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ギーザー・ウォッチとは何か、今なぜ誰もが欲しがるのか?

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オーデマ ピゲ〈コブラ〉やロレックス〈キングマイダス〉といった、これまであまり注目されてこなかったモデルが、この新たに台頭してきたTikTokのトレンドによって再び脚光を浴び

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Rise of the Geezer Watch: Why Everyone Wants One

ギーザー・ウォッチとは何か、今なぜ誰もが欲しがるのか?

オーデマ ピゲ〈コブラ〉やロレックス〈キングマイダス〉といった、これまであまり注目されてこなかったモデルが、この新たに台頭してきたTikTokのトレンドによって再び脚光を浴びている。

by Felix Scholz . Aug 14, 2024

そもそも“ギーザー”の意味とは?

 もしあなたが時計好きで、TikTokに流れる終わりのないミームや寸劇、ディーラー同士の交渉動画を数分でも眺めたことがあるなら、マイク・ヌーヴォーの名を知っているはずだ。

 カルティエをこよなく愛するDJ兼時計ディーラーで、切れ味のいいコメントとおなじみの登場人物たちによって40万人以上のフォロワーを獲得し、WatchTok界でも指折りの存在となっている。

 彼の動画では、1970年代や80年代のあまり知られていない時計が“ギーザー・ウォッチ”と呼ばれることがある。ヴィンテージ時計の世界で徐々に存在感を増している新しいジャンルだ。多くの場合、彼が指しているのは“認定ギーザー”ことコレクター、フィル・トレダーノの時計である。

 では、そもそもギーザー・ウォッチとは何なのだろうか。その答えを探るには、まず“ギーザー”という言葉の意味を知る必要がある。

 もしイギリス英語に親しんで育っていないなら、この言葉のニュアンスを知らない可能性は十分にある。たとえ知っていたとしても、1990年代以降に生まれた世代にはあまり馴染みがないかもしれない。

 ギーザーとは基本的に年配の男性を指す言葉だが、それだけではない。そこには独特のニュアンスがある。

 単純に、見知らぬ相手を指す表現として使われることもあるが、同時にどこかクールで頼りになる人物という響きも含んでいる。

 もし誰かが「ちょっとしたギーザー」だと言われるなら、その人は物事をよく分かっていて信頼できる人物だという意味になる。コックニー風に言うなら“ダイアモンド・ギーザー”という表現もあり、これは最高に立派な人物を指す称賛の言葉だ。

 バックにブラーの曲でも流れていれば、なおさら雰囲気が出るだろう。では、このギーザーという存在は、腕時計とどのように関係してくるのだろうか。

左:オーデマ ピゲ〈コブラ〉(Image: Amsterdam Vintage Watches) 右:ピアジェ〈ポロ〉27mm Ref.561(1980年代/Image:Christie’s)

 つまり、それは“ある程度の年齢を感じさせる時計”ということだ。より正確に言えば、“ある程度の年齢の人物が着けていそうな時計”である。

 状況によっては、オイスターケースのロレックスもギーザー・ウォッチになり得るが、オメガ〈スピードマスター〉はそうはならない。

 私たちは、著名なディーラーでありMenta Watchesの創業者でもあるアダム・ゴールデンに、ギーザー・ウォッチの特徴について尋ねてみた。

 彼はこう語る。

「ギーザー・ウォッチとは、ある時代の空気をまとった時計であり、“これは年配の人しか欲しがらないのではないか”と思われるような時計だと言えるでしょう。いわば、いまの流行とは少し外れている時計です」

 さらにゴールデンは、この関心の高まりの背景には“新しいものを求める欲求”があると説明する。

「コレクターの間では、これまでのコンフォートゾーンから抜け出して、もっと個性的でクリエイティブなものを着けたいという動きが出てきています。その流れのなかで、宝飾的な要素を持つ時計──たとえば宝石をあしらったダイヤルや、インテグレーテッド・ブレスレットを備えた時計──への関心が高まっているのです」

嬉しいことに、こうした時計はリセール市場に数多く見つけることができる。(Image: Doble Vintage Watches)

 TikTokの話をもう少しだけ続けることを許してもらえるなら、ファッションの世界から生まれた、ある意味でギーザー・ウォッチと隣接するトレンドがある。それが“モブ・ワイフ”だ。

