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英国スパイ、ジェームズ・ボンドが愛したオメガの時計

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世界一有名で、世界一スタリッシュなスパイ、ジェームズ・ボンド。歴代のヒット映画で彼が着用してきたオメガのモデルを振り返り、英国のスパイとスイスの老舗の蜜月関係

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James Bond And His Omega Watches

英国スパイ、ジェームズ・ボンドが愛したオメガの時計

世界一有名で、世界一スタリッシュなスパイ、ジェームズ・ボンド。歴代のヒット映画で彼が着用してきたオメガのモデルを振り返り、英国のスパイとスイスの老舗の蜜月関係を探る。

by Revolution . Jun 6, 2025

次のボンドは誰なのか?

 2021年、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』がダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドとしての最後を飾った際、彼が最後の007作品で着用したオメガのタイムピース、チタン製の〈シーマスター 300M 007 エディション〉にクレイグ自身の意向が大きく反映されたことが話題となった。

 ボンドとオメガの絆はかつてないほど強固なものとなり、当然ながら世間の関心は、次にボンドを演じる人物へと注がれた。

 当時、ファンの間ではヘンリー・カヴィルが有力視されていた。しかし、この英国人俳優はロンジンのアンバサダーに就任したことで、正式にボンド役の選考からは外れることとなった。現在、すべての視線はもう一人の有力候補、アーロン・テイラー=ジョンソンへと向けられている。

オメガの社長兼CEO、レイナルド・エシュリマン(左)と、新たにオメガのブランドアンバサダーに就任したアーロン・テイラー=ジョンソン(右)

  この憶測はさらに熱を帯びている。というのも、テイラー=ジョンソンがこのたびオメガのグローバル・アンバサダー・ファミリーに加わったからだ。

 『キック・アス』(2010年)から『ノクターナル・アニマルズ』(2016年)まで幅広い役柄で知られる英国人俳優は、最近スイス・ビールにあるオメガ本社を訪問。ブランドのヘリテージを知り、時計製造の現場を見学した。

 「以前からオメガは好きなブランドでした」と彼は語る。

 「しかし工房を訪れてからは、これほどラグジュアリーなプロダクトを生み出す技術の高さに尊敬の念を覚えています」

 さらにテイラー=ジョンソンはこう続ける。

 「私は、情熱と敬意に裏打ちされた本物の関係性をとても大切にしています。だからこそ、ブランドアンバサダーに選ばれたことは光栄です。実は、私が時計に興味を持ったのは父の影響なんです。父はオメガを持っていたのです。彼は労働者階級の出身でしたが、お金を貯めてオメガの時計を手に入れたのです」

アーロン・テイラー=ジョンソンは次なるボンドとなるのだろうか。 彼の圧倒的なスクリーンでの存在感、着実に高まりつつある評価、そしていまやボンド御用達ウォッチとの公式な結びつき……、状況証拠は揃いつつあるのかもしれない。答えは、やはり“時”のみが知る。

 ひとまずここでは、これまでの映画でジェームズ・ボンドが着用してきたオメガの名作を振り返ってみよう。

『007/ゴールデンアイ』(1995年)

オメガ シーマスター ダイバー 300M ref. 2541.80.00

 ピアース・ブロスナンにとって初のジェームズ・ボンド作品であり、シリーズ第17作にあたる1995年の『007/ゴールデンアイ』は、いくつもの理由で記憶に残る作品だ。

 まず挙げるべきは、後に『ゲーム・オブ・スローンズ』でネッド・スタークを演じる20年も前のショーン・ビーンが、元ダブルオー・エージェント「006」にしてボンドの宿敵アレック・トレヴェリアンを演じていること。かつては“殺しのライセンス”を持つ仲間だった男が敵へと転じる構図は、物語に緊張感を与えた。

 次に、元オランダ人ファッションモデルから女優へ転身したファムケ・ヤンセンの存在だ。彼女が演じたクセニア・オナトップは、シリーズ屈指の印象的なネーミングを持つ悪役として観客の記憶に刻まれている。

 そして第三に(本来なら第一に挙げるべきかもしれないが)、ボンドの腕時計として初めてオメガが登場したことだ。着用されたのは「シーマスター ダイバー 300M」クォーツ・プロフェッショナル(Ref.2541.80.00)。ここから、ボンドとオメガの伝説が始まったのである。

