スポーツウォッチとは何か。防水性、耐衝撃性、視認性、自動巻き、機能ベゼル…………その特徴はすべて実用性から生まれた。その歴史をたどりながら
The Anatomy of a Sports Watch
入門スポーツウォッチ―どう選ぶ? 何ができるべきなのか?
スポーツウォッチとは何か。防水性、耐衝撃性、視認性、自動巻き、機能ベゼル…………その特徴はすべて実用性から生まれた。その歴史をたどりながら、スポーツウォッチの本質を探る“べき”論。
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by Zen Love. May 1, 2024 |
スポーツウォッチの定義とは?
スポーツウォッチは、必ずしも薄くある必要はない。シャツのカフの下に収まる必要もない。美しくある必要すらない。形はさまざまであり得るが、スポーツウォッチを名乗る以上、備えているべき基本的な特性というものがある。
それは、防水性、耐衝撃性、視認性といった実用的な機能だ。こうした機能はすべて、必要性から生まれたものであり、今日では多くの人が現代の腕時計に当然のように求める基本的な耐久性へとつながっている。
しかし現代では、時計が本来の目的から切り離された存在のように感じられることも少なくない。スポーツウォッチという言葉も、単に“スポーティなデザイン”やカジュアルなスタイルを指すものとして捉えられがちだ。
だからこそ、スポーツウォッチがどこから生まれ、どのように定義されてきたのかを改めて振り返ることには意味がある。ライフスタイル的なマーケティングに囲まれた現代の消費者にとっても有益であり、また愛好家にとっては腕時計そのものの歴史と発展を理解する手がかりにもなる。
今日、スポーツウォッチというカテゴリーは非常に広く、多様なものになっている。一方で、それ以外の時計はほとんどが“ドレスウォッチ”という狭い言葉の中に押し込められている。
ダイバーズウォッチ、パイロットウォッチ、フィールドウォッチ、さらには多くのクロノグラフやGMTウォッチも、いまやスポーツウォッチの例として挙げられる。現在では、これらの時計はほぼどんな場面でも着用できるが、その歴史と特徴は、もともと具体的な用途に根ざしている。
スポーツウォッチとは、すなわちツールである。アスリート、冒険家、兵士が実際に使用するために作られ、あるいは競技の計測や科学的な活動のために用いられてきた時計だ。行動のための時計であり、過酷な環境に耐えるための時計でもある。
現代のスポーツウォッチの中には、スタイルとしての“スポーティさ”を持つだけで、実際には穏やかな日常生活や装いのアクセントとして使われるものも多い。しかしそうした時計であっても、そのルーツは過去の実用的な時計につながっているはずだ。
では、「スポーツウォッチとはいったい何なのだろうか?」—むしろこう問い直したほうがよいかもしれない—「スポーツウォッチは、何ができるべきなのか?」
ここでは、スポーツウォッチを定義する基本的な要素と、それらがなぜ重要なのか、そしてどのように生まれてきたのかを見ていこう。
スポーツウォッチは防水であるべきだ
多くの一般ユーザー、さらには時計愛好家でさえ、腕時計の防水性能をそのまま時計全体の堅牢性を示す指標のように考えがちだ。もちろん耐久性はそれだけで決まるものではないが、まったく的外れというわけでもない。
というのも、ケース内に湿気や水分が侵入すれば、内部の精密な機械にとって致命的だからだ。実際、防水性能が確立される前は、水の侵入によって数多くの時計が故障していた。

▲ブランパンの元CEO、ジャン=ジャック・フィスター。
防水性能は、ダイバーズウォッチだけに必要なものではない。水中に入ることのない時計であっても、日常生活の中で湿気や微粒子にさらされることは避けられないからだ。精密な時計機構や潤滑油にとって、錆や埃がどれほど深刻な影響を与えるかを想像してみればよい。結果は明らかに望ましいものではない。
しかし現代の人々は、時計を着けたまま日常の行動を問題なくこなせる。手を洗うとき、激しい雨に打たれるとき、さらにはシャワーや水泳、そしてもちろんスキューバダイビングに至るまで、いちいち時計を気にする必要はないはずだと考えている。