 このスタイルの本質は、いわば“ビッグヘアにファーコート”という派手な装い(たとえばドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』のイーディ・ファルコを思い浮かべてほしい)で、従来の社会的規範や、ニューリッチの価値観とは異なる形で、富やステータスを誇示するスタイルである。

 要するに“モナコの妻”ではなく、“マフィアの妻”というわけだ。ちなみに主演俳優のジェームズ・ガンドルフィーニは、まさに“ダイヤモンド・ギーザー”の好例だろう。

 そして、このモブ・ワイフとギーザー・ウォッチのあいだには、共通点が見られる。どちらも、当時のスタイルやデザインをリアルタイムで経験していない、Z世代やアルファ世代によって広められているところだ。

 彼らは階級やステータスを示す象徴を求めているが、それは同時に既存の価値観とは異なるものなのだ。

 しかし時計の世界では、これはなかなか険しい道でもある。過去10年のあいだに有名モデルへの人気が集中し、知名度がありながらも外れた存在──いわば“異端”を見つけることが、ますます難しくなっているからだ。

俳優ジェームズ・ガンドルフィーニは、ドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の中で、まさに“ダイヤモンド・ギーザー”と呼ぶにふさわしい存在だ。

 こうした背景から、新しい世代のコレクターたちは、これまで十分に評価されてこなかった時計の宝庫を見いだした。それは1970〜80年代の、ドレッシーでデザイン性の高いジュエリーウォッチである。これらは印象的なブレスレットを備えていることが多い。

 もっとも、あらゆる新しいトレンドと同様に、ギーザー・ウォッチの定義はそれほど明確ではない。多くの場合、それは特定のリファレンス番号よりも、むしろ態度やスタンスの問題なのだ。とはいえ、いくつか共通点はある。

 ピアジェ〈ポロ〉、オーデマ ピゲ〈コブラ〉、さらには少しガタついたブレスレットを備えたツートーンのロレックス〈デイトジャスト〉──これらはいずれもギーザー・ウォッチと言える。

 そして、おそらく最も確実な見分け方は、その時計が近所のパブにいる年配の紳士の腕に似合いそうかどうか、あるいはギャング映画時代のロバート・デ・ニーロの腕に着けられている姿や、映画『セクシー・ビースト』(2001年)のレイ・ウィンストンが着けている姿を想像できるかどうか、という点だろう。

オーデマ ピゲのギーザー・ウォッチ

 オーデマ ピゲといえば、やはり〈ロイヤル オーク〉で知られるブランドだろう。それは当然のことである。1972年にジェラルド・ジェンタが生み出したこの象徴的なモデルは、その後数えきれないほどのフォロワーを生み、ひとつの時計ジャンルそのものを形成するに至った。

 しかし、この年にオーデマ ピゲが発表したジェンタ・デザインのインテグレーテッド・ブレスレット時計は、オリジナルのロイヤル オーク Ref.5402だけではない。カタログ上でロイヤル オークに続いて登場するのが、Ref.5403、コレクターの間で〈コブラ〉として知られるモデルである。

オーデマ ピゲ〈コブラ〉(Image: The Keystone)

 蛇のように編み込まれたブレスレットは、広がりのあるケースとシームレスに一体化しており、ケースのどこからブレスレットが始まるのか判別できないほどだ。

 ホワイトゴールドとイエローゴールドで製作されたコブラ Ref.5403は、極めてミニマルなダイヤルを備えている。多くは深みのあるブルー、あるいはイエローゴールドのトーンで、控えめなダイヤモンドのアワーマーカーとシンプルなバトン針が組み合わされている。

 このダイヤルは、ケースやブレスレットの存在感と張り合おうとはせず、あえて控えめに徹している点が賢明だと言えるだろう。

オーデマ ピゲ〈コブラ〉(Image: Christie’s Watches)

  コブラといえば、オーデマ ピゲとジェラルド・ジェンタの名が最もよく知られている。しかし、実はもうひとり、極めて重要な人物がいる。

 それがブレスレットを制作したジュエラー、ロラン=ジルベール・ガシェン(Roland-Gilbert Gaschen、資料によっては単にジルベール・ガシェンとも記される)である。ブレスレットに刻まれた「GRG」のサインが、その仕事を物語っている。

 今日では、時計製造におけるエタブリサージュ(分業)体制の一部として、ブレスレットメーカーが名前を知られることはほとんどない。例外といえば、ゲイ・フレアーくらいだろう。

