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“永遠”を扱う機械——セキュラー・パーペチュアルカレンダー

Technical

4年に一度のうるう年だけでなく、400年周期で訪れる“世紀年”の例外まで機械的に処理するセキュラー・パーペチュアルカレンダー。永久カレンダーの究極形ともいえるこの稀有な機構を、パテック フィリップ、スヴェン・アンデルセン、フランク ミュラーの傑作を通して解き明かす。

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From Here to Eternity: The Secular Perpetual Calendar

“永遠”を扱う機械―セキュラー・パーペチュアルカレンダー

4年に一度のうるう年だけでなく、400年周期で訪れる世紀年の例外まで機械的に処理するセキュラー・パーペチュアルカレンダー。永久カレンダーの究極形ともいえるこの稀有な機構を、パテック フィリップ、スヴェン・アンデルセン、フランク ミュラーの傑作を通して解き明かす。

by Cheryl Chia. Jan 23, 2023

 

セキュラー・パーペチュアルカレンダーとは何か?

 パーペチュアル(永久)カレンダーは、カレンダー機構の究極形のひとつである。時計が動き続ける限り、月ごとの日数の違いだけでなく、4年に一度のうるう年も自動的に処理する。

 アニュアルカレンダーは30日月と31日月を判別できるものの、2月の短さには対応できない。そのため、毎年3月1日に手動で日付を調整する必要がある。一方、パーペチュアルカレンダーはうるう年まで織り込んでいるため、通常は日付修正を必要としない。ただし、そこには“世紀年”という例外がある。

 グレゴリオ暦では、4で割り切れる年は原則としてうるう年となる。ただし、100で割り切れる年は、400でも割り切れない限り平年として扱われる。したがって2000年はうるう年だが、2100年、2200年、2300年は平年となる。

 通常の永久カレンダーは、この100年単位の例外までは処理できない。そのため2100年、2200年、2300年を誤ってうるう年と判断し、それぞれ3月1日に1日分の日付修正が必要になる。

 この問題を解決するのが、セキュラー・パーペチュアルカレンダーである。グレゴリオ暦の400年周期を機構に組み込むことで、世紀年の例外まで自動的に処理する、パーペチュアルカレンダーの究極形だ。

 仕組みとしては、時計の中で秒や分といった短い周期から、年、さらには100年や400年といった長い周期へと、歯車の回転を段階的に変換していく。月の日数の違いや、うるう年、そして世紀年の例外といった複雑な要素を、それぞれ別の仕組みで補正しながら積み重ねていくことで、正確なカレンダー表示が実現されている。

 つまりセキュラー・パーペチュアルカレンダーとは、「時間という概念そのものを、機械でどこまで正確に再現できるか」という挑戦の結晶なのである。

1989年、パテック フィリップ創業150周年を記念して製作された記念碑的なキャリバー89。

 携帯可能なパーペチュアルカレンダーを初めて実現したのは、イギリスの時計師トーマス・マッジ(1715–1794年)である。1762年、彼はこれを懐中時計として完成させた。

 その後、パテック フィリップは1889年にパーペチュアルカレンダー機構の特許を取得し、1925年には世界初のパーペチュアルカレンダー腕時計を完成させるなど、この分野において主導的な役割を果たしてきた。

 さらに注目すべきは、同社が1972年、アメリカの実業家セス・アトウッドのために製作した一点物の懐中時計において、セキュラー・パーペチュアルカレンダーをいち早く実現したことである。これは、通常のパーペチュアルカレンダーが対応できない“世紀年”の例外まで織り込んだ、より高度な機構だった。

 そして1989年、創業150周年を記念して製作されたキャリバー89において、この機構はさらに発展を遂げる。そこではセキュラー・パーペチュアルに加え、復活祭の日付を算出するイースター表示まで組み込まれ、機械式時計におけるカレンダー機構の到達点のひとつとなったのである。

セキュラー・カレンダーを備えたキャリバー89

 9年の歳月をかけて完成したキャリバー89は、実に33もの複雑機構を搭載した、まさに記念碑的存在である。

 グランドソヌリとプティットソヌリ、ミニッツリピーター、スプリットセコンド・クロノグラフ、恒星時、均時差、日の出・日の入り表示に加え、セキュラー・パーペチュアルカレンダー、さらには季節、春分・秋分・夏至・冬至、黄道十二宮(十二星座)表示に至るまで、時間と天文学に関わるあらゆる要素を内包している。

