アーティアが、ふたつの傾斜トゥールビヨンを搭載する〈コンプレキシティ〉に、伝統的な装飾技法を取り入れた新作〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉を発表。手彫りや槌目仕上げ、手作業で磨き上げた面取りが、ブラックロジウムの深い色調に豊かな陰影を生む。透明なサファイアケース越しに、独創的な機構と職人技を堪能できる一本だ。
The Human Touch: ArtyA Unveils the Complexity Métiers d’Art
複雑機構と手仕事 アーティア〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉
アーティアが、ふたつの傾斜トゥールビヨンを搭載する〈コンプレキシティ〉に、伝統的な装飾技法を取り入れた新作〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉を発表。手彫りや槌目仕上げ、手作業で磨き上げた面取りが、ブラックロジウムの深い色調に豊かな陰影を生む。透明なサファイアケース越しに、独創的な機構と職人技を堪能できる一本だ。
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by Matthew De Jesus . Sep 3, 2026 |
あまりにも複雑で、次作を生み出す余地などほとんど残されていないように思える時計がある。今年のウォッチズ&ワンダーズで目にしたアーティアの〈コンプレキシティ〉も、そのひとつだった。12時位置と6時位置のサファイアドームの下に、傾斜型のトゥールビヨンをひとつずつ配置。両者をディファレンシャルで連結し、その機構のすべてを透明なケースに収めた時計だ。
だが、アーティアにはまだ次の一手があった。新作〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉は、その並外れた設計を受け継ぎながら、人の手が生み出す工芸にフォーカスしている。文字盤とムーブメントには、手彫り、槌目仕上げ、ショットブラスト、ペルラージュ、面取りと研磨といった伝統的な装飾技法を駆使し、全面的に新たな仕上げを施した。

一体となって働く、ふたつの傾斜型トゥールビヨン
仕上げの話に入る前に、まずはオリジナルの〈コンプレキシティ〉の仕組みを振り返っておこう。
傾斜型トゥールビヨンでは、テンプの軸がキャリッジの回転軸に対して傾いている。そのため、キャリッジが一回転するたびに、テンプの軸は円錐状の軌跡を描く。この構造により、調速機構は従来の単軸トゥールビヨンよりも幅広い姿勢を取ることができる。

〈コンプレキシティ〉は、この機構を12時位置と6時位置に向かい合わせて配置している。それぞれのキャリッジは30秒で一回転し、互いに異なる方向へ回転する。テンプ、キャリッジ、アンクルの各軸はいずれも平行ではなく、その動きはまるで万華鏡のような光景を生み出す。
ふたつの傾斜型トゥールビヨンの間にはディファレンシャルが置かれ、香箱からのエネルギーを両方の調速機構に分配すると同時に、それぞれの歩度を機械的に平均化する。つまり、ふたつのトゥールビヨンが互いの歩度のばらつきを補い合う仕組みだ。着用者の手首の動きによって時計の姿勢が変わっても、生じる歩度の差をならすのだ。

手仕事が生む仕上げの美
オリジナルの〈コンプレキシティ〉も、すでに上質な仕上げを備えていた。ムーブメントにはサンドブラスト仕上げが施され、すっきりとした表情を見せていた。しかし、〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉では、その仕上げがさらに一段上の領域へと引き上げられている。

ブリッジの上面には手作業でショットブラスト仕上げを施し、下面には槌目を打ち、不規則な起伏を生み出している。ムーブメントの随所にある角は、すべて手作業で面取りして磨き上げ、側面はカブロンと呼ばれる研磨工具で筋目をつけ、サテン調に仕上げている。
地板のディファレンシャル周辺には、手作業によるペルラージュ仕上げが施され、この部分へと視線を誘う。中央のブリッジには磨き上げた縁取りを設け、ディファレンシャルの輪郭をさらに際立たせた。また、ムーブメント側に取り付けられた、個体番号入りの〈コンプレキシティ〉のプレートにも、手彫りと手作業による面取りが施されている。

これらの手仕事の背景となるのが、ブラックロジウムのメッキだ。磨き上げた面取りや縁取りが、暗い表面を背に光を鋭く捉える一方、槌目やブラスト仕上げの部分は、より穏やかなコントラストを生み出す。
文字盤もまた、彫金師のキャンバスとなる。きめ細かなサンドブラスト仕上げを施した下地に、ビュランと呼ばれる彫刻刀で、放射状の線を一本ずつ刻んでいく。彫りの深さを変えることで、ムーブメントとはまた異なる光の表情を加えている。アプライドインデックスにも同様に緻密な手仕事が注がれ、上面にはサンドブラスト仕上げ、面取り部分には手作業による研磨、側面にはカブロンによる筋目仕上げが施されている。
ケースは引き続き、透明な合成サファイアの塊から削り出したものを採用。42×48mmのケースは、3つの凹面を組み合わせた有機的なフォルムを描き、手首を包み込むように沿う。リューズまでもサファイア製だ。風防には、ふたつのトゥールビヨンの真上にそれぞれ専用の光学ドームを設け、機構の動きを拡大して見せている。

アーティアはケースひとつにつき、ダイヤモンド工具による精密な加工に120時間、その後の研磨に140時間以上を費やしている。キャリバー〈コンプレキシティ-01〉は、ヴァロルブを拠点とする複雑機構の専門企業、ピュルテック社と共同開発したものだ。ムーブメントはほぼあらゆる角度から眺めることができ、50時間のパワーリザーブを備える。
複雑機構の躍動と手仕事の繊細な表情を映し出す〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉は、機械式時計を眺める喜びを存分に味わわせてくれる。
Tech Specs
アーティア〈コンプレキシティ メティエ・ダール〉 ムーブメント: キャリバー〈コンプレキシティ-01〉、手巻き。ディファレンシャルで連結したふたつの傾斜型トゥールビヨンを搭載。パワーリザーブ50時間。 文字盤: 微細なサンドブラスト仕上げの下地に手彫り装飾。アプライドインデックスは、面取り部分を研磨し、側面にカブロンによる筋目仕上げ、上面にサンドブラスト仕上げ。 ケース: 透明な合成サファイア、またはピジョンブラッドルビー。ミドルケースは3つの凹面を組み合わせた形状。12時位置と6時位置に光学ドームを配置。幅42×縦48×厚さ13mm。 ストラップ: ケース一体型ラバーストラップ。アーティア製フォールディングバックル。 価格: サファイア仕様19万スイスフラン、ピジョンブラッドルビー仕様22万スイスフラン。 限定数: 個体番号入り9本。
Brands:Artya
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