アーティスト&コレクター、ウェス・ラングが、ヴィンテージ・ウォッチディーラーで、Menta Watchesを主宰するアダム・ゴールデンと対談。飛田直也プロデュースNAOYA HIDA WATCH &am
In Conversation With Adam Golden: Why Naoya Hida Is The Goat
ファンが熱く語る対談「なぜ飛田直也は“GOAT”なのか?」
アーティスト&コレクター、ウェス・ラングが、ヴィンテージ・ウォッチディーラーで、Menta Watchesを主宰するアダム・ゴールデンと対談。飛田直也プロデュースNAOYA HIDA WATCH & Co.の魅力、そしてネタ元となったヴィンテージの名作について語り合う。
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by Wes Lang . Nov 23, 2024 |
まず惚れたのは人柄から
ウェス・ラング(以下ラング):
「飛田直也氏のことを最初に知ったのは、たしか2018年頃だったと思います。まだブランドを正式に立ち上げる前で、オンラインの記事を読んだのがきっかけでした。当時、私は『GQ』でコラムを書いていて、時計を撮影用にお借りできないかと連絡を取ったのですが、彼の手元にはまだ試作機が一本しかなく、残念ながら貸し出しは叶いませんでした。それでも彼はとても丁寧に対応してくれました。そして2019年、彼がType 1Bで正式にブランドをローンチしたとき、共通の友人を通じて連絡を取り、7本のみ製作されたうちの1本を購入することができました。ちょうどその頃、Type 2Aも発表されたばかりで、もし可能であればそちらも手に入れたいと相談したところ、一本用意できるとのことだったので、結局2本同時に注文することになったのです」
アダム・ゴールデン(以下ゴールデン):
「私が彼とそのブランドを紹介されたのは、わずか2年前の夏のことです。2021年、日本を訪れていたときのことでした。共通の友人が「ウェスに紹介された時計師に会いに行くんだけど、一緒に来る?」と声をかけてくれたのです。もちろん、二つ返事で同行しました。実際に会った飛田さんは、想像以上に穏やかで気さくな人物でした。小さな工房で私たちを温かく迎え入れてくれたのです。私は、優れた技術を持ち、誠実で、本当に時計を愛している時計師を応援したいと思っています。彼はまさにそういう人物でした」

▲ アーティストのウェス・ラング(左)と、Menta Watches創業者アダム・ゴールデン(右)
ラング:「彼は本当に時計を愛している人です。そこに疑いの余地はありません」
ゴールデン:「初対面でこれほど誠実で、寛大で、自分の仕事に情熱を持っている方に出会ったことはありませんでした。彼はこれまでの歩みをすべて話してくれました。どのようにして現在の場所に辿り着いたのか、その歴史を丁寧に語ってくれたのです。本当に素晴らしい体験でした。彼は単に時計を作っているのではなく、“生き方”として時計と向き合っている人なのだと感じました」
ラング:「だからこそ、インターネットのコメント欄を見ると腹立たしく感じることがあります。彼のことを何も知らず、彼の時計を一度も手にしたこともない人が、価格の数字だけを見て、日本製だという理由だけで「値段に見合わない」と決めつけてしまうのです。別のものを選びたいのであれば、それは自由です。しかし、理解もしないまま断じるのは違うのではないでしょうか。ある時計に対して否定的なコメントが多くても、それでも自分が強く惹かれているのなら、それはむしろ正しい選択をしている証だと思います」
ゴールデン:「はは、まったくその通りです」

