シンガー・リイマジンの哲学は、時代を超えて愛される機械をレストアし、本来の美しさを保ちながら、現代生活へフィットさせるというもの=“レストモッド”である。その最新作となる〈ヘリテージ V72〉では、20世紀を代表する手巻きクロノグラフ・キャリバーのひとつ、バルジュー72に焦点を当てた。約半世紀にわたり未使用の状態で保管されていたデッドストックのムーブメントを丁寧に分解・修復し、伝統的な高級時計製造の仕上げを施すことで、名機に新たな生命を与えている。
Singer Reimagined Restores the Valjoux 72
シンガー・リイマジン〈ヘリテージ V72〉バルジューの名機復元
シンガー・リイマジンの哲学は、時代を超えて愛される機械をレストアし、本来の美しさを保ちながら、現代生活へフィットさせるというもの=“レストモッド”である。その最新作となる〈ヘリテージ V72〉では、20世紀を代表する手巻きクロノグラフ・キャリバーのひとつ、バルジュー72に焦点を当てた。約半世紀にわたり未使用の状態で保管されていたデッドストックのムーブメントを丁寧に分解・修復し、伝統的な高級時計製造の仕上げを施すことで、名機に新たな生命を与えている。
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by Matthew De Jesus. Aug 6, 2026 |
“レストモッド”とは何か?
シンガー・リイマジンは、長年にわたり人々に愛されてきた機械を、本来の美しさを守りながら修復し、現代へと蘇らせるブランドだ。新作〈ヘリテージ V72〉では、手巻きクロノグラフ・ムーブメントの傑作バルジュー72がモチーフとなった。

▲ シンガー・リイマジン〈ヘリテージ V72〉
まずは、シンガー・リイマジンと、その“レストモッド”という哲学について振り返っておこう。レストモッド(restomod)とは、「レストア(restore)」と「モディファイ(modify)」を組み合わせた造語でヴィンテージの魅力やオリジナルの精神を残しながら、現代の技術や性能を取り入れてアップデートする手法を指す。
シンガー・ヴィークル・デザインの創業者であるロブ・ディキンソンは、コヴェントリー大学で自動車工学を学び、卒業後はロータスで働いた経験を持つ。その後、英国のロックバンド、キャサリン・ホイールのボーカリスト兼ギタリストとしてデビューし、音楽の世界で高評価を得て、成功をおさめた。
バンド解散から数年後、ロサンゼルスで暮らしていた彼は、1969年製のバハマ・イエローのポルシェ〈911E〉をベースに、自身が理想とする空冷ポルシェ911の創造に取り組み始めた。

▲ ロブ・ディキンソンが所有する1969年製ポルシェ〈911E〉(Photo: Ted7 Photography)
この911Eが、シンガー・ヴィークル・デザイン誕生のきっかけとなった。オリジナルが持つ魅力はそのままに、最新のエンジニアリングで911を修復し、新しい形で蘇らせる――そうした取り組みによって、同社は大きな評価を得ていった。
この考え方が時計の世界に広がったのは、ディキンソンがイタリア人時計デザイナーのマルコ・ボラッチーノと出会った2015年のこと。その2年後、シンガー・リイマジンは〈トラック1〉でデビューする。ジャン=マルク・ヴィデレヒトとアジェノールが手がけたムーブメント、アジェングラフを搭載し、クロノグラフの秒針・分針・時針を文字盤の中央に配置したモデルだ。
まったく新しいキャリバーで、1960〜70年代によく見られたレーシングクロノグラフとは大きく違うつくりでありながら、その時代らしい雰囲気はしっかりと感じられる一本だった。

▲シンガー・リイマジンのアトリエで修復されるバルジュー72ムーブメント。
2025年、シンガー・リイマジンは“ヘリテージ コレクション”を発表し、時計製造においてもレストモッドを試みた。その第一弾となったのが、ヴィンテージのバルジュー236を修復・再仕上げし、新たなケースに収めた〈ヘリテージ V23〉である。そして同じ手法を、名高いクロノグラフ・キャリバーであるバルジュー72へと広げたのが新作〈ヘリテージ V72〉なのだ。

