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科学者からブランド創業者へ、A・バデールが語るアコール

Interviews

2025年にジュネーブで誕生したアコールは、薬学博士という異色の経歴を持つアニッサ・バデールが創設したインディペンデントブランドだ。浮遊するような文字盤と自社

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The Vision Behind AKHOR——Anissa Bader Interview

科学者からブランド創業者へ、A・バデールが語るアコール

2025年にジュネーブで誕生したアコールは、薬学博士という異色の経歴を持つアニッサ・バデールが創設したインディペンデントブランドだ。浮遊するような文字盤と自社開発ムーブメントAK10を特徴とするデビュー作は、ジュネーブ・シールやCOSC認定などを取得し、大きな注目を集めた。科学と機械芸術の融合を掲げる彼女に、ブランドの哲学と未来を語ってもらった。

by Revolution Japan . June 23,2026

2025年にジュネーブで誕生したアコールは、インディペンデント・ウォッチメイキングの世界に新たな視点をもたらした。創業者兼CEOのアニッサ・バデールは、薬学博士として科学の世界でキャリアを築いた異色の経歴を持つ人物だ。彼女は、科学が求める厳密さと精密さ、そして時計製造が持つ機械芸術としての美しさを融合させるべく、このプロジェクトを立ち上げた。

 ブランド名の“アコール(AKHOR)”は、古代エジプト語で“不滅”を意味する“Akh”と、フランス語で“金”を意味する“Or”を組み合わせたものだ。そこには、世代を超えて受け継がれる価値と、高級時計製造への敬意が込められている。

 宙に浮かんでいるかのような独創的な文字盤と自社開発ムーブメントAK10を備え、ジュネーブ・シール、COSC認定、さらにはジュネーブ天文台認証まで取得するなど、新興ブランドとは思えないほど高い技術水準を示している。

 今回、Revolution Japanはアニッサ・バデールにインタビューを実施。科学者から時計ブランド創業者へと転身した理由、アコールが掲げる哲学、そして日本市場への期待について話を伺った。

新作〈ヌール ラ ルミエール〉 アラビア語で“光”を意味する“ヌール”の名を冠したアコールの最新作。

——科学者としてのキャリアをお持ちですが、なぜ時計ブランドを立ち上げようと思ったのですか?

「私は薬剤師として教育を受け、薬学博士号(PhD)を取得しています。科学の世界で培ったのは、厳密さ、精密さ、そして絶え間ない卓越性への追求です。しかし私は以前からマイクロメカニクスや時計の世界に魅了されていました。時計製造は科学と多くの価値観を共有しています。研究の世界ではナノメートル単位で作業し、高級時計ではミクロン単位で語られます。どちらの世界でも、わずかな差異が極めて重要です。ブランドを創設したのは、私の二つの情熱——科学と機械芸術——を融合させるためでした。アコールはまさに、この二つの情熱が出会う場所なのです。

——アコール(AKHOR)という名前には“不滅”と“黄金”という意味が込められているそうですが、その由来を教えてください。

「その通りです。アコールという名前は深い考察の末に生まれました。私たちは古代文明、とりわけ時間、永遠性、そして継承という概念に強い関心を持っていたエジプト文明とのつながりを表現したいと考えました。“Akh”は不滅性や永続性を意味します。私たちにとってそれは、世代を超えて受け継がれるメゾンを築くという意思の象徴です。Akhを含めたブランド名にある“H”にはもう一つの意味が込められており“Haute Horlogerie(高級時計製造)”への敬意を表します。“or”は金という貴金属だけでなく、高貴さ、卓越性、希少性という価値観も意味しています。実際には何一つ偶然ではありません。ブランド名そのものが時計と同じレベルの厳格さで設計されています。時計ムーブメントの各部品が明確な役割を持つように、アコールという名前のすべての要素にも意味があり、物語があります」

〈ヌール ラ ルミエール〉では特許取得済みの2層構造の浮遊ダイヤルにもう一枚、24時間で一周する大型デイ/ナイトディスクを配置されている。手彫りの砂丘や月、星々、そして職人によるラクダのミニチュアペインティングが、刻々と移ろう砂漠の風景を詩的に表現する。

 ——浮遊する文字盤のアイデアはどこから生まれたのですか?

「浮遊ダイヤルの発想は、“時間”を単なる機械的表示ではなく、生きて動いている概念として表現したいという私自身の思いから生まれました。私は、ダイヤルの要素が空間に浮かんでいるかのような軽やかさと奥行きを生み出したいと考えました。そして同時に、時計業界に新しいアイデアを提案したかったのです。この構造によりムーブメントの一部をさりげなく見せることも可能になり、技術と美しさの対話が生まれます。機械構造を演出しながらも、視認性の純粋さを保つ方法なのです。

——現代の高級時計業界において、アコールの独自性は何だと考えていますか?

