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日常に寄り添うアイコン。ブルガリ〈オクト フィニッシモ〉の37mm

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 10年にわたり、薄型時計の世界記録を次々と塗り替えてきたブルガリ〈オクト フィニッシモ〉。2026年に発表された新作は、37mmという新たなプロポーションによって、その魅力をより多くの人へと開くものだった。専用設計の新型ムーブメント、再構築されたブレスレット、そしてゴールドとチタンによる4つのモデル。技術力を証明する段階を終えた現代のアイコンが、日常に寄り添う親しみやすいを遂げた。

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Octo Finissimo Evolves While Serpenti Returns to Pure Jewelry Form

日常に寄り添うアイコン。ブルガリ〈オクト フィニッシモ〉の37mm

10年にわたり、薄型時計の世界記録を次々と塗り替えてきたブルガリ〈オクト フィニッシモ〉。2026年に発表された新作は、37mmという新たなプロポーションによって、その魅力をより多くの人へと開くものだった。専用設計の新型ムーブメント、再構築されたブレスレット、そしてゴールドとチタンによる4つのモデル。技術力を証明する段階を終えた現代のアイコンが、日常に寄り添う親しみやすいを遂げた。

by Tracey Llewellyn . Apr 14, 2026

「世界最薄」その先へ

 かつて〈オクト フィニッシモ〉は、鮮烈なインパクトとともに登場した。世界記録、そして新たな「世界最薄」。ブルガリが単に時計製造へ参入したのではなく、超薄型時計という領域に本気で挑み、その常識を書き換えようとしていることを、時計業界の誰もが認めざるを得なかった。

 その記録は、十分に役割を果たした。まず時計ブランドとしての信頼を築き、次に羨望の対象となり、やがてひと目でそれと分かる独自の存在感を手に入れた。いまや〈オクト フィニッシモ〉は、離れた場所からでも判別できる、数少ない時計のひとつである。

 だからこそ、ウォッチズ&ワンダーズ2026でブルガリが選んだのは、新たな記録への挑戦ではなかった。プロポーションをさらに洗練させ、より多くの人の腕に自然に収まる、新しい〈オクト フィニッシモ〉を生み出したのである。

 ブルガリ グループCEO(現在は会長)のジャン-クリストフ・ババンは、この新作を次のように表現する。

「これはブルガリにとって重要な進化です。〈オクト フィニッシモ〉の37mmは、成熟を象徴する時計と言えるでしょう。新しいサイズによって〈オクト フィニッシモ〉のデザインコードを再解釈し、技術的な偉業を超えて、現代のライフスタイルを体現する時計を作り上げました。控えめなエレガンス、腕上での快適性、そして時計製造における革新性。すべてが完璧なバランスとなっています。スタイルと本質、どちらも妥協しない人のためのタイムレスなシグネチャーです」

 その世界記録の系譜は、すでによく知られている。トゥールビヨン(2014年)、ミニッツリピーター(2016年)、オートマティック(2017年)、トゥールビヨン オートマティック(2018年)、クロノグラフ GMT オートマティック(2019年)、トゥールビヨン クロノ スケルトン オートマティック(2020年)、パーペチュアルカレンダー(2021年)、ウルトラ(2022年)、ウルトラ COSC(2024年)、そしてウルトラ トゥールビヨン(2025年)である。

 だが今年、その記録更新のドラムロールは必要ない。〈オクト フィニッシモ〉はいまや、デザインの模範として、それ自体で十分に成立する存在となったからだ。

 その変化は、ブルガリ ウォッチ部門マネージングディレクターのジョナサン・ブリンバウムと、プロダクト・クリエイション エグゼクティブディレクターのファブリツィオ・ブオナマッサ・スティリアーニとの対話からも明確に伝わってくる。

 これは、〈オクト フィニッシモ〉が成熟期を迎えたことを告げる時計である。数値ではなく、日々身に着けるために生まれた一本なのだ。

左:〈オクト フィニッシモ〉の37mmのデザイナーである、ブルガリ ウォッチ部門プロダクト・クリエイション エグゼクティブディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ。右:ブルガリ ウォッチ部門マネージングディレクター、ジョナサン・ブリンバウム。

