ロレックスのジェムセットウォッチは、単に宝石を飾った時計ではない。その一本一本には、厳格な宝石選別と卓越した石留め技術、そして芸術性が凝縮されて
Rolex gem-set watches are all about quality, exclusivity and artistry
ロレックスのジュエリー時計―品質・独自性・芸術性の結晶
ロレックスのジェムセットウォッチは、単に宝石を飾った時計ではない。その一本一本には、厳格な宝石選別と卓越した石留め技術、そして芸術性が凝縮されている。ロレックスが生み出す華麗なるジュエリーウォッチの世界を覗いてみよう。
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by Celine Yap . Jan 2, 2025 |
ロレックスの“オフカタログ”とは?
ラグジュアリーウォッチがニッチからメインストリームとなった今、誰もが「次に欲しいのはロレックス」と口を揃えるようになった。確かにロレックスは、地球上でもっとも求められるタイムピースのひとつである。
だが、ロレックスを知り尽くした“通”は知っている。最高級のロレックスとは、派手に宣伝されるものでもなく、自由に情報が出回るわけでもないということを。それらは、親しみを込めて “オフカタログ” と呼ばれる。
これらは、ロレックス・コレクションの世界で到達しうる、最高位と言っていい。もっとも華麗で、幻想的で、途方もなく豪奢な作品が並ぶのだ。
たとえば、〈コスモグラフ デイトナ レインボー〉、〈コスモグラフ デイトナ レパード〉、〈コスモグラフ デイトナ アイ オブ ザ タイガー〉、SARUと呼ばれる〈GMTマスターⅡ〉のジェムセット・モデル、さらには、バゲットカットのルビー、エメラルド、サファイアが隙間なく敷き詰められたアラビア文字盤の特別仕様〈デイデイト〉などなど……。そのラインナップは実に壮観である。

▲ ロレックス デイトナ 116588 TBR(Image©Revolution)”Eye of the Tiger”

▲ ロレックス GMTマスター Ref.16758 “SARU”(Image:Revolution)
多くのロレックス愛好家にとって“究極の聖杯”であることに加え、これらのモデルには、もうひとつ共通点がある。それはロレックスが誇る最高峰のジェムセッティング技術とジェモロジー(宝石学)の粋であるという点だ。
ロレックスは、オフカタログのフルパヴェ仕様であれ、ごく控えめに宝石をあしらったデイリーウエア向けのクラシックモデルであれ、そのすべてに同じ職人技を注ぎ込んでいる。
では、ここからは少し踏み込んで具体的に見ていこう。ジェムセッティングは古くから続く伝統技法であり、エナメル細工、エングレービング、ギヨシェなどの代表的なメティエダール(芸術工芸)と並び称される。フランス語ではsertissage(セルティサージュ)と呼ばれ、他のメティエダールと同じく、実に多くの技法が存在する。
時計製造の世界、そして特にロレックスにおいては、この分野は大きくジェムセッティングと宝石学の2つに分けられる。名前が似ているが、それぞれまったく異なる専門技術を指している。

▲ エバーローズゴールドの〈オイスター パーペチュアル レディ デイトジャスト〉(フルパヴェダイヤモンド仕様)
宝石学とは何か?
宝石学は、宝石そのものを研究する学問である。ロレックスの宝石鑑別士たちは、宝石ひとつひとつを厳しく検査し、わずかな欠点すら見逃さない。その評価基準はきわめて厳格で、ロレックスが採用するのは 最高品質の天然石のみだ。
ダイヤモンドであれ、サファイア、ルビー、エメラルドであれ、すべてが徹底した検査を経て選び抜かれている。
実際、ロレックスの宝石鑑別士たちは、分子レベルに至るまで宝石を分析できる特注の機器を使いこなしている。宝石の組成を精密に解析することで、その純度と品質が明らかになる。
たとえばダイヤモンドは、真偽を確かめるため、必ずX線検査を行い、一個ずつ確実にチェックされる。こうした検査はまさに“科学そのもの”である。だが、最終的な品質を見極めるのは鑑別士の眼力である。
彼らは認定済みの“マスター・ストーン”と照らし合わせながら、宝石の美しさと色の均一さを慎重に確認する。こうして初めて、ロレックスの時計にふさわしい宝石が選び抜かれるのだ。

▲ ダイヤモンドは、X線検査によって一つひとつ確実に真偽が確認される。
ロレックスではダイヤモンドの評価を必ず肉眼で行う。無色のダイヤモンドを見抜く鑑別士の能力は、驚くべきものである。
ロレックスが採用するのは、GIA(米国宝石学会)のカラーグレードでD・E・F・Gに分類される石のみ。このうちD〜Fは“完全無色”、Gは“ほぼ無色”の最高ランクに属する。
さらにロレックスは、すべてのモデルに使用するダイヤモンドについてサイズ・無色度・透明度の均一性 を厳格に求めている。
一方で、サファイア、ルビー、エメラルドといったカラーストーンの場合は基準がまったく異なる。無色性ではなく、むしろ色の強さと彩度が重要となり、色彩を最も鮮やかに表現できる石が選ばれる。
ロレックスは、一本の時計にセットされる宝石がすべて同じ色調で揃っていること、また、グラデーションで用いる場合には、連続する色の調和が完璧であることを徹底的に重視する。
ロレックスのアトリエでは宝石を一つひとつ手作業で選別し、色味を精密に揃えていく地道な作業が行われている。

