Revolutionのファウンダーにして、時計評論の第一人者でもあるウエイ・コーが、時計メディアの創成期から、高級時計ブームの到来、そしてこれからの時計業界につい
Long Live the Watch Nerds
Revolutionは何を目指すのか? 再び、“ナードたちのテーブル”へ
Revolutionのファウンダーにして、時計評論の第一人者でもあるウエイ・コーが、時計メディアの創成期から、高級時計ブームの到来、そしてこれからの時計業界について熱く語る。
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by Wei Koh . Dec 24, 2025 |
創刊20周年に思うこと
20周年を迎えたことで、私はRevolutionがこれから何を目指すべきか、あらためて考えるようになった。20年前、本誌は、内輪だけで盛り上がる趣味の世界から時計を連れ出し、もっと広い舞台へと紹介するために生まれた。
いわば“ナード(ある分野に強い興味や知識を持ち、深くのめり込んでいる人)たちのテーブル”から“クールキッズのテーブル”へ。ただしその際も、時計としての本質や技術的な正確さは決して失わない、という思いを大切にしてきた。
そして今、私はもう一度ナードたちのテーブルに戻りたいと思っている。
なぜなら、この20年で時計は大きく変わったからだ。ウォッチ・ライフスタイルという分野は急速に広がり、時計はすっかりポピュラーカルチャーの一部になった。
レッドカーペットでも、スポーツの大舞台でも、音楽イベントでも、時計は注目される存在だ。スイス時計の対米輸出額がわずか数年で大きく伸びたことからも、高級時計産業の商業的な成長は明らかだ。
その流れの中で、Revolutionも、時計の魅力を広める小さな役割を果たせたのではないかと自負している。しかし、だからこそ今、原点に戻るべきだと感じている。ライフスタイルや意見中心の記事は、世界中のソーシャルメディアで発信する新しい世代のインフルエンサーたちに任せればいい。
私たちはもう一度、時計そのものに向き合いたい。仕組みの面白さや歴史の深さ、そしてそこに込められた思想を丁寧に伝える場所でありたい。それこそが、これからのRevolutionの役割だと思っている。

▲ ブレゲの最新技術を惜しみなく投入した〈エクスペリメンタル 1〉
時計製作とは、長く続くひとつの壁
この1年、私たちは自らが最も愛するもの―オート・オルロジュリーへと、あらためてフォーカスを戻してきた。では、それをどのように定義すべきか。
ここで、友人フランソワ=ポール・ジュルヌの言葉を引用したい。
「時計製作とは、長く続くひとつの壁のようなもの。それに携わるすべての人が、その物語にレンガをひとつ積み重ねていくのだ」
すなわち重要なのは、時計製作という大きな流れの中に、意味のある一石を加えることである。ただ新奇であるだけでは足りない。その歴史と進化の物語を、わずかでも前へ進めることこそが貢献なのである。
その好例のひとつが、ロレックスの〈ランドドゥエラー〉である。搭載された新しい高振動脱進機は、1999年にオメガがジョージ・ダニエルズのコーアクシャル脱進機を実用化して以来、久方ぶりに登場した“まったく新しいスイス製脱進機”と呼ぶにふさわしい存在である。
このような挑戦こそが、時計製作という長大な壁に新たな一個のレンガを積み上げる行為なのである。

▲ アイスブルー、ハニカムモチーフダイアルを備えたプラチナ製「ロレックス ランドドゥエラー 40」
オート・オルロジュリーとは、時計製作の可能性を、表現豊かな方法で押し広げることである。そしてこの10年、その挑戦をこれほど見事に成し遂げてきたブランドは、ヴァシュロン・コンスタンタンをおいて他に多くはない。
2015年には、当時世界で最も複雑な時計であったRef.57260を発表し、グレゴリオ暦とヘブライ暦という異なる暦体系をひとつに統合した。さらに昨年は、57260の記録を更新する〈ザ・バークレー〉を世に送り出し、グレゴリオ暦と中国暦という、一見すると両立し得ない暦を調和させてみせた。
そして2025年には、〈ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション〉を発表した。これは世界で最も複雑な腕時計であり、夜空に天体が現れる時を予測するためのスプリットセコンド・クロノグラフを備える。また、〈ラ・ケットゥ・デュ・タン〉では、人形オートマタが時を告げる、唯一無二の芸術作品を生み出した。
これらはまさにヘラクレス的とも言うべき偉業である。ヴァシュロン・コンスタンタンの並外れた努力と情熱は、時計製作という壮大で、今なお進化を続ける物語に大きな一石を投じた。惜しみない拍手が贈られるべきだろう。

