時計界で最も誤解されやすい「ギルトダイヤル」。単なる金印刷ではない、当時の職人技が光る複雑な製造工程とその独自の輝きの秘密を解き明かす。
The Watch Face: Gilt Dials
時計の表層:“ギルトダイヤル”は、単なる金印刷ではない
時計界で最も誤解されやすい「ギルトダイヤル」。単なる金印刷ではない、当時の職人技が光る複雑な製造工程とその独自の輝きの秘密を解き明かす。
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by Adrian Hailwood . Aug 19, 2019 |
なぜ時計愛好家は「ギルト」と呼ぶのか
「私が言葉を使うとき、その言葉は私が選んだ意味を持つ。それ以上でもそれ以下でもない。」(出典:ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』1872年)
時計収集の世界で使われる用語は、時に紛らわしく、難解である。我々の「ケース(時計本体の器)」に荷物は入らないし、「バレル(香箱)」にビールも詰まっていない。「クラウン(竜頭)」が王の頭部を飾ることもない。それでもこの趣味の世界においては、皆がその意味を正確に理解している。しかし、いくつかの用語は極めて誤解を招きやすく、文字通りに受け取ると問題が生じる。
その典型例が「ギルト(艶あり漆黒)」ダイヤルだ。辞書を引けば、ギルトという言葉は14世紀にまで遡り、「ギルディング(金箔貼り・めっき)」と同根である。何かの表面に金の薄膜を張ること、あるいは金のように見えるものを指す。この定義からすれば、ギルトダイヤルとは「金めっきの文字盤」であると推論するのが合理的だろう。
しかし、天邪鬼な時計収集の世界、とりわけロレックスの愛好家たち(そしてその後に続いた多くの解説者たち)は、全く異なる意味をこの言葉に与えることに決めたのである。1950年代から1960年代初頭にかけて、ロレックスはスポーツモデルにギルトダイヤルを採用した。ここでコレクターたちが使うギルトという言葉は、「ゴールド調のチャプターリング(目盛り)と文字」を持つ文字盤を指している。
白抜き技法と「段差」の意味
私がここで言葉を慎重に選んでいる点に注目してほしい。多くのオンラインフォーラムに見られるような、あるいは「ギルト」の辞書的定義から推測されるような「ゴールドのプリント(印刷)」とは言っていない。これは、文字盤の表面にゴールドの文字を載せたり、外周にゴールドのインデックスを印刷したりしたものではない。ロレックスに限らず当時行われていた、はるかに手間と時間がかかる複雑な製造プロセスの産物なのである。

重要な点は、ギルトダイヤルにおけるゴールドの色とはインクではなく、ネガティブプリント(白抜き)技法によって露出した「下地の金属」そのものという事実である。もちろん、他のディテールがゴールドを含むあらゆる色の通常印刷で施されていない、という意味ではない。ロレックスはモデルに応じて、ホワイトやレッドの防水表記や、ホワイトの“Superlative Chronometer Officially Certified”文字を重ねて印刷していた。
製造の出発点は、鏡面仕上げにまで磨き上げられた真鍮(ブラス)のブランク文字盤である。このプレートには金めっき、銀めっき、あるいは銅めっきが施されるか、もしくはそのままの状態で使用される(すべてのギルトダイヤルが金色とは限らない。我々は今や色ではなく製造プロセスを説明しているわけで、ここにまた新たな混迷が生じる)。ブランドロゴ、名称、モデル名から、中央にタキメータースケールを備えた3レジスター・クロノグラフの複雑な意匠に至るまで、必要なデザインがプレート上にパッド印刷される。この段階で使用されるのは、可溶性で非導電性のインクである。
次に、文字盤のベースとなる色が塗布される。これは通常、金めっきに似た電気的プロセスの電解槽(ガルバニックタンク)で行われる(これもまた誤解を招く紛らわしい要素だ)。ベースカラーは一般的にブラックだが、必ずしもそうでなくてもよい。同じプロセスを使えば、あらゆる色の文字盤を作り出すことが可能である。
その後、デザインを浮かび上がらせるためにプレートを「洗浄」する。これにより可溶性インクが除去され、覆われていた生の金属面が姿を現して輝きを放つ。最終的なデザインにさらなる色の層を重ねたい場合は、このプロセスを繰り返す。そして最後の工程として、露出した金属のメタリックな光沢を保護するために、透明なラッカーでコーティングを施すのである。
これらの文字盤の魅力は、露出した金属が、メタリックインクには到底真似のできない方法で光を反射する点にある。文字やインデックスが放つ温かみと輝きは、時計が新品だった当時は漆黒の文字盤と鮮烈なコントラストを成していたはずであり、同時に、経年変化によってまろやかになった現在のブラック文字盤にも完璧に調和している。光がギルトダイヤルの上を移ろうにつれ、文字のトーンはほとんど白に近い色から、深いブロンズ色へと表情を変える。
ラッカー層が損なわれない限り、下地の金属が腐食して変色することはない。つまり、通常の印刷なら褪色してしまうような古い文字盤であっても、不自然なほど鮮やかで、良好な保存状態を保ち続けることができるのだ。表面から彫り出されたかのようなダイヤルディテールには、永続性という名の心地よい趣がある。また、時計の洗浄や修復の際、こうしたディテールは通常の印刷ダイヤルに比べて、損傷したり消えたりするリスクがはるかに低いというのも事実である。

従来の印刷手法と比較した場合、この製造方法にはトレードオフが存在する。ルーペで拡大して観察すると、文字や数字のエッジが、高品質なインク印刷のそれとは異なり、わずかに滲んで見えることがある。これはギルトダイヤル特有の魅力の一部であると同時に、偽物を見分けるための有用な手がかりでもある。これほどの手間がかかるプロセスを偽造者が完璧にマスターすることは、不可能ではないにせよ極めて困難だ。そのため、ブラックのベース上にゴールドの通常パッド印刷を施すという、安易な近道が選ばれやすい。
ルーペを手に取った際、もう一つ注目すべきディテールは、文字盤のメインカラーから文字の部分に向けて生じている「段差」である。これこそが、その文字盤が「マスキングと洗浄(白抜き)」の手法によって製造された明確な証拠となる。
ギルトダイヤルは1930年代後半から1960年代後半にかけて採用されていたが、その後は衰退していった。生産数の増加と製造コストへの圧力により、このような複雑極まる職人技は歴史の彼方へと追いやられてしまったのだ。
ブラックにゴールドという配色は、とりわけチューダー〈ブラックベイ〉のようにヴィンテージの雰囲気が求められるモデルにおいて、現在も人気のカラーリングである。しかし、その文字を精査すれば、それが単に表面に塗布されたインクに過ぎないことが分かる。おそらく、これこそがギルトダイヤルが持つ最大の魅力なのだろう。比較的安価な時計に対してさえ、現代よりも多くの時間と労力を割くことができた時代へのノスタルジーを、これ以上ないほど雄弁に語りかけてくるのだ。それに比べると、現代の文字盤装飾は、表層的であると言わざるを得ない。

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