自動巻き機構について、あらためて深く考えたことはあるだろうか。トゥールビヨンや永久カレンダーのような華やかな複雑機構に比べれば目立たない存在だが、その裏には時計師たちが長年に
A Guide to the Automatic Winding System
当たり前のすごさ、“自動巻き機構”を完全理解する
自動巻き機構について、あらためて深く考えたことはあるだろうか。トゥールビヨンや永久カレンダーのような華やかな複雑機構に比べれば目立たない存在だが、その裏には時計師たちが長年にわたり積み重ねてきた工夫と英知が凝縮されているのだ。
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by Ashton Tracy. May 29, 2025 |
自動巻きとはどういう仕組みなのか?
今日、私たちは自動巻き時計を当たり前として受け入れている。正確なデータを取ったわけではないが、自動巻き時計の販売数は、手巻き時計を大きく上回っているだろう。
実は歯車列、ブリッジ、そして自動巻きローターから構成される自動巻き機構は、本来の定義では“コンプリケーション(複雑機構)”には分類されない。コンプリケーションとは、時・分・秒以外の表示機能を持つものを指すからだ。
それでもなお、自動巻きは複雑機構として扱われる。この定義から外れるのは、トゥールビヨンと自動巻きのふたつだけである。
世の中の大半の機械式時計が自動巻きであるにもかかわらず、私たちはその仕組みがどうなっているのかを、立ち止まって考えることは少ない。
時計が作動するためにはエネルギーが必要であり、その源となるのは、着用者であるあなた自身だ。手巻き式の時計では、リューズを巻くことで、その動作のエネルギーがゼンマイへと伝えられる。
ゼンマイは“香箱芯(バレルアーバー)”と呼ばれる軸のまわりにきつく巻き付けられ、十分に巻き締まると、自然とほどけようとする力が生まれる。このほどける力が歯車列を順に伝わり、時計が時を刻み始めるのである。
自動巻き時計も、基本的なエネルギー伝達は手巻き時計と変わらない。ただし、エネルギーを蓄える方法がもうひとつ用意されている。それが、時計内部に搭載された自由回転式の重り――“ローター”と呼ばれる部品だ。

▲ 半月形のローターを備えたロレックスの自動巻きムーブメント。
では、この自動巻きローターはどのようにして目的を果たすのだろうか。着用者が日常の動作で腕を動かすたびに、ローターは重力と自身の慣性を利用して、まるで遊園地のメリーゴーラウンドのように軽やかに回転する。
その回転に合わせて自動巻き機構が作動し、ローターが1周するごとにゼンマイがわずかに巻き締められていく。その結果、リューズを操作することなく、時計は自律的に駆動を続けることができる。
なお、ほとんどの自動巻きムーブメントは手巻きにも対応しており、パワーリザーブが完全に切れてしまった場合には、手巻きで始動のためのエネルギーを与えるべきである。自動巻き機構はあくまで動作中のゼンマイを保持・補強するためであり、完全に停止した状態からの立ち上げは手で巻いた方がよい
手巻き式ムーブメントも自動巻き式ムーブメントも、基本構造はよく似ている。しかし決定的に異なるのが 香箱(バレル)とゼンマイ(メインスプリング)の構造である。
ゼンマイ(メインスプリング)の構造
「時計を巻きすぎて壊してしまった」という話を耳にしたことがあるだろう。
だが実のところ、その心配はほぼ杞憂である——少なくとも自動巻き時計に関しては。理由を説明しよう。
手巻き式の時計は、ゼンマイが完全に巻き締まると“巻き止まり”に達し、
それ以上はリューズを回せなくなる。ゼンマイが最大張力に達した状態で、それ以上力を加えれば、理論上はゼンマイが折れる可能性もある。しかし、それにはポパイ級の前腕力が必要で、実際にはほとんど起こらない。
一方、自動巻き時計では、いくら巻き続けてもゼンマイが破損することはない。その理由は、現代の自動巻き用ゼンマイが、手巻き用とは異なる構造を持つためだ。
自動巻き式のゼンマイは外端が特殊な形状になっており、“スリッピング・ブライドル”と呼ばれる機構がついている。ゼンマイ外端の一部が逆方向に反らされており、これによって香箱内壁に程よい摩擦でつかまりながら、一定以上の力がかかると滑って逃げるのである。
香箱(メインスプリングバレル)の構造
自動巻き用と手巻き用の香箱は、外見だけ見ればよく似ている。しかし重要なのは、その内側の構造だ。どちらの香箱にも、ゼンマイがきつく巻かれた状態で収められ、ゆっくりとほどける力によって時計を駆動する点は同じである。
手巻き式の香箱には、香箱の内壁に小さな“フックがついており、ゼンマイの外端がそこに引っかかることで、ゼンマイが最大まで巻き上げられると、それ以上は巻けないようになっている。
これに対して、自動巻き用のゼンマイはまったく異なる設計だ。前述のように外端が反り返った形状になっており、香箱に組み込まれると、その部分が香箱の内壁に強く押し付けられる。この摩擦によってゼンマイは香箱内壁をしっかりと「つかむ」ため、手巻き式のようなフックは不要となる。
この摩擦の力によって、自動巻きゼンマイは最大張力まで巻かれる。そして、それを超えるエネルギーが加わった場合には、スライディング・ブライドルが一時的に内壁のグリップを失い、ゼンマイが香箱内壁を滑ることで力を逃がす。
張力が平衡状態に戻ると再びグリップが回復し、安全に巻き上げを続けることができるのだ。
これら二つの要素が調和して働くことで、自動巻き時計は、どれだけ巻き続けてもゼンマイに負担を与えることなく、安全に巻き上げられるようになっている。