 こうしたジュエリーのようなブレスレットを備えた時計において、もうひとつ重要な点はサイズ調整である。多くの場合、ブレスレットは手首に合わせるためにカットやカスタマイズが必要になる。しかし、ガシェンや同時代の職人たちの仕事のおかげで、これら重量感のあるカスタムブレスレットは、今日でもなお高い品質を保っているのである。

 コブラや、その同じくシックな姉妹モデル〈バンブー〉のような時計は、特定の文化的背景の中から生まれたものだ。

 ゴールデンによれば、こうしたデザインはオーデマ ピゲに限らず、「自己顕示欲、過剰さ、そしてジュエリーやデザインへの強い関心に彩られた時代から生まれたもの」だという。

「当時のブランドは、さまざまなケーススタイルやブレスレットスタイルを試みていました。そして今日では、こうした時計は、もう少し個性的なものを身につけたいコレクター、つまり人の目を引き、会話のきっかけになるような時計を求める人々に支持されています」

オーデマ ピゲ〈バンブー〉(Image: Doble Vintage Watches)

左:ギーザー・ウォッチの好例が、オーデマ ピゲのオーバルケースに織り込み式ゴールドブレスレットを備えたモデルだ(Image:Doble Vintage Watches) 右:極めて希少なオーデマ ピゲ〈デカゴン〉(Image: Amsterdam Vintage Watches)

 ギーザーの代表、ピアジェ〈ポロ〉

 話題を呼ぶ時計といえば、いま芽生えつつあるギーザー・ジャンルのもうひとつの代表格が、ピアジェ〈ポロ〉だ。

 1979年、ピアジェが考える究極のハイラグジュアリー・スポーツウォッチとして誕生したこのモデルは、近年再び脚光を浴びている。その理由のひとつが、極めて忠実な復刻モデルであるピアジェ〈ポロ 79〉の登場だ。このリイシューは、ギーザー・トレンドがいよいよメインストリームへと広がりつつあることを示す最初のシグナルになるだろう。

 もっとも、ポロ 79は決して突然現れたわけではない。オリジナルのデビューから45年を経て、自然発生的に高まっていた需要に応える形で誕生したのである。

 また、このジャンルの中でもポロは比較的よく知られた存在だ。というのも、ロバート・デ・ニーロが映画『カジノ』(1995年)で着用したり、シルヴェスター・スタローンといった著名な愛用者がいるからだ。スタローンも、ギーザー・スタイルを体現する人物である。

ピアジェ〈ポロ〉コレクション(1982年頃)

ロバート・デ・ニーロは映画『カジノ』(1995年)で、ラピスラズリ文字盤のホワイトゴールド製ピアジェ〈ポロ〉を着用していた。

38mmケースの〈ポロ 79〉

  それに加えて、ポロには、ピアジェが長年培ってきたジュエラーとしての確かな実績に裏打ちされた、質の高いブレスレットが備わっており、これがこの時計の決定的な魅力となっている。

 また近年では、ポロの多彩なモデル展開そのものにも関心が集まりつつある。1970〜80年代のヴィンテージ・ピアジェは、ギーザー・ウォッチの宝庫と言える。極めて薄型のムーブメントを作る技術と、ジュエリー技巧の両方において、当時のピアジェに匹敵するブランドはほとんど存在しなかった。

 たとえばバングルのようなデザインのRef.935や、フランスのエンターテイナー、モーリス・シュヴァリエが愛用したことで知られる、ホワイトゴールド製ブリックリンク・ブレスレットが印象的なRef.9401などがその代表例である。

モーリス・シュヴァリエのピアジェRef.9401(Image: A Collected Man)

左:ピアジェ Ref.935 A6(Image: Antiquorum) 右:ピアジェ〈エンペラドール〉Ref.7131 C 16(Image: Analog:Shift)

 常にロレックスがクラウンを戴く

 Mentaのアダム・ゴールデンに言わせれば、究極のギーザーウォッチはロレックス〈キング マイダス チェリーニ〉である。

「純粋に知名度という点から見ても、〈マイダス〉がクラウン(王座)を射止めますね」と、彼は洒落を利かせて断言する。

 もし10年前、あるいは5年前にマイダスについて誰かに尋ねたとしても、おそらく相手は何のことかさっぱり分からなかっただろう。しかし、このガドルーン装飾(短い曲線や一連の凸状の隆起を並べた装飾パターン)が施された彫刻的なタイムピースには長い歴史がある。