▲ 『007/ゴールデンアイ』のプロモーションで、アストンマーティンDB5とともに登場したピアース・ブロスナン。

 『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年) 『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年) 『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)

『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)、『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999年)、そして『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002年)でボンドは「シーマスター ダイバー 300M」シリーズを着用した。

 〈オメガ シーマスター ダイバー 300M〉(通称“ボンド・シーマスター”)は、ジェームズ・ボンドの腕にふさわしいオメガ像を決定づけたモデルである。先代モデル同様、41mmのブラッシュド・スティール製ケースに、独特の波模様を施したブルーダイヤルを備えていた。

 特筆すべきは、この時計の最も魅力的な要素である“針”の造形だ。大胆なソード型の針はスケルトン化されることで現代的な雰囲気をまとい、針とダイヤルにはたっぷりと夜光塗料が塗布されている。

 とりわけ秒針はユニークで、“ロリポップ型”が採用されている。愛好家なら、〈スピードマスター CK2998〉を思い出すはずだ。赤いティップもアクセントとして効いている。

『007/カジノ・ロワイヤル』(2006年)

  2006年の映画『007/カジノ・ロワイヤル』で、ブリオーニのタキシードを纏い、「シーマスター ダイバー300M」を着用したダニエル・クレイグ(Image:omegawatches.com)

『007/カジノ・ロワイヤル』で、ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドが着用した〈オメガ シーマスター プラネットオーシャン600M〉

  2006年、『007/カジノ・ロワイヤル』でボンド像は大きく刷新された。若く、陰を帯び、ときにモラルの境界が曖昧で、意外なほどロマンティックであり、そして圧倒的にタフだった。

 「私たちは製作元である英国イーオン・プロダクションズを通じて、この映画がいかに重要な一本になるかがわかっていました。そこで、劇中に2種類の時計を使うことを決めたのです」と、オメガCEOレイナルド・アッシェリマンは語る。

 1本目は、ウガンダのシーンで着用される〈シーマスター プラネットオーシャン 600M〉(45.5mm/Ref.2900.50.91)。極めて頑強なオーバーサイズケースにラバーストラップを組み合わせたモデルだ。ラバーストラップが採用されたのはボンド作品で初めてだった。

 オープニングのシークエンスでボンドがこれを身につけて登場すると、観客は“現代的でタフなボンド”というキャラクター像を一瞬で理解した。

 2本目は、よりクラシックなボンド像を思わせる〈シーマスター ダイバー300M〉(Ref.2222.80.00) である。

『007/カジノ・ロワイヤル』でジェームズ・ボンドが着用した、オメガ シーマスター ダイバー300M(Ref.2222.80.00)。

 この時計は物語の後半、カジノでジェームズ・ボンドがブリオーニのタキシードを着用するシーンで身につけられる。過去のボンド・ウォッチとの“橋渡し役”ともいえる存在である。

 しかし、外観こそ古典的なボンド像を思わせるものの、実際には オメガ シーマスター ダイバー300M(リファレンス 2222.80)はコーアクシャル脱進機を搭載しており、これまでのモデルよりもはるかに進化している。

 そして重要なのは、『007/カジノ・ロワイヤル』において、この時計がガジェットではなく、純粋な腕時計として登場したという点だ。これは、ハードなリアリズムを追求した新生ボンド像に、見事に合致していた。

『007/慰めの報酬』(2008年)

『007/慰めの報酬』(2008年)でボンドが着用した、〈オメガ シーマスター プラネットオーシャン 600M〉(42mm)

 『007/慰めの報酬』は、エポックメーキングな作品である。というのも、この映画は『007/ゴールデンアイ』以来、ボンドが愛用してきた腕時計〈シーマスター ダイバー300M〉が登場しないからだ。

 その代わりに ダニエル・クレイグ が着用しているのは、端正な〈オメガ シーマスター プラネットオーシャン 600M〉の42mmモデル、リファレンス2201.50.00である。

 さらに注目すべきは、選ばれた時計が 42mmという比較的小ぶりなケース径であった点だ。まるでオメガが、これからクラシックなサイズ感が再び主流になることを予見していたかのようである。

