時計界で再評価される「セクターダイヤル」。扇形の幾何学模様を特徴とし、伝統と革新を両立させるこのデザインの起源とは、どのようなものか。
The Watch Face: Sector Dials
時計の表層:扇形の幾何学模様、セクターダイヤルとは?
時計界で再評価される「セクターダイヤル」。扇形の幾何学模様を特徴とし、伝統と革新を両立させるこのデザインの起源とは、どのようなものか。
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セクター : 幾何学における二つの半径と弧によって囲まれた円の一部(扇形)…
厳密な定義があるわけではないが、セクターダイヤルを名乗るにはいくつかの要素が必要だと考える。まず、分用と時用の2本の同心円が描かれていること。そして、インデックス(時・分)は、それら円の内側と外側のラインを繋ぐ放射状の線であるべきだ。これにより「セクター(扇形)」が形作られる。場合によっては、15分ごとや5分ごとの位置に数字が配されることもある。仕切り線の太さは様々だが、クラシックなデザインでは、インデックス(時)と最も内側の円を太い線で強調するのが一般的である。
文字盤の中央部分は通常空白であり、厳密に言えば、その形状はピザの1ピースのような「扇形」ではなく、環状の一部「アニュラス・セクター(円環セクター)」である。こうした文字盤は「サイエンティフィック・ダイヤル(科学的文字盤)」、あるいは「レイルロード・ダイヤル(鉄道文字盤)」と呼ばれることもある。
確かに、明快なマーキングと細かな目盛りは、わずかな時間の増分を読み取るのを容易にする。しかし、サイエンティフィック・ダイヤルでは放射状の線の代わりにドットや数字が使われることも多く、本来の古典的な形式から外れてしまう場合がある。「レイルロード」という名称は、同心円状の線と目盛りが線路のように見えることに由来する。しかし、これは外周にミニッツトラックを持つ時計全般に当てはまり得るものであり、衝突事故を避けるために作られた高精度な「鉄道時計」そのものと混同される恐れもある。

▲ 1940年代、オメガ「セクター」Image: Vision Vintage Watches
起源
誰もが誕生秘話(オリジン・ストーリー)を好むものだが、このケースに関しては、最初の個体を特定することは不可能だ。時計ブログの世界では、セクターダイアルのトレンチウォッチ(塹壕時計)への言及が数多く見られるが、図解を伴うものは一つもない。確かにトレンチウォッチには縁取りされた分目盛りがよく見られるが、それをセクターダイアルと呼ぶには無理がある。
初期のセクターダイアルは、第一次世界大戦以前の懐中時計に見ることができる。今年の5月、フィリップスが販売した1910年製パテック フィリップは、素晴らしい実例だった。そのため、おそらくセクターダイアルは1910年よりも前から存在していたのだろう。
それらは、形態は機能に従うのではなく、形態が機能を引き立てている好例だ。文字盤のデザインは、アール・デコとバウハウスという対立する二つの流派の中間に位置している。アール・デコ特有の同心円模様と、ドイツ流の機能美が組み合わさることで、より正確に時刻を読み取ることができる明快さが生まれている。
先駆者
第一次世界大戦後に腕時計の人気が高まったものの、セクターダイヤルが懐中時計以外に登場するのは1930年代まで待つことになる。クリスティーズは、1924年に登場したティファニー銘のパテック フィリップ(Ref. 421)に「セクター風」の文字盤が採用されていることを詳述している。これは腕時計における最初期のセクターダイヤルとして知られているが、一般的にセクターダイヤルに期待されるような特徴は備わっていない。

▲ パテック フィリップ Ref. 421(Image: Christie’s)
1930年代には、多くのメーカーからセクターダイヤルが登場した。文字盤製造会社を共有していたことも多く、これは決して驚くべきことではない。ロンジンやオメガがその典型例として挙げられるが、同様にクラシックなセクターダイヤルは、ロレックス、パテック フィリップ、ブレゲ、IWCなど、他にも多くのブランドでも見られた。
このスタイルは1940年代を経て1950年代まで続いた。その頃には、多くのブランドで採用された特徴的な「ダート(楔形)」のインデックスの先端をインナーリングでつなぐデザインが登場し、セクター効果を生み出していた。
ウォッチデザインがより未来志向になるにつれて、セクターは1960年代に人気を失ったが、過去10年ほどの間に、レトロにインスパイアされたダイヤルが着実に増加しているのが見られる。

▲ ロンジン「セクターダイヤル」(1938年) Image: Roy & Sacha Davidoff
復活
パテック フィリップが2005年に発売した〈カラトラバ Ref.5296〉 のダイヤルに採用したことで、セクターダイヤルは大きな注目を集め、見事に復活を遂げた。これは、複数の同心円状のトラックや、放射状のアワーマーカーを配した太いインナーリングなど、クラシックな様式で仕上げられたセクターダイヤルだ。
その3年後、IWCもヴィンテージ・コレクションの〈ポルトギーゼ〉にセクターダイヤルを採用した。6時位置のスモールセコンドは、センターセコンドとは異なる印象を与えるが、1930年代にはセンターセコンドとスモールセコンドの両方が広く用いられていた。

▲ パテック フィリップ〈カラトラバ Ref.5296〉

▲ IWC〈ポルトギーゼ〉 Ref.IW544501
近年、ローラン・フェリエは、インナーリングと放射状のラインのみに簡素化されたデザインのセクターダイヤルを発表した。一見すると現代的でミニマルな解釈に思えるが、その姿は1930年代に製造され、ジョン・ゴールドバーガー著『100 Superlative Rolex Watches』にも掲載されているロレックス「Ref. 2563」のダイヤルとほぼ同一である。
また、2017年には、ジャガー・ルクルトとハブリング2から優れたセクターダイヤルが登場した。ジャガー・ルクルトは3針モデルとクロノグラフの両方で伝統的なセクターダイヤルを再現し、一方、ハブリング・ツー(Habring2)は、簡素化されたセクターダイヤルとセンターセコンドまたはスモールセコンドの選択肢を提示した。

▲ ローラン・フェリエ〈スクエア〉

▲ ジャガー・ルクルト〈マスター・コントロール・デイト〉 Ref.Q1548530
セクター・ダイヤルは、IWCによって示されたように、老舗ブランドにとってはアーカイブの再解釈となり、新興ブランドにとっては品格を与えるものとなる。このデザインの強みは実用性にあり、時刻の読み取りやすさを追求した結果、時代に左右されない普遍的なモダンさを備えている。
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