 ブリンバウムは、〈オクト フィニッシモ〉がこの10年間に打ち立ててきた数々の記録こそ、名声を確立するうえで不可欠だったと語る。その一方で、今回始まる新章が目指すものは、まったく別にあるとも明言する。

 彼にとって、過去10年間の歩みは、前例のない業界初の試みだった。しかし、〈オクト フィニッシモ〉は単に話題を集めるための時計ではない。もともと建築的な美しさを備えた芸術作品なのである。

 〈オクト フィニッシモ〉の37mmの開発は3年前に始まったのだという。ブリンバウムは語る。

「これは記録を破るために設計された時計ではありません。そこが、私たちの目指したところです。しかし、技術的にも飛躍的な進化を遂げています。およそ20%小さい容積のなかで、パワーリザーブを約20%向上させることに成功しています」

フィニッシモの物語、4つの新章

 新しい〈オクト フィニッシモ〉の37mmは、単に既存モデルを小型化したものではない。ケース、ムーブメント、ブレスレットを含むプラットフォーム全体を見直し、全面的に再設計された新しいコレクションとして登場した。ラインナップは、新開発のマイクロローター式自動巻きムーブメントCal.BVF 100を搭載する3モデルと、37mm径のミニッツリピーターで構成される。

 3本の自動巻きモデルはいずれも、ケース径37mm、厚さ6.45mm。サファイアクリスタル製ケースバック、ブラックセラミック製インサートを備えたリューズ、ケースと一体化したフォールディングクラスプを採用し、防水性能は30mとなる。

 サンドブラスト仕上げのグレード5チタンモデル(Ref.104089)は、オパーリン仕上げのチタン製ダイヤルに、ブラックの針とインデックスを組み合わせる。サテンポリッシュ仕上げの18Kイエローゴールドモデル(Ref.104120)は、ケース、ダイヤル、針をゴールドで統一し、文字盤上には18Kイエローゴールド製ディスクを配した。

 一方、サテンポリッシュ仕上げのチタンモデル(Ref.104351)は、オパーリン仕上げのチタン製ダイヤルに、ロジウム仕上げの針とインデックスを採用。サテン仕上げは、すべて職人の手作業によって施される。

新たなプロポーションと仕上げの技法が、時計にこれまでとは異なる奥行きをもたらしている。

 そして、〈オクト フィニッシモ ミニッツリピーター〉(Ref.104250)がある。ケース径37mm、厚さ6.85mmのサンドブラスト仕上げチタンケースに、オープンワークのインデックスとロジウムグレーの針を組み合わせる。搭載するのは、厚さ3.12mmの手巻きCal.BVL 362。2本のハンマーを備え、パワーリザーブは42時間となる。

 数字だけを見ても、そのスペックは十分に印象的だ。しかし、この時計を語るうえでより興味深いのは、世界記録として打ち出されていないことだろう。いまや〈オクト フィニッシモ〉に、「世界最薄」という形容は必要ないのである。

37mm径の〈オクト フィニッシモ ミニッツリピーター〉は、いかなる記録も標榜していない。しかしブルガリは高度な複雑機構を、いつでも薄型ケースに収められる技術を持っているのだ。

 4本の新作を並べて見ると、〈オクト フィニッシモ〉がこれから目指す方向がよく分かる。サンドブラスト仕上げのチタン製自動巻きモデルは、コレクションの原点を受け継ぐ基準となる一本。ポリッシュ仕上げのチタンモデルは、新しい質感と表情によって、これまでとは異なる顧客層へ魅力を広げる。ゴールドモデルは、ジュエラーとしてのブルガリらしさを前面に押し出し、ミニッツリピーターは、高度な複雑機構においても一切妥協しない技術力を示している。

 ブリンバウムによれば、この4本にはそれぞれ明確な役割がある。チタン製37mmモデルはコレクションの基準点、ポリッシュ仕上げのチタンモデルは新たな顧客層を呼び込む存在、ミニッツリピーターは技術力の証し、そしてゴールドモデルは最も直感的にブルガリらしさを表現した一本だという。