『007/スカイフォール』(2012年)

『007/スカイフォール』(2012年)でボンドが着用した、オメガ〈シーマスター プラネットオーシャン 600M〉(42mm)

 『007/スカイフォール』では、再びボンドが2本の時計を着用している。

 ひとつ目はオメガ〈シーマスター プラネットオーシャン 600M〉(42mm)(Ref.232.30.42.21.01.001)。そしてもうひとつが、やや意外だが、〈オメガ シーマスター アクアテラ 150M〉(Ref.231.10.39.21.03.001)で、ケース径は38.5mmである。

 この頃の時計界では、よりクラシックなサイズ感への回帰が進んでいた。それがボンド映画の中にも反映されている。それはダニエル・クレイグ自身の時計の好みにも通じるものだという。

 本作のために1本だけ製作されたチタン製のシーマスター プラネットオーシャン 600Mは後に、クリスティーズが開催した“50イヤーズ・オブ・ボンド”オークションで落札された。価格は£157,250(約2,500万円相当)だった。

『007/スカイフォール』(2012年)でボンドが着用した、〈オメガ シーマスター アクアテラ 150M〉

『007/スペクター』(2015年)

『007/スペクター』(2015年)のために製作された、オメガ シーマスター 300 “スペクター” エディション。

 『007/スペクター』では、“史上もっともクールなボンド・ウォッチ”とも称される〈オメガ シーマスター 300 “スペクター”エディション〉が披露された。

 ヴィンテージに着想を得た 12時間ベゼル、ロリポップ型の秒針、ブロードアロー型の針、ヴィンテージ調の夜光塗料、そして大きなルミナス・インデックスに、アイコニックなNATOストラップ……。これらすべてが、この時計を別格へと押し上げている。

 注目すべきは、ダニエル・クレイグのボンド作品として初めて、時計がガジェットとしての役割を果たしている点だ。劇中では、この時計がボンドが拷問装置から脱出する際の爆弾として使われたのだ。

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)

『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のポスター。

  映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で使用されたタイムピース〈オメガ シーマスター ダイバー 300M〉のデザインには、ダニエル・クレイグ自身が深く関わっていた。彼とオメガの開発チームが最初に決めたのは、ケース素材にチタンを選ぶことだった。

 しかも、あのコレクターズピースである「〈ス⁠ピ⁠ードマスタ⁠ー プロフ⁠ェ⁠ッシ⁠ョナル アポロ11号 45周年記念限定モデル⁠」〉に用いられたグレード2チタンを採用するという案だった。

 さらにオメガは初めてチタン製メッシュブレスレットを製作した。これは、非常にしなやかでありながら、シーマスター 300の意匠と組み合わさることで驚くほど“ボンドらしい”無骨さとエレガンスを併せ持つ仕上がりとなった。ブレスレットは ミラネーゼのフラットメッシュである。

 文字盤はマット仕上げで、大胆に盛られたルミナスを備える。針はシリーズを象徴する スケルトン化されたソード型ハンズ、そして秒針は、『007/ゴールデンアイ』赤いティップを持つ ロリポップ秒針 を継承している。

 文字盤と針に施された夜光塗料、さらにアルミニウム製ベゼルのダイビングスケールには、ヴィンテージのトリチウムやラジウムが経年変化したような“エクリュ・トーン” が与えられ、クラシックな風合いと現代的スペックが見事に融合していた。

〈オメガ シーマスター ダイバー 300M〉は、ケースにグレード2のチタンを採用。チタン製メッシュベルトと組み合わされている。ダニエル・クレイグ本人の意見を取り入れてデザインされた。

 文字盤で最も魅力的な部分は、6時位置のインデックスのすぐ上に、ごく控えめに記されている矢じり型のマークにある。これは、英国国防省の委託品であることを示す “ブロードアロー”の刻印だ。英国の軍用時計・軍用品には必ずこのマークが刻まれ、“これは英国政府の支給品である”ことを示している。

 このマークは特別な意味を持つ。すなわち、この時計は現代において、正規の軍支給品ではないにもかかわらずブロードアローのマークを刻んだ唯一のオメガとなっているのである。

※本稿の元となるバージョンは、2020年8月26日に掲載された。

Brands:Omega

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