 特筆すべきは、復活祭の日付表示を初めて実現した点だろう。これは単なるカレンダー機構を超え、宗教暦までを機械的に演算する試みであり、理論上は570万年周期に及ぶ計算をプログラムホイールに落とし込む必要があった。ただし当然ながら機械的制約があるため、その表示は一定期間に限られる。

 ムーブメントは合計1,728個のパーツで構成され、3枚のプレート上に4層構造として組み上げられている。この構造そのものが、短い時間単位から数百年単位に至るまでの周期を段階的に制御するための、いわば“時間の階層構造”となっている。

 この驚異的な作品によって、パテック フィリップはそれまで世界で最も複雑な時計とされていた〈ヘンリー・グレーブス・スーパーコンプリケーション〉の記録を更新し、さらに9つ多い複雑機構を実現した。まさに、機械式時計という枠組みの中で、人類がどこまで“時間”を扱えるのかを示したひとつの頂点である。

キャリバー89の裏面には、恒星時ダイヤルが配され、6時位置の半円状スケールには均時差が表示されている。さらに8時位置には日の出時刻、6時位置には日の入り時刻が示され、星図の直上には復活祭の日付表示が組み込まれている。一方、表面にはスプリットセコンド・クロノグラフを中心に、年表示をアパーチャーで示すフルセキュラー・パーペチュアルカレンダーが展開され、その直上にはレトログラード式の日付表示が配置される。加えて、月齢およびムーンフェイズ表示、さらには第二時間帯表示も備えられている。

 キャリバー89に搭載されたセキュラー・カレンダーは、とりわけ完成度の高い構成を持ち、膨大な暦情報を簡潔に表示している。4桁の西暦、4年周期内の年(第1年〜第4年)、レトログラード式の日付、月、そして曜日といった要素が、無理なく整理されているのが特徴だ。

 4桁の年表示は12時位置のアパーチャーに示され、その隣には4年周期における年数が同じく窓表示で配置される。さらに、世紀と10年単位は左側の同心円ディスクによって表現され、右側には年および4年周期が別の同心円ディスクとして表示される構造となっている。月と曜日については、それぞれ4時位置と8時位置のアパーチャーに略称で示される。

 ここで改めて、うるう年のルールを整理しておこう。基本的には4で割り切れる年はうるう年となり、2月は29日までとなる。しかし100で割り切れる年は例外的に平年(365日)となる。ただしさらに400で割り切れる場合は再びうるう年となる。

 この複雑な入れ子構造のルールを歯車機構に組み込むこと自体が高度な技術を要するが、キャリバー89ではさらに日付表示がレトログラード式であるため、その制御は一層難度を増している。

 日付は中央に配置されたブルースチールの針によって示され、目盛り状の弧をなぞるように進んでいく。この機構は、通常のパーペチュアルカレンダー同様にうるう年の2月29日を正しく表示するだけでなく、セキュラー・カレンダーとして、2100年などの世紀年(うるう年ではない年)においては2月を28日として扱う点が大きく異なる。そして各月の末日を迎えると、針は瞬時に起点へと跳ね戻り、次の月の1日を示す。

 このレトログラード機構と、400年周期までを包含するカレンダー制御が組み合わされることで、キャリバー89は単なる複雑機構を超え、“時間そのものを機械に置き換えた存在”となっている。

セキュラー・パーペチュアルカレンダーの機構は、4時位置の月表示ディスクの下に収められている。セキュラー機構を構成する100年カムは100年で1回転し、その外周に設けられた4点サテライトカムは400年で1回転する。

 セキュラー機構は、1986年に特許が取得されたもので、その構造はきわめて複雑でありながら、極めて巧妙な解決策によって成立している。ただし、この機構が適用される時計はごく限られており、懐中時計ではほとんど例がない。

 特許はフランソワ・ドヴォーとジャン=ピエール・ミュジーの名で取得されており、後者はわずか28歳でキャリバー89の開発責任者を務め、その後も40年以上にわたり同社に在籍している。

