2025年、最も人々を魅了するドレスウォッチの最有力候補。9日間駆動のロングパワーリザーブと端正な美学、ショパールの傑作〈L.U.C クアトロ マークIV
A Closer Look: Chopard L.U.C Quattro Mark IV
詳細解説:ショパール〈L.U.C クアトロ マーク IV〉
2025年、最も人々を魅了するドレスウォッチの最有力候補。9日間駆動のロングパワーリザーブと端正な美学、ショパールの傑作〈L.U.C クアトロ マークIV〉の全貌に迫る。
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by Lee Sheng . Jun 20, 2025 |
ドレスウォッチの復権
Watches and Wonders 2025の幕が下りてから2ヶ月が経ったが、その余韻はいまだ色濃く残っている。振り返ってみると印象的なのは、今年は静かな年になるだろうという事前の予想に反し、心から面白いと思える時計が実に数多く発表されたことだ。
それ以来、我々の目的はシンプルである。こうした隠れた名作をひとつずつ発掘し、最も魅力的なピースを実際に手に取り、その感動を読者と共有することだ。
Watches and Wonders 2025で明らかになったトレンドの一つは、ドレスウォッチの復活だった。
A.ランゲ&ゾーネは美しく抑制された34mmの〈1815〉、パテック フィリップはプラチナとサーモンピンクの〈カラトラバ〉、ロレックスは金無垢でセッティモブレスレットの〈パーペチュアル 1908〉を大胆に発表し、ジャガー・ルクルトは〈レベルソ・トリビュート・エナメル「シャー・ナーメ」〉において、見事なギヨシェとエナメル技術を披露した。
しかし、話題を呼んだ時計の裏には、それほど注目を集めなかった時計もあった。洗練されていて印象的な時計ではあったものの、話題作の陰に隠れてしまった感は否めないのが、ショパールの〈L.U.C クアトロ マーク IV〉だ。2000年に初めて発売された、9日間パワーリザーブのドレスウォッチの第4世代モデルである。
この最新モデルは、まさにクラシックな紳士用腕時計の力強い表現と言える。優雅さと爽快感を兼ね備えたヴィンテージスポーツカーのように、美しいバランス、卓越した技術、そしておそらく今年私たちが目にした中で最も魅惑的なドレスウォッチである。

▲ プラチナ、そして極上のアイスブルー (Image: © Revolution)
シルバー・ジュビリー(25周年)を飾る、渾身のホームラン
ショパールのL.U.C コレクションは、最高級のデザインと構造で知られる伝説的なウォッチラインである。そのラインナップは、マイクロローターを備えた時刻表示のみの自動巻き〈L.U.C 1860〉から、〈L.U.C クアトロ スピリット 25〉のようなより型破りなジャンピングアワーまで多岐にわたる。さらに、サファイア製ゴングを備えるミニッツリピーターのような技術的に野心的な作品も含まれる。
L.U.C クアトロは、その中間的な位置づけにあると言えるだろう。他のモデルほど注目を集めてこなかったのは、おそらく時刻表示のみのモデルほど純粋主義的ではなく、複雑な機構を備えたモデルほど刺激的でもなかったからだろう。しかし、クアトロには独特の魅力がある。
象徴的なディテールは、6時位置に配された同軸のスモールセコンドとポインターデイト、そして12時位置のパワーリザーブ・インジケーターだ。これらが対をなすことで、左右対称のバランスの取れたレイアウトが形作られている。これは単なるデザイン要素ではなく、9日間という驚異的な駆動時間のカウントダウンを示す役割も果たしている。
驚くべきことに、この優れたデザインは実に25年も前から存在していた。その物語は、精巧に作られた〈L.U.C 96.01-L〉ムーブメントのパワーリザーブを延長する方法を模索していたことに始まる。その結果、自動巻き機構を廃止し、手巻き式の香箱を複数搭載することになった。こうして誕生したのが、4つの香箱を備え、2000年に発表されたL.U.C クアトロである。

▲ 裏面からの眺め (Image: © Revolution)
それ以来、3つの変遷を遂げてきた。
セクター風のレイアウトとギョーシェ彫りを施した初代モデルは、今なお超えることが困難な傑作であり続けている。その後に登場した〈マーク II〉と〈マーク III〉は、一見すると初代ほどの調和は感じられないかもしれない。しかし、これらはまた異なる魅力を提示した。その型破りなデザインは、衒(てら)いがなく、極めてストレートだ。一部のコレクターにとって、その荒削りな個性こそが、このモデルに独自の魅力を与えている。
では、〈マーク IV〉では何が刷新されたのだろうか。
最大のトピックは、パワーリザーブ・インジケーターが初めて時計の裏面へと移設された点にある。このわずかひとつの変更がダイヤルに圧倒的な解放感をもたらし、より広々とした、クリーンな佇まいを叶えている。
初代〈マーク I〉のセクター風レイアウトは姿を消し、マーク IIやIIIに見られたローマ数字やアラビア数字のインデックスも取り払われた。そこに残されたのは、極限まで削ぎ落とされたダイヤルである。
それは、もし仕立ての手がわずかでも緩ければ、空白が目立つ退屈なものに成り下がるリスクすら孕む、究極のミニマリズムだ。

