シャネルのアイコン〈J12〉が誕生25周年。〈J12 BLEU〉の開発秘話と、職人たちがこだわり抜いた技術の結晶を深掘りする。
The Making Of Chanel J12 Bleu, With Frédéric Grangié And Arnaud Chastaingt
25 years of elegant innovation.
二人のキーマンに聞く、シャネル 〈J12 BLEU〉誕生秘話
シャネルのアイコン〈J12〉が誕生25周年。〈J12 BLEU〉の開発秘話と、職人たちがこだわり抜いた技術の結晶を深掘りする。
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by Wei Koh . Jun 24, 2025 |
25年にわたる優雅な革新
シャネルの時計が真に持つ能力を知りたいのであれば、ウォッチズ&ワンダーズ 2025で発表された〈J12 BLEU X-RAY〉を見てほしい。このタイムピースは、J12の25周年の節目に発表されたモデルであり、ブランドのインハウス(内製)能力を示すものである。
まず、J12の象徴的なデザインだ。これは2000年にジャック・エリュが創造し、2013年以降、卓越した才能を持つ物静かで謙虚なデザイナー、アルノー・シャスタンのクリエイティブ・ディレクションのもとで洗練を重ねてきた。
次に挙げるのが、自社工房で行われるジェムセッティングである。ベゼルとブレスレットのセンターリンクにセットされた鮮烈なブルーのバゲットカット・サファイアがそれを証明している。これは、G&Fシャトラン社としても知られる、シャネルのウォッチ マニュファクチュールの核心的な強みの一つを反映し、同社は最高峰のジェムセッティングに特化した25人の専門チームを擁する。
第三に、素材の革新である。ここでは、ブルーに着色されたサファイアクリスタル製ケースとブレスレットによって表現されている。これらは、シャネルのウォッチマニュファクチュールが持つ先進的な素材に関する深い専門知識を示している。一方で、G&F シャトラン社は、シャネルだけでなく、他のブランド向けのセラミック製時計やブレスレットの優れた製造元として広く知られている。(ハイエンドな時計ブランドの見事に美しく仕上がったセラミック外装は、ここで製造されているのでは?という疑問をお持ちなら、その推測は十中八九当たっている)
最後に、スケルトン化されたメゾンの自社製ムーブメント、キャリバー 3.1の使用がある。これは、巻真を3時位置のインデックスに巧みに統合し、2枚のサファイアクリスタル板の間に固定することで、ムーブメント全体がケースから切り離されて浮かんでいるように見え、スリリングな時計製造の妙技を実現している。

▲ シャネル 時計・宝飾部門社長 フレデリック・グランジェ
シャネルの時計・宝飾部門を見事に統括するフレデリック・グランジェは、次のように語る。「我々は自分たちがしていることに誇りを持っているが、常に謙虚でありたいと考えています。我々がウォッチメイキングに携わって、2027年でようやく40年にすぎません。スイスのウォッチメイキングの基準からすれば、それは非常に若い。しかし、90年代に重大な重要な決断が下されました。これは、ファッションからフレグランスに至るすべてにおいて、同じアプローチを反映させるというものでした。つまり、我々は、ウォッチメイキングに本気で取り組み、その誠実さを通じて自己表現するということ。これが、我々が1993年に時計外装メーカーであるG&F シャトラン社を傘下に収めて以来、我々の核となるサヴォアフェールを常に磨いてきた理由なのです」
もちろん、グランジェは、このように非常に謙虚に語るのだが、実際、シャネルは時計製造における有数の企業である。時計とジュエリーに特化した60以上の専門職が関わるG&Fシャトラン社のほかにも、シャネルはF.P.ジュルヌに直接投資しており、ジュルヌの文字盤製造部門であるカドラニエ・ジュネーブから、最高に美しい文字盤の多くを調達している。
シャネルは、ローマン・ゴティエにも出資していて、キャリバー 1を含むムーブメント設計で提携してきた。同メゾンは、チューダーやブライトリングなどのブランド向けにキャリバーを製造するムーブメント製造会社ケニッシの共同所有者でもあり、同じフランスブランドのベル&ロスにも少数株主として出資している。直近では、マックス・ビュッセルのMB&F(Maximilian Büsser & Friends)に投資している。
長年にわたるこうした戦略的な動きは、シャネルが物事を中途半端に済ませない、徹底的に行うことを強調している。真のウォッチメイキングによる信頼性を確立し、それを持続させるために、彼らは敢えて厳しく長い道のりを選んできたのだ。
新しいJ12に完璧な「ブルー」を実現
J12 BLEU X-RAYは、その価格設定ゆえに、ほとんどのコレクターの手には届かないタイムピースとなる運命にあるが、シャネルはより手に取りやすいJ12にも、全く新しいブルーセラミックの色調を与えた。グランジェは語る。「これは、我々のセラミックにおける専門技術の結晶である。我々は、出資するドイツの企業(INMATEC Technologies GmbH)で作成される原材料から、ここG&Fシャトラン社での時計部品の製作に至るまで、プロセス全体を管理している。