 パーペチュアルカレンダーの中核をなす月カムには、大きく分けて3つの設計方式がある。一つ目は4年周期(48カ月)を一周とし、月ごとの日数をノッチの深さで表現する48カ月カム。二つ目は1年で一周する12カ月カムで、同様にノッチで月の長短を表す方式。三つ目が、12カ月カムにマルタ十字のサテライト機構を組み合わせ、2月の制御を担わせる方式である。

 セキュラー・カレンダーでは、この古典的な12カ月+マルタ十字方式が採用されている。12カ月カムには30日月と31日月を識別するための異なる高さのノッチが刻まれ、一方で2月についてはマルタ十字に取り付けられた4点カムが担当する。この4点カムは、三つが同じ高さ、一つだけが長く設計されており、この長いポイントが2月29日を表す。

 この原理をさらに拡張し、400年周期の中で連続する三つの世紀年が平年となる点まで対応したのがセキュラー機構である。セキュラーカムは100年で1回転し、その外周に取り付けられた4点サテライトカムが400年で1回転する。このうち一つだけ長いポイントが、400年に一度のうるう年を示す。

 ここまでは比較的理解しやすいが、真の難しさは、うるう年ではない世紀年において、セキュラーカムが通常の12カ月カムの動作をどのように上書きするか、そしてそれをレトログラード機構とどのように統合するかにある。

 その解決の鍵となるのが、4段階のステップを持つレバーである。まず基本構造として、通常のカレンダー同様、24時間車が31歯の日付車を駆動し、この日付車にレトログラード針が取り付けられている。日付車は24時間ごとにフィンガーによって1歯ずつ送られ、ポール(爪)によって位置が保持される。

 また、日付車のピニオンにはラックレバーが噛み合い、月末にスプリングの力で針を瞬時に起点へ戻す、いわゆるレトログラード動作を実現している。

 この日付車にはインデックスが取り付けられており、それがポールの先端に連動する特別なレバーのステップと噛み合う。このレバーこそが、月ごとの日数だけでなく、うるう年、さらには世紀年の例外までを機械的に判断し、日付の進み方そのものを制御する中枢機構なのである。

パテック フィリップのキャリバー89に搭載されたセキュラー・カレンダー機構(オリジナル特許図より)。部品番号(10)および(11)は、12カ月カムと、それに組み合わされたマルタ十字サテライトに固定された小型の4点カムを示している。

  このレバーには三角形の突起が2つ設けられている。ひとつは中央にあり月カムと噛み合うためのもの、もうひとつは先端にあり、世紀年の2月においてセキュラーカムの歯に係合するためのものだ。月カムはラックレバーに取り付けられたフィンガーによって1年に1回転し、一方のセキュラーカムは、同じくラックレバーに支持された減速輪を介して月カムから駆動され、100年で1回転する。

 通常の30日または31日の月では、レバー中央の突起が月カムの歯に掛かる。平年の2月においては、その突起は月カム上のサテライトカムに係合する。しかし世紀年の2月になると、セキュラーカム側のサテライトが1回転を終えて60度の位置に戻り、レバー先端の突起と接触する。これによりレバーはそれ以上進むことができず、中央の突起が月カム側のサテライトに噛み合う前に動作が止められる。

 その結果、レバーは世紀年ごとに月カムの制御をバイパスし、400年周期の中で連続する3つの世紀年を平年として処理する。そして4番目の世紀においてのみ、サテライトの長い突起によってうるう年が正しく反映される。

 この月カムを“上書き”する独自の仕組みは、ダイヤル上の表示配置とも密接に結びついており、そのまま腕時計に転用することは極めて難しい。

 実際、この機構を腕時計として実現したのは、スヴェン・アンデルセンとフランク ミュラーの2名に限られる。もっとも、その構造はパテック フィリップのセキュラー・カレンダーとは大きく異なり、ほぼゼロから再設計されたものだ。

 スヴェン・アンデルセン〈パーペチュアル・セキュラー・カレンダー〉

1996年に発表されたスヴェン・アンデルセン〈セキュラー・パーペチュアル・カレンダー〉は、腕時計として世紀補正まで組み込んだ稀有なコンプリケーションである。

 1970年代、パテック フィリップのグランド・コンプリケーション部門で約10年にわたり研鑽を積んだスヴェン・アンデルセンは、多様な複雑機構に精通するに至った。とりわけダイヤル側の機構においてその才能を発揮し、ルイ・コティエによるワールドタイム機構の扱いにも長けていた。1980年に自身の工房アンデルセン・ジュネーブを設立すると、やがて独自のワールドタイムウォッチを生み出していく。

