ロレックスといえば機械式時計の代名詞だ。しかし1970年代、クォーツ革命の只中で同社が送り出した〈オイスタークォーツ〉は
Everything You Need to Know About the Rolex Oysterquartz
ロレックス〈オイスタークォーツ〉を語り尽くす——完全ガイド
ロレックスといえば機械式時計の代名詞だ。しかし1970年代、クォーツ革命の只中で同社が送り出した〈オイスタークォーツ〉は、その常識を覆す存在だった。高精度な自社製クォーツムーブメントと大胆なデザインを備えた異色のロレックスを振り返る。
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by Ross Povey . Apr 22, 2025 |
なぜロレックスのクオーツは例外なのか?
Revolutionは、機械式時計、そして腕に装着するあらゆる機械への讃歌である。われわれの家訓ともいえるキャッチフレーズは、
“Celebrating the Machine with a Heartbeat(鼓動する機械を称える)”。
つまり、本来なら機械式の対極にあるテーマ“クォーツ時計”について筆を執ることは、はばかられるのだ。
だが、今回取り上げるクォーツ時計は例外だ。その理由は、おそらく時計史上もっとも過剰にエンジニアリングされ、しかも驚くほどスタイリッシュで……、そしてロレックス製であるという点だ。
ロレックスから生まれた最もファンキーな時計のひとつ、ロレックス〈オイスタークォーツ〉をじっくり見ていこう。
物語の発端は、スイスの名だたる時計ブランドたちが協力し、世界最高の高精度クォーツムーブメントを共同開発するという壮大なプロジェクトだった。
70年代、いわゆるクオーツ危機の時代。電池駆動のムーブメントという新技術の登場により、機械式時計は大きな打撃を受けた――この歴史は広く知られている。

▲ ロレックス オイスタークォーツ デイトジャスト Ref.17000(Image: Revolution©)
スイス製クオーツ、ベータ21
日本でセイコーがクォーツ時計を開発していたのと同時期、スイスの時計産業もまた、クォーツ時計の開発においては最前線にいた。その重責は1960年代初頭、スイス製クオーツ時計を開発することを目的として設立されたセンター・エレクトロニック・オロロジェ(CEH)が担っていた。
CEHでは、後にベータ21(その前段階としてベータ1、ベータ2)として知られるムーブメントの開発に成功した。1960年代末までに、およそ6000個のベータ21ムーブメントが製造され、ブランドごとにわずかな仕様の違いはあったものの、基本的には同一の構造で量産された。
しかし、スイスには何世代にもわたって築かれた機械式時計の伝統と、その巨大な産業インフラがあったため、新技術であるクォーツを全面的に受け入れる決断には踏み切れなかった。 その間、他国は迷いなくクォーツ技術に投資し、大量生産と低価格化を一気に進めた。1970年代後半には、クォーツ時計が世界的に爆発的な広がりを見せ、機械式時計の市場は急速に縮小し、スイス時計産業は深刻な打撃を受けることとなった。

▲ CEH キャリバー Beta 1(試作機/1967年)© H.R. Bramaz

▲ CEHが開発したクォーツ式ベータ21ムーブメント。
パテック フィリップは〈サークル・ドール〉に、オメガは〈エレクトロ クォーツ〉シリーズに、そしてロレックスはRef.5100にベータ21を採用した。
5100は1,000本限定のシリアル入りで発売され、非常に好評を博した。通称「ロレックス・クォーツ」と呼ばれ、18Kゴールド製で、ロレックスとして初めてサファイアクリスタルを採用したモデルでもある。
ムーブメントの設計と製造の都合、そして同ムーブメントが十数ブランド間で共有されていたこともあり、ケースは従来のオイスターケースとは異なる仕様となった。
しかし1972年、ロレックスは 研究開発を自社内に戻す決断を下し、CEHから脱退。独自のクォーツムーブメントの開発へと舵を切る。
この開発はその後の5年間にわたり続けられた。ロレックスの目標は、ベータ21を凌駕するムーブメントを作り上げ、かつ自社設計の防水オイスターケース内に収めることにあった。ケースとムーブメントの開発は並行して進められたが、ケースのほうがはるかに早く完成してしまった。

▲ ベータ21ムーブメントを搭載した、18Kホワイトゴールド製(左)と18Kイエローゴールド(右)のロレックス・クォーツ5100 (Image: Antiquorum)
〈オイスタークォーツ〉Ref.17000(1977年)
ロレックスは、1974年にリファレンス1530(ステンレススティール)と1630(コンビ) をリリースしている。
これらのモデルは、新しく設計された一体型ケース&ブレスレットを採用していたが、ムーブメントには通常の自動巻きキャリバー1570を搭載していた。総生産数はおよそ1500本と非常に少なく、現在では完全にコレクターズアイテムとなっている。
そして1977年、ついにロレックスは新たなクオーツ式時計を正式に発表する——それが 〈オイスタークォーツ〉Ref.17000である。
ロレックスは自社製クォーツムーブメントを開発するにあたり、多くの改良を行った。新しいムーブメントは、当時としてはやや“原始的”だったベータ21をはるかに超える高度な構造となり、11石のルビーを備え、サービス時に精度調整が可能という過剰とも言えるほどの作り込みがなされていた。

▲ 一体型ケース&ブレスレットを採用したステンレススティール製ロレックス〈デイトジャスト〉Ref.1530(左) ステンレススティール×18Kイエローゴールド ロレックス〈デイトジャスト〉Ref.1630(右)(Image: Antiquorum)