 1970年代シックの象徴的な存在だが、その起源は1962年まで遡る。マイダスの魅力の核心にあるもの、それは言うまでもなくゴールドである。

ラピスラズリ文字盤のロレックス〈キング・マイダス〉Ref.394920(Image: Collector Square)

  『Revolution』にマイダスについて寄稿した作家ニック・フォルクスによれば、この時計は実物を手にしてこそ、その真価を体感できるものだという。

 「一度腕に巻けば、マイダスを忘れることは不可能だ。それは時計というよりも、18Kゴールド製の“手錠”のように存在感がある。しかし、単に大量の貴金属が使われているというだけではない。連結されたインゴットで構成されたブレスレットは、従来の時計のそれというよりも、戦車のキャタピラに近い。ケースとブレスレットは単に調和しているだけでなく、時計のヘッドがどこで終わり、どこからブレスレットが始まるのか判別することすら不可能なのだ」

 これまで述べてきたすべてのギーザーウォッチと同様に、これらは超レアであり、もともと限定数モデルで、今日ではさらに見つけ出すのが困難である。また、ロレックスが今後このような時計を作る可能性は低く、それこそがマイダスを王様たらしめているのである。

ニック・フォルクス所有のロレックス〈キング・マイダス〉Ref.9630(©Revolution)

 パテック フィリップについての新たな視点

 20世紀を通じて、パテック フィリップはジュエリースタイルのブレスレットを備えた時計を数多く製作してきた。それは、時計が手首へと移行し、スタイルの表現手段となったトレンドを捉えたものだった。

 パテックは当時、最高峰のブレスレットメーカーの数々と協力しており、今日に至るまで最もよく知られているのは、疑いようもなくゲイ・フレアーである。しかし、それ以外にも多くの作り手が存在した。

 例えばジャン・ピエール・エコフィーだ。彼の見事なメッシュゴールド・ブレスレットは、まさに夢のような逸品である。

左:ジャン・ピエール・エコフィー製のブレスレットを備えた稀少なパテック フィリップ Ref.2508 (Image: Christie’s) 右:パテック フィリップ Ref.2508、ジャン・ピエール・エコフィー製のブレスレットを備えた稀少なモデル (Image: Christie’s)

パテック フィリップ 〈ゴンドーロ〉 Ref.3633/1 (Image: Doble Vintage Watches)

 壮麗なるヴァシュロン・コンスタンタン

 ヴァシュロン・コンスタンタンも20世紀を通じて、男性用・女性用を問わず無数のスタイルのブレスレットを備えた時計を数多く製作してきた。その美学が、アール・デコ時代から1950年代の洗練されたエレガンスへ、そして60年代から70年代にかけてのより精巧なデザインへと変遷していく様子が見て取れる。

 その集大成といえるのが、六角形のリンクを備えた、傑作の一つである有名な 〈ヒストリーク〉Ref.222 だ。ヴァシュロンは多くの偉大なブレスレット・宝飾メーカーと密接に協力しており、その中にはケース製作やジェムセッティングの専門知識をもたらしたヴェルジェ・フレールも含まれていた。

ヴァシュロン・コンスタンタン Ref.7186、ラピスラズリ・ダイヤル (Image: Doble Vintage Watches) ヴァシュロン・コンスタンタン〈プレステージ・ド・ラ・フランス〉非対称イエローゴールド〈1972〉(Image: Bulang & Sons)

  ギーザーウォッチのトレンドは万人に向けたものではないが、それこそが肝なのだ。2024年において、歴史的に世に知られてこなかったジュエリーウォッチは、ニッチな提案といえる。

 Mentaのアダム・ゴールデンは、ギーザーに興味がある人へ、こう助言をしている

「人々は常に、誰も注目していない、成長の可能性を秘めた“次なる大きな流行”を探し求めています。とはいえ、これらの時計は決して万人受けするものではありません。心から気に入らなければ入手するべきではないでしょう。見つけ出すのが困難ですが、だからこそ、そのハントが楽しくなるのです!」

Brand:Audemars Piguet, Patek Philippe, Piaget, Rolex, Vacheron Constantin
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