▲ シャネル ウォッチ マニュファクチュールがJ12 BLEU独自の色を開発するのに、5年の歳月を要した。(©Revolution)
これによって、我々は極めて豊かな表現を具現化することができるのだ。この魅力的で夜のようなマットブルーに決定するまでに、アルノーは膨大な数のテストを重ねた」
シャネルのブルーセラミックは、新しい〈J12 BLEU ダイヤモンド トゥールビヨン〉で驚くべき効果を発揮しており、この時計もまた印象的なムーブメントとなっている。2024年に導入されたキャリバー 5は、ロマン・ゴティエ製のパーツを用いた前述のキャリバー 1とムーブメントの世界観を共有している。それは、ムーブメントのギアトレイン(輪列)を構成するすべてのピニオン(カナ)を保持する、円形のブリッジが特徴だ。キャリバー 5のトゥールビヨン・ケージの中央のカナには、65面カットのソリティアダイヤモンド(約0.18カラット)がセットされている。

▲ キャリバー 5は、開発に3年を費やした。172の部品で構成される。(©Revolution)

▲ シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクターのアルノー・シャスタン
セラミックケースについて、アルノー・シャスタンは次のように説明する。「特別なブルーにたどり着くために、我々は24種類の異なるプロトタイプと150種類の異なる色調を試し、このプロセスには5年を要しました。最終的に我々が下した選択は、情緒的なものでした」
グランジェはさらに詳しく語る。「我々が選んだ色調はブラックと非常に相性が良く、その2色が組み合わさることで、ダイナミックなコントラストを生み出します。これは実のところ、ガブリエル・シャネルがブルーとブラックを組み合わせた手法を彷彿とさせるものです。当時は、その2色は組み合わせてはいけないものとされていたので、それは非常に革新的なことでした」
デザインとウォッチメイキングの技巧が融合したJ12 BLEU
J12 BLEU X-RAYまたはJ12 BLEUダイヤモンド トゥールビヨンを腕に着けてみれば、これらの時計には人間工学に基づいた多くの考察が盛り込まれているのが分かるだろう。どちらも直径38mmであり、私見ではあるが、ブレスレット一体型のスポーツシックな時計(ラグジュアリースポーツウォッチ)にとって完璧なサイズである。どちらも、手首に非常に心地よい滑らかさを持っている。同時に、両タイムピースの視覚的な存在感は際立っており、一瞬で目を奪われてしまうだろう。