 37mmというサイズも、単なる小型化の結果ではない。〈オクト フィニッシモ〉の幾何学的な造形、新型ムーブメント、そして腕に着けたときのバランスを最も自然にまとめられる寸法として導き出されたものだ。ブリンバウムは、これを厚さと直径の理想的なバランスが生まれる“スイートスポット”と表現する。

 つまり、37mmモデルは40mmモデルをそのまま縮小した時計ではない。異なる顧客のために設計された、もうひとつの〈オクト フィニッシモ〉である。ただし、これまでの物語を断ち切るのではなく、その先へとつなぐ存在でもある。

 その連続性を象徴する素材がチタンだ。〈オクト フィニッシモ〉はチタンから始まった。開発段階ではステンレススティールやカーボンも検討されたが、40mmモデルとのつながりを保つためには、チタンが欠かせなかった。ブリンバウムにとって、チタンは〈オクト フィニッシモ〉の土台そのものなのである。

 一方で、ブルガリは従来とは異なる表情も求めた。その答えが、ポリッシュ仕上げのチタンだった。ステンレススティールのような輝きを持ちながら、手に取ればチタンならではの軽さと柔らかな質感が感じられる。光の反射も異なり、そこに新しい〈オクト フィニッシモ〉ならではの個性が生まれている。

ポリッシュ仕上げのチタンモデルに採用された新たな仕上げ技法によって、スティールのような外観と、チタンならではの軽さを両立している。

 ブリンバウムによれば、このポリッシュ仕上げのチタンには、40mmモデルが備えていた精神にも通じるものがあるという。初代〈オクト フィニッシモ〉は、イタリアン・エレガンスの象徴として誕生した。シャツの袖口にすっと収まる薄型時計で、ブルガリらしいプロジェクトだったのである。

 したがって、37mmモデルは何かを置き換える存在ではない。新たな章を開き、すでにある〈オクト フィニッシモ〉の世界をさらに広げるための一本なのだ。

37mmという最適解

 37mmは、最初から決まっていたサイズではない。

 ボナマッサ・スティリアーニは語る。

「3年間の開発で、36mm、37mm、38mm、39mmと、数多くの試作を行いました。36mmでは小さすぎて、レディスウォッチのように見えてしまいました。また、ケースを36mmにすると、ムーブメントも非常に小さくしなければなりません。一方、38mmと39mmは、腕に載せると40mmモデルとあまり違いがありませんでした。〈オクト フィニッシモ〉はスクエアに近い形なので、実際の数字以上に大きく見えるからです。そこでたどり着いたのが37mmでした。小さすぎず、40mmとの違いもはっきり感じられ、開発中のムーブメントにも最適なサイズだったのです」

 重要なのは、ケースを先に作り、後からそれに合うムーブメントを探したわけではないということだ。ケースとムーブメントは、最初から同時に設計された。〈オクト フィニッシモ〉では、ケースの大きさとムーブメントのバランスが、そのまま時計全体の美しさにつながるからである。

 こうして誕生したのが、新型自動巻きムーブメントCal.BVF 100だ。厚さはわずか2.35mm。3Hzで作動し、72時間のパワーリザーブを備える。40mmモデルの60時間から、さらに性能を高めながら、より小さなケースに収めることに成功した。

 さらに、プラチナ製マイクロローターも受け継がれている。新しい37mmモデルでありながら、〈オクト フィニッシモ〉らしさはしっかりと残されている。

37mmの自動巻きモデルに搭載される超薄型ムーブメントCal.BVF 100は、プラチナ製マイクロローターを備え、厚さ2.35mm、振動数3Hz、パワーリザーブ72時間を実現している。

新開発のCal.BVF 100は、この時計に完璧に収まるよう設計されている。

 ブリンバウム側からの要求は明快だった。〈オクト フィニッシモ〉らしさを守ること。しかし実際の技術的な課題は、単に薄さを追求することではなく、ケース径を小さくすることにあった。直径が小さくなると、確保できるエネルギー量が問題になる。

 当初ブルガリは、既存ムーブメントの各部をそのまま縮小すれば対応できると考えていた。だが、実際にはそれでは成立しなかった。そこでムーブメントは、根本から再設計されることになった。