▲ メインダイヤルの外周(チャプターリング)にあしらわれた質感のコントラスト、そしてスモールセコンドに見られるツートーンの仕上げに注目してほしい。 (Image: © Revolution)
しかし、ショパールは調和の持たせ方を実によく心得ている。文字盤に雑多な印象(クラッター)を与えることなく圧倒的な存在感をもたらすため、フロステッド加工(またはハンマード仕上げ)のサーフェスを採用した。
その効果は控えめでありながら、実に強烈だ。この質感は、光を受けて柔らかな煌めきを放ち、ミニマリズムの精神を損なうことなくダイヤルに奥行きと趣を添えている。ミニマルでありながらも、決して無機質には感じさせない。実に見事な解決策である。
おそらく、その質感以上に効果を発揮しているのがカラーの選択である。ローズゴールドモデルにはディープブルーのダイヤルが組み合わされ、プラチナバージョンにはアイシーなシルバーがかったブルーがペアリングされている。
どちらのカラーリングも一目で心を奪う魅力を放っており、たとえその色調が現在のトレンドであったとしても、それぞれがタイムレスな気品を感じさせる絶妙なトーンで表現されている。

▲ ローズゴールドとブルー、実に見事なペアリング (Image: © Revolution)
ダイヤルのその他の要素は、お馴染みのヘリンボーン スタイルのアワーマーカーや、ファセット加工が施されたドーフィン針など、初代〈マーク I〉
へのオマージュを捧げている。なかでも、スモールセコンドにロリポップ型のカウンターウェイト(針の錘)が帰ってきたのは、格別に嬉しいディテールだ。これは、ともすればフォーマルに傾きすぎるダイヤルに、ささやかな遊び心をもたらす絶妙なアクセントとなっている。
アワーマーカーは、一目でショパールと分かるシグネチャーだ。スリムで多面的で、他の多くのブランドより少しだけ考え抜かれたデザインである。アプライドインデックスはドレスウォッチでは一般的だが、ショパールのものはより彫刻的な印象を与える。
それぞれのマーカーは2つの尖った先端と3つの傾斜面(ファセット)を備えており、一般的な長方形のバトン型インデックスとは一線を画している。それは例えるなら、ボルボ・アマゾンのようなヴィンテージカーの立体的なテールランプと、より一般的な大衆車のフラットなライトとの違いのようなものだ。
さらに、ケースのサイズも絶妙である。ケース径39mm、厚さ10.4mm。9日間という驚異的なパワーリザーブを宿していることを考えれば、このサイズ感は実に優れたデザインの証である。
このケースデザインを言葉だけで説明しようとすれば、シンプルで、ともすればありきたりに聞こえるかもしれない。しかし実物を目にすれば、それが紛れもないL.U.Cのケースであると瞬時に理解できる。そのプロポーションとディテールへのこだわりには、一度見たら忘れられない、記憶に焼き付く何かがあるのだ。

▲ ラグの間に刻まれた小さな蜂のモチーフは、ショパール製のプラチナケースであることを示している。(Image: © Revolution)
私が特に惹かれたディテールは、ドーム型ベゼルのすぐ下に設けられた薄いステップ(段差)だ。このダブルステップの輪郭が、ケースに奥行きと立体感を与えている。
造形への並々ならぬこだわりはケースサイドにも息づいており、ミドルケースとラグの境界がくっきりと分かれている。これは、それぞれが個別に成形・仕上げされ、その後にロウ付けされたことを物語っている。
そして、もうひとつの新たな試みがある。過去25年間にわたり見送られ続けてきた、小さな、しかし確かな変更――それがリューズだ。新作ではダイヤモンド型(テーパードシェイプ)を採用し、ケースに向かって緩やかに絞り込まれている。その佇まいはより洗練され、指先への馴染みも格段に向上した。

▲ 段差のあるベゼルは、写真では反射のためかすかに見える程度だが、実物を見るとはっきりと確認できる。(Image: © Revolution)
時計製造における四輪駆動
ネーミングにある「クアトロ(Quattro)」が何を意味するのか、疑問に思う方もいるだろう。
イタリア語で単に「4」を意味するこの言葉は、アウディのファンであれば同社が誇る四輪駆動システムを指す用語として馴染み深いはずだ。しかし、この時計におけるクアトロが意味するものは、それと同等にテクニカルな要素――すなわち、この時計に搭載された「4つの香箱」のことである。 時計製造の世界において、複数の香箱を用いる手法自体は決して珍しくないが、大半の時計は2つの香箱で事足りている。4つというのは極めて稀であり、ショパールがそれらを配置した方法はさらに異例だ。
香箱は2個ずつ上下に積み重ねられ、2つの垂直な「タワー」となって隣り合って鎮座している。それぞれの香箱が順繰りに解き放たれる(アンワインドする)ことで、1つのペアにつき2日強の動力を供給。これらが連携することで、ムーブメントを実に9日間という驚異的な期間にわたって駆動させ続けるのである。
この機構は「直列配置(シリーズ・アレンジメント)」として知られている。
テンプに伝わるトルクそのものを増大させるのではなく、動力供給の持続時間を引き延ばすための設計だ。これが重要な意味を持つ。なぜなら、単一の巨大な香箱を採用した場合、主ゼンマイが解けるにつれてトルクが大幅に低下し、時計の精度(等時性)に悪影響を及ぼしてしまうからだ。
負荷を4つの香箱に分散させることで、ショパールは安定性を一切損なうことなく、ロングパワーリザーブを成し遂げた。その優れた高精度は、C.O.S.C.(スイス公式クロノメーター検定協会)の認定によっても証明されている。