▲ 腕元に着用された初期型ロレックス〈オイスタークォーツ〉。COSC未送付ムーブメントを搭載したMk1 Ref.17000(Image: Revolution©)
仕上げも見事で、むしろロレックスの機械式時計以上に丹念なものだった。オイスタークォーツのムーブメントには周囲の温度に応じて自動で精度を調整する機能があり、驚異的な精度を実現していた。
生産開始から最初の18か月間に製造されたムーブメントは、COSC(スイス公式クロノメーター検定協会)へ提出されておらず、これらはMk1(マーク1)と呼ばれる。Mk1のダイヤルは比較的すっきりしており、上半分には ROLEX DATEJUST、下半分には OYSTERQUARTZの表記のみが入っていた。
その後、クォーツ水晶が音叉型(チューニングフォーク型)に変更されたタイミングで、Mk2 のムーブメントはCOSCに提出され、クロノメーター認定を受けるようになった。この仕様変更は 1978年後半に行われ、Mk2のダイヤルには追加の文字が入った。
上半分には ROLEX OYSTERQUARTZ DATEJUST、下半分にはロレックスの象徴的な表記 SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIEDが刻まれている。
Mk1はオイスタークォーツが25年間続いたラインのうち、わずか18か月間しか製造されていないため、現在では非常に希少な存在となっている。

▲ Mk1仕様のロレックス〈オイスタークォーツ〉Ref.17000。ダイヤルには、上部に“ROLEX DATEJUST”、下部に“OYSTERQUARTZ”とだけシンプルに記されている (Image: Revolution©)

▲ Mk2仕様のロレックス〈オイスタークォーツ〉Ref.17000。COSC(クロノメーター検定)に提出されたムーブメントを搭載しているため、ダイヤル上部には“ROLEX OYSTERQUARTZ DATEJUST”、下部には“SUPERLATIVE CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED”と表記されている(Image: Revolution©)
〈オイスタークォーツ・デイトジャスト&デイデイト〉Ref.17000(1981年)
オイスタークォーツには、ロレックスの中でも独立した“ブランド内ブランド”として扱われたデイトジャストとデイデイトの2種類が存在した。
それぞれ ステンレス、コンビ、ゴールドの3つのバリエーションで展開された。通常生産されたモデルの内訳は以下のとおりである。
17000 ステンレススティール製 デイトジャスト
17013 ステンレス × イエローゴールド(コンビ) デイトジャスト
17014 ステンレス × ホワイトゴールド デイトジャスト
19018 イエローゴールド製 デイデイト
19019 ホワイトゴールド製 デイデイト

▲ ロレックス〈オイスタークォーツ・デイトジャスト〉ステンレス×イエローゴールドのRef.17013(左)と、ステンレス×ホワイトゴールドのRef.17014(右)(Image: Antiquorum)

▲ ロレックス〈オイスタークォーツ・デイデイト〉18KイエローゴールドのRef.19018(左)と、18KホワイトゴールドのRef.19019(右)(Image: Antiquorum)
イエローゴールドおよびホワイトゴールドのデイデイトには、特別仕様のモデルも存在し、19028、19038、19048 など、リファレンスごとにダイヤモンドのセッティングやベゼルのデザインが異なっている。
これらのスペシャルピースは、それだけで一本の記事を書けるほどの奥深さを備えている。

▲ ロレックス〈オイスタークォーツ・デイデイト〉ダイヤモンド&エメラルド仕様のRef.19038 (Image: Antiquorum)
両ラインには、それぞれ専用のムーブメントが搭載されていた。デイトジャストにはキャリバー5035、デイデイトにはキャリバー5055が採用されている。
オイスタークォーツ・デイトジャストは全生産期間を通じて、比較的プレーンなバーインデックスのダイヤルが中心で、カラーはシルバー、ブラック、ブルーの3種類が展開されていた。
その一方で、ダイヤル下部に中東諸国のロゴが入った非常に珍しいバリエーションも存在し、後年にはローマ数字インデックスを採用したモデルも少数ながら生産された。
また、金無垢ロレックスの例に漏れず、デイデイトには特別仕様のダイヤルやベゼルが用意されていた。漆仕上げのウッドダイヤル、さらにはダイヤモンドをセットしたベゼル仕様など多彩なバリエーションが揃っていた。

▲ ロレックス・オイスタークォーツ・デイトジャスト──UAE軍(アラブ首長国連邦軍)ロゴ入りのRef.17000 (Image: Christie’s)
オイスタークォーツにおいては、あらゆる表現が可能だった。そのため、ごく少数ではあるが、特別なモデルが世界のオークションに登場している。
2015年5月、フィリップスが開催したテーマオークション“Glamorous Day-Date(グラマラス・デイデイト)”では、イエローゴールドのオイスタークォーツ・デイデイトRef.19168が2本出品された。
いずれもダイヤモンドやカラーストーンが贅沢にセットされたダイヤル、ベゼル、ブレスレットを備えた特別仕様であった。これらの個体は非常に数が少なく、その希少性にふさわしい価格で取引されている。

▲ ロレックス〈デイデイト・オイスタークォーツ〉Ref.19168。18Kイエローゴールドにダイヤモンドとルビーをあしらった特別仕様。2015年5月9日、11万スイスフランで落札(Image: Phillips)

▲ ロレックス〈デイデイト・オイスタークォーツ〉Ref.19168。18Kイエローゴールドにダイヤモンドとサファイアをセットした特別仕様。2015年5月9日、9万3,750スイスフランで落札(Image: Phillips)
※本記事は 2018年4月17日に初掲載されたものです。
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