▲ スプリングの先にはスライディング・ブライドルがついており、巻き過ぎの力を逃がしている。
ハーウッドによる自動巻き
腕時計が誕生したのは20世紀初頭のことだ。ポケットから取り出す必要のない、その便利さが一般に認識され始めたのだ。
ロレックスが自社の腕時計をキュー天文台に持ち込み、腕時計として初めてクラスA精度証明を取得したことで、精度に対する不安もなくなり、腕時計の需要は一気に高まった。
1930年代には、腕時計の販売本数は懐中時計を上回り、その人気はさらに加速していった。この時期に市場にあった腕時計はすべて手巻き式であった。しかし、その状況は大きく変わろうとしていた。
近代的な自動巻き腕時計が姿を現したのは、1926年のバーゼルフェアでのことだった。そこで発表されたのがハーウッド(Harwood)の自動巻き時計である。英国の時計師ジョン・ハーウッドは、フォルティス社と提携し、今日“バンパー式”として知られる新しい自動巻きムーブメントを開発した。この方式は後にオメガなどによって広く普及していくことになる。
もちろん、ハーウッドが“世界初の自動巻き”を発明したわけではない。すでに18世紀には、ペルレやブレゲをはじめ多くの時計師が自動巻き機構の研究や試作を行っていた。しかし、自動巻きの腕時計を量産し、近代市場に本格的に投入したのはハーウッドが初めてだった。

▲ 世界で初めて量産された“腕時計用”自動巻きムーブメントは、英国人時計師ジョン・ハーウッドが開発したもので、1923年に特許を取得している。一方向巻き上げ式が採用され、ムーブメント中央に取り付けられた重り(ウエイト)が約130度の範囲を往復運動することでゼンマイを巻き上げる仕組みだった。重りの両端には“バンパー”と呼ばれるストッパーが設けられており、その範囲を超えないように制限されていた (Image: The British Museum)
ハーウッドの自動巻きムーブメントは、現代の自動巻き時計のように360度回転するローターを備えていたわけではない。代わりに、約130度の弧を往復する“限定された可動域を持つ重り”を採用していた。巻き上げも一方向のみで行われた。この重りが可動範囲の端に達すると、内部に組み込まれたスプリング式バッファーによって“バンッ”と跳ね返される構造になっていた。
まるで子どもの頃、遊園地のバンパーカー(ぶつかり合いカート)で、友だちのクルマに後ろから勢いよくぶつけたようなイメージだ。
残念ながら、ハーウッドの会社はわずか数年で経営破綻してしまう。しかしそこへ、新たな強力なプレイヤーが登場する―ロレックスである。
〈オイスター パーペチュアル〉の登場
1931年、ロレックスは湿気や埃を遮断することで知られた初代オイスターケースの成功に続き、もうひとつの大きな節目となるモデル――〈オイスター パーペチュアル〉を発表した。
このモデルに搭載されたムーブメントは、ハーウッド方式とは異なる自動巻き機構を備えていた。その最大の特徴は、ムーブメント中央の自動巻きローターが途切れることなく360度回転するという点である。
このムーブメントでは、ローターからゼンマイへと力を伝達するために、香箱の上に複雑で大型のギアトレインが配置されていた。もっとも、初期のロレックス自動巻きムーブメントは、ハーウッド式と同じく、一方向巻き上げだった。