▲ ケースバックをほぼ埋め尽くす、大きくバランスの取れたムーブメントは、目に心地よい。 (Image: © Revolution)
しかし、単一のムーブメント内に4つの香箱を収めるには、膨大なスペースを要する。そのため、現在のキャリバーは大半を香箱を覆う大型の受け(プレート)に占拠されており、そのブリッジ・レイアウトは、ベースとなったマイクロローター搭載のL.U.C 96.01-Lムーブメントに比べると、フラットで視覚的なニュアンスに欠けるきらいがある。これは一種のトレードオフであるが、理にかなった選択だ。
そして、この〈マーク IV〉という変遷において、ケースバックはより魅力的なものとなった。パワーリザーブ・インジケーターが、この裏面へと移設されたおかげである。
簡素化されたアーキテクチャであっても、その仕上げのクオリティは実に見事に維持されている。ムーブメントのいかなる部分にも妥協の影は見られず、それは表層に隠れた部分ですら同様だ。テンプの陰にほとんど隠れてしまうガンギ車の受け(ブリッジ)にさえ、ネジ穴の周囲には鏡面仕上げの面取り(カウンターシンク)が施されている。
目に見えるブリッジは、丸みを帯びた艶やかな面取り(アングラージュ)と、精緻なコート・ド・ジュネーブの表面によって、極めて高い水準で仕立てられている。なかでも特筆すべき見所は、緩急針(レギュレーター)だ。全体に鏡面仕上げ(ブラックポリッシュ)が施され、その輪郭に沿って繊細な面取りがなされている。
このムーブメントがジュネーブ・シールの刻印を取得しているのも、当然の帰結と言えるだろう。

▲ 清潔感があり、精密で、徹底したこのムーブメントは、手作業と機械作業を巧みに組み合わせることで完成されている。(Image: © Revolution)

▲ 表層に隠れた部分にまで、すべてのディテールに細心の注意が払われているのを見るのは実に快い。そして、数点のブラックポリッシュ(鏡面仕上げ)されたコンポーネントが、ムーブメントの輝きをさらに引き立てている。(Image: © Revolution)
結論
つまるところ、こういうことだ。このL.U.C クアトロ マーク IVは、シンプルで控えめな佇まいでありながら、思わず心を奪われるほどの魅力を放っている。そして、エレガンスと凛とした力強いキャラクターを融合させることに成功した、今日では数少ないドレスウォッチのひとつでもある。これは、考え抜かれたデザインと、本物の技巧がもたらした必然の結果なのだ。
それはどこか、1970年代の「アルファロメオ 2000 GT ヴェローチェ」を想起させる。クリーンなラインを纏ったその姿は、どこからどう見ても紳士そのものであるが、同時に、紛れもない色気を放ち、いざ走り出せば胸の高鳴るような魅力を露わにする。太陽の光が降り注ぐカントリーロードをその車で駆け抜け、ふと目を落とした手首でダイヤルが煌めきを返す――そんな情景を想像してみてほしい。人生とはなんと素晴らしいものだろうか。

▲ 街中で偶然見かけたこの一台が、この時計についての記事を書き始めてからずっと頭から離れない。 (Photo by the author)
Tech Specs
ショパール〈L.U.C クアトロ マーク IV〉 リファレンス: 161954-9001(プラチナ)/161954-5001(エシカルローズゴールド) ムーブメント: L.U.C 98.09-L/手巻き/パワーリザーブ約 216時間 機能:スモールセコンド/パワーリザーブ表示/日付、時および分 ケース:39mm x 厚さ10.4mm/プラチナまたは18Kエシカルローズゴールド/防水性能30m ストラップ:ストラップベルト/ピンバックル [プラチナ]インターチェンジャブル仕様のブラウンアリゲーター、およびグレーグレインカーフスキン、ピンバックル [エシカルローズゴールド]インターチェンジャブル仕様のブルーアリゲーター、およびブラウンカーフスキン、ピンバックル 価格: ¥ 7,810,000(プラチナ)/¥ 6,523,000(エシカルローズゴールド)
Brands : Chopard
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