▲ 2015年、創業260周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタンは、57の複雑機構、2,826点の個別部品、そして10件の特許を備えたリファレンス57260を発表した。

▲ ヴァシュロン・コンスタンタン レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション(©Revolution)
新旧ブランドの新しい挑戦
オーデマ ピゲもまた同様である。2023年に発表された傑作RD#4は、グランドソヌリおよびプティソヌリ、スプリットセコンド・クロノグラフ、パーペチュアルカレンダーを備えた初のウルトラ・コンプリケーションでありながら、操作は驚くほど確実で扱いやすいものだった。
その流れはキャリバー7138へと受け継がれる。これは、同様に直感的で、堅牢かつ安心して扱えるパーペチュアルカレンダーである。
さらにRD#5によって、彼らは時計製作の物語に新たな章を加えた。RD#5はクロノグラフを根本から再設計し、ムーブメント自体の動力を利用してリセット機構を作動させている。
クロノグラフの針を一斉にリセットする際、通常はスプリングジャンパーによって消費され、失われていたエネルギーを回収し、活用するのだ。私はその“無駄”とされてきたエネルギーに光を当て、意味を見いだそうとした姿勢こそが、この機構を興味深いものにしていると考える。

▲ 左:CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル (RD#4) 右:オーデマ ピゲ ロイヤル オーク エクストラ シン フライング トゥールビヨン クロノグラフ(RD#5)
驚くべきことに、中国本土のブランド、ファム・アル・ハットも高級時計の世界における新たな主役となった。想像し得る限り最も小さく、最も装着しやすいサイズに収められたバイアクシス・トゥールビヨンは、まったく新しい風をオート・オルロジュリーにもたらしたのである。

▲ ファム・アル・ハット メビウス マーク ネビュラ リミテッドエディション(©Revolution)
近年、巨大化し、投機的となりすぎた二次マーケットの熱狂は冷めつつある。そして本格的な高級時計製作が再び戻ってきた。
いま世界は、知識に基づく時計収集へとあらためて目を向け始めている。それは実に喜ばしいことだ。真のコレクターたちが、本当に意味のあるタイムピースを、自ら理解して選ぶ時代がきているのだ。

▲ 2025年におけるオート・オルロジュリーの傑作のひとつ、ブランパン グランド ダブル ソヌリ。
本当の時計の魔法が宿る場所
オート・オルロジュリーについて書き、語ることは簡単だろうか? 正直に言えば、決して容易ではない。だが、だからこそ私たちはそれを愛しているのである。
なぜなら、最も理解しにくい領域、その境界線にこそ時計の魔法が宿るからだ。人間が想像力と勇気をもって挑み、時計製作において最も意味のある仕事を生み出している場所がそこにある。
Revolutionは、その世界を情熱と楽しさ、そして時計への愛をもって届けるために存在している。
私たちは、長尺で、徹底的にリサーチされた技術的かつ図解的な映像コンテンツに力を注ぎ、意識的にライフスタイル・ジャーナリズムから距離を置いてきた。その結果、YouTubeの登録者数は25万人を超えた。これは“ナードたちのテーブル”が、実は強い影響力を持つ場所であることを示している。
そしてもしかすると、知識こそが正義である趣味の世界においては、最初からそこが“本当のクールキッズのテーブル”だったのかもしれない。
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