在した。だが、現存し、休むことなく事業を続けてきたという点で見れば、ヴァシュロンの主張は、豊富な物証によっても裏付けられ、他の追随を許さない。

ジャン=マルク・ヴァシュロンによる最初期の懐中時計(1755年頃) (Image: Vacheron Constantin)

 最近になって、ふと頭に浮かんだ疑問がある。

「最も長く途切れずに生産され続けている腕時計は何か?」というものだ。

 では“連続生産”をどう定義するか? 私の考えでは、少なくとも発売以来、現在に至るまで、毎年そのブランドのカタログに掲載され続けているモデルであること。これを満たすなら、ひとまず連続生産と呼んでよいだろう。

 これで候補は一気に絞られる。だが、時計の技術的進化は必然であり、その過程で「当初と同じ時計と呼べるのか」というケースが出てくる。

 まずはいくつか代表的な例を見ていこう。

ロレックス〈サブマリーナー〉

 もっとも分かりやすい候補のひとつが、ロレックスの〈サブマリーナー〉だ。1953年に誕生して以来、ロレックスのカタログから一度も姿を消したことがない。これはほとんど“確定的”と言ってよいケースで、現行サブマリーナーは技術的には大きく進化したものの、ひと目でオリジナルの直系であることが分かる。

 ただし、その裏ではじつに多くの仕様変更が行われてきた。アルミからセラミックへのベゼル素材の変更、ムーブメントの改良、新キャリバーの導入、ケースの比率やサイズの微妙な変更(ロレックス・サブの愛好家からすれば“微妙”どころではない)、リュウズサイズの変更、ダイヤル表記の変遷……。

 実のところ、初出から変わっていない部分を探すほうが難しいほどだ。それでも、70年以上にわたる連続生産モデルとみなすのは、きわめて妥当だと言えるだろう。

ロレックス〈サブマリーナー〉(1953年)(Image:Rolex)

ロレックス〈サブマリーナー〉 Ref. 124060(ブラック セラクロム ベゼル インサート)

ブライトリング〈ナビタイマー〉

 もうひとつの候補がブライトリング〈ナビタイマー〉だ。ナビタイマーはサブマリーナーと同世代に属し、1952年に発表されて以来、ブライトリングの代表モデルとして君臨してきた。

 このデザインは非常に安定しており、場合によってはサブマリーナー以上に原型を保ってきたと言える。ムーブメントを含む数々の技術的アップデートを経てはいるものの、スライドルール(計算尺)ベゼルと独特のレイアウトは、1950年代初期の姿をほぼそのまま保っている。

初代ブライイトリング〈ナビタイマー〉。パイロット団体AOPAのためにデザインされたモデル(Image: Breitling)

アップデートを受けつつも、1950年代から受け継がれるナビタイマーのDNAを色濃く残している〈ナビタイマー B01 クロノグラフ〉

 オメガ〈スピードマスター プロフェッショナル〉

 1950年代生まれのもうひとつの名作が、オメガ〈スピードマスター プロフェッショナル〉だ。初出は1957年。当初のリファレンスCK2915は、聖典のように語られる“ブロードアロー針”を備え、ポリッシュ仕上げのスチール製ベゼルを特徴としていた。

 私たちが一般に“ムーンウォッチ”と呼んでいるデザインは、1959年に登場したRef. 2998で確立したものだ。オリジナル同様、レマニアCH27をベースにしたコラムホイール式、横カップリングのキャリバー321を搭載していた。

 その後のデザインの変遷は、サブマリーナやナビタイマーと比べても変化が少なく、サブダイヤルのスティック針が1960年代初頭に導入された程度だと言えるだろう。

左:1957年に発売されたスピードマスター初代モデル CK2915 右:ムーンウォッチの意匠を確立したスピードマスター CK2998

▲  現行のスピードマスター プロフェッショナル“ムーンウォッチ” Ref. 310.30.42.50.01.001(Cal.3861 搭載)

  スピードマスターが継続生産モデルとして語られる際に、わずかに綻びを感じるのは、2019年にコーアクシャル脱進機を採用したキャリバー3861が導入された点にある。

 それまでのCal.861とCal.1861は、簡略化こそされていたものの、いずれもCal.321の直系の後継だった。321からの主な違いは、ヒゲゼンマイがブレゲ巻きではなく平ヒゲであったこと、そしてスイッチング機構がコラムホイールではなくカム式になったことだ。

