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タグ・ホイヤー フォーミュラ 1:再び走り出すレジェンド

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タグ・ホイヤーほど、モータースポーツと深く結びついた時計ブランドはない。その象徴が1986年に誕生した〈フォーミュラ

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TAG Heuer Formula 1: Back On Track

タグ・ホイヤー フォーミュラ 1:再び走り出すレジェンド

タグ・ホイヤーほど、モータースポーツと深く結びついた時計ブランドはない。その象徴が1986年に誕生した〈フォーミュラ1〉である。F1の公式タイムキーパーとして再びグリッドに戻った今、伝説のコレクションを振り返る。

by Celine Yap. Jul 14, 2025

レース文化と一緒に育ってきた

 時計の世界において、その存在のほぼすべてをモータースポーツとともに歩んできたブランドはひとつしかない。創成期からスピードへの情熱を持ち、レース文化とともに育ってきたブランド──それがタグ・ホイヤー、そして初期には精密計時機器メーカーとして知られたホイヤーである。

 彼らが最初に手がけたのは、自動車や航空機の中で距離・速度・時間を正確に測定するためのプロフェッショナルな計器であった。それはやがて懐中時計へ、さらに腕時計へと発展していく。

 19世紀半ばから20世紀、そして21世紀の現在に至るまで、タグ・ホイヤーは一貫して“計時精度”という終わりなきテーマを追求してきた。それは果てしない挑戦であるが、同社にとっては苦行ではない。むしろ新しい時計を生み出すたびに、そのチャレンジを楽しんでいるかのようである。

 スピードと精度を愛し、技術革新を自らの使命としてきたブランド──それがタグ・ホイヤーなのである。

 過去165年にわたるタグ・ホイヤーの歩みを振り返れば、なぜモーターレーシングがブランド・アイデンティティに、これほど深い影響を与えているかがわかる。そもそも、同社の起源が計測精度と切り離せないところにあるのだ。

 1887年に発表されたオシレーティング・ピニオン式クロノグラフをはじめ、1910年代には1/100秒計測を実現した“マイクログラフ”、そのラトラパンテ版である“マイクロスプリット”などは、いずれも計時を突き詰めた時計だった。

 また、1/50秒計測を可能にした“セミクログラフ”および“セミクロスプリット”も存在した(これらは精度こそ半分ながら、より多くのユーザーに手の届く価格帯を実現した)

 こうした高精度計時器は、当然のように高速で動く世界から求められる。ゆえに、自動車や航空機が発展し始めた時代、これらの領域はタグ・ホイヤーにとって大きな活躍の舞台となった。

 ここから、タグ・ホイヤーの歴史は数々の名レースと切っても切れない関係になる。メキシコのカレラ・パナメリカーナ・メヒコ、ル・マン24時間、セブリング12時間、インディ500、そしてモータースポーツの最高峰、フォーミュラ1グランプリ……。いずれもタグ・ホイヤーと深く結びついているのである。

タグ・ホイヤーの元CEOで名誉会長を務めたジャック・ホイヤーは、マーケティングの天才として知られていた。

F1との結びつき

 フォーミュラ1グランプリとの関わりは、タグ・ホイヤーのブランド史においてきわめて重要である。1969年、同社はこの刺激的な世界に初めて足を踏み入れ、象徴的なホイヤーロゴがF1マシンやドライバーのスーツを飾るようになった。

 また、モナコ、モンツァ、シルバーストーンといった名門サーキットにオマージュを捧げた代表的なタイムピースもこの時期に誕生している。

 それまでホイヤーを支えていた中心事業は、スポーツイベント向けの計時機器の製造であり、1971年にはスクーデリア・フェラーリの公式時計パートナーを務めた。しかし、先見性に富んだマーケッターであったジャック・ホイヤーは、自動車レースの世界にこそ、自社の腕時計が大きく羽ばたく可能性があると見抜いていた。

1969年、ジャック・ホイヤーはスイスのF1レーサー、ジョー・シフェールと契約を結び、ホイヤー初のブランドアンバサダーとして起用した。彼は自分で時計をはめるだけでなく、自らホイヤーの時計を仕入れ、同僚たちに売り歩き、ブランドの普及に大きな役割を果たした。

 やがて、ホイヤーの名はF1マシンやレーシングスーツ、サーキットの広告、そして何よりもドライバーたちの腕元にあふれるようになった。当時、ホイヤーのクロノグラフを身につけた姿が記録されているのは、ニキ・ラウダ、ジェームズ・ハント、エマーソン・フィッティパルディ、マリオ・アンドレッティ、ブルース・マクラーレン、グラハム・ヒルといったそうそうたる面々である。

 さらに忘れてはならないのが、“キング・オブ・クール”と呼ばれたスティーブ・マックイーンで、映画『栄光のル・マン』(1971年)でホイヤーを着用したことはあまりにも有名である。

 こうしてホイヤーはモータースポーツの世界に深く根を下ろすことになった。この流れの中で、ホイヤーはタグ・ホイヤーへと姿を変える、大きな転換点を迎えたのであった。

 1985年、ホイヤーはTAGグループに買収された。TAGグループは、先端的な航空宇宙関連メーカーを傘下に持っている。TAGとは“テクニーク・ダヴァンギャルド(Techniques d’Avant Garde)”の略である。

 当時のタグ・ホイヤーのロゴに見られる、文字Gの両端にあしらわれた矢じりのような意匠は、スピードとエネルギーを象徴するものであった。

 この頃、TAGグループはF1マシン用のセラミック製ターボチャージャーなど、ハイテク部品を製造していた。また1980年代初頭には、ウィリアムズ・チームのスポンサーを務め、1980年と1982年にはアラン・ジョーンズとケケ・ロズベルグがタイトルを獲得していた。