▲ ロレックスは1931年に〈オイスター パーペチュアル〉を発表した。このとき開発されたキャリバー620は、ローターの動きが制限されることなく、完全な360度回転が可能になった初のムーブメントであった。
ホイール&ピニオン・カップリング方式
現代の自動巻き時計の大半は、双方向巻き上げを採用している。これは“リバーサー(reverser)”と呼ばれる巧妙な機構によって実現されている。
ローターがどちらの向きに回転しても、このリバーサーがゼンマイを確実に巻き上げる。
その方式にはいくつかの種類があるが、もっとも一般的なのが“ホイール&ピニオン・カップリング(リバーシング ホイール)方式”と“爪レバー方式”の二つだ。
1950年、ロレックスは中央にローターを配した自動巻き機構を備えたキャリバー1030を発表した。このムーブメントは、従来のように香箱の上に歯車列を積み重ねるのではなく、自動巻き機構の中に二つのホイール&ピニオンを組み込んだ点が特徴であった。ロレックスはこの機構を“リバーシングホイール(切替車)”と呼んでいる。

▲ 元の特許図面から引用した模式図。振り子状に動く回転錘は、ピニオンを介してリバーシングホイールと噛み合っており、その動力がさらに別のリバーシングホイールへと伝達される。このカップリングによって、それぞれの車は一定方向のみに回転するよう制御されている。
これはロレックスのいわゆる“レッドホイール”と呼ばれるリバーシングホイールだ。1952年から現在に至るまで使用されており、ロレックス自動巻き機構の象徴的存在となっている。
ここでは現行のロレックスが採用するホイール&ピニオン複合型のリバーシングホイールを例にとって、その仕組みを解説する(ただし、ブランドやムーブメントによって細部の構造にはさまざまな違いがある)
ホイール&ピニオン・カップリングは、主に次の3つの要素から構成される。
ホイール(wheel):外周に歯を持つ歯車
ピニオン(pinion):2段の歯を持つ小歯車
爪(pawls):両端にフック状の爪を備えた部品
これら3つが組み合わさることで、”リバーシングホイール” が形成されるのである。

▲ ロレックスを象徴するリバーシングホイール。
複数のホイール&ピニオン複合ユニットを直列に配置することで、ロレックスは双方向巻き上げを実現した。これは当時としては大きな進歩であった。
ローターには歯を持つピニオンが取り付けられており、これが動力伝達の起点となる。このピニオンは、まず最初のリバーシングホイールのホイールとかみ合い、さらにそのホイールが第二のリバーシングホイールと連動する。ローターが回転すると、それに伴ってこれらの歯車も動かされる。
しかし、隣り合う歯車が回転すると、互いに逆方向へ回ってしまうという問題が生じる。ゼンマイは一方向にしか巻けないため、このままでは巻き上げが成立しない。そこで重要な役割を担うのが“ピニオン”と“爪(pawls)”である。
ローターがある方向に回転した場合、第一のリバーシングホイールに内蔵されたピニオンは、爪によってロックされ、ホイールと同じ向きに回る。これによりピニオンが補助歯車を回転させ、ゼンマイを巻き上げる。
一方で、第二のリバーシングホイールのピニオンはロックされず、ホイールと逆方向に回るため巻き上げには寄与しない。このとき爪は歯を滑るように通過し、次の動作に備えるだけだ。
ローターの回転方向が逆になると、役割が入れ替わり、今度は第二のリバーシングホイールが巻き上げ側として作動する。その結果、ローターがどちらに回ってもゼンマイは巻き上がる仕組みとなっている。
ホイール&ピニオン・カップリング方式は非常に優れたシステムで、現在でも自動巻き機構の主流である。とはいえ欠点がないわけではない。構造が複雑で、部品に求められる精度は高く、安定した作動には潤滑油が欠かせないのだ。
爪レバー方式
自動巻き機構における爪レバー(Pawl Lever)方式 は、構造がきわめてシンプルでありながら、非常に高い効率を誇る。中央に取り付けられた自動巻きローターを用いる点は他方式と同じだが、ホイール&ピニオン方式のような大掛かりな歯車列を必要としない。
巻き上げ車ひとつと爪レバーだけで動作するほど単純な構造である。爪レバーは先端に小さなフック状の爪を備えた2本のアームから成り立っている。ローターの動きに合わせて、このアームが巻き上げ車の歯を“押す”あるいは“引く”ことで車を回転させ、ゼンマイを巻き上げる仕組みである。
IWCは1950年、技術部長であったアルバート・ペラトンが長年にわたり開発を続けてきた爪レバー式自動巻き機構を初めて腕時計に採用したメーカーである。