時計における防水技術の進化は、語ろうとすればそれだけで何冊もの本が書けるほどの歴史を持ち、その過程には数多くの史実の食い違いや論争も存在する。時計愛好家の中でも、きわめて研究熱心な人々の間では議論が絶えない分野でもある。
だが、重要なのはごくシンプルな事実だ。今日の人気モデルから、人間の生存限界をはるかに超える深度に対応する時計に至るまで、その基盤となったのは、いくつかの重要な技術革新だったということだ。
それがガスケットとねじ込み式構造である。地味に聞こえるかもしれないが、これらこそが現代のスポーツウォッチを成立させている技術なのだ。
こうした解決策は、腕時計が普及するよりもはるか以前、19世紀の懐中時計の時代にすでに考案されていた。20世紀初頭に時計がポケットから手首へと移ると、時計は外部環境にさらされる機会がさらに増え、一般の男性の間でも腕時計が広く使われるようになる。
さらに戦争や、スキューバダイビングのような活動が、時計ケースをできる限り水密にする技術発展を加速させた。
防水技術の進歩は徐々に積み重ねられていったが、その過程にはいくつかの重要な節目がある。1917年、第一次世界大戦中には、潜水艦の指揮官たちの依頼によって、スイスのタヴァン社が〈サブマリン〉という腕時計を製造している。当時としては驚くほど堅牢なモデルだった。
さらに有名なのは、1926年に登場したロレックスの〈オイスター〉だ。1927年、ロレックスはこの時計をイギリス海峡横断に挑戦した水泳選手メルセデス・グライツェに装着させ、防水腕時計の実用性を世に示した。
1932年に発表されたオメガ〈マリーン〉は、商業的に販売された最初期のダイバーズウォッチのひとつと考えられている。エレガントな長方形ケースを持ち、内部の時計本体を外側のケースで密閉するという構造を採用していた。

▲ 1926年に登場したロレックス〈オイスター〉は、防水性能を大きな特徴として打ち出した腕時計だった。
1940年代にはOリングと呼ばれる新しい種類のガスケットが登場し、より堅牢な時計の開発を可能にした。そしてこれが、私たちが今日よく知るダイバーズウォッチの誕生へとつながっていく。
1953年には、ロレックス、ブランパン、ゾディアックがそれぞれダイバーズウォッチを発表している。いずれも約100m防水をうたっており、現代の私たちが見ても明らかにダイバーズウォッチと認識できるモデルだった。
今日のダイバーズウォッチは、通常200m(20気圧、約600フィート)以上の防水性能を備えているのが一般的だ。
水泳程度であれば100m防水あれば十分であり、それより低い防水性能の時計をスポーツウォッチと呼ぶのは少々無理があるだろう。50m防水なら日常生活ではそれなりに使えるが水中での使用には向かない。30m防水の“日常生活防水”のドレスウォッチでも手洗い程度なら問題ないが、基本的にはもう少し丁寧に扱う必要がある。
もちろん、これらの防水性能は時計が新品の状態で工場を出荷されたときの値だ。時間の経過や使用によって、ゴム製ガスケットなどの部品は劣化していく。そのため定期的なメンテナンスをしなければならず、ヴィンテージのダイバーズウォッチが新品当時と同じ性能を保っている訳ではない。
今日では、ミクロン単位の精度で加工された部品と高度な機械加工技術により、ねじ込み式のリューズやケースバック構造もさらに進化している。その結果、信じがたいほどの防水性能を持つ時計が生まれている。
記録を持つのはオメガで、2019年に登場した〈ウルトラディープ プロフェッショナル〉は10,935mの深度試験をクリアし、15,000m防水をうたう。市販モデルである〈ウルトラディープ〉でも、驚異的な6,000m防水を備えている。
こうした極端な防水性能を持つダイバーズウォッチは、人間が実際に到達できる深度をはるかに超えている。しかしそれは、時計がどこまで耐えられるかという技術的可能性を示すためにある。言い換えれば、あなたがどんな過酷な状況に置かれても、時計のほうが先に限界を迎えることはないという証明でもある。
スポーツウォッチは耐衝撃性を備えているべきだ