 〈オクト フィニッシモ〉を特徴づけるデザインコードは受け継ぎながら、内部構造は大幅に刷新された。その成果のひとつが、72時間のパワーリザーブである。40mmモデルに搭載される現行Cal.BVL 138と比べて、約20%の向上を実現した。ライフスタイルに寄り添う時計へと進化しながらも、ムーブメントの品質でも一切妥協しなかった。

 一方、ボナマッサ・スティリアーニがもうひとつの大きな進化として挙げるのが、ダイヤルだ。初代〈オクト フィニッシモ〉のダイヤルは厚さ0.4mmだったが、新作では0.8mmとなった。

 このわずか0.4mmの差によって、表現の可能性は大きく広がる。ストーンダイヤル、ダイヤモンド、アプライドインデックス、ジェムセッティングなど、従来では実現が難しかった、より装飾性の高い展開が可能になるからだ。〈オクト フィニッシモ〉の37mmには、多彩な表現へ対応できるプラットフォームとしての役割も与えられている。

 このダイヤルの厚みが加わったため、37mmモデルは従来の自動巻きモデルよりもわずかに厚い。しかし同時に、それによって将来の発展性は大きく高まった。極限の一本を作るのではなく、ひとつのコレクションを育てるための設計なのである。

 ボナマッサ・スティリアーニによれば、新作を手にした人の多くが、40mmモデルよりも立体的に感じるという。ケース径が小さくなり、わずかに厚みが増したことで、仕上げやファセットの見え方が変わったからだ。形そのものも、基本的なプロポーションも変わっていない。それでも、見え方は大きく変化している。

「ポルシェ911のようなものです。姿は常に同じですが、新型になるたびに部品の90%が新しくなる。〈オクト フィニッシモ〉も、アイコンとしてそう扱いたいと考えています」

腕に馴染むための再設計

 「90%が新しい」という考え方は、ブレスレットにも貫かれている。〈オクト フィニッシモ〉にとって、腕への馴染み方は重要な要素だからだ。

 今回の目的は、まったく新しい装着感を生み出すことではなかった。従来のしなやかな着け心地を保ちながら、構造や組み立て精度を高め、発展性を持たせることだった。そのため、ブレスレットは全面的に新設計された。

 大きな変更点は、これまで一体成型だったコマを、初めて複数のパーツで構成したことだ。従来の構造では、スティールとゴールド、チタンとゴールドといった異素材の組み合わせを実現することが難しかった。しかし新しい構造によって、素材を組み合わせた多彩な表現が可能になった。

 さらに、最初のコマはケースへ直接固定されている。ケースとブレスレットの間から光が漏れる隙間がなくなり、〈オクト フィニッシモ〉ならではの造形の連続性がより強調された。

 クラスプも新しく設計されている。ブリンバウムによれば、目指したのは、強度と耐久性を高めながら、見た目はあくまで控えめで洗練されたものにすることだった。写真では伝わりにくい部分だが、実際の装着感を大きく左右する改良である。

 こうした変更からも、37mmモデルが単なる小型版ではないことが分かる。これは今後10年の〈オクト フィニッシモ〉を支える、新しいプラットフォームなのだ。以前からコレクターが望んでいた異素材モデルの展開も、この構造によって可能になる。

 興味深いことに、37mmモデルの試作機はウォッチズ&ワンダーズ2025に間に合っていたという。しかし当時は、量産体制が整っていなかった。発表後、店頭に並ぶまで顧客を8〜9カ月も待たせることは適切ではないと判断され、発表は2026年まで延期された。

 その結果、今回は多くのモデルが発表と同時にブティックで購入できる体制が整えられた。これは話題作りのためのコンセプトモデルではない。実際に買い、日常で身に着けるための〈オクト フィニッシモ〉なのである。