▲ 自動巻きローターの中心には、固定された ハート形のカム 1.が配置されている。そのカムの両側をまたぐように爪レバー2.が置かれ、ローターが回転すると、カムの偏心形状によって爪レバーの両腕3.が前後に揺動させられる。ローターが時計回りに回転すると、アームの先端にあるフック(爪)が歯を“つかみ”、巻き上げ車4.を後方へ引くように動かす。その一方で、もう片方のアームの先端は歯の上を滑るだけで、巻き上げには関与しない。ローターが反時計回りに回転すると、今度はアームの役割が入れ替わり、片方が巻き上げ、片方は滑走となる。そのたびにゼンマイはわずかずつ巻き締められていく。
セイコーが初めて自動巻きムーブメントを世に出したのは1956年だが、真の自動巻き革命が起きたのは1959年のことだった。この年、セイコーは初のマジックレバー搭載時計〈ジャイロマーベル〉を世に送り出したのである。
マジックレバーは、IWCのペラトン方式を基礎としながら、セイコー独自の工夫によって より簡潔で効率の高い構造に仕上げられている。具体的には、爪レバーをローター自体に直接取り付けることで、構造を大幅に簡素化したのだ。
その形状は、Y字型のウィッシュボーン(鳥の叉骨)のようで、ローター中央のオフセットされた小さなピンに取り付けられている。ローターが回転するたびに、このマジックレバーのアームが左右に揺動し、巻き上げ車を効率的に駆動する。

▲ マジックレバーは、最小限の部品で最大の効率を引き出す。きわめてシンプルでありながら巧妙な双方向巻き上げ機構 である。
ローターが一方向に回転すると、1本目のアームが歯をつかんで巻き上げ車を後方へ引き、そのあいだ 2本目のアームは歯の上をただ滑るだけで、巻き上げには関与しない。これはペラトン方式と同様の動きだ。
しかし、ローターが逆方向に回転すると、状況は一変する。今度は2本目のアームが巻き上げ車を押す側に回り、前方へ押し進めることで巻き上げを行う。この構造により、マジックレバーは極めて単純で効率の高い機構となっている。
わずか 3つの主要パーツ だけで自動巻きが成立する――まさにマジックと呼ぶにふさわしい設計である。
このシステムは非常にシンプルで故障のリスクも少ない。その効率の高さゆえ、セイコーは多くのモデルで手巻き機能そのものを省略してしまったほどだ。実際、時計を1分ほど軽く振るだけで着用可能な状態まで巻き上がるため、自動巻きだけで十分だったのである。
片方向巻き上げは不利?
双方向巻き上げのほうが片方向巻き上げより優れている――そう考えるのは自然だが、必ずしもそうとは限らない。片方向巻き上げについて行われた数々のテストでは、むしろその利点が示されている。
実験結果によれば、時計を日常的に着用している場合、ゼンマイは常に十分に巻き上がった状態を保っている。つまり、片方向巻き上げであっても時計を動かし続けるには必要十分だということだ。ここから分かるのは、多ければ良いとは限らないというシンプルな真理である。
たとえば、ETA 7750は単一のホイール&ピニオン方式を採用し、片方向のみで巻き上げを行うが、このムーブメントを搭載した時計のオーナーで、「手巻きが必要で困る」などと不満を漏らす人に、私はこれまで一度も出会ったことがない。