▲ サファイアの単一ブロックからJ12 BLEU X-RAYのケースとブレスレットを形づくるのに、1,600時間以上の作業を必要とした。
シャネルがセラミックで時計を作るのが得意だと言うのは、ストラディバリウスが木材でヴァイオリンを作るのが得意だったと言うようなものだ。シャネルが他の多くの時計メーカーと異なるのは、貴金属のようにセラミックを仕上げる技量を持っていることである。J12 ダイヤモンド トゥールビヨンのような高度なウォッチメイキングによるタイムピースでは、中駒を含めた面取り(ベベル)部分の鏡面仕上げ(ポリッシュ)を見れば、このことは明らかだ。しかし、目に見えないのは、マットな表面処理が施される前に、セラミックが鏡面研磨されているという点である。
つまり、シャネルの時計の場合、真の神は細部に宿るのである。ギアトレイン(輪列)用の円形ブリッジを持つキャリバー 1を思い出してほしい。これは実際には、シャスタンの提案でローマン・ゴティエのパーツを多用し、製造されたものだ。彼は説明する。「私は視覚的な特徴を求めていました。それから、シャネルでは常に過去を踏まえて未来のために革新していることを思い出し、この完全な円をデザインにとりいれるというアイデアが生まれました。我々はこれを、すべての時計における一種のライトモチーフ(中心的思想)として用いることに決めたのです」

グランジェは語る。「ここでの挑戦は、ムーブメントは、アルノーのスケッチに従って製作されなければならないということでした。我々はムーブメントに合わせて時計の美学を適応させたのではなく、その逆を行ったのです。しかし、キャリバー 1、スケルトン化されたキャリバー 3.1、そしてキャリバー 5のトゥールビヨンを見れば、すべての自社製ムーブメントにおいて、デザインとウォッチメイキングが完全に融合した一体性があることがわかるはずです」
彼は笑みを浮かべ、一拍おいて語った。「多分、我々が時計ブランドとしては若くて、他にやり方を知らないからかもしれない。」と彼は謙虚に語るが、彼とシャスタンは自分たちが何を成し遂げているのかを分かっています。誠実さとシャネル独自のアイデンティティの大胆な表現によって、業界で最も優れた時計のいくつかを創造しているということを。
Tech Specs
CHANEL〈J12 BLEU X-RAY〉 ムーブメント:手巻き キャリバー 3.1;55時間パワーリザーブ 機能:時・分表示 ケース:38mm/ブルーサファイアクリスタルおよびブラックコーティングされた18Kホワイトゴールド/46個のバゲットカットブルーサファイアがセットされた固定ベゼル(約5.61カラット)/30m防水 ダイヤル: 12個のバゲットカットブルーサファイアがセットされた透明サファイアクリスタル(約0.43カラット)ストラップ:ブルーサファイアクリスタルおよびブラックコーティングされた18Kホワイトゴールド製ブレスレットに138個のバゲットカットブルーサファイアがセット(約10.15カラット)/ブラックコーティングされた18Kホワイトゴールド製3重折りたたみ式バックル 価格:¥204,380,000/数量限定モデル(世界12本限定)
CHANEL〈 J12 BLEU ダイヤモンド トゥールビヨン〉 ムーブメント:キャリバー 5 手巻き機械式ムーブメント 約42時間 機能:時、分 ケース:38㎜/高耐性マットブルー セラミック/ステンレススティール ブラックコーティング ベゼル:固定ベゼル/ステンレススティール ブラックコーティング/バゲットカット ブルーサファイア34個(約4カラット) リュウズ:非ねじ込み式リュウズ/ステンレススティール ブラックコーティング/ブリリアントカット ダイヤモンド1個(約0.16カラット) ダイヤル:ブルー オープンワーク ダイヤル/トゥールビヨン キャリッジ ソリテール ダイヤモンド 1個(約0.18カラット) ストラップ:高耐性マットブルー セラミック/エッジ ポリッシュ仕上げ/ブラックコーティングを施したステンレススティール製3重折りたたみ式バックル 価格:¥39,160,000/数量限定モデル(世界55本限定)
Brands : Chanel
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