時計の防水性能は比較的わかりやすく、話題にもなりやすいテーマだ。一方で、耐衝撃性となると少し技術的で、数値化もしづらい。しかしスポーツウォッチにとっては、防水性と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素でもある。少なくとも、スポーツウォッチが簡単に壊れるようでは困るだろう。
時計の耐久性には素材や構造などさまざまな要素が関わるが、時計がぶつかったり衝撃を受けたりすると、多くの部分に問題が生じる可能性がある。ケースに刻まれた小さな傷や打痕は、いわば味わいとして楽しめるかもしれない。
しかし内部のムーブメントも同時に負荷を受けていることを忘れてはならない。歯車、バネ、針など、数多くの微細な部品が精密に連動している中で、特に衝撃に弱いのがテンプのピボット(軸)だ。
テンプは機械式時計の調速機構である。中央にヒゲゼンマイを持つ振動輪で、時計特有のチクタクという音を生み出す装置だ。多くの時計ではシースルーバックからその動きを見ることもできる。
時計史に名を残す時計師アブラアン=ルイ・ブレゲが18世紀末に考案した“パラシュート”という耐衝撃装置は、現在の機械式時計に広く採用されている耐衝撃機構の原型ともいえるものだった。
今日、多くの機械式時計で採用されているのがインカブロックだ。これはテンプのピボットを支える人工ルビーのジュエルを、バネ付きのホルダーで保持する構造になっている。衝撃を受けた際、ジュエルがわずかに動くことで衝撃を吸収し、ピボットの破損を防ぐ仕組みだ。インカブロックは1934年に開発されたが、1950年代になっても耐衝撃装置を持たない時計はまだ存在していた。
現在でも多くの時計がこのシステムを採用しているが、ブランドによっては独自の耐衝撃機構を開発している。例えばロレックスのパラフレックスや、セイコーのダイヤショックがその例だ。
また、より高い耐衝撃性能を実現するために別のアプローチを採るブランドもある。たとえばフォーメックスでは、ケース自体がスプリングによって動くケースサスペンションシステムを採用し、衝撃を吸収する構造を実現している。

▲ カシオ〈G-SHOCK〉の耐衝撃テスト。
注目すべきなのは、最も手頃な価格の時計の中に、最も高い耐久性を備えたものがあるという点だ。カシオの〈G-SHOCK〉は、まさにそのコンセプトを中心にブランドを築いてきた。クォーツ式のデジタル時計は可動部品が少ないため、衝撃によって損傷を受ける可能性も比較的低いからだ。
さらに、軽量で衝撃吸収性に優れた樹脂ケースは、現在市場に存在する時計の中でも最も高い耐衝撃性能を実現している。
一方で、リシャール・ミルのようなブランドは、複雑な機械式時計に最先端の素材を用いて高度に設計することで、同様の耐衝撃性能を実現しようとしている。もっとも、価格帯という点では、両者はまさに対極に位置する存在と言えるだろう。

▲ リシャール・ミルの時計をはめてプレーするラファエル・ナダル。左:〈RM 27-03〉 右:〈RM 27-04〉
時計メーカーは、研究室のような環境で製品にさまざまなストレステストを施すことが多い。そこでは数値として測定できる形で耐久性が検証される。例えば、一定の高さから時計を落下させたり、振り子状のハンマーで打撃を与えてネットに向かって吹き飛ばすといった試験が行われる。それでも正常に動作しているかどうか。もし問題なく動けば合格、もし止まれば改良が必要というわけだ。
一方で、熱心すぎるブロガーやYouTuberの中には、時計が実際に壊れてしまうまで乱暴に扱う人もいる。もちろん、私としては時計は大切に扱うことをおすすめしたい。ただし、本来の用途どおりに身につけ、存分に楽しむことも忘れてはならない。そしてそれを可能にしているのが、耐衝撃機構なのである。
高い視認性を備え、強力な夜光を持つべきだ
現代では、時計の視認性はどこか“オプション”のように扱われることもある。しかし、かつて時計は重要な要素であり、多くの人にとって時間を知るための主要なツールだった。
つまり本来、時計は機能的であることが前提であり、読み取りやすさは時計デザインの基本原則のひとつだったのである。状況によっては、その視認性は極めて重要となっていた。