▲ エバーローズゴールドのレインボー仕様の〈コスモグラフ デイトナ〉Ref.116595RBOW(2018年)
しかし、色の評価基準が宝石の種類によって大きく異なる一方で、透明度の判定ははるかに明確である。ロレックスが採用するのは、最高レベルの透明度をもつ天然宝石のみ。ダイヤモンドにいたっては、宝石学の評価基準で最上位にあたるIF(Internally Flawless=内部無欠点)以外は決して使用しない。
もっとも、鑑別士が石を見極める際に重視する要素の多くは、実はカットによって左右される。カットは研磨職人の技術そのものであり、完璧にカットされた宝石は、光が最適な角度から入り、パビリオン(底部)で反射し、最大限の輝きを放つ。
宝石全体の対称性、ファセット(切子面)の形状、そしてその数によって、私たちの目に映る色味や透明度が決定される。優れたカットが施されたダイヤモンドでは、光を受けたとき虹色の輝き(ファイア)が見えることがある。

▲ 完璧な無色透明さ。ホワイトゴールドの〈オイスター パーペチュアル レディ デイトジャスト〉パヴェダイヤモンド・モデル。
完璧なるセッティング
宝石鑑別士の仕事が終わると、次は宝石を実際に留めるジェムセッター(石留め職人)の出番となる。仕上がりを左右するのは、職人と宝石、そして手作業の道具だけである。
ベゼルローラー、バーニッシャー、ビーディングツール、爪曲げ工具、グレーバー、クランプ、プッシャー、バーカッターなど、多種多様な器具を巧みに使い分けながら、宝石をひとつひとつ時計に固定していく。
ロレックスのジェムセッターたちは、GMTマスターIIのSARU(サファイア・ルビー)のような壮麗なモデルで優れた技を見せてきた。
トラペーズ(台形)カットのサファイアとルビーに、ダイヤモンドを組み合わせ、12時位置には三角カットのダイヤモンドを一石だけ配するという精緻きわまる仕様だ。そして、これはSARUの数あるバリエーションのほんのひとつに過ぎない。
さらに、目を奪われるような宝飾仕様のGMTマスターIIには、ブラックサファイア×ダイヤモンドのSANR(サファイア・ノアール)や、ブルーサファイア×ダイヤモンドのSA(サファイア)といったモデルも存在し、いずれもダイヤル、ケース、ブレスレットに至るまで全面ブリリアントカットのダイヤモンドを敷き詰めた個体が存在する。
エメラルドを用いたモデルは極めて稀少だが、まったく存在しないわけではない。
ロレックスは、デイデイト40のようなモデルに台形カットのエメラルドを配し、バゲットダイヤモンドとエメラルドのインデックス、そして全面ダイヤパヴェダイヤルを組み合わせた特別仕様をつくり上げてきた。

▲ ベゼルをぐるりと囲むように、60石のトラペーズカット・サファイアとダイヤモンドが敷き詰められている。
繊細なタッチを要する宝石セッティングの工程では、ジェムセッターは、時計の美観を形づくるデザイナー、そして石の配置に最適な構造を検討するケースおよびブレスレットのエンジニアたちと綿密に連携する。
ロレックスの宝石セッティングがどれほど精緻であるかは、ブレスレットの隅々まで宝石が隙間なく収められている様子、あるいはベゼル上の宝石が一糸乱れず並んでいる様子を見れば明らかだ。
これは、ジェムセッター、デザイナー、エンジニアが一体となって、それぞれの宝石を確実に固定するために必要な金属量を百分の二ミリ(0.02mm)以内で割り出しているためである。これは人間の髪の毛の太さの約4分の1という、驚異的な精度だ。
特定の宝石をどこに据えるかが決まると、ジェムセッターはその石を慎重にピックアップし、所定の位置に置き、周囲の金属をそっと押し寄せることで固定していく。
ジュエリー製作と同じ作業であり、工具の選択、適切な角度での操作、そして必要なだけの力を加える精度が職人の腕の見せどころである。この工程を、リファレンスによっては3,000回近く繰り返すこともあるのだ。
極めて感覚的で、職人の手の感覚こそが時計に命を吹き込む。仕上げとして、石留めの爪などの金属部分を丁寧に磨き上げ、時計の輝きをいっそう高めていく。

▲ クラシックなプレジデントブレスレットを彩る、フローレス・ダイヤモンドと完璧な宝石セッティング。
ロレックスが好んで用いる代表的な石留め技法のひとつが“ビードセッティング”で、パヴェ状に敷き詰められた面に多用される。この手法では、ブリリアントカットのラウンドダイヤモンドを使用し、3〜5つの小さなビーズ状の地金の爪でしっかりと固定する。
構造としては爪留め(クラウン・セッティング)に似ているが、爪留めはより大きな石に適しており、爪が長く、石が広く露出するのが特徴である。
またロレックスは、クローズドセッティング(石の周囲を完全に囲う)をダイヤモンドのインデックスに多用する。またチャネルセッティング(溝に宝石を一列に並べる)やバゲットセッティング(長方形にカットされた宝石を並べる)も採用している。
これらは、バゲットカットあるいはトラペーズカットの石と相性がよく、宝石を金属の溝に横一列に隙間なく並べるという壮麗な手法で、石の上下だけを固定するため、宝石同士の間に金属が見えず、純粋な光のラインが強調される。
科学と芸術が等しく織り込まれたロレックスの宝飾モデルは、どこにあっても視線をさらってしまう。その理由は、製作工程のすべてに息づく職人技と精密さが、圧倒的な輝きと存在感となって現れるからである。
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