 さらに1983年にはマクラーレン・チームの一部株式を取得し、以後40年以上にわたり同チームと深い関係を築いた。

盾形のホイヤー・ロゴは、いまや世界中のサーキットでひと目でわかる象徴的な存在である。

〈フォーミュラ1〉の誕生

 タグ・ホイヤーはほどなくして、その製品ラインに“未来志向”の視点を取り入れ始めた。かつては機械式クロノグラフやダッシュボード用の計時機器のイメージが強いブランドであったが、この時期からは21世紀を見据えた時計づくりへと大きく舵を切るのである。過去ではなく未来へ向かうこと、そして現代の消費者に響くこと、それが新しいテーマになった。

 当時の先端技術であった電子式やクォーツ式ムーブメントを積極的に導入し、シリーズ2000や、大胆でカラフルなタグ・ホイヤー フォーミュラ1 コレクションなど、多岐にわたるモデルに用いた。

 1986年に誕生したタグ・ホイヤー〈フォーミュラ1〉は、初期のタグ・ホイヤーブランドを象徴する存在であり、腕時計が単に“時を知るツール”から“自分らしさを表現するアイテム”へと変化していく流れを見事につかんでいた。

 時は1980年代である。マキシマリズム(より多く、より派手に、より大胆に)の空気が満ち、世界は今よりずっと楽観的だった。タグ・ホイヤー フォーミュラ1は、この時代感を取り入れた。鮮やかなカラー、プラスチックケース、扱いやすいクォーツムーブメント、遊び心あるパッケージ……。すべてが時代の気分にマッチしていた。

 さらに重要なのは、これらが手の届きやすい価格帯で提供されたことだ。エネルギッシュでスポーティなデザインに魅了されていた若い世代にとって、タグ・ホイヤー フォーミュラ1はまさにうってつけの一本となったのである。

1992年に登場したタグ・ホイヤーの「6000シリーズ」は、スポーティさとエレガンスを見事に両立したモデルであった。

 モータースポーツをテーマにしたタグ・ホイヤー フォーミュラ1には、なぜか200メートル防水や、15分カウントダウン付きの大きなダイビングベゼルが搭載されていた。これは振り返ってみれば、これは初期のフォーミュラ1の“ちょっとした不思議”である。

 しかし実のところ、当時のユーザーはそんなことをまるで気にしていなかった。なぜなら、タグ・ホイヤー フォーミュラ1はそもそも、厳密なツールウォッチや本格的な計時器ではなかったからだ。あくまで楽しく、トレンディで、身につけると楽しい気分になる一本としてデザインされていたのである。

1980年代から2000年代に至るまで、タグ・ホイヤーのフォーミュラ1は、常にカラフルでスポーティなスピリットを保ち続けていた。

 効果はあったのだろうか? もちろんである。いまや時計好きのミレニアル世代の多くが、タグ・ホイヤー フォーミュラ1の話題が出ると、どこか懐かしそうに、思わず笑みがこぼれてしまう。

 そして2024年、タグ・ホイヤーがアメリカのファッションブランドであるKITHとコラボレーションしたとき、その“過去からの一撃”は見事に炸裂した。1980年代〜90年代に青春を過ごした人々の心に深く刺さり、「昔持っていたフォーミュラ1」、「ずっと欲しかったフォーミュラ1」を思い出させ、強い感情を呼び起こしたのである。

アイルトン・セナの時計

 とはいえ、タグ・ホイヤーはフォーミュラ1グランプリとの深い結びつきを決して手放してはいなかった。2025年から、同社は再びF1のオフィシャル・タイムキーパーとなっている。

 最初に公式計時を担当したのは1992年のことで、このパートナーシップは2003年まで続いた。この時代を象徴する最も人気の高いモデルのひとつが、タグ・ホイヤー S/el(セル)である。

 メーカー自身が「ダイビングスーツにもタキシードにも合うようにデザインした」と語った時計であり、伝説のレーサー、アイルトン・セナにとっては“レーシングスーツにも合う時計”であった。

 セナが愛用していたのは、卵殻色のダイヤルに、4時位置と8時位置にデジタル表示を備えたアナデジ仕様のリファレンスS25.706C。通称「S/el デジタル・クォーツ・クロノグラフ」である。1/100秒計測が可能で、初期のホイヤー・マイクログラフと同等の精度を誇っていた。

 つまりこの時計は、タグ・ホイヤーを定義する4つの要素──クロノグラフ、モーターレーシング、計時精度、そしてスタイリッシュなエレガンス──をすべて兼ね備えた一本であったのだ。

アイルトン・セナが着用した、マルチファンクション・クォーツムーブメント搭載のタグ・ホイヤー S/el。

アイルトン・セナとS/el クロノグラフRef. S25.706C/CG1123。特有の“Sリンク”ブレスレットが、一目でわかる。

 F1グランプリとのパートナーシップを新たに結び直したことで、タグ・ホイヤーはモータースポーツの第一線へ、再び戻ってきた。しかもそれはF1のレースそのものだけでなく、F1を取り巻くあらゆる要素──華やかさ、パワー、情熱、文化的な影響力、そして現代的で前衛的な技術の世界──にまで広がっている。これらはすべて、未来志向のブランドであるタグ・ホイヤーと見事に呼応している。

 かつてタグ・ホイヤーは、239勝、613回の表彰台、11回のコンストラクターズチャンピオン、15回のドライバーズチャンピオンといった輝かしい記録を打ち立てた。

 公式タイムキーパーとして再びグリッドに戻ったタグ・ホイヤーは、サーキットに新たな躍動感をもたらすだろう。F1はクルマ好きのためだけのレースではなく、時計ファンが心から楽しめる、よりエキサイティングな存在になるに違いない。

Brands:TAG Heuer

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