▲ 飛田直哉氏近影。
飛田直哉の時計の魅力
ラング:「私は、飛田さんがブランドをむやみに大きくしようとしていない点も好きです。現在はわずか三人体制ですが、彼はただ自分が心から愛する時計を作りたいだけなのです。それだけです。毎年春に一度だけ応募を受け付け、年末から翌年にかけて納品し、また翌年も同じように続けていく。ある年はまったく新しいモデルが登場し、ある年は既存モデルの新バージョンが発表される。そのリズムを大切にしているのです」
ゴールデン:「いま世の中にはいわゆる“マイクロブランド”が数多く存在します。ヴィンテージウォッチ、とりわけパテックやヴァシュロンなどを参照し、オマージュやほとんどコピーに近いものを作っているブランドも少なくありません。それはそれで構いませんが、私はあまり興味をそそられません。飛田さんの場合、インスピレーションの源は明確です。実際、東京でお会いした際に、パテックのRef.96とRef.570が特にお気に入りだと語っていました。しかし同時に、それらを単に模倣するのではなく、自分自身の解釈を入れて、まったく違うものを作り上げているのです」
ラング:「ええ、間違いなく飛田直哉さん自身の時計です。現代では毎日のように、ヴィンテージ風を謳う新しいブランドが登場しています。しかし、私はそういった時計を買うことはないでしょう。しかし、彼は自分自身のDNAを持つブランドを築いています。彼はF.P.ジュルヌ、ラルフ ローレン、エベル、ヴァシュロン・コンスタンタンなど、名だたるブランドで仕事をしてきました。30年以上にわたる時計業界でのキャリアを通して、自分自身のストーリーを物語っているのです」
ゴールデン:「その経歴を思うと、こうしてここに座り、これら4本を目の前にしていることがとても幸運に感じられます。あなたのコレクションにある4本について教えていただけますか?」
ラング:「私は、オリジナルデザインであるType 1B、センターセコンドのType 2A、ムーンフェイズのType 3A、そしてスチールとイエローゴールドのバイメタル仕様であるType 1Dを所有しています。最も着用しているのはType 1Dですね。ご覧の通り、ストラップがいちばん使い込まれています」

▲ 左から:NH TYPE 1B/NH TYPE 2A/NH TYPE 1D/NH TYPE 3A
使ってみて、オーナーとしての感想
ゴールデン:「それは見ればわかります。どんなところがそんなにお気に入りなのですか?」
ラング:「正直なところ、うまく言葉にするのは難しいですね。はっきりとはわからないのですが、いちばん最近手に入れた1本でもありますし、いまのところはこれがいちばんのお気に入りです」
ゴールデン:「4本を通して、いちばん好きなデザイン要素はどこでしょう?」
ラング:「実はそれぞれかなり異なっています。ケースは細かな調整こそありますが基本的には共通しています。ただ、Type 2のダイヤルと針の組み合わせはとても興味深いと思います。ダイヤルにはアプライドの外周リングが設けられていて、その構造に合わせるために針は特定の順序で積層される必要があります。とりわけセンターセコンドの収まり方は見事です。あれは素晴らしい設計だと思います」

▲ NH TYPE 2A ダイヤルは三層構造による立体的な設計となっている。アラビア数字のインデックスは熟練の職人によって手彫りで仕上げられ、「NAOYA HIDA & Co. TOKYO」のブランドロゴは、超高精度のマイクロマシニング機によって刻印される。それらの溝にはカシュー(合成漆)が流し込まれている。
ゴールデン:「本当にあの積層構造は見事ですね。ダイヤルはほとんどセクターダイヤルのようにも見えます」
ラング:「飛田さん自身もセクターダイヤルと呼んでいます。中央にメインのセクションがあり、その外側に一段高くなったアワー表示のセクション、さらに外周にはツートーンのミニッツトラックが配されています。本当に美しい構成です」
ゴールデン:「私は彼のサインの入れ方も好きですね。初めて見たとき、パテック フィリップのロングシグネチャーを思い出しました。かつて硬質エナメルを充填した彫り込みダイヤルで使われていたあの手法へのオマージュのようにも感じました。彼はそれを現代的に再解釈しています。これは他のブランドがあえて挑戦しようとしているのを見たことがありません」
ラング:「それに「TOKYO」と入っているのもいいですよね」
ゴールデン:「ええ、まさに。パテックのダイヤルに記された「Genève」へのもうひとつのオマージュですね。完璧です」
ランゲ:「バックルの裏に小さく刻まれた「NH」の彫りもいいんです。ほとんどブランドを主張していない、隅にほんの小さな「NH」があるだけ。その控えめさが好きです」
ゴールデン:「ダイヤルメイキングの作業工程も見せてもらいましたが、本当に手間がかかっています。細部のひとつひとつが厳密に設計され、ぴたりと収まらなければならないのです」
ランゲ:「だからこそ、どれがいちばん好きかを決めるのは難しいのです。それぞれに独自の魅力があります。とりわけType 3のムーンフェイズはいいですね。大きく誇張されたホースシュー型のムーンフェイズが印象的です」