想像してみてほしい。あなたは飛行機を操縦している。だがそれは現代の旅客機ではなく、第二次世界大戦中の軍用機だ。コックピットは氷点下の寒さで、ゴーグルを装着している。Gフォースと気圧の変化にさらされ、機体は常に激しく振動している。しかもこれから敵を攻撃しに行くところだ。ふと腕を見ると、周囲の機械と同じように腕時計も振動で揺れ動いている。
そんな状況では、小さくて細いエレガントな針を持つ時計など、まったく役に立たない。
パイロットウォッチが大きかった理由のひとつはここにある。針もインデックスも大きく、コントラストが高く、一瞬で読み取れるよう設計されていた。爆撃機の操縦席では、注意すべきことが他にも山ほどあるからだ。
軍用契約のもとで時計を製造していたメーカーは、おそらくこうしたデザインが21世紀の人々にとって“クール”なものになるとは想像もしなかっただろう。彼らの仕事は、パイロットが正しい進路を飛び、無事に帰還できるよう、機能的で信頼性の高い時計を作ることだったのである。

▲ 現代において、夜光素材として最も広く用いられているのがスーパールミノバである。
暗闇では時間を読み取るのが難しい。1962年の映画『007/ドクター・ノオ』で、ジェームズ・ボンドがジッポーライターの火でロレックス〈サブマリーナー 6538〉を照らして時間を確認するシーンがあるが、そんな方法に頼る必要は本来ないはずだ。
第一次世界大戦の頃から、時計メーカーは針や文字盤に放射性物質ラジウムを用いた夜光塗料を塗るようになった。しかしこれは、作業に従事した工場労働者に深刻な健康被害をもたらした。
その後、1960年代頃になると、より安全な代替材料としてトリチウムが採用されるようになる。文字盤に見られる小さな「T」や、円で囲まれた「H3」という表示は、このトリチウムを意味している。
現在では、業界標準となっているのがスーパールミノバ、あるいはそれに類する各ブランド独自の夜光素材である。これらは安全性が高く、光を蓄えて暗闇で発光する。最初は強く輝き、その後数時間かけて徐々に弱まっていく。
時計愛好家たちは、この夜光素材は英語で「lume(ルーミー)」と呼び、その明るさや品質、どのブランドのものが優れているかについて議論を交わすことも多い。
他の方式としては、トリチウムガスを封入したチューブやエレクトロルミネッセンスなどがある。いずれにせよ、どんな時計であっても視認性は重要だが、スポーツウォッチであればなおさら、暗所でも十分に読み取れることが求められる。
自動巻きはスポーツウォッチにとって重要である
なぜ多くのスポーツウォッチにとって自動巻き機構が重要なのだろうか。それは単なる利便性の問題ではない。もちろん、腕の動きによってゼンマイが巻き上げられることで、定期的に手で巻き上げる必要がないという点は確かに便利だ。しかしそれだけでなく、スポーツウォッチにとっては実用的な理由がある。
スポーツウォッチは実際に使われることが前提で、信頼できるツールであることが求められる。腕に着けているだけで時計が動き続けるならば、いざという場面でゼンマイが切れて時計が止まる心配をしなくてよい。
たとえばスキューバダイビングの最中や、飛行機を操縦しているときなどに時計が止まってしまうようでは困るからだ。

▲ 現代のスポーツウォッチは、ほとんどの場合、自動巻きである。
さらに、多くのスポーツウォッチには防水性を確保するためのねじ込み式リューズが採用されている。もし自動巻きでなければ、手巻きのために定期的にリューズをねじ込み位置から外さなければならない。
これは作業中に時計を無防備にしてしまうだけでなく、リューズを締め忘れてしまう可能性もある。時間計測が重要な職業にとっては安全に関わるため、こうしたリスクはできる限り避けるのが望ましい。
現代的な意味での最初の自動巻き腕時計はジョン・ハーウッドによるものとされているが、それ以前から懐中時計の自動巻きも存在していた。ハーウッドの1924年のモデルでは、重りを備えたローターが中央軸を中心に回転し、腕の動きによって重力により動く仕組みになっていた。このローターは歯車列を介してゼンマイを収めた香箱に力を伝え、香箱が回転することでゼンマイが巻き上げられる。