 しかしながら、321/861/1861は、すべてがNASAによって有人宇宙飛行用に認定されていたという共通点があった。スピードマスターは、1972年にNASAの再認定も受けている。

 一方で現行のムーンウォッチを駆動するCal.3861は、1861と劇的に異なるわけではないが、コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、METAS認定を取得した、まったく新しい世代のムーブメントである(私の知る限り、NASAの再認定は受けていない)。

 これは依然として同じスピードマスターと言えるのか?この問いには、賛否どちらの立場からも論じられるだろう。だが、ナビタイマーやサブマリーナで行われてきたムーブメント更新と比べると、3861化は連続性に大きな断絶をもたらしたように感じられる。

コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを備えた、マスター クロノメーター認定キャリバー3861。

  これらの時計は生産期間の長さという点では、いずれも抜きん出た存在だろう。この20年ほどの時計業界では、新しさこそが正義のように扱われ、派手なニューモデルの方が、定番モデルより高く評価されがちだ。

 だが、クラシックがクラシックであり続けるのには、それ相応の理由がある。ブランドにとって、ファンが過去とつながることができる一本を提供することは、確かな価値をもたらす。それが成功している例は、やはりロレックスである。

カルティエ〈タンク ルイ カルティエ〉

 継続生産されている最古の時計として最も有力なのは、カルティエの〈サントス デュモン〉か〈タンク〉だろう。なかでも私はタンクのほうが、確度が高いと思っている。なぜなら、サントスは、一度も生産中断をしていないかどうか、確信が持てないからだ。

 一方でタンク, とりわけ〈タンク ルイ カルティエ〉は、1922年に販売が開始されて以来、基本的な姿をほとんど変えることなく存在し続けてきた。現行モデルも、サイズとムーブメントを除けば、当時のオリジナルとほぼ同一と言ってよい。

 現在のタンク ルイ カルティエには自社開発ムーブメント1917 MC が載っているが、以前はジャガー・ルクルト製のムーブメント、Cal. MC 8971(JLC Cal.846/1のリネーム)が搭載されていた。エドモン・ジャガーは1907年からカルティエにムーブメントを供給していた。

 もしタンク ルイ カルティエが1920年代初頭の誕生以来、一度もカタログから外れていないとするなら、その継続期間は実に100年以上。これは連続性という点では圧倒的な数字である。

  左: 1921年、ルイ・カルティエはオリジナルの〈タンク ノルマル〉をさらに洗練させ、後に“タンクの典型”とされるデザインを完成させた。ケースはわずかに縦長となり、丸みを帯びたブランカード(側板)を備え、文字盤もスクエアからレクタンギュラーへと変更された。写真は、1925年頃に製造された〈タンク ルイ カルティエ〉の一本。右:〈サントス デュモン〉は、1904年にルイ・カルティエが親友であり先鋭的な飛行家アルベルト・サントス=デュモンのために創り上げた、腕時計史に残る象徴的モデル。正式に一般販売が始まるのは1911年で、本作は1912年に製造された稀少な初期の一本である(Image:Cartier)

〈タンク ルイ カルティエ〉手巻きキャリバー 8971 MC 搭載、ローズゴールド。

  これら4本の時計だけでも、非の打ちどころのないコレクションとなるだろう。どの時計も、まさに“レガシー”といえる存在である。

 もちろん、他にも名作は存在する。

 1976年登場のパテック フィリップ〈ノーチラス〉(もっとも、スティール製5711の生産終了により、オリジナルとの連続性という点では一部断絶を感じさせるが、デザイン自体は受け継がれている)

 1997年のパテック フィリップ〈アクアノート〉(現在もスティール仕様が健在)

 1972年のオーデマ ピゲの〈ロイヤル オーク“ジャンボ”〉だ。ジャンボに関しては、2022年に超薄型キャリバー2121が廃盤となり、新キャリバー7121へ切り替わったことで、連続性にわずかな断絶が生じたように見える。

 しかし、ここまで取り上げてきた他のモデルに対してムーブメント更新を理由に“非連続”としなかった以上、ロイヤル オークだけを責めるのはアンフェアだろう。

 誕生から現在まで一本の線でつながる時計たちが存在するという事実は、実に美しい。あなたの手首のタンク ルイ カルティエは、一世紀以上前にルイ・カルティエ自身が見ていたものから、ずっと変わらなかったのだ……これは復刻やリローンチでは得られない、唯一無二の感動なのである。

Brand:Breitling, Cartier, Omega, Rolex
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