▲ さまざまな時計に使われているETA 7750。
自動巻きのローターは、ゼンマイを効率よく巻き上げるために真鍮、金、プラチナ、タングステンカーバイドなど、比重の大きい金属で作られるのが一般的である。
現在もっとも広く採用されているのは、ムーブメントのほぼ半分を覆うサイズのセンターローター方式。ローターをムーブメント中央に据えるスタイルだが、近年はこれ以外にも多様な設計が存在している。
マイクロローターとは?
偏心式自動巻きウエイトは、ムーブメントの半分を覆う一般的なセンターローターとは異なり、小型で中心からオフセットされた位置に設置されている。
この方式は、かつてユニバーサル・ジュネーブやパテック フィリップ、そしてブライトリング、ホイヤー(キャリバー11/12)などが採用したことでよく知られ、現在では一般にマイクロローターの名で呼ばれている。

▲ ビューレン製のマイクロローター式自動巻きをベースにした、ホイヤーのキャリバー11。

▲ パテック フィリップの名作、マイクロローター自動巻きキャリバー240。
マイクロローターは非常にコンパクトで、その大きさはムーブメント全体の4分の1以下に収まるのが一般的である。面積が小さいため十分な重さを確保するべく、真鍮よりも比重の大きい金属が用いられる。
高密度ゆえ、マイクロローターは重力と慣性を効率よく利用してゼンマイを巻き上げる、繊細な自動巻き機構となっている。
マイクロローター方式の最大の利点は、ムーブメントを薄型化できる点にある。大型の自動巻き機構(センターローター)を地板の上に載せる必要がないため、複雑機でもケース厚を抑えた上品なプロポーションを実現できるのだ。

▲ ローラン・フェリエのマイクロローター。
ペリフェラル・ローター(周辺駆動ローター)
ペリフェラル(外周)自動巻きローターは、ムーブメントの外周部に沿って配置されるのが特徴である。通常の方式と同様、ゼンマイを巻き上げるために高比重のウエイトを用いる点は同じだが、ローターがムーブメントの外縁をぐるりと取り囲んでいる。
近年では、カール F. ブヘラがこの技術の発展を牽引している。ムーブメント全体の姿を遮ることなく鑑賞することができる。

▲カール F. ブヘラのムーブメントでは、ローターにタングステン製のウエイトを用い、それを外周のリング上に取り付けている。

▲ ヴァシュロン・コンスタンタンのキャリバー2160は、ゴールド製のペリフェラルローターとマジックレバー式の巻き上げ機構を組み合わせている。
ボールベアリング式とシャフト式
自動巻きローターは重量があるため、その回転部分はどうしても摩耗しやすい。そこでローターをスムーズに回転させるための方式として、主にボールベアリング式とシャフト式の2種類が用いられている。
どちらも基本的にはシンプルかつ信頼性の高い構造だが、従来のボールベアリングにはスチール製のボールが使われてきた。しかし近年では、より耐久性・耐摩耗性に優れたセラミックボールを採用するブランドも増えている。

▲ ロレックス3135(左)と3235(右)。どちらもボールベアリング式。
以前、私は「シャフト式のほうがボールベアリング式より好ましい」と述べたことがある。しかし、その考えは今では変わった。
数多くのボールベアリング式ローターを観察してきた結果、長年の使用に対しては、むしろボールベアリング式のほうがシャフト方式よりも優れた耐久性を示すことが分かったからである。
どの方式が優れているのか?
どの方式が最も優れていると断言するのは難しい。さまざまな自動巻き機構に触れてきた経験から、それぞれに長所と短所があることは明らかだ。しかし、あえて言うならこうだ。
セイコーのマジックレバーとボールベアリング式ローターの組み合わせは、何十年にもわたり一貫して高い信頼性と効率を示してきた。
一方で、ホイール&ピニオン方式は依然として業界の定番であり、多くのブランドが採用し続けている。
中でもロレックスは特筆すべき存在で、同社のリバーシングホイールは驚くほど耐久性が高く、トラブルも極めて少ない。長年の使用に耐える堅牢さは、他の方式を凌駕する部分さえある。
1926年のバーゼルフェアで近代的な自動巻き時計が登場して以来、自動巻き時計は大きな進歩を遂げてきた。だが同時に、根本的なメカニズムは当時から大きく変わっていないとも言える。
それこそが時計作りの魅力のひとつだ。私たちは再発明しているのではない。偉大な先人たちが築いた驚くべき機構を、より洗練し続けているだけなのだ。
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