世界初となる2種類のクォーター・メロディの切り替え機構を実現。古典的な打鐘機構を極限まで磨き上げた、ブランパン渾身の超複雑時計である。
Revolution Awards 2025: Technical Achievement — Blancpain Grande Double Sonnerie
Revolution Awards 2025:テクニカル・アチーブメント賞
ブランパン〈グランド ダブル ソヌリ〉
世界初となる2種類のクォーター・メロディの切り替え機構を実現。古典的な打鐘機構を極限まで磨き上げた、ブランパン渾身の超複雑時計である。
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by Cheryl Chia. Jan 27, 2026 |
今年は、さまざまな分野で技術革新が生まれた。しかし、この賞が称えるのは、純粋な機械式時計製造の創意工夫である。新素材やハイテクに頼るのではなく、機構そのものを徹底的に磨き上げることで実現したものに贈られる賞だ。
2025〜26年の現在、こうした革新を生み出すのは決して簡単ではない。機械式時計の基本的な仕組みはすでに完成の域に達しており、新しい技術は従来の発想を超える方向へ進むことが多くなっているからだ。
それでも、ブランパン〈グランド ダブル ソヌリ〉は、機械式時計にも、まだまだ可能性があることを示した。
このモデルは、着用者が2種類の異なる4音のクォーター・メロディを選べる世界初のグランドソヌリである。さらに毎正時には、時を知らせる鐘のあとに、通常は15分ごとに分けて演奏されるチャイムの全曲を続けて奏でる。
しかも、グランドソヌリ、プチソヌリ、ミニッツリピーターのすべての機能を備えながら、チャイムを鳴らすための歯車機構、ハンマー、ゴングを機能ごとに重複して設けることなく実現している。その巧みな設計こそが、この時計の技術的な価値を物語っている。

▲ 驚きの打鐘機構を持つブランパン〈グランド ダブル ソヌリ〉
グランドソヌリ・モードでは、15分ごとにまずその時刻の時打ちを行い、そのあとに選択した4音メロディの該当部分を演奏する。そして毎正時には、時打ちに続いて4小節すべてのメロディが演奏される。
プチソヌリ・モードでは、時打ちは毎正時のみ行われ、そのあとに4小節すべてのメロディが続く。一方、15分ごとの報時では時打ちは行わず、それぞれの時間帯に対応したメロディの一部だけが演奏される。
ミニッツリピーターは任意に作動させることができ、ボタンを操作すると、時、クォーター・メロディ、分の順に現在時刻を知らせる。
メロディは、伝統的な「ウェストミンスター・チャイム」と、KISSのドラマー、エリック・シンガーとの共同開発によるブランパン独自のオリジナル曲の2種類を搭載。ケースサイドのプッシャーを押すだけで瞬時に切り替えることができる。

▲ 4Hzフライングトゥールビヨンのクローズアップ
こうした複雑な動作を制御しているのは、ケースと連動したセレクター機構である。これがカムを切り替え、グランドソヌリ、プチソヌリ、サイレントという3つのモードを選択する。
センターの時針軸に取り付けられた4枚歯のスター・ホイールは、15分ごとに打鐘機構を作動させ、ラックを動かすメインレバーを持ち上げる。
グランドソヌリ・モードでは、カムによって時打ち用ラックが毎回「時カム(アワースネイル)」を読み取るため、15分ごとの報時でも必ず時打ちを行ったあとにメロディを奏でる。
一方、プチソヌリ・モードでは、専用のブロッキングレバーが15分ごとの時打ちを止める一方で、毎正時だけはスター・ホイール上の時カムがこのレバーを持ち上げるため、時打ちを行ったあとにメロディが演奏される。
サイレント・モードでは、消音レバーによって自動打鐘機構は完全に停止する。ただし、打鐘用香箱に十分なエネルギーが残っていれば、ミニッツリピーターは通常どおり作動する。

▲ ゴングを組み付ける工程
しかし、この時計最大の見どころは、2種類の異なるメロディを切り替えられる点にある。
その中核を担うのは、どのハンマーを、どのタイミングで打つかを機械的に制御する機構だ。
ブランパンは、歯の配置が異なる2枚のクォーター・ラックを上下に重ねることで、この機能を実現している。ひとつはウェストミンスター・チャイム用、もうひとつはブランパンのオリジナル・メロディ用である。
この2枚のラックは、互いに平行に配置された切り替え式のコントロールリフトと連動して作動する。コントロールリフトは、いわば「機械式のゲート」として機能する。
コントロールリフトが作動すると、そのハンマーはゴングを打つことができる。一方、解除された状態では、そのハンマーだけが動きを止められ、ほかのハンマーはそのまま打鐘を続ける。
この仕組みによって、2種類の異なるメロディをひとつの打鐘機構で奏で分けているのである。

▲ 歯形の異なる2枚のクォーター・ラックを備えた独創的な打鐘機構。ひとつはウェストミンスター・チャイム用、もうひとつはブランパンのオリジナル・メロディ用である。
メロディの切り替えは、コラムホイールで制御されるスライド機構によって行われる。この機構が複数のコントロールリフトを一斉に切り替えることで、選択したメロディに対応する打鐘パターンへと切り替わる。
また、同じハンマーに対応する一対のコントロールリフトは機械的に連動しており、常にどちらか一方だけが作動する仕組みとなっている。

▲バックから見たムーブメントとメロディの切り替えボタン
この革新だけでも、本作がテクニカル・アチーブメント賞に値する理由として十分だ。さらに、そこへ巧みにコンパクト化されたレトログラード式パーペチュアルカレンダーまで組み合わせているのだから、その価値は揺るぎない。
数々の技術革新が生まれた一年にあって、ブランパンは、古典的な機械式時計製造が今なお新たな可能性を切り拓けることを、これ以上ないほど鮮やかに証明してみせたのである。
Brands:Blancpain
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