小型化されたケースと再設計されたブレスレットによって、異なるライフスタイルを持つ、より幅広い顧客層への訴求を目指している。

 ブリンバウムは語る。

「〈オクト フィニッシモ〉は、私たちのアイコンです。いまこそ、その扉をもう少し広く開く時だと考えています。世界記録への挑戦は、当時として正しい戦略でした。それによって時計愛好家や、技術に強い関心を持つ顧客へ訴求できましたし、ブルガリにはそうした正当性が必要だったのです。もちろん、ミニッツリピーターのようなモデルを通じて、今後もその層を大切にしていきます。一方で、〈オクト フィニッシモ〉が、デザインやライフスタイルを重視する人のための時計でもあることを伝えたい。男性にも女性にも選ばれる時計であり、〈オクト フィニッシモ〉はすべての人に開かれた存在であるべきです。そして身に着けたときに、“これは自分のために作られた時計だ”と感じてもらいたいのです」

素材が生む個性

 現時点で、37mmモデルに用意されるのはゴールドとチタンのみで、ステンレススティール仕様は設定されない。ボナマッサ・スティリアーニによれば、その理由は、37mmと40mmのキャラクターが重なりすぎるのを避けるためだという。

 なかでも、2種類の仕上げを組み合わせたチタンモデルは興味深い。遠目には40mmのスティールモデルを思わせるが、実際に並べてみると、その印象はまったく異なる。スティールが冷ややかな質感を持つのに対し、37mmモデルは、チタンという素材の特性とその仕上げによって、より温かみのある表情を見せる。

 ゴールドモデルの開発には、また別の難しさがあった。多くのブランドでは、重量やコストを抑えるためにブレスレット内部のゴールドを削ることがある。しかしブルガリは、その方法を採らなかった。

 検証の結果、内部を削っても得られる効果はほとんどなく、むしろブレスレットの内側に多くの空洞が生じてしまうことが分かったからだ。そこでブルガリは、素材を省略せず、自らが理想と考える構造を選んだ。

 このゴールドモデルは、発表直後からとても好評だという。とりわけ女性からは、自分たちが待ち望んでいた時計として受け入れられている。エレガントだが、普段着として身に着けられる〈オクト フィニッシモ〉だからである。

 これこそ、最もブルガリらしいブルガリの姿である。素材の選択は、技術的な合理性だけでなく、誠実さや感性によっても決められている。チタンは〈オクト フィニッシモ〉のアイデンティティを守り、ゴールドは〈オクト フィニッシモ〉を現代的なジュエリーとして再解釈する。

 ここで、37mmと40mmの役割の違いもより明確になる。37mmは厳選された構成を持つ新たなラインであり、40mmはスティールを含む幅広い素材展開や、グランドコンプリケーションを担う領域として位置づけられる。

 新しい自動巻きモデルと同時にミニッツリピーターを発表したことは、37mmコレクションが単なる小型モデルではないことを象徴している。ボナマッサ・スティリアーニは、Cal.BVL 362を〈オクト フィニッシモ〉の歴史において最も重要なムーブメントのひとつと位置づける。もともと小型ケースへの搭載を前提に設計されていたため、37mmケースにも無理なく収めることができた。

 ミニッツリピーターを同時に投入したことで、37mmモデルが時・分・秒だけのシンプルな時計にとどまらず、将来的に複雑機構へ発展できるプラットフォームであることも、最初から明確に示された。

 ケース径を小さくしても、音響性能は損なわれていない。ボナマッサ・スティリアーニによれば、むしろ音はさらに良くなっている可能性さえあるという。騒がしい室内でも明瞭に聞き取れる音を実現していることは、ムーブメントやハンマー、ゴングの小ささを考えれば驚異的である。

 ミニッツリピーターでは、外観と音のどちらか一方だけが優れていても成立しない。見た目が魅力的でも音が期待外れなら失敗であり、音が美しくてもデザインに違和感があれば、やはり成功とはいえない。

 37mmの〈オクト フィニッシモ ミニッツリピーター〉は、記録を狙うための時計ではない。現代的で日常的に着用できるサイズのなかに、古典的な高度複雑機構を美しく収められること。さらに、〈オクト フィニッシモ〉がもはや「世界最薄」という肩書きだけに頼らず、その完成度によって評価される存在になったことを示す一本なのである。