▲ バルジュー236とバルジュー72のクロノグラフキャリバー。
バルジュー72クロノグラフ
2カウンター仕様のバルジュー236は、21,600振動/時という、より高い精度性能と滑らかな動作を実現し、技術的にも進化したキャリバーである。一方で、より低い振動数で駆動するバルジュー72が持つ、ある種のロマンまでは備えていない。
18,000振動/時で作動するバルジュー72は、12時間積算計を加えることで、クラシックな3カウンター表示を実現。そして20世紀を代表する数々のレーシングクロノグラフに搭載され、その黄金時代を支えた存在となった。
バルジュー72が人々を惹きつける理由は、単なる性能や技術だけではない。耐久レース、ピットボード、そして機械によって速度と時間が測られていた時代のノスタルジーを宿しているからである。

▲左:Ref. SR620-1 18ctイエローゴールド 右:Ref. SR621 ステンレススティール
〈ヘリテージ V72〉では、〈シンガー・リイマジン〉はNOS(New Old Stock=未使用のデッドストック)のバルジュー72ムーブメントが使われている。これらは約半世紀にわたり保存され、未使用のまま残されてきた貴重なデッドストックである。
それぞれのムーブメントは入念に検査された後、ブリッジにはフロステッド仕上げ、面取り部分には手作業によるポリッシュ、各コンポーネントにはロジウムメッキを施すなど、再仕上げが行われる。さらに、クロノグラフの切替機構にはブルーのALD処理を施し、現代的なアクセントを加えているほか、クロノグラフブリッジには「Restored by Singer」の刻印が入れられている。
また、キャリバーは新たに設計されたグラスボックス仕様のシースルーケースバックを通して鑑賞することができ、さまざまな角度からムーブメントの姿をより広い視野で楽しめる設計となっている。

▲〈ヘリテージ V72〉のグラスボックス裏蓋。
〈ヘリテージ V72〉も、コレクション共通の38.8mmというケース径を踏襲している。ただし、バルジュー236を搭載したモデルと比べると、厚さは13.25mmへと増している。
文字盤には、アジュラージュ仕上げを施した3つのサブダイヤルを配置。さらに、歯車状のゴールドフランジ、ファセット加工を施したアプライドインデックス、オレンジ色のスーパールミノバ、そして中央にブランドを象徴するゴールドカボションを備えたオレンジのクロノグラフ秒針など、シンガーならではのデザインコードが随所に盛り込まれている。

▲ クロノグラフブリッジに刻まれた「Restored by Singer」の刻印。
〈ヘリテージ V72〉は、複数の文字盤とケースの組み合わせで展開される。
リファレンスSR621はステンレススティール製ケースを採用し、リファレンスSR620-1は18Kイエローゴールドケースに収められている。いずれのケースにも、ベルベットのような質感を持つマットなストーングレー文字盤とオイスターカラーのカウンター、またはブラック文字盤とシャンパンカラーのカウンターという2種類の組み合わせが用意される。
ストラップは、ブラックのグレインレザー、またはグレーのテキスタイルから選択でき、いずれもケース素材に合わせたピンバックルが装着される。
Tech Specs
シンガー・リイマジン〈ヘリテージ V72 ムーブメント:修復されたNOS(New Old Stock=未使用のデッドストック)バルジュー72。手巻き式、コラムホイール、水平クラッチ方式のクロノグラフ。18,000振動/時、パワーリザーブ約48時間。 機能:時・分表示、スモールセコンド、中央クロノグラフ秒針、30分積算計、12時間積算計。 ケース:ステンレススティール製(リファレンスSR621)、または18Kイエローゴールド製(リファレンスSR620-1)。ケースサイズは直径38.8mm×厚さ13.25mm。グラスボックス型サファイアクリスタルとサファイアクリスタル製ケースバックを備える。 文字盤:マット・ストーングレー文字盤にオイスターカラーのカウンター、またはブラック文字盤にシャンパンカラーのカウンター。3つのアジュラージュ仕上げサブダイヤル、ファセット加工を施したアプライドインデックス、オレンジのスーパールミノバを備える。 ストラップ:ブラックのグレインレザーストラップ、またはグレーのテキスタイルストラップ。いずれもケース素材に合わせたピンバックルを装備。 販売数:適切な状態のバルジュー72コンポーネントの供給量が限られているため、生産数は限定される。 ¥5,610,000(ステンレス)¥10,890,000(ゴールド)
Brands: Singer Reimagined
※お問い合わせ先:Mugino & Co., Ltd. / オフィス麦野 Tel:03-5422-8087 Mail:info@officemugino.com
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