これは基本的に、現在の多くの自動巻きが採用している仕組みと同じである。ただしハーウッドのローターはバネの間で往復する構造で、回転角度は270度に制限されていた。その後の改良として、1931年にロレックスが発表した〈オイスター・パーペチュアル〉では、360度回転するローターが採用された。
さらにその後は、両方向巻き上げなど効率を高める仕組みが登場する。現在ではローターは装飾のキャンバスとしても扱われることが多く、多くの時計ではシースルーバック越しにその姿を眺めることができる。
ベゼルの実用性を高めるべきだ
回転ベゼルは、人気の高いスポーツウォッチに見られる特徴のひとつだ。すべてのスポーツウォッチに備わっているわけではないが、このジャンルを象徴するディテールであるため、触れておく。
そもそもベゼルとは何だろうか。機能付きベゼルを持たない時計は、ベゼル自体が存在しないと誤解している人もいるかもしれない。というのも、ベゼルはケースの一部のように見えることもある部品だからだ。
ベゼルとは、風防ガラスを囲むリング状のパーツであり、場合によってはガラスを固定する役割も果たす。すべての時計に必ずしもベゼルがあるわけではないが、多くの時計には備えられている。
またベゼルは、模様やテクスチャー、仕上げ、さらにはビスや宝石などによって装飾として用いられることもある。

▲ ドクサ〈SUB 300〉のポリッシュ仕上げスチール製回転ベゼル。
ベゼルは、デザイナーがさまざまな工夫を凝らすことができるパーツだが、機能を備えたときにこそ魅力的で、興味深い存在になる。たとえベゼル自体が回転しなくても、針や文字盤と組み合わせて使う目盛りを備えていれば、十分に機能的である。
代表的な例がタキメーターで、レーシングクロノグラフのベゼルや文字盤によく見られる。これはストップウォッチ機能と組み合わせて使用し、決められた距離を移動した物体の平均速度を測るためのスケールである。
ベゼルには、さまざまな用途に応じた多種多様なスケールを刻むことができる。そして、それが回転する場合には、さらに面白く、実用性も高まる。
有名なのはダイバーズウォッチの回転ベゼルで、ダイバーにとって重要な経過時間(分)を計測するために用いられる。
また、12時間スケールのベゼルはタイムゾーン表示として使うことができ、回転させれば別の地域の時刻を参照することもできる。追加の機械機構を必要としない点が利点だ。
GMTウォッチでは、24時間針が24時間スケールを指すことで第2時間帯を表示するが、そのスケールが回転ベゼルに配置されていれば、第3のタイムゾーンまで追跡することが可能になる。
1953年は、この機能を備えた時計が広く知られるようになった年としてよく挙げられる。ロレックス、ブランパン、ゾディアックが回転ベゼルを備えたダイバーズウォッチを発表したからである。
しかし同じ年、グリシンが〈エアマン〉を発表したことはあまり知られていない。このモデルは24時間ダイヤルと24時間スケールの回転ベゼルを組み合わせるという、異なるアプローチを採用していた。
その後登場したロレックス〈GMTマスター〉は、同じ用途を持つ24時間針を導入し、通常の12時間表示と組み合わせて第2時間帯を示す仕組みを採用した。さらに昼夜を示すツートンカラーのベゼルデザインも取り入れられ、これは後に人気の意匠となった。 しかし、これらの回転ベゼルを備えた時計は、1937年のロレックス〈ゼログラフ〉や、1929年にその使用を特許取得したロンジンの〈ウィームス〉パイロットウォッチなど、先行するモデルの流れを受けて発展したものでもある。さらにさかのぼれば、ジョン・ハーウッドも設定や巻き上げのために、現在とよく似た外観の回転ベゼルを採用していた。
回転ベゼルはその用途によって、片方向のみに回転するものもあれば、両方向に回るものもある。また、滑らかに回転するタイプもあれば、心地よいクリック感を伴ってラチェット式に動くものもある。
こうした視覚的なインパクトの強さから、オーデマ ピゲ〈ロイヤル オーク〉やパテック フィリップ〈ノーチラス〉のように、実用的な機能を持たない場合であっても、スポーティなデザインの象徴として存在感のあるベゼルが採用されることがある。
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