 しかし、より重要でありながらあまり知られていない業績がある。1996年に発表した、腕時計用セキュラー・パーペチュアルカレンダーの開発である。 1979年にパテック フィリップを離れた後も、彼は同社の時計師たちとの関係を保ち続け、キャリバー89の開発においてセキュラー・カレンダー機構について助言を求められていた。

 だがアンデルセン自身は、この機構があまりに複雑であると考え、腕時計に収めるためのより実用的な構造を模索し始める。その過程で、アラン・シルベスタインの〈ヘブライカ〉に採用された、腕時計として初のヘブライ暦表示も開発している。

 こうしたカレンダー機構に関する深い知見を背景に、アンデルセンはグレゴリオ暦の複雑な例外規則を、より簡潔な形で歯車機構に組み込む方法を見出した。それはパーツ点数を抑えつつ、世紀年の補正まで正確に処理するという、実用性と精度を両立させた解決策だったのである。

アンデルセン・ジュネーブ〈パーペチュアル・セキュラー・カレンダー “20th Anniversary”〉では、曜日は太陽、月、そして5つの惑星によって表現され、日付は3時位置のアパーチャーに表示される。裏面(右)には、同軸カウンターによって月と4年周期における年数が表示され、セキュラー表示は独立したサブダイヤルに配されている。さらに中央の針は、50年スケール上で年を指し示す。

  スヴェン・アンデルセンの〈パーペチュアル・セキュラー・カレンダー〉は、カレンダー表示を表裏2つのダイヤルに分けている。

 表側では3時位置のアパーチャーに日付を表示し、裏側では同軸カウンターに月と4年周期の年数を示す。さらに、独立したサブダイヤルにセキュラー表示を備え、中央の針が50年スケール上で年を指し示す構成だ。

 2016年、この機構の発表20周年を記念して、ダイヤル上に曜日表示が追加された。曜日名が太陽・月・5つの惑星に由来することから、それら7つの天体が手彫りのゴールドボタンとして配されている。機構的には、従来のパーペチュアルカレンダーと同様、4年で1回転する48カ月カムを基盤とする。このカムは48枚の歯を持ち、それぞれに刻まれた4段階の深さが31日、30日、29日、28日の各月を表現する。

 グランドレバーは月の長さに応じて異なる角度で作動し、短い月ほど大きく、長い月ほど小さく動く。そして月末になると、このレバーが日付カムの歯に噛み合い、日付送りを強制する仕組みだ。したがって短い月ほど、より早い位置でカムがロックされる。

 さらに、うるう年ではない世紀年に対応するため、この48歯カムは4年ごとに減速輪を1歯進める。この減速輪は8年で1歯ずつセキュラー・ホイールを回転させ、結果としてセキュラー・ホイールは400年で1回転する。なお、この機構には特許が存在せず、セキュラー・ホイールがどのように月カムの動作を上書きするかという核心部分は、現在も詳細が公表されていない。

 フランク ミュラー〈エテルニタス メガ 4〉

 1980年代、独立する以前のフランク ミュラーは、スヴェン・アンデルセンの工房で修業を積んでいた。両者は協働して、現在パテック フィリップ ミュージアムに収蔵されている約60本のパテック フィリップの修復を手がけている。

 こうした背景から、両者の関心が重なり合っているのは当然といえる。フランク ミュラーは後にルイ・コティエのワールドタイム機構を基にした自らのワールドタイムウォッチを製作し、さらにアンデルセンの工房ではパーペチュアルカレンダー・モジュール(2-30)を共同開発、それを自身の初期作品に採用している。

 フランク ミュラーによるセキュラー・カレンダーは、2007年に〈エテルニタス メガ〉で初めて発表された。このモデルは合計36の複雑機構を搭載し、キャリバー89を凌いで当時世界で最も複雑な時計となった。トゥールビヨン、スプリットセコンド・クロノグラフ、均時差、カリヨン・ウェストミンスター・ミニッツリピーター、さらにはグランドソヌリおよびプティットソヌリなど、極めて多彩な機構を備えている。