▲ NH TYPE 3A ムーンフェイズディスクは18Kイエローゴールド製で、月と星々が職人の手によって彫刻されている。
ゴールデン:「しかも、あの月は少し“怒った顔”をしていますよね?」
ラング:「そうなんです。そこがまたいい。しかもムーンフェイズの操作がすべてリューズで完結するのも素晴らしい点です。実用的で、とても便利です」
ゴールデン:「これが彼にとって初めてのコンプリケーションでもありますよね。他にも計画はあるのでしょうか?」
ラング:「それはわかりません。彼はとても秘密主義ですし、私はその姿勢が好きです。時々、ブランドと会うと「これは内緒ですよ」と言いながら新作を見せてくることがありますよね。いわば“ウインク付きの秘密”です。でも彼はそうではありません。メールでやり取りしても、新作については「あなたの感想を楽しみにしています」と言うだけです。内容は明かしません。それだけです」
ゴールデン:「それが一番いいですよね。それに、ケースサイズを37mm前後に保っている点も素晴らしい。あれは本当に完璧なサイズです」
ラング:「まったく同感です。もちろん、私たちが好きな新進ブランドは他にもあります。たとえば独立時計師レジェップ・レジェピが手がけるアクリヴィアなどはまったく別の次元の存在ですが、それでも私は飛田さんの時計を同じ“独立時計師の精神”の系譜にあるものだと考えています。これはいわゆる“マイクロブランド”ではありません」
飛田直哉の時計は高いのか?
ゴールデン:「そもそも価格も安価ではありませんしね」
ラング:「ええ、決して安くはありません。1本2万ドルですから、決して小さな額ではない。ただ、手にするものを考えれば、その価値は非常に大きいと思います。支払っているのは、単に腕に載せた時計そのものだけではありません……」

▲ NH TYPE 1D
ゴールデン:「支払っているのは時計そのものだけではありません。それを生み出した人物、その背景に対しても対価を払っているのです。彼が時計業界で成し遂げてきたことの重要性、その蓄積に対してです」
ラング:「これほどまでに自分を信じて、挑戦している人を見るのは気持ちがいいものです。販売本数を考えると、正直どうやって事業として成り立たせているのか不思議に思います」
ゴールデン:「この価格帯であっても、販売本数は決して多くありませんし、製造コストも高い。研究開発費、設備費、人件費……考えれば考えるほど大変なことです」
ラング:「それでも彼は情熱でやってのけているのです」
ゴールデン:「まさにその通りです。先ほどレジェップの話が出ましたが、あれはハイ・オロロジーの別次元の世界です。しかし飛田さんの時計で私が好きなのは、機構を再発明しようとしているわけではないところです。彼は自分が愛して育った美意識と、長いキャリアの中で出会ってきた経験に基づき、美しく、完成度の高いクラシックウォッチを作ろうとしている。それはとても誠実で、尊い姿勢だと思います」
ラング:「彼は次のヴァシュロンになろうとしているわけではありません。自分自身であろうとしているのです。この時計を身につけるということは、本当に特別なものを身につけるということです。そしてそれは、誰かのためではなく、自分のために着けるのです」
ゴールデン:「そう、自分のために着ける。誰かに見せつけるためではありません。純粋に自分の喜びのためだけに腕に載せる時計には、確かに特別な価値があります」
ラング:「もちろん、誇示するための時計が必要な場面もあります。強烈な存在感を放ち、「これを見ろ」と言わんばかりの時計ですね。誰しもそういう瞬間はあるでしょう? でもこれは、どんな意味においても、そういう類の時計ではありません」

▲ NH TYPE 1D
ゴールデン:「その通りです。ただ、多くの著名なコレクターたちがこのブランドの熱心な支持者であるという事実も、やはり意味を持っていると思います。もちろん、それが購入を決める決定的な理由になるべきではありません。しかし、何かを示しているのは確かです。彼らは決して浅はかな人たちではありませんから」
ラング:「私はこれまで数多くの素晴らしい時計を見てきましたが、飛田さんの時計には特別なつながりを感じます。私にとってコレクションとは常に感情の問題です。そして、ブランドという観点で言えば、彼の時計は私の優先順位の最上位に位置しています」
ゴールデン:「本当にうらやましいですね。正直に言うと、少し嫉妬しています」
ラング:「まだ持っていないのですか?」
ゴールデン:「次回は応募の締め切りに間に合うように必ず申請します。そして、いつか承認してもらえればと思っています。待つ者には良いことが訪れる、と言いますからね」
彼らはGOAT(Greatest Of All Time)という最大級の褒め言葉で対談を締めくくった。日本で生まれ育ったNAOYA HIDA WATCH & Co.と、飛田直哉氏の時計にかける情熱が、いま世界を動かそうとしているのだ。
Brands:Naoya Hida & Co.
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