 ボナマッサ・スティリアーニは語る。

「記録を破るには時間が必要です。そして私たちは、すでに数多くの記録を打ち立ててきました。いま目指しているのは、サイズや薄さを含め、優れた内容を備えた日常使いの時計として〈オクト フィニッシモ〉を確立することです。将来、また新たな記録に挑むことはあるでしょう。記録への挑戦は、いまや私たちのDNAの一部ですから。ただ今年は、37mmモデルに集中しています。記録を担うのは40mmモデルと〈ウルトラ〉です。37mmモデルでは、記録を更新する必要はありません。37mmは、〈オクト フィニッシモ〉というコレクションをより多くの人へ開くためのモデルなのです」

 この言葉に、〈オクト フィニッシモ〉の転換が表れている。世界記録は今後もブランドのアイデンティティの一部であり続ける。しかし、それが常に物語の中心である必要はなくなった。

 今年の主役は、時計そのものだ。整えられたプロポーション、快適な装着感、洗練された仕上げ、そしてケースに無理やり収めるのではなく、そのために専用設計されたムーブメントである。

 ブリンバウムは、記録への挑戦からプロポーションと実用性へと軸足を移す今回の変化を、自動車にたとえる。それは技術から後退することではない。むしろ、コンセプトの価値を十分に証明したからこそ可能になる、自然な次の段階なのだ。

 ブリンバウムにとって、この新章のテーマはまさに「扉を開くこと」なのである。

受け継ぎながら、その先へ

 ブランドの歴史に敬意を払うボナマッサ・スティリアーニは、ジャンニ・ブルガリは、機能主義や合理主義、そしてローマ建築に見られる幾何学から着想を得て、メゾンの美学を築いたと語る。

「私が〈オクト フィニッシモ〉に取り組み始めたとき、円と八角形の組み合わせを探りました。丸いコインを八角形の台座に載せた、初期のコインジュエリー・コレクションのようにです。〈オクト フィニッシモ〉の基本ルールは、円と四角を組み合わせて八角形を生み出すこと、そして45度のコーナーにあります。現在、〈オクト フィニッシモ〉は独自の美学と魂を持つようになりました。時計が好きな人なら、その背景にある物語を知らなくても〈オクト フィニッシモ〉だと分かります。いまやこの時計は、物語に頼らず、自らの力で成立する存在です。37mmモデルについて語るとき、私たちはローマの伝統を前面には出しません。それは40mmモデルに属する、原点の一部だからです」

 この言葉こそ、寸法以上に、37mmモデルが〈オクト フィニッシモ〉の成熟を象徴している。誕生の物語は今も存在する。だが、もはやそれを説明しなければ時計の価値が伝わらないわけではない。

 〈オクト フィニッシモ〉そのものが、ひとつの基準点になったのである。そのアイデンティティは、新たな素材や表現、そして新しい顧客層を受け入れられるほど強くなった。

 今後は、37mmと40mmの双方が、それぞれに進化していくのだろう。40mmでは、さらなるグランドコンプリケーションや、建築家、アーティストとの特別モデルに可能性がある。一方、37mmでは、小型ケースを生かしたさまざまな展開が期待される。

 ムーブメントが小さいぶん、開発の難易度は上がる。しかしボナマッサ・スティリアーニは、40mmモデルに匹敵する性能を実現できると断言する。そして彼は、ひとつの問いを繰り返す。〈オクト フィニッシモ〉とは、ひとつのムーブメント開発についてのストーリーなのか。それとも、ひとつのデザインコンセプトなのか。

 ブリンバウムの答えは慎重だが、示唆に富んでいる。Cal.BVS 100レディ ソロテンポやピコリッシモのようなムーブメントを搭載した、さらに小さな〈オクト フィニッシモ〉の可能性について、明言は避ける。しかし、〈オクト フィニッシモ〉が単なる一本の時計ではなく、ひとつのコンセプトへと進化しつつあるという考えには同意する。

 37mmモデルは、ブルガリが40mmというサイズに縛られていないことを証明した。ならば、ほかのサイズやムーブメントへと領域を広げても不思議ではない。小型化を強みとするブランドにとって、それは自然な流れだろう。