 そのセキュラー・カレンダーはキャリバー89同様、レトログラード式の日付表示を採用するが、構造としてはむしろ伝統的なパーペチュアルカレンダーに近い。すなわち、グランドレバーが12カ月カムを読み取る方式を基盤としており、極限的な複雑さを追求したパテック フィリップの構造とは異なるアプローチによって、世紀補正機構を実現しているのである。

〈エテルニタス メガ 4〉は、驚異的な36の複雑機構を搭載し、そのうち25がダイヤル上に表示されている。

  キャリバー89のセキュラー・カレンダー機構に言及したフランク ミュラーの特許には、次のように記されている。

 “100年で1回転するこの歯車列には、4本の枝を持つサテライトが取り付けられており、100年ごとに4分の1回転する。このサテライトはマルタ十字の形状をしており、作動上いくつかの問題を引き起こす可能性がある”。

 こうした点を踏まえ、〈エテルニタス メガ〉では12カ月カムがより伝統的な形状へと改められている。すなわち、1年で1回転するカムに、各月の日数に応じた段差(ノッチ)を設けたもので、最も深い段差が2月に対応する。この方式は48カ月カムやマルタ十字式の12カ月カムとは異なり、1年で一巡するため2月29日を直接カムに組み込むことができない。

 そのため、グランドレバーには補助アームが設けられ、そこにうるう年用のサテライトカムを備えたホイールが組み込まれている。この構成では、うるう年の制御が月カムとは独立しているため、月カムを上書きする必要がない。代わりに、セキュラー・カムがこのうるう年カムを補正する役割を担うのである。

左:〈エテルニタス メガ 4〉の優美なフォルムのケージを備えたフライング・トゥールビヨン。右:裏面からは、スプリットセコンド・クロノグラフ機構を視覚的に確認することができる。

 うるう年カムの円周の4分の1は径が大きく設計されており、29日まである2月に対応している。このカムは1年でピニオンの周囲を1回転しつつ、自身の軸でも毎年4分の1回転する。毎年2月になると、うるう年カムはグランドレバー中央部のフィールダーが当たる位置に来ており、通常のパーペチュアルカレンダーと同様に、うるう年と平年を判別する。

 同時に、補助アームのテール部分はセキュラー・カムのノッチに接触している。セキュラー機構を構成する100年カムは100年で1回転し、その外周に設けられた4点サテライトカムは400年で1回転する。

 カムには3つのノッチが設けられており、これによって3つの連続する世紀年においてはレバーの動きを後退させ、うるう年カムを通常の28日しかない2月と同じ位置に補正する。そして4番目の世紀、すなわち2400年に対応する位置には高い段差が設けられ、2月29日を正しく反映する。

 この3つの連続する世紀年を除けば、レバーのテールは常にカムの高い段差に接している。このセキュラー・カムがカレンダー機構全体を統御しており、その結果としてグランドレバーの先端(ビーク)は、月カムにおける2月の最も深いノッチに達することが決してない。

フランク ミュラーのセキュラー・パーペチュアルカレンダー機構(オリジナル特許図より)。部品番号(20)は12カ月カム、番号(8)はうるう年カムを示している。

 セキュラー・パーペチュアルカレンダーの歯車列は、時計製造においても最も複雑な部類に属することは間違いない。秒や分といった短い単位から、世紀や400年周期といった長大な時間の区分まで扱おうとすればするほど、機構は飛躍的に複雑さを増していく。

 しかしその本質は、単なる精密な計算を超えたところにある。グレゴリオ暦の例外規則――とりわけ世紀年の扱い――を機械的に再現するためには、ひとつの歯車だけで長大な周期を担うことができないという制約がある。そのため、従来のパーペチュアルカレンダーにおける月カムの動作を“上書き”するための、さまざまな補助機構が考案されることになる。

 まさにその部分にこそ、この機構の真価がある。すなわちセキュラー・カレンダーとは、究極の実用性を備えるだけでなく、機械式時計における最も魅力的で、かつ最も難解な機構のひとつなのである。

Brand:Franck Muller, Patek Philippe, Svend Andersen
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