「アコールは妥協なく誕生しました。初のモデルから自社製ムーブメントAK10を開発し、品質と仕上げにおいて最高峰を目指しました。私たちの独自性は、科学的アプローチ、芸術的ビジョン、そして絶対的な職人技へのこだわりを融合させている点にあります。私たちは美しい時計を作るだけではありません。魂を持ち、物語を語り、哲学を体現する作品を生み出したいのです。その哲学とは、“時間と空間の調和”です。目に見える部分も見えない部分も、同じレベルの厳格さで作り込まれています」

ジュネーブ・シール、COSC認定、ジュネーブ天文台認証まで獲得した自社製ムーブメントAK10

——なぜ最初のモデルから自社製ムーブメントAK10を開発したのですか?

「ムーブメントは時計の心臓です。私たちの高級時計に対するビジョンを完全に表現するためには、自社ムーブメントの開発が不可欠でした。AK10を初モデルから開発することは大きな挑戦でしたが、同時に自然な選択でもありました。既存ムーブメントに制約されることなく、構造、美観、性能を完全にコントロールできたからです。AK10は、独立性、妥協なき品質追求、細部への徹底したこだわりというアコールのアイデンティティそのものです」

——ジュネーブ・シールとCOSCの両方を取得することは容易ではありません。なぜそこまで高い基準にこだわったのですか?  

「卓越性は宣言するものではなく、証明するものだからです。ジュネーブシールは製造品質、組立、仕上げの卓越性を保証し、COSCはムーブメントの精度を保証します。さらに私たちはジュネーブ天文台の認証も取得しています。これはムーブメントだけでなく、完成た時計全体の計時性能を評価する認証です。私たちは最初の作品からこれらすべての認証を取得することで、明確な意思を示したかったのです。それは、美しさ、技術力、性能が不可分である妥協なき高級時計を提供するということです。また、将来のお客様やコレクターに対する敬意でもあります。彼らには世界最高水準を満たす時計を手にしているという確信を持っていただきたいのです」

美しく面取りされたブリッジに刻印されたジュネーブシール。スイス・ジュネーブ州が制定した、高級時計に与えられる最高品質認証である。

——新しい高級時計ブランドを立ち上げる際の最大の課題は何ですか?

「最大の課題は、まず時計業界から、そしてその後、お客様やコレクターから信頼と信用を獲得することです。高級時計の世界では歴史と伝統が非常に重要な意味を持っています。

若いブランドは、作品の品質、ビジョンの一貫性、そして約束を守る能力によって正当性を証明しなければなりません。長く続くブランドを築くためには、多くの忍耐、粘り強さ、そして絶え間ない高い基準が必要です」

——あなたが競合として意識しているブランドはありますか?

「私は競合というより“参考となるブランド”と表現したいですね。高級時計の歴史を築き上げ、卓越した職人技を守り続けてきた偉大なメゾンには深い敬意を抱いています。しかしアコールは既存モデルを模倣することを目指していません。私の科学者としての経験と、技術を感動のために活かすという非常に個人的な時計観から生まれた、新しいビジョンを提案したいと考えています」

〈ヌール ラ ルミエール〉の文字盤は精緻な手作業によるエングレービングとミニチュアールペインティングにて制作される。

——日本市場についてどのように考えていますか?

「日本市場は私たちにとって特別な存在です。日本のコレクターは時計文化への深い理解、細部へのこだわり、そして職人技への深い敬意で知られています。彼らは本物であること、精密さ、そして完璧さへの追求を評価する愛好家です。これらの価値観はアコールのDNAと完全に一致しています。私たちは対話、信頼、そして卓越性への共通の情熱を基盤とした長期的な関係を築いていきたいと考えています」

——10年後のアコールをどのように描いていますか?

「私はアコールが、独立性を保ちながら確固たる地位を築き、その独自のアイデンティティと妥協なき品質で認知されるブランドになっている姿を思い描いています。そして、革新性、精密さ、卓越した職人技、そして継承という創業時の価値観を守り続けていてほしいと思います。10年後には、すべてのアコールのウォッチが時代を超越した作品として認識され、世代を超えて受け継がれながらも、その感情的価値と唯一無二の個性を保っていてほしい。私たちの目標は生産量を増やすことではありません。時間の中に確かな足跡を残す、希少で永続的な作品を創り続けることです」

新作〈ヌール ラ ルミエール〉

ケースは40mm径の18K5Nレッドゴールドまたはプラチナ製で、ベゼルには120石、計4.85カラットのバゲットカットダイヤモンドをセット。手巻きキャリバーAK10は約60時間のパワーリザーブを備え、ジュネーブ・シールとCOSC認定、ジュネーブ天文台クロノメーター認定を取得する。各モデル世界限定10本。

CHF 198,000(18K レッドゴールドモデル) CHF 208,000(プラチナモデル)

Brands;Akhor

Brand:Tiffany