 ブルガリはこの10年間、主にメンズウォッチにおいて薄型化を追求してきた。そして今後は、そこで培った技術をレディスウォッチにも生かそうとしている。ブリンバウムによれば、小型化と薄型化はメゾンのDNAであり、今後の開発もそこで続いていくという。

ケース径を兄貴分の40mmモデルより3mm小さくした〈オクト フィニッシモ〉の37mm。イエローゴールドとサンドブラスト仕上げのチタンモデル。

 ボナマッサ・スティリアーニと同様、ブリンバウムも37mmと40mmは競合する存在ではなく、互いを補完するものと捉えている。40mmは、8日間のパワーリザーブやスケルトンモデル、さらなる薄型化への挑戦など、技術力を示すための優れたプラットフォームであり続ける。

 一方、37mmがもたらすのは多様性だ。より多くのダイヤル、装飾、素材、カラー展開が可能になる。このふたつの柱が組み合わさることで、〈オクト フィニッシモ〉の世界はさらに広がっていく。

 今後は、新たなサイズ、素材、ダイヤルも視野に入る。ただし、37mmを真の第2のプラットフォームへと育てるには、数年を要するという。それでもブリンバウムは、これを今後の最重要課題のひとつに挙げている。

 現時点で、〈オクト フィニッシモ〉の37mmの目的は明快だ。記録を破るためではない。身に着けるための時計である。記録を追う段階を終え、〈オクト フィニッシモ〉はいま、日常に選ばれるアイコンとして新たな成熟期を迎えようとしている。

Tech Specs

〈オクト フィニッシモ〉イエローゴールド ムーブメント:自動巻き超薄型マニュファクチュールムーブメント、Cal.BVF 100 パワーリザーブ:約72時間。 機能:時、分、スモールセコンド ケース:径37mm、厚さ6.45mm。サテンポリッシュ仕上げの18Kイエローゴールド。リューズにブラックセラミック製インサート。30m防水。 ダイヤル:イエローゴールド。イエローゴールドプレート仕上げの針とアワーマーカー。 ブレスレット:サテンポリッシュ仕上げの18Kイエローゴールド製ブレスレット。ケース一体型プッシュボタン付きフォールディングバックル。¥7,535,000

〈オクト フィニッシモ〉サンドブラスト チタン ムーブメント:自動巻き超薄型マニュファクチュールムーブメント、Cal.BVF 100。パワーリザーブ約72時間。 機能:時、分、スモールセコンド。 ケース:径37mm、厚さ6.45mm。サンドブラスト仕上げのチタン。リューズにブラックセラミック製インサート。30m防水。 ダイヤル:オパーリン チタン。ブラックの針とアワーマーカー。 ブレスレット:サンドブラスト仕上げのチタン製ブレスレット。ケース一体型プッシュボタン付きフォールディングバックル。 ¥2,629,000

〈オクト フィニッシモ〉ポリッシュド チタン ムーブメント:自動巻き超薄型マニュファクチュールムーブメント、Cal.BVF 100。パワーリザーブ約72時間。 機能:時、分、スモールセコンド。 ケース:径37mm、厚さ6.45mm。サテンポリッシュ仕上げのチタン。リューズにブラックセラミック製インサート。30m防水。 ダイヤル:オパーリン チタン。ロジウムプレート仕上げの針とアワーマーカー ブレスレット:サテンポリッシュ仕上げのチタン製ブレスレット。ケース一体型プッシュボタン付きフォールディングバックル。 ¥2,706,000

〈オクト フィニッシモ ミニッツリピーター〉 ムーブメント:手巻き超薄型ムーブメント、Cal.BVL 362。パワーリザーブ約42時間。 機能:時、分、スモールセコンド。2本のハンマーを備えたミニッツリピーター。 ケース:径37mm、厚さ6.85mm。サンドブラスト仕上げのチタン。リューズにブラックセラミック製インサート。30m防水。 ダイヤル:オパーリン チタン。ロジウムグレー仕上げの針とオープンワークのアワーマーカー。 ブレスレット:サンドブラスト仕上げのチタン製ブレスレット。ケース一体型プッシュボタン付きフォールディングバックル。価格要問合せ。

Brands:Bvlgari

Brand:Bvlgari, Rolex

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